考えがまとまった千歌。その足は、自然と学校の屋上へと向いていた。階段を登り切れば、曜が「おはよう」と声をかける。
「やっぱり、みんなここに来たね」
すでに来ていた梨子の言葉通り、ここに集まっていたのは千歌や曜たちだけではなかった。一眞を除いたスクールアイドル部全員が、この場に集まっていたのだ。
「結局、みんな同じ気持ちだってことでしょ?」
悩みながらも出した彼女らの想いは、一緒だったという事だ。
出場した方がいいというのは確かだ。しかし”学校を救う”ことは出来なかった。そんな中で出場し、そのうえ優勝したとしても……。
「でも、千歌たちは学校を救うためにスクールアイドルを始めた訳じゃない」
果南の言うように、千歌たち6人は別の目的もあって始めた。
「輝きを探すため」
「みんなそれぞれ、自分たちの輝きを見つける為……」
────でも
「見つからない」
優勝しても学校は無くなる。奇跡を起こして、学校を救って、だからこそ輝けた。輝きを見つけられた。ラブライブ決勝に進む原動力たるその目標が”学校を救う”だったのだ。
しかし、それが崩れ去った今では────
「輝きが見つかるとは思えない!」
千歌は叫んだ。阻止できなかった今の自分たちに、輝きなど見つけられる訳がないと。
「私ね、今はラブライブなんてどうでもよくなってる。私たちの輝きなんてどうでもいい」
今まで奇跡が起こると信じて走ってきた。目指したいことや、素直な気持ちの中に輝きはあるのだと感じた。しかし、一番起こってほしかった奇跡は起こらない。そんな中で自分たちが追い求める輝きなど見つからない。
「……学校を救いたい! みんなと一緒に頑張ってきたここを……」
されど願う彼女の儚い想いが空気に溶けていこうとした時……
『じゃあ(だったら)救ってよ(くれ)!!』
突然、下の方から聞こえてくる多くの声は、彼女たちの悲しみに包まれた世界に切り込んでいく。
千歌が覗くと、そこには浦の星の……全校生徒が集まっていた。
「だったら救って!」
「ラブライブに出て……」
「「「優勝して!!」」」
よしみたちは声を張り上げて伝える。優勝し、学校を救ってと。
「できるならそうしたい。みんなともっともっと足掻いて、そして……」
「そして?」
「そして! 学校を存続させられたら……」
その後の言葉が出てこない。出そうとすると悔しさと悲しさで口元が震えてしまう。
「それだけが学校を救うって事?」
投げかけられた言葉に、千歌は目を見開く。希望者を増やして、学校を存続させようと足掻いてきた。しかし、それ以外にも方法があるというのだから。
「むつ達が言ってたぞ。みんなの気持ちは一緒だってな!」
下にいる一眞も口を開く。千歌たちにどうして欲しいか、どうなったら嬉しいか……生徒たちの想いは1つだったのだと。
「ラブライブで優勝して欲しい! 千歌たちのためだけじゃない。私たちのために! 学校のために!」
「この学校の名前を残してきて欲しい!」
「学校の……」
ダイヤは何かを察したかのように呟いた。全校生徒の言わんとすること。やれるのは千歌たちだけ。千歌たちにしかできないこと。それは……
「浦の星女学院スクールアイドル、Aqours! その名前をラブライブの歴史に、あの舞台に永遠に残して欲しい!」
「Aqoursと共に、浦の星女学院の名前を!」
「だから……」
『輝いて!』
救う方法は1つではない。その名前を刻み込むことで、存在が、ここにあったという証は永遠となる。多くの人々の記憶に刻まれることになる。
それが学校を救うこと。浦の星の生徒から、Aqoursへと託された想いだ。
「千歌ちゃん」
曜と梨子は、千歌を奮い立たせる”あの言葉”を投げかけた。
「「や・め・る?」」
「やめる訳ないじゃん。決まってんじゃん、決まってんじゃん決まってんじゃん!」
足をバタバタとさせなる千歌。みんなの言葉は、千歌の心にもう一度火を灯し、強い決意を抱かせた。
「優勝する! ぶっちぎりで優勝する!! 相手なんか関係ない。アキバドームも、決勝も関係ない! 優勝して、この学校の名前を……一生消えない思い出を作ろう!!」
もう普通怪獣とは言えない、千歌の力強い発言。
新たな目標へと向かって走り出そうとする彼女たちだったが、そんな時……空の一部が歪み始めたのだ。その歪みは暗雲の渦となり、やがて中から巨大怪人が降りてきた。
白と黒の身体に、背中には黒く巨大な翼を持ったその外見は、まるで烏天狗のよう。
「なにアレ!?」
「まさか、堕天使の遣い……!?」
「そんなこと言ってる場合じゃないずら!」
「でも妙ね……?」
「どういうこと、鞠莉ちゃん?」
地面に立つ存在を見つめるAqours。しかし、それを見た鞠莉は違和感を抱いた。それが一体なんのか曜は問いかける。すると、横にいたダイヤと果南も気が付いたみたいだった。
「鞠莉さんの言う通りですわ……」
「あの怪獣……動いてない」
そう。あの怪獣……否、魔人ともいうべき存在は、地面に降り立ったのはいいが一歩も動いていないのだ。まるで何かを待っているかのように。
「……!!」
「ちょっと一眞君!?」
「むつたちは逃げろよ! いいな!!」
存在を目視していた一眞はむつ達に逃げるように忠告した後、魔人のもとへと駆け出していくのだった。
~~
魔人の下へと走っていく一眞。するとそこには以前に見た少年の姿があった。金赤の短髪と緑の瞳。日焼けした筋肉質の肌。そしてこの場には似つかわしくない服装。
「久しぶりだな、オーブ」
「お前……プロキオ……だったか?」
獲物を見据え、衝動が抑えられないと言わんばかりの笑みを浮かべる異星人。彼もアオボシと同じように、
「なんでお前がここに……?」
「なんでって……オマエと戦う以外の理由が何処にあるんだよ。あの
さも当然かのように答えるプロキオ。一眞はそこで話が見えてきたのか「成程……」と呟く。
「アレもお前が呼んだってことだな。そして、俺を誘き出した……」
「その通りだ。コイツは破滅魔人ブリッツブロッツ。オマエに倒せるか?」
後ろに佇むブリッツブロッツを見上げ、笑みを浮かべるプロキオ。やはり、彼は純粋に戦うことを望んでいるようだ。しかし、その純粋さが逆に恐ろしく感じる。
「倒してみせるさ……必ず!」
オーブリングを取り出し、構える一眞。
「オレが一体化した場合でもか?」
その言葉に、一眞は固まる。クククッと笑いながら、プロキオは告げる。
「レグリオス星人ってのは怪獣と一体化し支配する。勿論オレもできるんだぜ。こんな風にな!」
まるで光の粒子のように状態となり、ブリッツブロッツの体へと入り込んでいく。すると頭部には王冠のようなものが出現した。
此方を見下ろしてくる
「見て、オーブが!」
千歌たちもオーブとブリッツブロッツの戦闘を目にする。
青い風を纏い、オーブスラッガーランスを突き立てるオーブ。しかし魔人はその攻撃を簡単に躱していき、腹部を蹴り上げた。後退してしまうオーブへと、手の甲から放たれた光弾が襲い掛ってくる。それをスラッガーランスを巧みに扱って防ぎ、再度駆け出す。
己の武器で応戦するハリケーンスラッシュに、空を舞う破滅魔人。両者が衝突するたびに起きる暴風が、地響きが……内浦を襲い、海を揺らした。
「クッ……オーブスラッガーショット!!」
ブリッツブロッツに向けて投擲された2対のブーメラン。だがその攻撃も腕で払い除けられてしまった。
「ならコイツでぇ!」
瞬時に己の姿を変え、ストリウムマイトで拳を叩きこんでいくオーブ。燃える拳を何度も叩きつけ、脇腹に蹴りを入れる。最初に彼と生身で戦った時は、圧倒されるばかりだった。しかし今は彼とも互角に渡り合えている。それも一眞がここまで戦ってきた経験が活きているからだろう。
「……ッ!」
そして決め手として、地面を蹴り一気に加速。右腕を命いっぱい引き絞り、顎を捉えようと打ちだ────す筈が突如横から乱入してきた光線に撃ち落されてしまう。
「うああッ!?」
地面を転がるオーブ。撃たれた方向に顔を向ければ、そこにいたのは……なんと
「What!?」
「なんで……」
「オーブが……2人!?」
「まさかドッペルゲンガー……?」
Aqoursの面々ですら、その異常な光景に唖然としてしまう。以前にもオーブが2体いたという事があったが、それとはわけが違う。撃ち出した光線は完璧にオーブへと向けられていた。これは完全なる
スペリオン光線を撃ったオーブが擬態を解くと、黒のボディに金色の鬣、そして2本の角を頭に生やした姿となった。奴の名はババルウ星人。別名、暗黒宇宙人とも呼ばれる存在だ。
「なに、宇宙人……?」
そう呟くオーブを余所に、ブリッツブロッツ……もといプロキオはババルウ星人へ近付く。彼の性格から見れば、戦いを邪魔されたと思っているのだろう。破滅魔人の状態では喋ることができないみたいだが、その動きから予測できる。
「これはヴィルゴからの命令だ。オレも協力させてもらう」
察していたのか、ババルウ星人も手短に伝える。ここで確実に仕留めたいとヴィルゴは思ってヤツを寄こしたのだろう。納得はいかないだろうが、余計に拗らすわけにもいかないと判断したのか、ブリッツブロッツは首を縦に振りこちらを睨んだ。
(2体1、それにどっちも只者じゃない……完ぺきに殺しにきてるよな、コレ……)
眼前の敵を睨みながら立ち上がるオーブ。状況はこちらの方が圧倒的に不利だ。しかし、こちらにも譲れないものがある。ヒカリにも宣言したのだ。あんな戦いを追い求めるような戦闘狂に、この星を、命を……易々と明け渡して堪るか。
「オオオオオッ!!」
己を蹴り飛ばすために伸ばした脚を往なし、2撃目は掴んで投げ飛ばす。瞬時に跳躍し回転。ブリッツブロッツの頭部に手刀を叩きこんだ。再度迫ってきたババルウには、首投げをかます。
しかし、ずっと攻撃をし続けられているわけでもなかった。2体の攻撃は着々とオーブの体力を奪っていく。反応も追いつかなければ、すぐさま容赦ない一撃が叩きこまれる。
「そらよッ!」
右腕に付けられたカッターと体術と織り交ぜて攻め立てられれば、持ち前の俊敏さも相まってこちらは回避に専念せざるを得なくなる。
「おいおい、どうした! さっきの威勢はどこ行ったんだよ!」
白銀に輝く刃が、オーブの脇腹を抉り裂く。
「がああああああああっ!?」
ダメージを受けたオーブは、悶えながら地面に片膝をついてしまう。
(アイツ、速え……!!)
格闘センスに優れた的確な攻撃がオーブを苦しめる。だが、悠長に彼だけを相手にする場合ではない。空中からはブリッツブロッツの光弾が絶え間なく降り注ぐ。
「この……!」
何とか光弾を交わすことに成功するが、ヤツが地面に降りてくると両手の鋭い爪を使って切り裂こうと迫ってくる。
「いい加減に……しろ!」
瞬時に距離を離したオーブは、すぐさまエネルギーを腕に回す。狙いを定め、腕をT字に組んで光線を発射した。
─────誰もが決まったと確信した瞬間、ブリッツブロッツは胸部にある十字部分を展開。なんと、内部の結晶体が光線を吸収してしまったのだ。
「……!?」
そして光線を倍の威力へと変換し、こちらに撃ち返してきた。これを防ぐことができなかったオーブは、声をあげながら後方へと飛ばされてしまう。
光線を倍の威力で反射してくる。初見ではまず見抜けないであろう能力。今まで見たことのない敵の能力に、誰もが驚愕する。
「ヘヘヘヘッ、勝負ありって感じだな。オーブさんよ」
先のダメージのせいで、カラータイマーが遂に点滅を始めてしまう。フラフラと立ち上がるオーブを嘲笑い寄ってくる2体。
しかしそれでもなお、オーブは
「はあ、お前頭がおかしくなっちまったのか?」
勝ち目がないのにもかかわらず、未だ戦おうとするオーブを見てババルウ星人は嗤う。
「……言ってろよ。俺は……この場所を守る。こっから先は、一歩も……通さねえ!」
どんなに絶望的でも、彼は戦う。最後の力が無くなるまでは、ここからは一歩も退かない。そんな彼の強い意志を感じさせる。
そんな彼の背中を見たAqoursや浦の星の生徒たちも彼のことを見守る。自分達に何ができるわけでもないが、それでも滅びに抗うことくらいはできるのではないかと。
だが彼の意思を無視するかのように、ブリッツブロッツはオーブの首を掴み、片腕の爪をカラータイマーに突き立てる。ゆっくり、ゆっくりとその引き下ろす。その異物感、不快感や痛み、苦しみにオーブが声をあげた。
────そんな時だった。
内浦の海から一筋の光が放たれた。太陽すらも霞みそうな強力な光に、Aqours、浦の星の生徒、敵対宇宙人、そしてウルトラマン……その場にいる誰もが目を奪われた。
さらに、海を切り裂くようにして打ち上がる何本もの水柱。その輝きの中、なんと────
「海が……割れてる……?」
「Miracle……」
「な、なんだ!?」
「あれ……もしかして……」
「ウルトラマンずら……」
片膝を立てていた巨人は、ゆっくりと立ち上がる。地球の海を思わせる鮮やかな明るい青に走る銀のライン。胸元の金に縁どられた黒のプロテクター。こちらを見据える乳白色に輝く目。
地球が生んだ海の青き巨人、ウルトラマンアグル。こことは別の地球で、彼はそう呼ばれている。
ウルトラマンアグルはすぐさま跳躍。こちらに一回転で接近し、手から発射する光弾”アグルスラッシュ”をブリッツブロッツの手元に撃ちオーブを救出する。
「……!」
アグルの隣に並び立ったオーブは彼へと目を向ける。アグルはただ無言で頷き、オーブも頷き返す。言葉を交わさずとも、目的は同じ。そう心に直接響いたような気がした。
2人の巨人は構えると同時に駆けだした。この星を、この場所を守るために。
~~
「何だか知らんが、相手はこのオレだ!!」
腕のカッターをギラつかせて、アグルを切り裂かんと飛び掛かってくるババルウ星人を易々と躱す。攻撃を受け止めたかと思えば、そのまま胴体に掌底を打ち込む。
「おおっ!? 何をッ!」
ババルウ星人が駆けだそうとする前に、アグルは右腕を伸ばし牽制する。暫く睨み合う2人。だが痺れを切らしたババルウが腕を振り上げてしまえば、カウンターで蹴りを2度も打ち込まれて地面を転がる。
身体に残る痛みと痺れに声を漏らしながら、立ち上がったババルウ星人は髪をかき上げる。アグルはその様子を見た後、手を使って挑発する。
「くっ……なんだと!? いきなり現れて好き放題しやがってぇぇぇぇ!!!!」
どこからともなく剣を出現させ、アグルに向かっていく。対するアグルも右手から細長い刀身の光剣”アグルセイバー”を発生させて応戦する。
様々な武器を扱うことができ、どれを使わせても強力なババルウ星人の攻撃を、アグルは青い剣で防いでいく。胴や腕、首を斬らんと迫ってくる刃を素早い突きで打ち込み、剣筋をズラしていくのだ。精密でいて素早いアグルセイバーの切っ先が、ババルウ星人の手に遂に直撃。持っていた剣を後方へ飛ばされてしまう。
「こ、このぉぉぉぉぉ……」
怒りに燃えるババルウ星人は距離をとって、左腕から光弾を放射状に放った。しかし放った光弾……そのコースがまずかった。射線上にあったのは……なんと浦の星。
「学校が!?」
千歌の叫びが聞こえる。このまま光弾が直撃すれば、学校は瓦礫の山と化すだろう。校舎すら残されなずに消える……それだけは避けたかった。
その必死の祈りが通じたのか、アグルは学校の前に立って自らが盾となった。防ぐことはできているが、このままではアグル自身が危ない。今は無抵抗だと知ったババルウ星人も、チャンスと言わんばかりに紫色の光弾を撃ちまくる。胴体に直撃し、地面にも当たり爆発がアグルを包み込んでいく。
「ヘヘへッ、そのままくたばっちまえぇぇぇぇ!!!」
一瞬の静寂が辺りを支配する。誰もが不安げな様子で煙を退くのを待った。煙の中にあるのは、倒れた巨人か……それとも────
「見て!」
その煙の中には──────構えを保ったままのアグルの姿があった。
「なんでだ……このオオオオオ!!!!!」
怒り心頭の様子で左腕を突き出したが既に遅かった。アグルは光を球体の形へと集約。腕を捻った後、手を開いた状態でスクリュー状の波動弾”フォトンスクリュー”を撃ちだした。
紫色の光弾はフォトンスクリューを止めるどころか呑み込まれてしまい、一直線にババルウ星人の胴体に風穴を開けた。虫の息であるババルウ星人を確認することなく、アグルはその場を立ち去っていく。その後彼の後ろでは、巨大な爆発が起きるのであった。
~~
拳や脚……そして光弾などの攻撃を往なし、回避していくオーブはその傍らでヤツの対処法に考えを巡らせていた。
光線を撃ちだせば胸元に吸収され撃ち返される。さらに、危険なのはあの爪だ。その爪でカラータイマーを引っ掻かれた時はなんとも言えない不快感を感じた。アグルの手助けもあり何事もなかったが、なかった時の場合を考えるとゾッとする。
するとそこに、駆け付けてきたアグルの飛び蹴りが加えられる。予想外の攻撃に、ブリッツブロッツは後退してしまう。
顔を見合わせ、協力して攻撃を加えていく2体のウルトラマン。アグルの蹴りから入れ替わるようにしてオーブの拳の乱発。そして決め手として、炎と水……それぞれのエネルギーを纏わせた拳がヤツの胸部を捉えた。衝撃に吹き飛ばされ、ブリッツブロッツは地面に倒れこむ。
────しかし
「コイツ……まだピンピンしてんのかよ……」
結構なダメージを与えたと思っていたのに、ブリッツブロッツは起き上がったのだ。2人ががかりでも倒れることのないそのタフネスさに、一眞は顔を顰めてしまう。するとそんな時、あることを思い出したのだ。それは光線を吸収、反射された時のこと。
(そう言えば、アイツは俺の攻撃を吸収し反射した。……なら過剰に攻撃を与えればどうなる?)
何事にも限界がある。過剰に吸収しすぎるとそれが毒になることだってあるのは、一眞も知っていることだ。
(この状況を打開するのは……これしか!)
この目論みが通用するかわからないが、これだけに賭けるしかない。そう判断したオーブは、突っ込んでくるブリッツブロッツの腹部を蹴り上げて後退。そして体全体にエネルギーを行き渡らせ……
「ツインダイナマイト……ブラスター!!」
全身から放たれた虹色の光線をブリッツブロッツ目掛けて放っていくのだった。当然ながら、ヤツは胸元の結晶体を露出させて光線を吸収していく。しかし、オーブはそれでも光線の発射を辞めない。許容オーバーになるまで撃ち込むために。
「腹一杯に……呑み込んじまえぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ヤツも狙いに気付いたのだろう。苦し紛れに手の甲から光弾を放ち、光線の照射を中断させる。しかし時すでに遅く、許容量以上のエネルギーを貯めこんでしまったブリッツブロッツの動きは鈍くなってしまった。
「胸元にはエネルギーが溜まってます。そこを!」
すぐには動けないオーブはアグルに頼み込む。するとアグルは頷き、胸元へと攻撃を開始した。
光弾のアグルスラッシュ、握り拳を合わせて敵に撃ち出す光球”リキデイター”。そして、頭部のブライトスポットから光の刃を垂直に伸ばし、敵に向けて放つ必殺技”フォトンクラッシャー”を最後に撃ち込んだ。
すると激しいスパークと共に胸元の結晶体が破壊され、胸元には焦げて抉れたかのような跡が残るだけとなった。これで吸収能力は喪失。未だ動きが鈍く、さらに胸元を破壊されてダメージを追ったブリッツブロッツに、これ以上の手立ては無いに等しい。
(今だ……!!)
最大のチャンスに、最大の一撃を打ち込むためにオーブオリジンへと姿を変え、聖剣にエネルギーを貯めこんでいく。そしてアグルも全身のエネルギーを右腕へと集める。
「オーブスプリーム……カリバァァァァ!!」
気迫の声で叫ぶオーブと共にアグルも撃ちだす。左腕は腰で構え、L字に曲げた右腕から放つアグル最強の光線”アグルストリーム”を。
虹色の光線と青い激流が混ざり合い、威力を底上げして宙を疾走する。この場所やそこに住まう人々の叫びにも似た光線は、破滅魔人の胸元を見事貫いた。獣の如き断末魔を上げたブリッツブロッツは、その体を内側から爆散させていくのであった。
『ありがとー!』
戦いの後、2人の巨人へと呼びかけているのは浦の星の生徒たちだった。2体は頷いた後、アグルはオーブの方へと顔を向ける。
「今回は助かりました。ありがとうございます」
通じているかわからないが、オーブは頭を下げる。実際、アグルの助けがなかったらここには立っていなかっただろう。
対するアグルは右手に小さな光を灯した。その光はふわりと浮くと、オーブのカラータイマーに吸い込まれるようにして入っていく。
「これは……貴方の力?」
胸元に手を置きながらオーブが問いかけるが彼は答えない。そして背を向けたかと思えば身体は徐々に透明に、そして端の方から粒子となって空気に溶けていく。もう時間なのだ。
「青いウルトラマンさーん!」
「学校を守ってくれて……」
「ありがとーーう!!!!」
学校を自らが盾になってまで守ってくれた。彼が消えゆく前に、Aqoursは伝えたかったのだ。アグルは振り向きぞしなかったが、頭が少しだけ動いたのだからしっかりと届いていたのだろう。
風に運ばれた青い光の粒子が、海へ帰っていくのだった。
~~
1日が終わりを告げようとする夕暮れ時。一眞は海を見ていた。手に持っているのは、青い巨人からもらった力が内包されているカード。
「あのウルトラマン……名前はなんていうのかな?」
隣に来た千歌は呟くようにして言った。人々を守り、学校を守った存在だ。誰だって名前を知りたくなる。
「アグル……。ウルトラマンアグル。それが彼の名前だよ」
「AGUL……造語かしら?」
「それより、どうして知ってるのよ」
聞いたこともない言葉だと鞠莉は不思議がり、それならどうして一眞は知っているのかと善子は尋ねる。
「そう言ってる気がした。なんでかわからないけど」
「ウルトラマン同士、通じ合ってるって事ずら」
「そうかも!」
一眞はよくわかってないが、1年生たちはそれで納得しているようだ。本人を差し置いているが、別にいいだろう。
「でも不思議だったわよね。あのウルトラマン」
「空からじゃなくて、海から来たもんね」
確かにこれまで出会ってきたウルトラマンの中では、何かが違うと思わせてくれる存在だった。確かに同じウルトラマンという括りであるのかもしれないが、今まで出会ってきた彼らとはまた違う感覚であったことも否定できない。
「それもそうだけどさ、どうも初めて見た気がしないんだよね。なんていうか……ずっと一緒にいたかのようなかんじ……?」
その言葉に、一眞はフフっと笑う。彼の反応が不服だったのか、果南は尋ねる。「何が可笑しいのさ」と。
「別に可笑しいから笑ったわけじゃない。ただ、やっぱりそうだよなって思って」
疑問符を浮かべる少女たちを余所に、一眞は口を開いた。
「アグルはさ、あれなんだよ」
彼の指さす方向にあるもの。それは浦の星からも見える、内浦の海そのものだった。
「……海?」
「そう、海。ずっと海は俺たちを……いや、みんなを見ていたんだと思う。そしてみんなが諦めなかったから、もう一度輝こうと決めたから……力を貸してくれたんじゃないかな……」
一眞の話は、当に信じられるものではなかった。海が……もう少し大きな目で見れば地球が、そんな意思を持っているかなどわかる筈もない。ましてや人の声に答えたかどうかもわからない。地球に害する存在へのカウンターであり、ただ目的が一緒だったという見方だってできるのだから。
「なにか理由でもあるの?」
そう聞かれたが一眞は「別に理由なんてないよ」と答え、「でも……」と付け足し
「そう……信じたいじゃないか」
確信はないけど、答えてはくれないけど、そう信じたい。それだけでいいと。
青い羽根が空を舞い、水平線へと向かっていく。彼女らは曇りなき目で空を、そして海を見つめている。そして彼女らと同じように、海もまた見つめてくれていることだろう。
やっとアグル出せた……。それに尽きます。連載始める前から考えていたことなので、ホントにうれしいです。
この世界のアグルの姿は最初からV2です。V1が良かったって人には申し訳ないですが……。わかる人にはわかるアレのデザインがV2なんですよ。
そしてプロキオが怪獣(破滅魔人)に乗り移るという能力はどこかでチラッと見せた方がいましたね。(その話を書いた頃と設定がまた変わっているんですけどね……)これも終盤の方で関わってくると思います。
ではまた次回で!