Sunshine!!&ORB   作:星宇海

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一週間開いてしまいました……申し訳ない。


第61話 隠された想い

 あのライブの翌日。予定通り、みんなで函館観光をすることとなった。しかし、一部は煮え切らない想いを抱えながらではあったが。

 

「何だかおいしそうな形ずらね」

 

「もう口に入れてるじゃん、花丸は」

 

 五稜郭タワーから景色を堪能しているのだが、花丸はおいしそうな形に見えていたり、善子は超巨大リトルデーモンを召喚すると言っていたりして、初めて見るその形状の城郭に心躍らせていた。

 

「デカいな……」

 

 初めて見るのは彼女たちだけではななく、一眞もその1人だった。景色を見て目を輝かせているそれはまるで幼い子どものよう。

 

「カズくん、写真撮って!」

 

「え、ちょっっ!?」

 

 だが景色を長く観ることは叶わず、写真を撮ってもらうためだと袖を引っ張られ、曜に連れていかれるのであった。

 

「ハグゥ……」

 

 一方3年生組。全然平気だと果南は強がっていたものの、地上が見える透明な床に視線を移した瞬間、足がすくんだのか鞠莉にもたれ掛かってしまう。

 

 

 

 等々……各々が楽しむ姿を見てルビィは笑顔になるがそれも一瞬であり、すぐに思い悩んだ表情を浮かべてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着くねここ」

 

「内浦と同じ空気を感じる」

 

「そっか……海が目の前にあって、潮の香りがする町で、坂の上にある学校で……」

 

「繋がってないようでどこか繋がってるものね、みんな」

 

 Saint Snowの母校を訪れ、景色を眺めていると千歌たちは浦の星との共通点を見出していた。そう言われてみればと、一眞も学校と景色への視線を行き来させる。冷たい空気と一緒に、潮の香りが鼻孔をくすぐり、坂を登れば学校がある……。確かに、この場所の雰囲気はどこか似ていると思わせてくれる。

 

「おまたせずら~」

 

 いい感じの雰囲気に包まれていたかと思ったら、着こみ過ぎてまん丸になった花丸が歩いてきたではないか。それを見て、先の悲劇を思い出した数名は腕を突き出して声をあげる。

 

「またそれ、またそれなの!?」

 

「なんでまた着てくんのよ!」

 

「転ばないでよ……」

 

「それは()()ずらか~?」

 

 「違ーう!」という珠冬の声は届かず、またしてもルビィや善子、曜、珠冬は下敷きとなってしまった。

 

「味を占めたのか……? 花丸、恐ろしい子……」

 

「学習能力ゼロなだけでは?」

 

 辛辣なダイヤに一眞はツッコまれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後も街中を歩きまわっていたのだが、ここは北の地。いくら着込んでいても身体は冷えてくる。

 

「寒いね~」

 

「それじゃあTea timeにでもしますか!」

 

「さんせー!」

 

 鞠莉たちの提案で体を休めることに。花丸も凍えまくっているようで声が震えているし、丁度いいタイミングだ。ではどこで休もうか……店を探して視線に入ったのは

 

「くじら汁?」

 

「渋い……」

 

 くじら汁……みなみ北海道では正月の定番料理として定着していると、以前聞いたことのある名だった。

 

 みんなが足を止めたのは、そのようなメニューの看板が張られた店。外観の雰囲気も昔懐かしい感じ……というものを感じさせてくれるが、一眞には少し不思議な感覚だったに違いない。

 

「すいませーん」

 

 店の戸を開けた千歌が声をかけるも、中からは返事がなかった。

 

「いやでも……」

 

「商い中ってありマース」

 

 扉の横にかけてある看板を見た一眞と鞠莉。だがそれよりも花丸は「とりあえず中に入れて欲しいずら」と懇願する。彼女も含めみんな寒いだろうし仕方ないだろうという事で、店内へと入っていくのだった。

 

 最後に店内へと入ったルビィは物音でも聞いたのか、店の奥の方へと向かっていく。

 

「……ルビィ?」

 

 その一部を目にしてしまった珠冬は不思議そうに首を傾げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「綺麗~」

 

「すっごいおいしそ~」

 

 テーブルの上には綺麗に盛られたぜんざいが置かれていた。

 

「とても温まりますよ。どうぞお召し上がりください」

 

 そう言って話すのは、なんと店の制服に身を包んだ聖良だった。彼女らが立ち寄ったここは聖良、理亞の実家兼店だということだ。お店の雰囲気に、一眞は初めての物を見るようにキョロキョロしている。

 

「このおいしさ、天界から貢物!」

 

「おかわりずら」

 

 別の地に来ても変わらない2人のやり取りは、先ほどの学校の話を思い出させてくれる。

 

「学校の寄られるかもとは来ていましたが……でも、ビックリしました」

 

「せっかくなのであちこち見て回ってたんです。そしたら……」

 

「偶然ここを見つけて、そしたら偶然にも聖良さんたちのやってるお店でって感じです。あ、あとおかわり貰っていいですか?」

 

 数秒間のうちのどこに食べる暇があったのだろうかと驚く千歌たちとは別に、聖良は快く「はい」と言って器を受け取ってくれた。

 

「街並みも素敵ですね。落ち着いてて、ロマンチックで」

 

「ありがとうございます。私も理亞もここが大好きで、大人になったら2人でこの店を継いで暮らしていきたいねって」

 

 窓から見える景色、そして今まで見てきた風景を思い出しながら梨子は感想を口にした。聖良が語った言葉には千歌たちと同じように、この街には特別な思い入れがあることを教えてくれる。

 

「残念でしたわね。昨日は」

 

 そう切り出したダイヤ。きっと、彼女もずっと気にしていたのだろう。姉妹でスクールアイドルをやっている者同士として。

 

「いえ、でも────「食べたらさっさと出ていって」

 

 聖良が何か言おうとしたところで、理亞の言葉がすべてをかき消した。

 

 それは褒められたものではないが、理亞からしたら地雷を踏みぬかれたのと同じ。こうも言いたくなる。

 

「ごめんなさい。昨日の事、まだ引っ掛かってるみたいで」

 

「そうですよね……」

 

 厨房へと消えていった理亞の方に自然と目が行ってしまう。”まだ”というが昨日の今日だ。すぐに吹っ切るのは難しいはずだ。

 

「会場の方でもちょっと喧嘩してたみ────むぐっ!?」

 

「善子!」

 

 ズバズバとモノを言ってしまう善子に向かって花丸はスプーンで口をふさぎ、珠冬は頭にチョップを入れる。

 

「いいんですよ。ラブライブですから、ああいう事もあります。ですが私は後悔はしていません。だから理亞も、きっと次は……」

 

「嫌! 何度言っても同じ。私は続けない。スクールアイドルは!……Saint Snowはもう終わり!!」

 

「いいの? あなたはまだ1年生。来年にだってチャンスは……」

 

「いい。だからもう関係ないから。ラブライブも、スクールアイドルも」

 

 まだ来年もあるという聖良に対して、関係ないと突き放した理亞は再度厨房へと消えてしまう。仕方ないとはいえ、先ほどまでの空気は完全に崩壊してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「未来ずら~」

 

 そのまま空気を引きずってしまい、今は場所を変えてハンバーガショップに立ち寄っていた。花丸の食欲は留まることを知らないようで、「口に入らないだろ!」とツッコミたくなるくらい大きいハンバーガーに目を輝かせている。

 

「何も辞めちゃうことないのに……」

 

 千歌たちは理亞の言葉を思い出していた。Saint Snowも終わりにし、ラブライブも興味ないと言い切ったこと。関わった時間は少ないが、聖良と共に高みを、優勝を目指していたことは知っている。だからこそここでやめるというのは少し気になる。

 

「でも理亞ちゃん、来年からは1人になっちゃうんでしょ?」

 

「メンバーを集めてRestart────」

 

「と行くほど単純な話ではないでしょう」

 

「……私たちもそうでしたからね」

 

 2年前のことと重なったダイヤも、一眞と同意見のようだ。これまでやってきた形を崩し、新たなメンバーでやろうとするには当人の気持ちの整理が必要だ。かといってすぐにできるわけでもないが。

 

「結局、ステージのミスってステージで取り返すしかないんだよね」

 

「でもすぐ切り替えられるほど、人の心は簡単ではないってことですわ」

 

「……自信、なくしちゃったのかな」

 

 彼女たちは理亞の気持ちを推察していくが、ルビィはただ1人「違う」と答えた。

 

「お姉ちゃんと一緒に続けられないのが嫌なんだと思う。お姉ちゃんがいないなら、もう続けたくないって……」

 

「あんた……」

 

「凄いずら……」

 

 ひとしきりに話し、尚且つ彼女の内面を察していたルビィに、善子と花丸は目を見張る。

 

 こうやって言葉を紡ぎ出していけたのも、ルビィが一番彼女と近い存在だからなのかもしれない。何よりも同じスクールアイドルとして、そして3年生の姉がいる妹ととして。

 

「そうよね……寂しいよね」

 

 梨子が呟くように言うと、ルビィはふと我に返る。

 

「ち、違うの! ルビィはただ理亞ちゃんが泣いて……あ……!!」

 

 言ってはいけないような事でも口走ったのだろうか。ルビィはそれから黙り込み、しまいには店外にへと走り去っていってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「どんな感じなの? お姉ちゃんって」

 

「う~ん、どうだろ……」

 

 改めて聞かれるとどう答えるべきなのだろうかと、千歌は唸る。今回の聖良と理亞、ダイヤとルビィを見ていて何か思うところがあったのだろう。

 

「あのなぁ……勝手に入って、勝手に話を展開するなっての」

 

 そしてその話は何故か一眞の部屋で行われているのだった。だというのに、千歌や曜の方が部屋を占領しているという状態に彼は頭を抱える。

 

「うちはあんな感じだからあんまり気にする事ないけど……」

 

「話聞けって……」

 

「でも、やっぱり気になるかな」

 

 一眞の声を余所に、千歌は姉という存在について語りだした。

 

「ほら、最初に学校でライブやった時さ、美渡姉雨の中来てくれたでしょ? 何かその瞬間泣きそうになったもん。あぁ、美渡姉だって……」

 

 普段は喧嘩し、からかい合っているところをよく見るが、心の底では信頼しているし、助けてくれる存在。姉妹というのはそういうものなのだろう。

 

「いいなー、私そういうのよく分からないけど」

 

「わたしもよくわからないよ。だってあまりにも自然だもん。生まれた時からずっといるんだよ、お姉ちゃんって」

 

 生まれたころからずっと一緒にいる存在。だから改めて説明しようにも、当たり前すぎてどんな感じなのかはわからない。案外複雑なものだ。

 

「そんなもんかね……」

 

 すると、「じゃあカズくんは憧れたりしなかったの?」と聞かれてしまう。「存在は認知してたのね」とは思いつつも、曜の問いに頭を働かせる。しかし、兄弟姉妹に憧れたことは無かったかもしれない。

 

「無い……かな」

 

「嘘だ~」

 

「いやホントだって……あ、いやでも」

 

 そこで一眞は目を細め、あることを思い出したかのようにして呟いた。

 

「兄に近い存在は……確かにいたかな」

 

 自分の言った事、そして過去形であったことで少し空気が沈み込んでしまうと思った一眞は強引に話を終わらせる。

 

「まあ、俺のことは良いんだよ……ってか、なんでこの部屋に来たんだよ! 自分の部屋に帰れって……!!」

 

 そうして一眞は、再びため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私もわかるかも。ルビィの気持ち……」

 

「いきなりどうしたのよ」

 

 ホテルの別室では、珠冬や善子、花丸が話していた。ちょうど話題に上がったルビィは、行きたいところがあると言ってこの部屋にはいない。

 

「別に~」

 

「なによ。勿体ぶらずに言いなさいよ」

 

「マルも聞きたいずら~」

 

 はぐらかされたことが気に入らない善子の隣で、花丸は特大のハンバーガーを口に運びながら言った。ルビィのために買ってきたのだったが、本人が「いらない」と言っていたらしい。それを聞いて頬張る花丸を見て「フラグ立ちまくりね」と善子は不敵に笑っていたが、意味はよくわからない。

 

「やっぱりさ、ずっといたダイヤさん……ううん、お姉さんがいなくなるのって、すっごく寂しいことなんだと思うんだよね。一緒にスクールアイドルをやっていると尚更……」

 

「へえ、あなたも言うわね」

 

「私にもいたからかな。私の場合には兄だったけど」

 

 へへっと笑う珠冬。そう言えば、一眞から兄のことも聞いた気がしたなと善子と花丸は以前の会話を思い出す。

 

「……ごめん」

 

「え、何で謝るの?」

 

 いつかの会話を思い出せば、たしか彼女の兄はもうこの世にはいないとのことだ。無神経に聞いてしまったことに、善子は申し訳なくなったのだろう。

 

「気にしてないって言うのは……ちょと違うか。でも大丈夫なのは本当だから。善子や花丸がそこまで気に病む必要はないよ」

 

 珠冬のひと声で、善子たちにも笑顔が戻る。そんな時、花丸の携帯が鳴った。あまりに突然だったので、花丸は携帯を落としそうになりながらも耳に当てる。

 

「もしもし……。ルビィちゃん!?」

 

 どうやら電話の相手はルビィらしい。

 

「うん。うん。……わかったずら」

 

 ほんの数分の会話を終えた花丸は携帯を切る。すると善子と珠冬はも気になるのか、花丸へと問いかける。

 

「なんだったの?」

 

「ルビィちゃん……マルたちに協力してほしいことがるって言ってたずら」

 

 

 

 




今回は短めでしたね。ですが、前半のギャグパートは楽しく書かせてもらいました。

函館篇がどのくらい続くのか……私にもわかりません。
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