Sunshine!!&ORB   作:星宇海

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結構時間が空きましたね……申し訳ないです。


第64話 思いがけないこと

「あけましておめでとうございます!」

 

「はい、おめでとう」

 

「あけおめ~」

 

「おめでとう」

 

「はいはい、おめでとうおめでとう」

 

 様々な出会いや出来事を経験した年も終わり、今日から新たな1年のスタートとなった。

 

 千歌の母、美渡、志満そして一眞の順で千歌に応えていく。千歌は早速、「お年玉」と丁寧に書いた半紙を持って志満、美渡そして母親へと声をかけていた。

 

 千歌の声を聞き、新年早々騒がしいなと一眞は未だ眠気の残る頭で考えていた。

 

「あんたまだ貰うつもりでいたの?」

 

 しかし貰ったのは大きな玉のオブジェ。それに納得いかないと、千歌はぐちぐちと文句を言っていた。

 

「梨子ちゃんはいらないって言ったらしいわよ」

 

「だったら千歌も貰えないよね~」

 

 そう切り出してきた志満に乗り、意地悪そうな顔の美渡に千歌は反論する。「よそはよそ。うちはうち」だと。

 

「都合がいい言葉だよな。それ」

 

「カズくんもなんか言ってよ!」

 

「えぇ……何を言えってんだよ」

 

 面倒くさそうに頭を掻く一眞。すると外から千歌と一眞を呼ぶ声が聞こえた。

 

「ああ、来ちゃった」

 

「いいタイミング。でかしたぜ曜!」

 

「ちょっと、それどういう意味!?」

 

「い、いや……別に~?」

 

 これ以上は迫られまいと、一眞はすぐに玄関の方へ駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 新年とて練習はある。ラブライブの決勝もすぐそこまで迫っているのだ。

 

 しかし彼女たちも年末は各々思い思いに過ごしていた。何をしたのかや、年末のテレビ番組の話で持ち切りだった。特に善子は聞くところによると、昨日は正月生放送をしていたとのことだとか。欠伸をしていることから、彼女は夜通しでやっていたらしい。

 

「私も見てたよ。おかげで全然寝れてない」

 

「やはり見ていたか! さすがはリトルデーモンス────「だからそれはやめて!」

 

 何気に珠冬と善子は仲いいよなと、一眞は2人のやり取りを見ながらそんなことを考えていた。

 

「寒いね~」

 

「ダイヤさんたちまだかな?」

 

 冬の冷たい風が体を吹き抜けていく。みんな身震いしながらダイヤたちの到着を待っていると、黒塗りの車が目の前に停車する。

 

「前から思ってたけど、ホントに黒塗りなんだな」

 

「一眞も気を付けなよ。下手なことすると……」

 

 急に鞠莉の声のトーンが下がる。やはり網元の家には黒服の集団でもいるのだろうか。怖くなった一眞は恐る恐る聞き返す。

 

「え? ホント……ですか?」

 

「It's joke!」

 

 鞠莉に揶揄われ、一瞬でも信じてしまった一眞はため息を吐く。そういえば鞠莉さんはこういう人だったと。そんなことをしていると、ルビィとダイヤそしてもう2人の人物が降りてくる。

 

「あけましておめでとうございます」

 

「うわ! 本当に来た」

 

「悪い?」

 

 聖良と理亞。Saint Snowだ。冬休みという事もあり、練習のコーチをお願いしていたのだ。もっとも、そちらは偶然にも本州に来る予定があったたらしく、できればとお願いしたものだったのだが快く引き受けてくれたのだ。

 

「それにしてもその恰好……」

 

 理亞は呆れながら全員の服装を見ていく。その姿には聖良も困惑気味のようだ。なんたって……

 

「それではみなさん!」

 

『あけましておめでとうございます!!』

 

 全員着物姿だったのだから。

 

 

 

 

 

 グラウンドへと場所を移した一行。ちなみに服装はいつもの運動着に着替えてもらった。まあ当たり前なのだが。

 

「あんたたちやる気あんの?」

 

「一応、お正月ってことで!」

 

「だからって晴れ着で練習できるかーーーーい!!」

 

 理亞の怒号が校庭にこだましていく。さらに横にいる一眞にも

 

「マネージャーでしょ? おかしいと思わなかったの?」

 

「逆にこういうのもアリなのかなって」

 

「んなわけあるか!」

 

 初対面の時からは考えられないやり取りを見せてくれた。これもクリスマスの一件があってこそだろう。

 

「いい学校ですね。私たちと同じ、丘の上なんですね」

 

 すると聖良は校庭を見て……いや、ここに来た時から思っていたことなのかもしれない。自分との学校の共通点を見出した。

 

「うん、海も見えるし」

 

 以前函館を訪れたAqoursが言っていたように、聖良もまた同じ空気を感じたのだろう。

 

「でも無くなっちゃうんだけどね」

 

 曜の言葉に、2人は目を丸くする。知らなかったことではあるし無理もないが、あまりにも突然だったかもしれない。

 

「今年の春、ここは統廃合になるの。だから3月でThe end」

 

 すると鞠莉がさらに詳しく説明してくれた。それを聞いて、聖良と理亞は駆け寄って尋ねる「ラブライブで頑張って生徒が集まれば……」と。かつて()()()がそうしたように。

 

「ですよね。私たちもずっとそう思ってきたんですけど」

 

 穏やかながらも、どこか悲し気にグラウンドを見据える千歌。しかし、その声に後悔の色は無かった。

 

「……そうだったんですか」

 

「あ、でもね! 学校の皆が言ってくれたんだ! ラブライブで優勝して、学校の名前を残してほしいって!」

 

 その後に果南が続く「浦の星のスクールアイドルが、ラブライブで優勝したって。そんな学校がここにあったんだって」

 

 それが友人たちから託された学校を救う方法。一度目標を見失ってしまった彼女たちに示された航路。

 

「最高の仲間じゃないですか! 素敵です!」

 

 それを聞いた聖良も瞳を輝かせる。一方理亞は、ルビィたち1年生のもとへと向かう。

 

「じゃあ、遠慮しないよ。ラブライブで優勝するために、妥協しないで徹底的に特訓してあげる」

 

「……マジ?」

 

「マジ」

 

「マジずら?」

 

「マジずら」

 

「マジですか」

 

「だからマジだって!」

 

 そのやり取りを見て珠冬も頬を緩ませていた。

 

 

 彼女たちのやり取り、そして自分たちの目標を再確認したことで、ラブライブ優勝に賭ける想いがまた強くなっていった気がした。

 

 

 

 

 

 早速始まった練習だったが、果南を除いたAqoursの面々にはなんともキツそうだった。正直、まだアップの段階なのにだ。

 

「お正月ですからね、皆さん」

 

「どういう事ですの……?」

 

 息が切れているダイヤが聞くと、理亞は「随分と身体がなまっているってことよ」とわかりやすく教えてくれた。

 

「一度身体を起こす必要がありますね。坂道ダッシュをしてから、校庭を3周してきてください」

 

 聖良の言い放った注文に納得するものは、果南以外誰もいなかった。この場合果南が特殊なのか、他がなまっていたのか、もう一眞にはわからなかった。

 

「この調子で決勝なんて……本当に大丈夫なのかな」

 

 どうにか走り終えることができたが、もう既にしんどいと座り込んでいる梨子は不安げに呟いた。だが、聖良は「いけると思いますよ」と励ます。

 

「ステージって、不思議とメンバーの気持ちがお客さんに伝わるものだと思うんです。今の皆さんに気持ちが自然に伝わればきっと……素晴らしいステージになると思います!」

 

 聖良の言葉に、千歌は力強く頷いた。そこには、聖良のAqoursに対する信頼も伝わってくる。

 

 するとルビィは「鞠莉ちゃんは?」と聞いてくる。確かに、彼女の姿が見えない。

 

「何かご両親からお電話だったみたいですが……」

 

 ダイヤがそう答えると、花丸が「もしかして、統廃合中止ずら?」と期待の眼差しを向ける。その横で善子は声を作って鞠莉の父親を想像する。

 

「ホホホッ、この学校を続けることにしただわよ」

 

「絶対そんなキャラじゃないから」

 

 そうやって休憩時間を過ごしていると、鞠莉が声をかけてくる。どうやら話は終わったようだ。

 

 

 

 

「理事!?」

 

「Of course.統合先の学校の理事に就任してほしいって」

 

 体育館に移動し、鞠莉は先の話の内容をみんなに共有する。浦の星からも、たくさんの生徒が統合先の学校に行くことになる。であれば鞠莉がいた方が安心するだろうと言う訳らしい。

 

「理事って?」

 

 話について行けない理亞に、ルビィは説明する。鞠莉は浦の星の理事長でもあることを。

 

「じゃあ、春から鞠莉ちゃんも一緒の学校に!? Aqoursも続けられる!?」

 

 千歌は期待を込めて鞠莉に問いかけるも、曜は「それだと留年したみたいだし」と。加えて一眞も「さすがにな……」とあまり好感触ではなかった。

 

 すると鞠莉の声が、体育館に響く。

 

「大丈夫、断ったから」

 

 彼女の答えに、誰もが声をあげて困惑する。そしてあまりにもあっさりと答えたのも、理由のひとつだ。

 

「理事にはならないよ。私ね、この学校を卒業したらパパが進めるイタリアの学校に通うの。だから、あと3ヶ月。ここに居られるのも」

 

 それは、みんなと過ごす時間のタイムリミットだ。それを理解すると同時に、どこか否定したいような複雑な気持ちに支配されるのだった。

 

 

 

 

 

「では」

 

「もう少しゆっくりしていけばいいのに」

 

 夕暮れの沼津駅で、聖良と理亞を見送りにきたAqours。聖良曰く「他にもよる予定がある」ということのようだ。

 

「ルビィ知ってるよ。2人で遊園地行くんだって!」

 

 理亞は顔を赤くしながら「言わなくていい!」と声をあげてしまう。

 

「別にいいじゃん。遊園地」

 

「もう……。これ、姉さまと2人で考えた練習メニュー」

 

 恥ずかしまぎれなのかはわからないが、千歌に練習メニューの書かれた紙を手渡す理亞。それをのぞき込めば、びっしりと練習内容が書き込まれていた。

 

「ラブライブで優勝するんでしょ? そのくらいやらなきゃ」

 

「ただの思い出作りじゃないはずですよ?」

 

 優勝する目的が目的だ。生半可なものでやっていいものではないだろうと言う、彼女たちなりの激励。そして、自分たちが成し得なかったことを彼女たちに託すという信頼でもある。

 

「必ず優勝して。信じてる」

 

 千歌の頷きの後「頑張ルビィ!」とルビィも意気込む。しかし、理亞には「なにそれ」と冷たく返されてしまうが。

 

「ルビィちゃんの必殺技ずら~」

 

「技だったの!?」

 

「知らなかった……」

 

 夕焼けの色が強く照らされた沼津駅に、彼女たちの笑いが木霊していくのだった。

 

 

 

 

 

「イタリアか……」

 

「きっとそうなるのかもなとは、どこかで思ってたけど」

 

「実際、本当になるとね……」

 

 海を見つめる4人。あと3ヶ月しか、今のメンバーではいられない。ラブライブ決勝後にはすぐさま卒業式がある。

 

「鞠莉ちゃんだけじゃないわ。ダイヤさんも、果南ちゃんも……」

 

「春になったらみんなで学校通ったり、バス停でバイバイすることも無くなって……制服も、教室も……」

 

「色々……変わっていくんだな」

 

 いままで見てきた場所でもなく、制服でも教室でもなくなることが寂しいのだと……そう言っているように感じた。

 

 浜辺へと向かった千歌が書いたのは、Aqoursの文字。

 

「どうするの?」

 

「3年生が卒業したら」

 

 曜と梨子がすべてを言わずとも察してしまう。Aqoursを続けていくのかどうかという事だ。

 

「わかんない。ほんとに考えてない。なんかね、ラブライブが終わるまでは、決勝で結果が出るまでは……そこから先のことは考えちゃいけないような気がするんだ」

 

「みんなのため?」

 

「全身全霊、全ての想いをかけてラブライブ決勝に出て優勝して、ずっと探していた輝きを見つけて……。それが学校のみんなと、卒業する3年生に対する礼儀だと思う」

 

 一歩踏み込んだ梨子は、千歌の両頬を挟み込み「賛成」と口にする。そして曜も「大賛成」と言って2人に抱き着く。

 

「まったく……リーダーの時はいろいろ考えてんだな。お前も」

 

「ちょっとそれどういう意味!?」

 

 今朝のようなやり取りに、一眞は口元が緩む。すると曜は「賛成ってことだよね!」と言って一眞も引き込んだ。

 

「曜、お前……。遠慮がねえな、ほんと」

 

 すると4人からは、自然と笑いが込み上げてくるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

 翌日の沼津某所。人通りの少ない道を行く青年の姿がそこにはあった。所々ボロボロになった衣服。足を引きずり、壁伝いに歩く姿。そして乱れた髪からは、以前の余裕そうな表情は見られない。

 

「ははっ……ここまでドジっちゃうとはね……」

 

 壁にもたれ掛かり座りこんだ青年。その口からは、乾いた笑みが零れるのみ。負傷し、身体を動かすのもやっとだと言った感じだ。

 

「はあ……逃げきれるか不安になってきたなこれは……」

 

 気を抜いた瞬間に襲てくる痛みに顔を顰める。

 

 彼は以前オーブに敗北したアオボシ。しかし今は体のダメージからか変身することはできない。そして……

 

「もう来たか……くっ……!」

 

 彼は逃げているようだ。アオボシが立ち去った後に現れたのは────

 

「どこに行ったんだあの忌々しい男は! 死ぬときぐらい大人しくしていろよ……!」

 

 黒い肌に赤い水晶が浮き出ている顔、赤い突起物のある白い体……ナックル星人。

 

 オーブの抹殺に悉く失敗したアオボシは粛清対象となっているのだ。しかし彼が易々とその魂を差し出すわけもなく、命からがら逃亡しているのが現状。

 

 そしてそんな彼を追うのは、惑星侵略連合に身を置いていたナックル星人。彼のいない間に壊滅してしまった侵略連合の敵を討つため、そしてすべての事が狂った元凶ともいえるアオボシを殺すため、この任務に志願したのだった。

 

「はあ……はあ……はあ……くっ、痛むな……」

 

 このように逃げて何日目なのか、もうわからない。いつ殺されてもおかしくない状況で、頼れるものは誰もいない。その前に、頼るなんて選択肢はないが。

 

「……フッ」

 

 偶然なのだろうか。今の状況はまるで()()()のようだった。どうでもいいと思ったはずの過去なのに、今思い出すと自然と笑えてしまう。隣にはあいつがいて、しょうもない理想論に頭を痛めていた気がする。

 

 

 その時─────

 

 

 靴と地面の擦れる音が響き渡る。遂に見つかってしまったのかと、アオボシは警戒の目を向ける。

 

 しかし、そこにいたのは白い体の宇宙人ではなかった。

 

「あなた……!」

 

「君は……確か」

 

 疲れているせいか、目の前の人物の姿がやけに眩しく感じる。金髪を揺らして驚愕の表情を浮かべる人物を、アオボシは以前見たことがあった。いつの日だったか、ステージで輝くように踊っていた彼女。Aqoursの一員で、名前は────

 

「……小原鞠莉、だっけ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「で、どうしたんだよ。話があるって」

 

「一眞さんに見て欲しいものがあるずら」

 

 その頃、一眞は花丸に呼ばれて彼女の家に足を運んでいたのだった。花丸はそれだけを伝えると、何かを取りに敷地内にある倉に入っていった。そして待つこと数秒。彼女は古そうな布に覆われた箱を持って、一眞のもとに戻ってきた。

 

「なんだ、それ?」

 

「大掃除をしていたら見つけたずら。それでおばあちゃんに聞いたら、これはずっとこの家で補完してきたものだって」

 

 布を丁寧に捲っていくと、あったのは2つの大きな木箱が重なって包まれていた。

 

「花丸……これって……!」

 

「太平風土記ずら」

 

 木箱にあったものの1つ。それはなんと太平風土記だったのだ。

 

「これ、原本か?」

 

「そこまではわからないずら」

 

 中身を見てみると、ネットにアップされている太平風土記と全く同じ描かれ方をしていた。

 

「花丸、とんでもねえもん持ってたんだな」

 

「マル、ずっと引っ掛かって事があって前に善子ちゃんが『偽りの光球』って言ってたことがあったずら」

 

 そうして花丸は、太平風土記のある部分を開いた。

 

「偽りの日輪……」

 

「多分、マルも小さいころに見ていたんだと思う」

 

「成程ね……」

 

 魔王獣や紅蓮鬼など過去に戦ったことのある存在などが描かれているが、どうにも恐ろしくその先を読もうとは思わなかった。

 

「そうだ。それで、もう1つの方は?」

 

「ああ、そうだったずら!」

 

 彼女が歴史書を箱に戻し、もう1つの箱を開ける。中に入っていたのは

 

「種か?」

 

「種……ずら」

 

 植物の種子のようだ。しかし彼らがよく見る種子とはかけ離れており、掌からはみ出てしまうくらいの大きさがあったのだ。

 

「でも、どうして一緒に入ってたずら?」

 

「さあな。でも一緒にあったってことは、なにか大事な意味があるのかもしれない」

 

「大事な意味……ずらか……」

 

 様々なことが記された歴史書と、謎の種子。その存在に、2人は頭を悩ますのだった。




もう忘れ去られたであろう侵略連合。そしてナックル星人の登場でした。彼は第16話、第17話に出てます。まじでチョイ役ですが。

そして最後にとんでもないことをしてしましたね。まあ寺の子だしいいかなって……ちなみに「偽りの光球」の下りは第11話をご覧ください。

そして謎の種子……いったい何なんでしょうかね。花丸と一眞は箱の中を見ただけですので、種には触ってないです。
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