「もう鞠莉ったら遅いな~」
沼津の某所で待ち合わせをしていた果南はふと、いつまでたっても来ない幼馴染への不満を呟いた。
「以前にも何度か遅れてきたりもしますが……今回はちょっと遅れすぎな気もしますわね」
果南と同じく待ち合わせをしていたダイヤは怒るどころか、いつもより遅いことを不審に感じていた。
「なにやってんの、あのお嬢様は!」
どうにも落ち着いていられない果南は、鞠莉の携帯へと連絡を入れるのだった。
果南が電話を入れる少し前……。
「あ~だからDon't moveだって! 包帯が巻けないでしょ」
「さっきも言ったが、手当は必要ないって……おいっ! はあ……聞いてない」
なんとアオボシへ応急処置をしていたのだった。傷だらけの彼を見つけた鞠莉はすぐさま場所を変え、包帯や消毒液など買ってきたのだった。そして嫌がるアオボシの声を無視し、包帯を巻いているというわけだ。
「はい。これでさっきよりはマシになった筈よ」
「……」
アオボシの不貞腐れたかのような表情からも、痛みはだいぶ軽減されたことがわかる。
「………ありがとう」
そんな素直になりきれないアオボシの礼に、鞠莉は頬を緩ます。だがアオボシにとってはそれが嫌だったのだのだろう。話すことで気を紛らわそうと口を動かす。
「けど意外だね。まさかお嬢様がここまでできるなんて」
「あなた、私のどこまで知っているのよ」
「ふっ、さあね?」
そこまで認識していないかと思った彼の口から出た言葉に鞠莉は聞き返すも、あっさりと受け流されてしまう。
「マリーのプライベートを語るなんて、デリカシーがNothingデース!」
「……は?」
いつもやり取りをしているAqoursたちならともかく、ほぼ初対面のアオボシは彼女のテンションに困惑したことだろう。しかし、彼女のお陰で出会った直後よりも接しやすい雰囲気になっている。
「まあいいわ。私だってスクールアイドルよ。これくらいできなくちゃ」
「……ありがたいことだけど、なんで僕を助けた。僕が君たちにやったこと……忘れた訳じゃないだろ?」
しかし、アオボシにはどうしても納得いかなかった。オーブに怪獣を嗾け、間接的にとはいえ彼女たちを危険な状況に追い込んだのだ。彼女たちから見れば、自分が憎むべき敵であることは間違いない。なのに……。
「怪我人をそのまま放っておけるわけないでしょ。それが例えあなたでも。それに見つけたのが果南やダイヤでも、同じ選択をしていたと思う」
「ふっ……君は随分と友達を信頼しているんだね。なにもかもお見通しって感じだ」
見返りも求めず、敵を助ける……。そのお人好しはあの男に匹敵するだろう。だがそれを口にするのは野暮というものだ。だから友人の話を持ち出してみたのだ。半分嫌味っぽく。
「果南とダイヤにはいろんなことを教わったのよ? そんな2人とはいつも以心伝心デース! ……ってのは嘘。お見通しなんかじゃないよ。それどころか、何もわかってなかった」
「……どういう意味だ?」
先のテンションから一変。そんなことは無いと語る鞠莉へ、気になったアオボシは尋ねた。
「私と果南、ダイヤの間でね……すれ違いがあったの。それで2年間もわだかまりが続いちゃって。果南もダイヤも、私にずっと伝えてくれていたのに……気付こうともしなかった」
「友情なんて所詮はそんなものさ」
半分バカにしたような言い方で吐き捨てるアオボシ。そんな彼に鞠莉は、苛立ちを含んだ声で尋ねる。恐らく、果南やダイヤの友情を”そんなもの”と軽々しく語ったのがいけなかったのだろう。
「そういえば、あなたも一眞と因縁があるわよね? どうやら知り合いだと思うけど、もしかしてあなたもそういった友情絡みかしら?」
「……さっきの言葉は撤回させてくれ」
流石に不味いと思ったのか、両手を挙げて謝るアオボシ。そしてその後、自分と彼の因縁を話し出した。
「過去に何があったにせよ、僕はただシリウスを負かしたい。その一点だけだったんだよ。精神的でも肉体的でもいい。アイツが苦しみ、倒れる姿を見たい……それだけだったのさ。けど、それも散々失敗してこの様……。今は追われる身で、頼るべき人も、帰るべき場所もない。ただの孤独な宇宙人さ」
今までのことを振り返り噛みしめるように……そして自虐的に笑いながらも語るアオボシ。それを聞いた鞠莉に何かアドバイスができる訳でもなかったが、それでも口を開こうとしたとき────
「見つけたぞ! 逃げ回ってる最中に女を捕まえるとは、いい根性してるじゃないか~?」
ナックル星人がその場に踏み込んできた。
「不味い……逃げるわよ!」
「あ、おい!?」
鞠莉はアオボシの手を引っ張り、その場から逃げ出した。
「アイツは僕を狙ってる。だったらわかるだろ?」
「いいえ、私はあなたを見捨てない!」
「バカか君は? いいやバカだ。お人好ってのにも限度がある。君のそれはシリウス並みだ!!」
アオボシを置いて1人で逃げればいいのに、危険を冒してまで一緒に逃げようとする鞠莉に、彼は声を上げた。
「何言ってるのよ! 私だってここで見捨てたら、絶対後悔する。そんなのはしたくないの! っていうかあなた幾つよ?」
「シリウスと同い年。17だ!!」
「だったら私の方が年上よ! 先輩で理事長な私に向かって何言ってるのよ!?」
「知るかぁぁぁぁぁ!!」
途中から全然関係のないやり取りを始める2人。しかしこれは緊急時かつ予想外の行動を互いにとっていることで頭が回っておらず、勢いに任せて話してしまっているが故なのだ。
そんな緊急時、ポケットの中で陽気な音楽が流れ始める。
「もうこんな時に……って果南!?」
それは鞠莉の携帯。そして相手は待ち合わせ場所に来ないと電話をかけてきた果南だった。
『ちょっと鞠莉! なにやって────「今は詳しく話せないの!」
『え、どういうこと? それになんだか……』
「待ちやがれ!」
「ああ、一眞に伝えておいて! 場所は……」
そこまで言い掛けたところで、追い駆けてきたナックル星人の持つブラスターの銃声が響いたのだった。
「太平風土記に謎の種子……いったい何のために……」
花丸宅からの帰り道、一眞は1人でうんうんと唸っていた。彼女の家から見つかった風土記と種子が何を意味するのか、花丸と考えても思い当たる節も意味も分からなかったのだ。しかし理由が無ければ一緒に置くことは無い。であれば……と、永遠と同じところを行ったり来たりするだけで一向に答えらしいものにたどり着かなかったのだ。
「ヒカリさんとか知ってそうだよな~」
ここにいない人物を頼りにしても仕方がないと頭では理解しつつも、そんなことを呟いてしまう。
空をぼんやりと見上げながら歩いていると、一眞の携帯に着信が入る。
「は~い、今は頭があまり回ってない一眞で~す」
『カズ! 大変なの!!』
果南の緊迫した雰囲気を電話越しから感じた一眞は、さっきまでのお茶らけた雰囲気から一変。真剣な面持ちで話を聞く。
「……な!? 鞠莉さんが!? 場所は!」
電話を切った一眞はすぐさま走り出す。しかしその速度は、人間の限界を遥かに超えたものだった。
~~
ブラスターの発砲音に、鞠莉は思わず目を閉じていた。しかし数秒立っても自分を襲ってくるであろう衝撃や激痛と言ったものは、全く感じられなかった。
恐る恐る目を開けると
「ほう……」
アオボシが黒い剣を携えて鞠莉の前に立っていたのだ。彼の構えから、恐らく剣で銃弾を弾いたのだろう。
「あなた……」
「……」
背後にいる鞠莉に答えることは無い。それどころかアオボシ自身、かなり動揺しているように感じた。信じられないとでも言いたいのか、目を見開き、口をパクパクさせていたのだから。
「お前のような男が小娘を助けるとはな……。逆に絆されちまったか?」
「……ぼ、僕はただ……関係のない彼女が巻き込まれて、後でご友人たちにアレコレ言われるのが嫌なだけさ……」
「何を今更。お前が散々やってきたことだろ」
あいつに言われるのは癪だったが、ナックル星人の言う通りだった。これまで何度も巻き込んで、今更アレコレ言われるのが嫌だなんて虫が良すぎる。でもこれは、咄嗟に”助ける”だなんていう行動をとってしまったアオボシが、精一杯自分に言い訳をしているようにも受け取れた。
「死に際に善行でも積みたくなったか? フフフッ……だが、どうあれお前はここで終りだ」
ナックル星人は再度ブラスターを構える。しかしアオボシは傷が痛むのか、構えていた腕を下ろしてしまった。万事休すかと、2人は唇を噛むことしかできなかった。
「見つけたぁぁぁぁぁぁ!!」
聞き覚えのある声と共に、黒い塊がナックル星人へ突っ込んでく。そして速度を最大限に生かしたタックルを食らい、ナックル星人は後方へと吹き飛んでいった。
「間に合った……ったく、ウルトラマンと同化してる奴の脚舐めんな」
「一眞!?」
その正体は一眞だった。黒い塊に見えたのは、速すぎて輪郭をキッチリと捉えることができなかったからだ。
鞠莉の声に反応し「無事でしたか」という声と共に振り返るも、鞠莉の前に立っていた人物に対し彼は驚愕の声をあげた。
「おま……どうしてこんなところに!? っていうか、生きてたんだな」
敵意むき出しの一眞に対し、アオボシはうんざりとした表情とともに「おかげさまでね」と返す。
「一眞、彼は私を守ってくれたの」
鞠莉から語られる信じがたい内容に、一眞は言葉を失う。かつては仲間同士であったが、最近の行動を見せられては怪しんでしまうのも無理はない。しかし鞠莉の表情や声音からは、揶揄っているとか、脅されたから言っているとか、そういった類のものは感じなかった。
「信じなくてもいいけど、どうやら僕は小原鞠莉を助けちゃったみたいだ」
「あなた馴れ馴れしいわよ。ちゃんと先輩は敬いなさい! あ、もしかして嫌だ? だったらマリーでもいいわよ!」
「あ、あのなぁ……」
緊張感から解放されたのか、鞠莉はアオボシのことを揶揄った。的にされているアオボシは、普段からは想像できないような弄ばれっぷりだった。その光景から、彼が鞠莉を助けてくれたのだと一眞は確信。彼のもとへと歩いていく。
「お前のやってきたことを許すつもりはねえし、許そうとも思わねえ。けど、鞠莉を助けくれたのは本当みたいだしな……。その部分だけは感謝しとく。ありがとう」
「僕は助けたくて助けたんじゃないさ。ただ、身体が勝手に……」
「お前……」
アオボシのそれは、どうしても”自分が助けた”という事実を否定したそうに聞こえた。一眞はより話を聞こうと口を開こうとした瞬間────
「無視してんじゃねえ!!」
ナックル星人が回復。怒号と共に戻ってきた。
「オイオイ……まさか粛清のために追いかけてきたら、まさかオーブまでノコノコやって来るとはな。こりゃ幸運にでも恵まれてるかもな」
「どういう意味だ」
ナックル星人を捉え、鞠莉を守るようにして一眞は立った。すると、横のアオボシが状況を説明してくれた。
「僕は今やお尋ね者って意味だよ。そしてアイツはナックル星人。惑星侵略連合に身を置いていた1人。つまるところ、君を殺すことで仇を撃ちたいってことだろ」
「さらっと何言ってんだよ。お前、逃げてきたのか?」
「ああ。お前を殺し損ねたからいらないんだってさ」
2人だけで会話が始まってしまったところに、再度ナックル星人が介入する。
「その通りだアオボシ! もとはと言えば、貴様が変に引っ掻き回したのが原因だった。あの黒き王のカード。貴様が大魔王獣復活のために持ち出した後、オーブに奪われてしまったではないか。そして我らの長もオーブに倒され、侵略連合は壊滅……引き金となったのは貴様だ!!」
「お前なぁ……」
冷ややかな目を向ける一眞に、アオボシは悪びれる様子などなかった。
「反省しなさいよ!」
するとアオボシは後ろの鞠莉に怒られる。当たり前だ。
「うぅぅ……なんなんだお前らは! 何でもいい、まとめてぶっ殺してやる!」
そう言ってヤツが取り出したのは黒い卵。その中からは怪しい光が漏れている。
「我々の復讐を果たすぞ! さあ、目覚めろブラックキングッ!!」
眩い閃光とともに、ナックル星人が巨大化していく。さらに卵も巨大化。黒いボディと金色の角を持った怪獣が顕現する。
用心棒怪獣ブラックキング。ナックル星人の使役する怪獣だ。
沼津の街中に現れた宇宙人と怪獣によって、市民は大パニックだ。その悲鳴やサイレンが耳へと入ってきながらも、3人は離れた場所まで退避してきていた。
「果南やダイヤさんも避難したそうです」
「そう。ならよかった」
「じゃあ俺は……」
「気を付けて」
友人が避難したことに安堵するが、一眞の言葉の意味を察した鞠莉はもう一度表情を引き締める。一眞は去り際にアオボシへ目を向ける。それは手を出すなという警告か、それとも……。
「オーブシャドウになれるほど、コイツに力は残ってないよ。……誰かさんのせいでね」
オーブリングNEOをひらひらと振りながら語った。確かに、その輪に光が宿っている様子はない。
「鞠莉さんにも、だ」
「わかってる。早く行け」
一眞は目の前で暴れている2体を見据え、駆け出していくのだった。
街を破壊し、さらに闊歩するブラックキングと巨大化したナックル星人。それもこれも、侵略連合を壊滅させたオーブへの復讐なのだろう。彼の守りたいものを破壊し、精神的にも追い詰めたいのだろう。
するときらりと光る輝きと共に、オーブの蹴りがブラックキングに炸裂する。
「そこまでだ、ナックル星人!」
土煙の中から立ち上がり、ハリケーンスラッシュは構えをとった。
「来たかオーブ。侵略連合の仇……取らせてもらうぞぉぉぉぉ!!」
ほぼ同時に地面を蹴った3体。オーブスラッガーランスを生成し、エメラルド色の軌跡が宙に描かれる。ブラックキングの皮膚から火花が散り、ナックル星人は突きを受けて後退する。
「■■■ーー!」
ブラックキングは口からマグマ光線”ヘルマグマ”を放つ。跳躍してオーブは回避するものの、今度はナックル星人の取り出したブラスターが火を吹く。
「……ッ!」
オーブはランスを回転させて銃弾の雨を防ぐ。周辺には弾いた弾丸が降り注ぎ、炎を上げる。素早く光刃を飛ばし銃撃を止めさせるも、ブラックキングの尻尾が彼の胸元を直撃。大きく吹き飛び、そのまま地面に叩きつけられてしまう。
「ああ……。うおっ!?」
起き上がれないオーブは2体の接近を許してしまう。ブラックキングの羽交い絞めからの、ナックル星人による殴打の連発。最後にはブラックキングによって宙へ放り投げられて地面を転がる。
「くっ……ううっ……」
起き上がろうとするも先のダメージで体が動かない。カラータイマーの点滅も始まる。さらに、ナックル星人の銃口が自分に向けられているではないか。
動くことのできない中、ナックル星人の声が響く。
「奇しくも、同じ夕日とは……なかなかに感慨深いと思わないか? オーブ」
「何の話だ……」
「我々は、ウルトラ族との戦いを長年繰り返してきた。決まって負けるのは我々。立っているのは夕映えの戦士……」
暗殺宇宙人とも呼ばれ、残忍な本能を持つ戦闘種族であるナックル星人。彼らの一族ははるか昔からウルトラ族との戦いを繰り返してきたという。一度は敗北に追いやったこともあるが、復活し倒されてしまった。そうやって長きにわたる両者の因縁のことを彼は言っているのだろう。
「侵略連合の仇もとれて、負け続けた一族に新たな歴史を刻める……一石二鳥だ。それをこんな夕日のもとにできるなんて思わなくてよぉ……」
ナックル星人は引き金を引こうとするも、彼の長話のお陰で動けるようになったオーブの起こす突風で阻止されてしまう。さらに突風で舞い上がった砂埃により、2体の視界は奪われてしまった。
「お前らの一族がどうとか知らねえし……っていうか第一に、まだ俺が負けるなんて決まってねえ!」
彼はそんな言葉と共に跳躍。2体の包囲を抜け出した。
「おのれぇぇぇぇぇぇ!!!」
「■■■■■ッーーー!!!」
激昂と共に放たれるヘルマグマとブラスターの銃弾を潜り抜け、オーブスラッガーショットを放つ。ナックル星人には躱されてしまうが、ブラックキングの肉体を切り裂くことはできた。
彼らの側面に滑り込み、右手に左手を添えた構えで光線を放つ。
「ウルトラスラッシュショット!」
ブラックキングへと着弾。怒りの声を上げ再度ヘルマグマを放ってくるが、オーブランサーシュートで相殺する。
「次はこれだ!」
オーブのカラータイマーから光が溢れる。そして真紅の体を持つバーンマイトへと姿を変え突進。
「ぶっ飛べ!」
ブラックキングの攻撃を避け、カウンター気味に左拳を腹部へ打ち込んだ。そして同時に拳からダイナマイトの如くエネルギーが放たれる。パンチの衝撃とゼロ距離の爆発……その二重のインパクトによって、ブラックキングは地面に倒れこんだ。
「……ストビュームダイナマイト!」
そのまま炎を纏った体当たりを放つことで、ブラックキングは爆散した。
「この野郎ォォォ!!」
相棒を失った事への怒りに身を任せ、ブラスターを連射するナックル星人。だが、撃ちまくった場所には既に彼の姿はない。
「どこに行きやがった……」
「こっちだ!」
その声の方向……頭上に目を向けると、急降下しながら燃える拳を突き出したオーブの姿が。
「ゴアアッ!?」
一瞬だけナックル星人の顔が凹み、その勢いで地面に沈んでいく。
そしてオーブは青い光に包まれながら地面に着地。光が収まれば、その姿はナイトリキデイターへと変化していた。
「コロコロと姿を変えやがって!」
怒号と共に放たれる銃弾。しかしオーブは華麗に避けていき、両腕のアグルナイトブレードを展開。ナックル星人の元へ一直線に駆けていく。
「ハアッ!」
肉薄したオーブにナックル星人の近接攻撃が迫るも、彼は腕を払いのけて胴を薙ぐ。さらに迫りくる蹴りを腕で防ぎ、逆にこちらから蹴りを打ち込む。そしてトドメと言わんばかりの袈裟斬りが、白い体を見事に捉えた。
「こ、ここで……負けるわけにはぁぁぁぁぁ!!」
「……!」
手負いのナックル星人はそれでも足掻いた。一族の因縁のため、そして仇のため。ブラスターを向けてオーブを牽制。
両者は睨み合った。背景の夕日が、2体をオレンジ色に染め上げる。
ナックル星人は引き金に指をかける。対するオーブは腰を深く落とし剣を構えた。するとオーブの意思に反応してなのか、身体中を蒼い雷が駆け巡っていく。
「ハアアアア……」
「死ね!」
銃弾が放たれる。しかし聞こえてくるのは着弾した際の爆発音。そして爆発の中から見えたのは、宙に舞い上がる砂塵。ナックル星人の目の前に、既にオーブの姿はいなかったのだ。
「なっ!?」
「……悪いな」
その声は背後から聞こえた。背筋が凍る……というより全身から熱が奪われ、五感が徐々に遠のいていく感覚だった。そして決定的だったのは己の影。地面に目を落とすと、自分の影に刻まれたX字の跡。それはつまり……
「お前を斬った」
オーブは雷の如く神速で相手を斬り裂く技”ブリッツナイトリキデイター”でナックル星人を討ち取っていたのだ。
自分が斬られたのだと自覚すれば、徐々に意識が朦朧としてくる。
「ああ……この夕日も……いずれ……呑まれてしまうのか……」
それだけを言い残し、ナックル星人は地面に倒れ大爆発を起こした。
────爆発の煙が風に運ばれていく。そんな場所に佇むオーブの姿を、夕日はいつまでも照らしていた。
~~
2体が倒されウルトラマンが去った後、すぐさま工事の音やサイレンが響いてくる。そんな今となっては当たり前になりかけている景色を見ながら、アオボシは歩き出そうとする。しかし彼の声がそれを止めた。
「はあ……はあ……鞠莉さんに場所聞いて来たんだ」
「何の用だ?」
少しの沈黙の後、一眞は尋ねた。「……これからどうするんだ?」と。
「……なんだい急に。そもそも、君が気にすることかい?」
それは尋ねた一眞自身も不思議に思っていたことだった。以前まで敵対していたはずなのに、今は彼のことを気にかけてしまう……ということを。
「まあいいさ。今の僕にとって、君が勝とうと、アルファルドが勝とうと……正直どっちでもよくなった。だから僕はこれから、君たちの行く末を見届けることにしようと思う」
それだけを言い残した彼は、一眞の制止も聞かずに歩き始める。
「あ、それじゃあ……僕と君の仲だし、これだけは教えてやる」
ふと立ち止まったアオボシは、振り返って一眞に告げた。
「もうすぐ、災厄の卵が孵る。そしてそいつは、アルファルドの傀儡にされる」
「どういうことだ……?」
「残念だけど、もう孵るまで止められない。傀儡になる手筈もね。……もう、既に僕がやってしまったから」
それだけを言い残したアオボシは、今度こそ止まることなく去って行ってしまった。
ラブライブ決勝と同じように、”その日”も着実と近づいてきているのだった。
~~
その夜、鞠莉はみんなに”星を探しにいこう”と誘った。一体どこで? という疑問は十千万に集まった誰もが抱き、そして予想外の答えに驚かされた。
「鞠莉ちゃんの車!?」
「Yes! イタリアに行ってから必要になるから」
留学すれば必要になるだろうと、鞠莉は免許をとっていたのだ。そしてAqours9人を乗せたワーゲンバスは走り出した。因みに、他2人は用事があるとかで行けないのだとか。
車を走らせていく中、窓から見えるのは夜の内浦。暗い中に輝く船や、その光を反射している海の景色はとても幻想的だった。
「綺麗ね……」
「考えてみたら、こんな風に何も決めないで9人で遊びに行くなんて初めてかも」
今までにない非日常感に心を躍らせる一同。
さらに車を走らせ、ある峠道を登っていく。そしてたどり着いたのはとある駐車場。そこでは海や空を一望できるような場所になっているのだった。そして何よりも空がとても近い。手を伸ばせば、それこそ雲を掴めるくらいに。
だが天気は生憎の雨。星々を拝むことはできそうもないくらい、厚い雲に覆われていたのだった。
「何をお祈りするつもりだった?」
「決まってるよ」
「ずっと一緒にいられますように?」
「これから離ればなれになるのに?」
卒業後はそれぞれ別の道に進んでいく。それがわかっているのにも関わらず願うのかと、果南とダイヤは尋ねたのだった。しかし鞠莉は「だからこそお祈りしておくの」と答える。いつかまた必ず、一緒になれるようにと。
「……でも、無理なのかな?」
涙が溢れそうな眼で、鞠莉は空を見る。
いつもそうだ。幼い時、家から抜け出して3人で流れ星を見に行った。しかしそれは叶わず、冷たい雫だけが自分たちを待っていた。
そして今。自分達だけの星は探させないと、空は嗤っているのだろうか。
「なれるよ!」
沈黙を破ったのは千歌。そして、鞠莉が大事そうに抱えてた早見盤を持って外へ飛び出す。
「絶対一緒になれるって信じてる! この雨だって、全部流れ落ちたら必ず星が見えるよ。だから晴れるまで……もっと、もっと遊ぼう!」
早見盤を天高く上げて、千歌は言い切る。星に手を伸ばしてもまだ見えない、届かないのなら、晴れるまで遊ぶのだと。
千歌以外の皆も
すると
「おーーーい!」
千歌達に向けられる少女の声が聞こえた。聞き覚えのある声に、全員が視線をあちこちに移す。そして声の主は
「珠冬ちゃん……ええ!?」
「ここにいたんだね。まったく探すのに苦労したよ~」
誰もが珠冬の乗っている場所に驚愕した。彼女はなんと、
彼女たちの前に、ふわりと着地したオーブオリジン。そして彼は両手を地面に置く。
「これは……?」
「一眞が、今日はサービスだって!」
もう一度上へ視線を向けると、オーブは頷く。そして────
『うわぁぁぁ~~……!!』
全員を乗せ、空を飛翔するオーブ。彼女たちが落ちないように、そして高度のアレコレを考慮して、球体状のバリアの中に入ってもらっている。
雲の中を突っ切った先にあったのは、満天の星空だった。先ほどよりもより星との距離が近くなったこと、そしてまるで自分が鳥になったかのような感覚に、誰もが感激していた。
「あ、あれ!!」
誰かが呟く。その先には、黒い空を駆け抜けていく流れ星が。その幾つもの星の雨は、まるで彼女たちを祝福するかのよう。
手を合わせ、各々は星に願いを届けていく。
(────見つかりますように。輝きが、私たちだけの輝きが……見つかりますように)
さて今回の解説です。
今回出したナイトリキデイターの新技”ブリッツナイトリキデイター”超全集に名だけ載っている技です。ドイツ語でのブリッツが電撃戦とか稲光とかの意味があるようなので、透明になって奇襲する方がいいのかなと思いましたが、稲光からとって一撃必殺の斬撃技にしました。
アオボシの持っていた黒い剣のイメージですが、ヒーローズEXPO2017でガイさんが使用したオーブカリバーの長剣形態の黒バージョンを想像していただければ。
そして彼が去り際に言ったのは当然、アレです。また傀儡ってのは前回の種と関係あったり……?
ではまた次回で!