虹ヶ咲2期おめでとうございます!! 私は声出して喜びました。
「そそ、そっち気を付けて!」
「こっちはOK、固定して」
朝から騒がしいくらいの作業の音。そして生徒たちの声。校庭や校舎からも掛け声や、杭を打ち付ける甲高い金属音が聞こえてくる。
それは校門で作業をしている3人も同じだった。
「できた!」
「立派ね」
「うん。今までの感謝をこめて、盛大に盛り上がろうよ!」
彼女たちが立てた手作りの門には”閉校祭”と書かれていた。
「そう言えば一眞くんは?」
梨子は思い出したかのように、少年の名前を口にする。
「確か他の出しものの手伝いに行くって言ってたかな」
「学校の中じゃ数少ない男手だしね!」
「そうなんだ」
どうやら一眞は他の場所を手伝っているらしい。どうせ彼のことだ。頼まれたら二つ返事で応じたのだろうと梨子は笑う。
閉校祭を開催することになったのは、最後は卒業生や近所の人たち、みんなで盛り上がるイベントをやりたいというのを理事長に提案したことが始まりだった。「3学期のこんな時期に」と思うかもしれないが、他の生徒も最後だしとやりたいと声をあげてくれたのだ。
「それじゃアーチの設置が終わったこと、鞠莉ちゃんに報告しに行こう」
そうして3人は駆け足で鞠莉がいるスクールアイドル部部室へと向かった。順調そうに見えて、実はかなり遅れている。開催は明日なのだが、このままでは夜までに帰れそうもない。でも、それでも彼女たちは構わないだろう。こうして準備している時間も、楽しんでいるのだから。
「いや~ありがとね一眞さん!」
「僕たちの部にも駆け付けてくれて!」
「駆け付けてない。ってかお前らが勝手に引っ張ってきただけだろ」
腕を組み、いかにも面倒だといわんばかりの顔で対応している一眞。とはいえ、彼も内心楽しんではいる。しかし、彼らにバレると茶化されたり揶揄われるなどされて鬱陶しいから本心は明かさないが。
「そんなこと言って、積極的に手伝ってくれたじゃないっすか」
「お前らがやるべきとこだぞ」
「まあいいじゃん」
なんとも調子のいい奴らだと、一眞はため息を吐く。彼らは同じクラスの松戸と、1年生の早見だ。彼ら2人とあともう1人、3年生の先輩で部を結成しているのだが、その実態は新聞部なのかオカ研なのかよくわからない状態だ。ここに至って、ダイヤは何も言わなかったのかと思いたくなる。
「で、何を飾るんだっけ?」
彼らはこれまでの活動の成果を展示するという内容で閉校祭の準備を進めているらしい。一眞が尋ねると「やっぱ気になってるんじゃないっすか~!」と早見に肘でつつかれる。さらに松戸も、待ってましたといわんばかりに誇らし気に話をはじめる。
「僕はこの小型気象観測装置かな。うまく作動すれば、竜巻を追跡できる。まあ、僕の発明品が作動しないわけないけど」
「それはやっぱり俺がこれまでに撮ってきた動画ですよ! 最後の最後だし、ここで出してあげなくちゃ」
楽しそうに語る彼らを見て、一眞は「そっか」とだけ呟く。
その後もなんやかんや楽しく作業していると、彼らのいる部室の中にもう1人少女が入ってきた。
「もう遅いっすよ!」
「いままで何やってたんですか?」
「ごめんごめん。私たちの教室の方に力入れちゃってて……」
申し訳なさそうに入ってくるのは3年の先輩。この部の部長でもある。
「あ、そうだった。一眞くんはそろそろ自分の担当に戻って大丈夫だから! ごめんね、この2人が迷惑かけて」
「いいえ、俺も好きで手伝ったわけですから」
一眞の言葉に、聞いていた2人は悪びれる様子もなくコクコクと頷く。しかし、彼らも手伝ってくれたことには感謝の言葉を口にしてくれていたし、自分も楽しかったのでチャラだ。
「じゃあ俺はこれで」
そうして一眞は部室を後にしたのだった。
「そう言えばさっきうちっちーを見かけましたけど、一体何なんでしょうかね?」
「まさか、デカいス────「な訳ないでしょ! それよりほら、残りの準備も終わらしちゃうよ!」
~~
「千歌ーって、あれ? いない……」
一眞は千歌たちの担当する教室に向かったのだが、そこには彼女はおろか、一緒に担当している梨子の姿もなかった。
「千歌ちゃんたちならさっき出ていったけど……」
「え? そっか、ありがとな」
すると同じ教室の生徒が、少し前に教室から出ていったという事を教えてくれた。理由は何でも
なんで追いかけたのかと疑問に思いながら階段を降りていくと、これまた何故か準備室前にいる善子やルビィ、珠冬を見つけてしまい、一眞は話し掛ける。
「おい、何やってんだ?」
「ひいっ!?」
「ピギッ!?」
声をかけただけで驚かれたことに若干ショックを受ける。当の本人たちは一眞だと分かった瞬間に胸を撫で下ろし「ビックリさせないでよ」と小言を言いながら、これまでのあらましを説明してくれた。
「お化け……?」
「そうよ。こ、この中に入っていくのを見たんだから!」
「今千歌さんたちが中で探してるんだけど……」
うちっちーは曜じゃないかと思った千歌たちはそれを追いかけたのだが見失ってしまったらしい。そして今度は白い布を被った
おい、うちっちーを探しに行った話はどうなっているんだ? というツッコミは置いておくとし、扉の窓から準備室の中を見る。するとルビィの言う通り、千歌や梨子、花丸が中で探し回っているようだった。
「一眞も千歌たちに加勢した方がいいんじゃない? ほら、ヨハネにはない光の勢力の力を持っているわけだし……?」
「そりゃ否定しないけど、お化けには堕天使の力の方が────「私はここで結界を張ってみんなを守らないといけないの!」
食い気味に善子は自分の役割を話し始めたので、一眞は確信する。ビビッてるな、と。堕天使云々を言ったのも揶揄うためだ。
「ビビッてるの? 堕天使が?」
「うっさい! じゃあ珠冬が入ればいいじゃない!」
「無理無理無理!」
珠冬くらい正直な方がいいなとも思うが、確かに堕天使が怖がりはアウトな気もするため黙っておく。
「わかったわかった。ヨハネの願いに従って見てくるよ。結界の方はよろしく~」
「だから善子よ! あ……」
そうして一眞はドアを開くのだったが、彼らが見たのは既に千歌が白い布を取っ払っているところだった。千歌たちが見たものとは……
「なんだ、しいたけちゃんか……え?」
「お化けな訳ないじゃない」
いやそれ以前におかしいだろと声をあげようとする。しかし準備室に入らなかった3人の後ろにうちっちーが2人立っており、それのせいで3人の声が校舎内に響いてしまったため、それどころではなくなった。
さらにしいたけが校舎内で暴走。挙句の果てにはアーチを倒して逃走という笑えもしない事態を引き起こしてしまったのだった。
結局、閉校祭の準備は予定通りには終わらなかったが、許可が下りた生徒は夜まで残っていいという事になった。帰りは小原家が送っていくというのだからありがたい。
「はい、お待たせー! 千歌ちゃん家特性みかん鍋!」
教室内では美渡がしいたけを放してしまったお詫びにとみかん鍋を頂いたので、みんなで食べていた。
「結局、その恰好は?」
さらにうちっちーの着ぐるみ身を包んだ果南に、梨子は説明を要求する。元はと言えば、これを追ったのが事の始まりだった。
「曜と2人で、教室に海を再現してみようって」
水族館のマスコットキャラクターでもあるからという理由なのだろう。そして曜の伝手で借りてきたというとこまで見えてきた。
しかしその恰好で校舎や外を歩き回られると更なる混乱の種になりかねない。だから梨子はもう本番までは着て出歩かないでと注意する。
一方一眞はアーチの修繕を行っていた。
普段ならばもう真っ暗だと言うのに、今は各教室の電気が点き、それが一眞のいる場所を照らしてくれていた。夜の中光る浦の星の光景は、なんとも不思議な気分にさせてくれる。
「よし、これで終りっと」
杭を打ち付けた一眞は、これで安心だと息を吐く。それと同時に、時々吹く冷たい空気が彼の頬を撫でる。アーチを修繕させるために働かせた身体を冷ますには丁度良い風だ。
「お疲れ!」
背後から聞こえてきた声に振り返る。するとその声の主である曜は、そのまま彼のもとへと歩いていく。
「千歌ちゃんが呼んでたよ。一緒にみかん鍋食べようって」
「ああ、そうだったな。忘れてた」
つい作業に夢中になってしまって忘れていたと、一眞はにかっと笑う。すると曜も、彼につられて口元が緩んでしまうのだった。
そろそろ戻ろうかと踵を返しかけたところで、曜はふと、校門近くに置かれていた箱に目を移す。
「これ……」
そう。忘れもしない、千歌がスクールアイドル部勧誘の時に立っていた箱だ。思い返せば、あそこからすべてが始まった。
「懐かしいな」
「そうだね。それに全員じゃないけど、既にこの場所で会ってたんだよね」
運命が存在するとしたら、きっとあの時のことを言うのかもなと思う。そこから随分と遠いところまで来てしまったと感じるのは、自分の思い出補正のせいなのかと一眞は考えていた。
「カズくんはさ……」
彼女は不意に「卒業したらどうするの?」と聞いてくる。恐らく閉校祭や卒業に関連して、聞いてみたくなったのだろう。
「オイオイ、それは決勝が終わるまで考えないんじゃなかったのか?」
「カズくんは別にいいでしょ」
「んだそれ……」
俺は良いのかよと思ったが、実際のところ先のことなどあまり考えたことがなかった。これもいい機会だと一眞は考えをめぐらすも、これといって明確なビジョンがあるわけでも、ましてややりたいことがあるわけでもなかった。
「うーん……わからない。まだ何も決まってない。でも、今はそれでいいかなって」
「そっか」
現状に手一杯だから考える暇もないというのもある。ラブライブに、迫りくる侵略者たち……。しかしそれ以外にも、今は目の前にあることに全力を注ぎたいという想いも同じくらいにあった。
「でもまあ、ラブライブ決勝が終わったら、そん時はゆっくり考えてみるよ」
「見つかったその時は、真っ先に教えてね」
「どうだろうな」
一眞の応答に不満を漏らす曜だったが、暫くして2人は笑い合った。
でもいっその事、こんな瞬間がずっと続けばいいのにとも思ってしまう。叶わぬ夢ではあるのだが、どうしても。
~~
翌日。閉校祭は生徒や地元の人々など、たくさんの人で賑わっていた。
「ここは広くて深ーい、内浦の海!」
果南と曜はうちっちーの着ぐるみに身を包み、園児たちを楽しませていた。教室内を青い光が照らし、彼女たちが言っていた海が再現されていた。
「まだまだラブライブマニアには遠いですわよ!」
ダイヤとルビィは、ラブライブやスクールアイドルに関するクイズを出題していた。クイズに参加している生徒を差し置いてダイヤが正解している様子は、彼女が本当にスクールアイドルが好きなんだという事を感じさせてくれる。
「占いに……」
「興味は……」
「「ないですか……? (ずらか……?)」」
千歌を呼び止めた花丸と珠冬は、死んだ顔でそう尋ねる。尋ねられた本人の千歌も、なんとも言えない状態で困惑していれば
「占いに興味はないずらか!?」
「ええ……」
どうしてもと花丸が手を握って聞いてくる。そんな花丸のお願いに、少々押され気味の千歌。
「千歌さん、どうかここは……!」
「珠冬ちゃんまで……」
手を合わせ、頭を下げる珠冬まで見てしまった千歌は、彼女たちと共にある教室へと向かっていくのだった。
皆が閉校祭を楽しんでいる中、一眞はぶらぶらと校舎や校庭を歩いていた。
様々な出しものを自身の目で捉えていく中で、みんな最後とかは関係なく、”今この時”純粋に楽しんでいるのだと感じていた。
「……」
しかし心のどこかを小さな針が刺してくるように、一眞の感じている後悔、そして無力感は時折顔を覗かせるのだった。
「せっかくみんなが楽しくやってるのに、その顔はなんだい?」
「……っ!? お前、どうしてここに?」
「どうしたんだ。まるで鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をして。そもそも、ここは出入り自由だろ。僕だけ歓迎されないなんて悲しいじゃないか」
驚愕する一眞とは対照的に、背後に立っていたアオボシは楽しそうに笑う。そこには、以前のような邪悪さはあまり感じられなかった。
「そうだけど、でも……」
「シリウスがそう言うのもわかるよ。まあただ単に、楽しそうだから来ただけさ」
裏があるのではと勘ぐってしまうが、今の彼にはそのような感情はないだろう。その証拠に、両手にはたくさんの食べ物を持っている。屋台で買ってきたのだろう。
場所を移動した2人はベンチに腰かけていた。あんなに敵対していたのだがやはり旧友同士、実はそこまで嫌っているわけではないというのが実際のところなのだろう。
「これがシャイ煮……」
物珍しげにシャイ煮を見つめ、口に運ぶアオボシの横で一眞は口を開く。
「なあ……」
「……?」
一眞が考えてきたこと。それはアオボシがどうしてここまで歪んでしまったのか……ということだった。本当のところはよくわからない。でも、原因の1つに自分も含まれているというのはわかる。だって彼が嗾け、戦ってきた目的はオーブの……暁一眞の敗北だったから。そこには、今はない母星での出来事も関係しているはずだ。
「……すまなかった。俺は……お前のことをわかろうともしないで、ただ追い詰めてた」
アオボシが葛藤を抱え、たくさんの悩みを抱えていた筈なのに、気付きもせずに突っ走っていた。それが彼を追い詰め、このようなことになってしまった。原因は自分にもあるのだと、オーブシャドウとの戦いを通じて感じていたのだった。
「何を言ってるんだ。僕は僕で選んだ結果さ。君が謝る必要はないし、むしろ謝らないでくれ。正直気持ち悪い」
「なあ!? そんなこと言うか……」
一眞は肩を落とすが、アオボシもアオボシで何か思うとこはあったのだろう。「半分冗談、半分本気ってとこにしておこう」とフォローを入れた。
「前にも言ったけど、もうそんなことはどうでもいいんだ。自分でもどうしてあそこまで狂っていたのかわからないほどにね」
アオボシは天を仰ぐ。すると何かに気が付いたのか、一眞の腕を肘で突く。
「なんだよ」
「あれを見てみろ」
アオボシと同じ方向に視線を向けると、「浦女ありがとう」と形どった風船が色とりどりの風船と共に空へと昇っていく光景がそこにはあった。みんなの学校への感謝の気持ち、それが羽ばたいていく。そこにはこれまで浦の星へと通っていた者、そして通っている者のすべての気持ちなのだと思わせてくれる。
「……本当にここはいい場所だね。僕みたいなやつが居ていい所じゃない。シリウスやAqours、そしてここに住む人たちがいるべき場所だよ、ここは」
「なんだよ……らしくない」
「フフッ、うるさい。……さて、邪魔者はここで退散しておこうかな」
この学校にいる誰もが空へと羽ばたいていく光景に声を上げる中、アオボシはベンチから立つ。
「こんな気分を壊しちゃうのは嫌だけど、君のために言っておく。ヴィルゴとプロキオには気を付けなよ。アイツらは頭のネジが飛んだ異常者だ。君を倒すために今も何か計画している」
アオボシは振り返ることなく、一眞にそう伝える。一眞はただ、彼の警告を黙って聞いている。
「まあ、君なら大丈夫だろうけどね」
ぎこちない笑みを浮かべるアオボシに一眞も立ち上がって、こちらも負けるつもりはないという旨を伝える。
「だと思った。あと、小原鞠莉に伝えておいてくれ。シャイ煮、美味しかったってね」
~~
────勇気はどこに?君の胸に!────
日も落ち、空は黒くなり星々が瞬き始めたころ、閉校祭の最後はキャンプファイヤーで締めくくることとなった。今日ここに来た人たちから伝わったのは、浦の星がどれだけ愛されていたのか、どれだけ大切だったのかということ。
楽しい時間がずっと続けばいいと思うけれど、それでもどうなるかわからない未来がのほうが楽しみだということ。
二度と同じ時間が来ることはないのだから、今こうしていられるのが一度だけと分かっているから、全力になれる。
燃える木々を見つめながら、一眞たちは最高に明るく楽しく声を出して歌う。
燃え尽きた木々を寂しそうに見つめる生徒たち。それは閉校祭が終わったのを伝えるのと同時に、学園自体の最後を伝えるものでもあった。
しかしそれでも、ここにあったことは消えない。これからも形を変えて残っていく。そしてまだ、挑戦は続いているのだ。
やり残したことなどないと言える日が来るまで、今を全力で駆ける。それが彼女たちの、今できること。
序盤に登場した方々はただ私が遊びで出しただけです。もうこれっきりの登場だと思います。
劇中での曜との会話で”これから”についても考えるようになった一眞。現状手一杯ではありますが、果たして彼はどのような答えを出すのでしょうか。(答えが出るのはまだまだ先にはなりそうですが……)
さらにアオボシとの仲も修復されそうな予感……。なんでこんなに白くなってるんだ? 漂白でもされたのかな。
そして11話が終了し、次からはいよいよクライマックス! ……と行きたいところなのですが、次回はオリ回。その次にはアレに当該する章を展開していく予定です。サンシャインパートはしばらくお休みになります。「オイ~!」と声をあげたくなる気持ちもわかりますが、もうしばらく付き合っていただけると幸いです。
それではまた次回で!