2週間空いてしまいました。妖精國やってる場合ではないですね反省します。
さて今回から終盤戦……
第69話 決戦の地へ
オーブ達ウルトラマンと怪獣たちの戦いから数日が経過した。沼津は未だ激戦の痕跡が色濃く残っているが、すぐさま立て直すことだろう。今迄だってそうしてきたのだから。
「派手にやってよね~ホント」
「ま、まだ言うか……それ?」
太陽が背後から照らしてくるが、季節が季節なので温かい程度。或いは時間帯が速いからだからか。
静かな朝に似つかわしくない、ばつの悪そうな顔で隣を歩く少女を見ていたのは、その激戦を繰り広げた一人である一眞だった。
「ごめんごめん。ついね」
「まあ、我ながらに派手にやったよなってテレビ見て思うけどさぁ……」
悪戯っぽく笑って見せる珠冬に、こちらも
「遂に……か」
「……そうだね」
2人が浦の星の前まで行くと、既に9人の姿が。
「おはよう」
「うん、おはよう!」
一眞に元気よく挨拶したの千歌。その顔からは迷いはないと、やれることはやったと、そう信じることができた。でもそれは、千歌だけじゃない。Aqours全員が、だ。
「みんな大丈夫って感じだな」
「うん、ここまで全力でやってきたからね!」
誇らしく曜が答える。そう。ここに来るまでみんな全力だったというのは、一眞も珠冬だって知っている。なんなら一番近くで見てきたのだと言ってもいい。
ここまでとても辛かった。弱音だって吐いた。けど、途中で投げ出した者はいなかった。それもこれも、全部この時のためだ。
今ここに並んでいるのは、そんな日々を過ごした学校への感謝の気持ちを示すとともに、自分たちの目標を再確認するためだ。─────浦の星の名を永遠に刻むという。
『─────行ってきます!!』
以前はとても届かないと思えた舞台。そこにようやく立とうとしている。ここまで抱いてきたあらゆる想いを輝かせるために。
~~
変わらず賑わいを見せる東京の地に着いた。一度目は敗北を知り、二度目は輝きとは何かを知り、そして三度目……。今回は何を知るのだろうか。いやそれとも、これまでの集大成を示して見せる番なのかもしれない。
「お姉ちゃん……?」
「もう大丈夫ですわ」
ダイヤはもう、このゴチャゴチャした場に取り乱すことはない。春からこの場に通う、生活する、という理由もあるのかもしれない。だがそれ以外にも自身の知らぬこと……未知の経験というものに恐れず挑戦していこうという内心の変化があったのかもしれない。
「これからどうする?」
「本番は明日だし」
「そうだな……まあ疲れない程度に、この辺を見ていくってのでいいんじゃないか?」
「だね」
本番は明日。しかし宿に向かうのもまだ早い。となれば一眞の提案が採用されるだろう。するとどうやら、彼の提案が願ったり叶ったりってところの者が数名。
「リリーはブクロ行きたいのよね?」
「え!?」
他の者……鞠莉はどこなのかと問いかけるのだったが、善子が丁寧に説明をしてくれる前にアームロックをかけられそれどころではなくなってしまう。威力は相当なようで、早くもタップしている。
「サ、サイレント……何?」
「梨子さんが知らぬ間に善子化してる……」
「ずら……」
アームロックをしかけるところや長い名前が善子っぽい。だがそれは彼女たちの仲が深まり、互いに尊重しあっているともとれるから大変微笑ましいことだろう。と、一眞は強引に解釈していた。
「はあ……速いな」
「えへへ、そうでしょ?」
「ああ。日頃の練習の成果、ってやつだな」
「うん。気付かないうちに成長していくって、こんな風に意外なところでわかるんだって思う」
皆で向かったのは神田明神。理由は勿論、ここで祈願するため。千歌はその気持ちが強いのか、誰よりも速く階段を上ったのだった。彼女の後に続々と上り終えていく。しかしそこには、以前の疲れ切ったような姿はなかった。日々の練習が裏切ることなくここまで繋がっているということを、小さなことではあったが証明している。
全員着いたとなれば早速、手を合わせる。
「会場の全員に、想いが届きますように」
「全力を出しきれますように」
「緊張しませんように」
「ずらって言いませんように」
「すべてのリトルデーモンに喜びを」
「浦の星のみんなの想いを……」
「届けられるような歌が歌えますように」
「明日のステージが最高のものになりますように」
個人個人、それぞれ抱えてきたものがある。耳に入ってくる彼女たちのそれは願いにも、そして自分自身に課した目標とも取れた。
「ラブライブで……優勝できますように」
それぞれの抱負ともとれる言葉を聞き届けた一眞はふと、視線を横に向けた。彼の向けた先にあったのは、掛けられている多くの絵馬。
「ん? これって……」
「ずら~!!」
絵馬を見つめる一眞につられたのか、花丸たちも集まってくる。目に入った絵馬に書かれていた内容というのが……
─────Aqoursが優勝しますように。 11月 浦の星学院有志
「見て、こっちにも!」
どうやら一つだけではないらしい。曜の見ていた場所にも、同じ内容の絵馬が。しかし掛けられた時期などが異なっていた。
「何回もここに通ったんだな……」
距離があり、時間だってかかる。その筈なのに幾たびも通って願ってくれた。しかしそのことは決して言わない。そんな生徒たちの想いに胸が熱くなってくるのを感じる。
「千歌ちゃん、これって……」
視点を変えれば、同じく優勝を願う旨の書かれた絵馬が。だが異なっているのはそのグループ名。
「たくさんのスクールアイドルが、ここで祈願していったんだね」
掛けられているのは当然、Aqoursの優勝を祈ったものばかりではない。多くのスクールアイドルがここで自分たちの優勝を祈願していっている。当然と言えば当然だが、勝ちたいと思っているのは自分たちだけではない。
「お久しぶりです!」
気が引き締まり、ちょっとした緊張状態に入りかけたところで声が届く。強張っていた体も幾ばくか軽くなる。そのまま声の方向に目を向けると、自然と笑みがこぼれる。
「聖良さん!」
「理亞ちゃん!」
「遂にここまで来ましたね」
「ビビってたら負けちゃうわよ」
賞賛や激励といった言葉。それは同じスクールアイドルとしてもそうだが、共に歌った仲としてだったり、なにより友人としての面からも言葉をかけてくれているのだろう。
「わ、わかってるわよ!」
「にしても、アキバドームか……」
「今までの会場とは違うずら」
「どんなところか、全然想像できないや」
アキバドーム……そこは誰もが知っている会場だ。もともとはスポーツ観戦などで使われていたのだが、あるスクールアイドルの……いいや、その当時のスクールアイドルたちの働きかけによって、ラブライブ決勝の舞台としても使用されることになった。
これまで立ってきた、歌ってきた場所とは桁違いのステージ。自分が立っている姿も、目の前に広がる景色も想像できない……というのも無理はない。
知らないこと、自分の想像をはるかに超えるものに恐怖してしまうのは自然なことだ。だから、彼女たちの反応も理解できる。
「私もあのステージで歌えたってことが今でも信じられない」
「……どんな感じ……でしたか?」
「自分の視界のすべてがきらきら光って……まるで、雲の上を漂っているようでした」
「雲の上……」
雲の上……それについては過去に同じような経験をしたことがある。だから聖良の言っていることを想像することだって難しくはない。しかし千歌には……いやこの場にいる全員が恐らく、以前見た雲の上の景色と、彼女の言う雲の上のイメージでは合致しないだろう。あくまで例えだから……なんて理由ではなく、もっと深い意味でだ。
「だから、下手なパフォーマンスしたら許さないからね!」
理亞はそう言ってルビィたちに迫る。
「当たり前だよ。頑張ルビィするよ!」
これまでの経験が、そして理亞との過ごした時間がルビィを成長させたのだろう。彼女は怯えることも、自信なく顔を伏せることもしなかった。視線を逸らさず理亞に答え、己を鼓舞していた。
ルビィや理亞の会話に混ざる1年生組。そしてその様子を見守る上級生。外見上でしかないが、決勝前だというのに彼女たちからは「緊張している」という様子は見られない。だがそれは能天気だからではない。ここまで積み上げてきたものがあり、それを信じているからこそ持てる心の余裕があるからだった。
「初めて会ったときは、”なんて弱弱しいんだろう”って思ってました。ですが今は”なんて頼もしいんだろう”って思います」
それが聖良の抱いていた印象。東京に呼ばれ、初めて
「勝ちたいですか?」
「……え?」
聖良から問いは、過去に千歌が訪ねたものだった。輝きが何なのかを探すため、そのヒントになればと問いかけたもの。そして今、
「それと、誰のための……ラブライブですか?」
~~
「……」
宿の部屋から外を見つめる一眞。既に空は黒く染められ、点々と星が煌めている。そして開けた窓から、未だ冷たい冬の空気が入り込み彼の頬を撫でる。
遡ること数時間前。
「花丸、それ持ってきたのか?」
「声が大きいずら!」
「ああ、悪い……」
彼女が持ってきた木箱。その中にあるのは以前見つけた太平風土記。そして共に入っていた種だ。
「でもどうして……」
「前に伝えたこと、覚えてる?」
「前? えっと……」
即座に記憶にアクセスしていくが、風土記の話よりも
(やばい……花丸呆れてる)
もの言いたげな目をした彼女は溜息をつき、口を開く。
「”八つの龍脈が交わる土地”って記述が気になって調べてみたずら。そしたら……」
「
先ほどとは一転した真剣な物言いに花丸は頷いた。
そもそも龍脈とは風水学における用語で、大地の中を走る太く大きな流れだ。いわば大地の血管ともいえる存在である。それが交わるというのだから相当なエネルギーがある部分なのだろう。
「それでもしかしたら……って思って持ってきたずら」
「いいのか? 大会前なのに……」
「大丈夫ずら」
あっけらかんと答えている様に安心感と同時に不安を覚えたが、彼女自身が言っているのだから信じてあげるべきだろう。
「転生のときを待つ存在が、毒を統べるものと交じり合う……」
だが一眞にとっては見逃すことのできないものだ。太平風土記に書かれた内容の多くの事象を目にしてきたのだ。これだけがハズれる……なんて楽観的にもなれない。しかも文面から推察するに現れるのは2体。警戒しないわけがなかった。
「ああもう、明日が決勝だってのになに不安がってるんだ!」
頭を何度も振り、こびり付いた不安を消し去ろうと試みる。そんなことよりも明日の決勝の方が何倍も大事だ。送り出す側が暗い表情をしていれば、彼女たちにも影響が出てしまう。花丸が一眞だけに聞こえるように話していたのもそんな配慮の表れだ。
「……たーたぁーちぃぃぃぃ!!!!!!」
「ん、なんだ?」
すると隣の部屋から怒号の様なものが聞こえてきた……ような気がし、一眞は確認するために部屋を後にした。
「……力強すぎんだろ」
宿の廊下を歩きながら一眞はぼやいていた。
あの後、何事かと部屋に乗り込んだ一眞を待っていたのは枕投げをしているAqoursの姿だった。止めようと飛び込んでいった数秒後、気付いたら枕を思いっきり投げていた。力が強かったせいなのか、最終的には袋叩きにあってしまった。
数刻前の出来事に「理不尽だ」とかなんとかとぶつくさ言いながら肩や首などをさすっていると、前方からある人物が歩いてきた。
「千歌? 外で涼んできたのか」
先ほど行われた枕投げで熱くなった体を、休憩がてらに冷やしてきた千歌が戻ってきたのだ。
「うん。そこで梨子ちゃんと曜ちゃんと一緒に話し合ってさ、明日は現地集合にしようって決めたの。みんな大会前に整理したい事もあるだろうし」
「いいなそれ。でも、整理したいってのはお前自身がそう思ってる……ってのもあるだろ?」
彼女は図星なのか、苦笑いにも似た表情で首を縦に振った。そしてある問いを一眞へと投げる。
「カズくんはさ、わたしたちに……Aqoursに勝ってほしい?」
思いもよらぬ質問に一眞は目を丸くするが、千歌の眼はいつになく真剣で……同じくらい迷っているようにも見えた。
だからこそ彼は、素直に自分の気持ちをここで口にした。
「そうだな……。俺は勝ってほしいって思ってるよ。皆の一番近くにいる者として、見てきた者として。皆がこれまでずっと追い求めてきたものを、俺も知りたい。だから……最高にステージで輝いてる姿……見せてくれよ」
「うん。わかった」
そう答えた千歌は、先ほどよりもすっきりした表情に見える。そのまま他のメンバーにでも聞いていくのだろうか。彼女は部屋へと歩いて行こうとする。
「ああ、あと……」
呼び止める一眞へ、千歌はもう一度振り返る。
「俺をマネージャーとして入れてくれて、ありがとな!」
ニカっと笑う一眞。そんな彼の笑顔があまりにも幼く見えたので、千歌は思わず吹き出してしまう。
「ええええ、笑うかそこで!?」
「あははははは、ごめんごめん……。だってあまりにも子どもなんだもん!」
「なんだよ……せっかく面と向かって礼したのに……」
ムスッとした顔もまた面白いが、ここで笑ったら何を言われるか分かったものではない。だが、これだけは伝えておかなければ。
「こちらこそ、ありがとう!」
夜は更けていく。日が昇るまでの僅かな時間。
明日に何が起ころうとも、今だけは……いや、”その時”が来るまでは彼らに心の安らぎを。
12話が終わるとオーブパートへ移行するのでそうなると……
また次回で!