薄暗い空が広がり、寒々しい風景が広がる場所。ここに辿り着く魂を眠らせてあげるためと言っても過言ではないその静寂も、一度戦闘が起きれば呆気なく崩れ去っていく。
「シュアッ!」
2つの影がぶつかり合う。その度に激しい火花を散らし、幾度も爆発を起こしていた。
「チッ……この亡霊魔導士が」
「……」
爆ぜた光を中心にし、2体は睨み合う。
一方は青と赤の体を持ち、頭部に鋭い刃を備えた戦士。一方は青と銀の体に突起の付いた頭部が特徴の人物……戦士が呼ぶには亡霊魔導士らしい。
「ジードが成仏させた時に、そいつも眠むらせたと思ったのによ……。よりにもよってお前ぇが復元しやがって!」
戦士が指差すのは魔導士の右手。そこには黒い棍棒状のアイテムが握られているのだ。
「知ったことか。我の野望に必要なものを回収したまで」
淡々と答える宇宙人へ戦士は怒りを燃やす。前所有者の置き土産が宇宙中に散らばり対処に当たっている中で、一区切りした事案を再度掘り起こされれば激昂するのも無理はない。
「てめぇの顔なんざ見飽きてんだ。その野望……ここで砕いてやる!」
戦士が仕掛ける。頭部を砕こうと右足を大きく振るった。だが魔導士も負けていない。棍棒で攻撃を防ぎ、リーチを生かして戦士を吹き飛ばす。
「……ヘッ、宇宙も違えば実力も異なるか……」
一度
今闘っている”怪獣墓場”は、怪獣たちの魂が最終的にたどり着き眠る場所である。しかしここは複数の宇宙に跨って存在しており、あらゆる次元の魂が流れ込んでくるのだ。
つまり魔導士も同じくどこかの次元からやってきたのだろう。しかしヤツは死んでからではなく、自らの意思で足を踏み入れたという違いはあるが。
「ここでの目的は達成された。さらばだ」
「行かせるかよ!」
起き上がり再度構えを取る。だが魔導士は素直に相手にする気はサラサラないようで……
「時間が惜しい。貴様はこいつらで遊んでいろ」
魔導士は手に持ったアイテム。”ギガバトルナイザー”から怪獣たちを呼び出したのだ。先程まで殺風景だった場所は、多くの怪獣で埋め尽くされる。
「なっ……既に怪獣たちを蘇らせていたのか……」
「……」
波の様に押し寄せる怪獣たちと戦闘を始める戦士を横目に、魔導士は姿を消す。いや、元いた次元に帰還したのだろう。
「クソ、待ちやがれ! ……っと!?」
飛んでくる火の玉や光線の雨を間一髪で避けるが、その視線は消え去っていく魔導士から外すことはなかった。
「ンの野郎……けどその前にコイツら片さないとな」
いったん距離をとり、うじゃうじゃと群がっている怪獣たちに構えた。
しかしその時、背後から自分の名前を呼ばれた気がして戦士は振り返る。するとそこには多くのウルトラ戦士たちが立っていたではないか。その中心にいるのは自分とよく似た姿の巨人。
「親父!?」
「ここは我々が引き受ける。お前はヤツを追うんだ」
宇宙ブーメランを頭部につけた赤き戦士、ウルトラセブンはそのように語る。
セブンが語り掛けたとほぼ同時に始まった怪獣とウルトラ戦士たちの戦いは苛烈を極め、怪獣墓場のあちこちで爆発が起こっている。宙を舞う光線の数々が嫌なほどに輝き、戦士の視線へと入ってくる。
「……」
追いたいのは山々だが、ここに蔓延る群れは自分を無視してはくれないだろう……。瞬時に判断した彼は2枚のブーメランを胸のカラータイマーに装着しようとした。
「その必要はない!」
「ボクたちが道を作る!」
声と共に戦士の両脇を疾走した光で、彼の行動は中断される。
1人は蒼い体を持つ巨人へ、もう1人は赤と銀の巨人へとそれぞれ姿を変える。そして十字に組んだ腕から光線を発射した。
「ヤツはよからぬことを考えている。お前が止めるんだ!」
「そっちは任せたよ!」
蒼雷と焔が怪獣たちを吹き飛ばし、道をつくる。
それを見た彼は鼻をこすりながら笑う。そして自分に向けられた信頼や激励に応えるため、白銀の鎧を身に纏った。
「ああ、任せろ!」
戦士は飛翔し、空間に開けた大きな穴へと飛び込んでいく。それを見届けたセブンは深く頷くのだった。
「……頼んだぞ。ゼロ」
~~
「なにそれぇぇぇぇっ!?」
場所は変わり沼津の一角にある喫茶店。
春から通う学校が分校であったことの説明を千歌はよしみやいつき、むつを呼び出して聞き出したのだった。そして返ってきた答えはなんと、「浦の星と一緒になるのが嫌という声が一部であがってる」というものらしい。そんな理解できないような訳を聞いてしまえば、千歌が声をあげてしまうのも無理はない。
「一緒になるのが嫌ってどういうことよ?」
「学校側も何考えてんだか」
理解しがたいのはみんな一緒らしい。梨子や一眞も飲み物片手に学校の対応に呆れている。
「しばらくは分校で様子を見ましょうってことになったんだって」
「分校で様子見だって言われても、あの校舎結構小さかったぞ」
「うん、教室は今のところ1つだけなんだって」
いつきの言葉に一眞は頭を抱える。なんでも、分校用に用意したのは今は使っていない小学校らしい。
「統廃合になったのに、廃校に移ったんじゃ意味ないずら」
花丸の言うことももっともだ。浦の星を廃校にした意味がまるでない。
さらに教室が1つだけとなれば、浦の星の生徒が入りきれないだろう。一体何を考えて分校案を可決したのか。小1時間問い詰めたいところではある。
「授業どころか、スクールアイドルもロクに出来ねえな」
「あ……」
「それもそうだね」
3年生が去ってから早々、前途多難なスタートである。
しかし、トラブルはこれだけでは終わらないらしい。
「あれ、曜ちゃんはどこずら?」
花丸の放った一言に、一眞以外の者はあたりを見回す。気付けばいなくなっていたのだった。
「ああ、なんか電話かかってきたとかなんとか……」
一眞はコーラを飲みながら説明をしているが1年生組はおろか、千歌や梨子たちも聞いていなかった。
窓の外で何かを見てしまい、必死に隠そうとするルビィたち。そしてそれを怪訝な様子で見つめる千歌たちという構図が出来上がっていたからだ。
その後すぐさま外に出ていった千歌と梨子。彼女らは相当衝撃的な光景を目の当たりにしたのだろう。互いに頬を引っ張り合っている。
「なんだよ。急に外に出たと思ったら止まるわ、頬を引っ張り合うわ……」
「カズくんアレ! アレ見て!!」
「なんだよ……うぉあっ!?」
首を90度横に向ける。
目線の先では曜ともう1人が楽しく談笑していたのだった。彼女より少し背が高い人物は、キャップを被ってはいるがそこからでも中性的な容姿が確認できる。曜も曜で、友達に向ける顔とはまた別の表情の様にも感じた。
「……誰?」
「さあ……」
誰も知らないらしい。追いついたルビィは弟なのかと問うが、彼女の下にいたという記憶がないのは千歌も一眞も同じだ。
「じゃあもしかして……」
「ビックデーモン!?」
善子は驚きで叫んでしまう。案の定、曜にも聞こえてしまう。
「ん?」
彼女は振り向く。しかしその背後に見えるのは、犬の散歩途中であろう女性だけだ。
「なんで隠れるずら?」
「そうだよ。乗り込んで聞きゃいいだろ……あと服引っ張るな」
「だって……それにカズくんはいいの?」
「はあ? どうことだよそれ」
などと隠れながら小声で話しているうちに、千歌たちは2人を見失ってしまう。となれば即座に追わなければいけない。そう思ったであろう5人は即座に走り出していった。
「はあ……ったく」
「「「が、がんばって~」」」
溜息を吐く一眞も小走りで駆け出す。
彼らはよいつむトリオからの微妙な声援をうけつつ、曜たちの背中を追っていくのだった。
道中、曜に警戒されれば、その都度隠れて尾行を続行する5人。一方一眞は千歌たちが隠れるたび、服を引っ張られ物陰に引きずり込まれるのだった。
そんな危なっかしく、周りの人に怪しまれながら続ける尾行も遂に終わりの時が来る。
「ほら隠れて!」
「おわっ!? 首元引っ張るなって!?」
電柱に隠れたり店の角に隠れたりする中で、善子だけは道の真ん中に置物を設置し、その後ろに身を隠した。
「いや……バレるだろ……」
「にゃーお~……」
一眞の指摘に答えるためか、それとも曜を誤魔化すためか、猫の鳴き声をダメ押しと言わんばかりに発する善子。
「なーんだ、猫ちゃんか!」
助かったか? そう思い善子は立ち上がる。
「危ない危ない。危うく見つかる所だっ……」
尾行再開、と置物を持ち上げたところで曜と目が合ってしまった。やっぱり気が付いていたらしい。
「善子ちゃん?」
「おかけになった電話番号は現在お繋ぎできません!」
苦し紛れの一言に曜だけでなく全員が困惑する。
「どうしたの、曜ちゃん?」
「あ、ごめんね月
「「月”ちゃん”?」」
呼称に驚愕した千歌たちは思わず顔を覗かせてしまった。
そんな彼女たちの行動と驚きに納得がいったのか、曜は”彼女”を紹介した。
「紹介したことなかったっけ。私の従姉妹の月ちゃん!」
キャップを脱ぐと束ねていた髪が下りてくる。そして曜と同じ敬礼ともに見せるその笑顔は、従姉妹である彼女の活発さを彷彿とさせるのだった。
「月です。よーろしくー!」
「じゃあ、あの学校の生徒なの?」
どうやら月は統合先である静間高等学校の生徒であるとともに、生徒会長も務めているらしい。だからこそ、浦の星と静間の間で何が起こっているのかを曜は尋ねていたということのようだ。
「曜ちゃんも通わない? って誘ったんだけど、千歌ちゃんと一緒の学校がいいって」
「そ、そうだったっけ……?」
2年越しに明かされた秘密である。
曜はそんな覚えはないという風に装ってはいるが、視線やブラブラとさせる足の動きからバレバレである。
「照れることないじゃない」
「あ、君が梨子ちゃんだね。いつも曜ちゃんが言ってるよ。尊敬してるって」
まさか自分にも来るとは思わなかったのだろう。梨子はどう反応すればいいのかわからなかったようだ。自分の名も知ってて、尚且つ曜から尊敬されているという話を聞かせてくれたのだ。困惑するのも無理はない。
「照れることないじゃない」
先の仕返しで曜は梨子へと投げかける。
「千歌ちゃん、ルビィちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん。そして一眞くん。本当にAqoursのことが好きみたいで、曜ちゃん会うたびにみんなのこと話してるんだよ」
それが照れ臭かったのか、曜は毛先をくるくると弄っている。
「そうすると思うんだ。既にAqoursは曜ちゃんの一部なんだなぁって」
曇りなく笑う月。こういったまっすぐな部分もどことなく曜に似ている。従姉妹とはこういうものなのかと思いながら、一眞は口を開く。
「でも意外だな。俺のことまで知ってるなんて」
「そりゃあもう。Aqoursのマネージャー暁一眞。曜ちゃんから話もたくさん聞いてるよ!」
「あ、あははは……」
そう言って一眞の背中を叩く。やっぱりこういった面はさすが曜の従姉妹といったところである。初対面でもペースに乗せられそうだ。
「それと、分校の事……」
ずっと仲良く話していたいが、本題はそこではない。
分校の事をルビィが訪ねると先ほどのような笑顔は消え、月は申し訳なさそうに視線を落とす。
「どうしてそんなことに?」
「訳があるんだろ?」
「……うん」
月が語るには、静間は昔から部活動が活発であり全国大会に出るような部もいくつかあるらしい。しかし浦の星の生徒が入ってくると、部がだらけた空気になるのではないか、または対立するのではないかと危惧しているとのことだ。そうなってしまうと練習どころではなくなり、結果を残せなくなる。そんな声が父兄から挙がっている……ということのようだ。
「だから分校で様子見……か?」
「……うん。僕たち生徒も、先生たちも心配ないって言ったんだ。けど部活がダメになったらどうするんだとか、責任とれるのかだとか」
力及ばずだと、月は悲しく笑う。
「なんだそれ……」
そこに通う生徒でもないのに、部活とか責任とか……自由に声を上げてくれたものだ。
さらに梨子も、そんなこと言い始めたらキリがないし、何もすることができないと苦言を漏らす。
「これはまた面倒な問題だな」
「そう。だから私は月ちゃんに相談してたんだ」
「……全面戦争」
「そんな訳ないでしょ?」
極論かつどちらも全滅する案はもちろん却下である。
「その人たちが気にしてるのは、浦の星の生徒が部活でもちゃんとやって行けるかってところなんだと思う」
「だから、実績のある部活もあるって証明できればいいんだよ」
言葉よりも何倍も効力を持つのは、実際に見せることだ。しかし浦の星に実績を持つ部活が果たしてあったのだろうか。今度はそこで頭を悩ます。
「……あるだろ」
一面に漂い始めた空気と沈黙を破ったのは、千歌たちを見渡して放った一眞の一言。
「……ええ、あるわ!」
続くように声を上げる梨子。
「全国大会で優勝した部活が1つだけ」
さらに続く曜の言葉。
3人の言葉と視線で、千歌は顔を上げる。ここにいるじゃないか。全国で優勝し、歴史に名を刻んだ部活が。
「私たちスクールアイドル部が、新しい学校にも負けないくらい真面目に本気で活動しているって。そして人を感動させているって、わかってもらえればいいんじゃない?」
「それ……いい!」
立ち上がった千歌に、善子はライブでもやるのかと尋ねる。
「それもいいけど……実は来週、ちょうどいいイベントがあるんだ」
月は待っていたかのように、そのイベントとやらの名を口にした。
~~
「活動報告会ね……」
校門前で一眞はふとその名を口にする。
活動報告会とは年に一度、各部活動の代表生徒が部活動の実績や活動内容を説明する行事なんだとか。部活動に力を入れているだけあって、こういったことも行っているわけだ。
「にしても……」
一眞もAqoursの面々と同じように、校門前から校舎を見上げる。
「み、未来ずら~~~~~!!!!!」
花丸が声を上げ、ルビィが怯えるのも無理はない。浦の星の校舎より何倍も巨大な建造物が目の前に建っているのだから。玄関近くで談笑している生徒の数ですらも、当たり前ではあるが浦の星の生徒数を軽く凌駕していた。
「あれは! ……能力者……我が前世を知る者……」
善子は塀のところで身を隠し、前世がどうのと言い始めている。声音からして、彼女にとっては良くないことなのは確定しているようなものだった。
「前世?」
「中学時代の同級生ずら」
「ああ……それはぁ……」
察した一眞は額に手を置く。
善子にとってはいい思い出にはカテゴライズされてないであろう中学時代。その同級生となれば、彼女のとっていた行動も見ているであろう。顔を見られれば何を言われるのかたまったもんじゃない。善子は踵を返す。
「学校とみんなのためよ!」
そんな行いは許されない。今日はいくら何でもと、梨子は善子を捕まえる。
「……?」
すると静間の生徒たちの視線が、自分たちに集まっていることに気付く。何しに来たのか、どこの生徒か……。物珍しそうで疑問に満ちた目に、思わず隠れてしまう人も何人かいた。
青を基調とした制服が大半を占める中、白を基調とした制服を着た少数はどうしても目立ってしまう。
「………行こう」
全く別の、全く見知らぬ場所から吹く風はどこか冷たい。浦の星のような見知った暖かさがここにはなかったのだ。
拒絶されたような空気の中、千歌たちは足を踏み出した。
(こんなに大きなところなんだな……)
様々な部活動の報告を見ながら、一眞はそんなことを考えていた。浦の星の体育館とは違いここは講堂。用途も違うし大きさも違う。なにより厳粛な雰囲気で空気がピリピリしている。ここまで来て言うのもなんだが、とてもライブをする雰囲気ではなかった。
(ってか部外者がここにいちゃ悪いかよ。ちゃんと許可貰ってんぞ……!)
それに後ろから刺さる視線も痛い。浦の星の生徒だからなのだろうか。だとすれば随分と嫌われたものだと、一眞は苦笑する。
「次、曜ちゃんたちの番だよ」
「ありがとう。月のお陰で、特別に組んでくれたんだよな。さすが生徒会長」
「このくらいお安い御用だよ」
するとステージ裏にいた月が客席側へと戻り、一眞の隣に座る。
軽いやり取りを交わす2人だったが、張り詰めた空気はそれでも抜けずにいた。
「みんなは……どうだった?」
「かなり緊張してたみたい。特にルビィちゃんたち1年生が」
だよなと一眞。疎外感だけでなく、向けられる視線も今までと違うのだ。何を思ったって不思議じゃない。
「ライブとここじゃ、大分空気が違うからな」
「それでも……」
「ああ。それでもやるよ。浦の星とみんなのためにって」
たとえこの場に3年生がいなくても。大丈夫……できると。
「信頼してるんだね」
「まあな。みんなが信頼しているように……俺も……」
すると、講堂内にアナウンスが響き渡る。この春から統合になる浦の星のスクールアイドル部、Aqoursのライブが始まると。
アナウンスの後、小さく頼りない拍手が響き渡る。それがスクールアイドルが浸透していないこと、そして浦の星が歓迎されていないことをより強く明確にさせる。
ここから始まるのだ。新たなAqoursの第一歩が。この6人で踏み出す……
6人で……
位置に着いた時、Aqoursが、一眞が……ふと見てしまう。いなくなってしまった3年生の空間を。
今回の章は自分が思っていたよりも長くやっていきそうだなと確信を持てる回でした。何話ぐらい使うんだろう、楽しみだな~。
さて解説ですが、序盤に登場した亡霊魔導士はSunshine!!&ORBの宇宙(つまりは本編)からM78スペースにお邪魔しに行った存在です。(ファイトオーブに出てた魔導士さんはすでに成仏済みです。)
次回はどこまで行けるのか……またお会いしましょう。