今回はちょっと短めで送りします。
「鞠莉が結婚するの」
果南から告げられた言葉に、一同は固まってしまう。
彼女の母親から3人が行方不明になっているから探してほしいと頼まれ、現地で会えたとなれば実は嘘で……その挙句に何が起こっているのかと聞けば鞠莉の結婚。混乱しないはずがなかった。
「結婚て……いつの間にそんな話が!?」
一眞を皮切りに、曜や花丸、梨子などが問い詰める。しかし鞠莉は「しないよ」ときっぱり言い切った。
「しない……?」
また状況が掴めなくなりそうだと首を傾げ始める千歌たちを横目に、鞠莉は混乱の元を作った人物の方へ顔を向ける。
「果南、ふざけないで!」
「でも実際そうでしょ?」
混乱を招く言い方をしたことからか、言いづらいことを彼女が言ったから……おそらくは両方だろう。そんな果南を鞠莉は非難するが彼女には通じていない。現状のままでは、本当に結婚することになってしまうのだからと。
「だからそうならないようにしるんでしょ?」
「あーもうわけわかんないよ。わたし達にもわかるように説明して!」
こちらにはまったく意味不明なまま話が進んでいることに痺れを切らした千歌の叫びが屋敷に響く。声に出さないとはいえ、他の人達も同じ気持ちだ。
「つまり縁談の話がある、ということですわ」
「縁談って……」
「しかも相手は一度もあったことがないような人よ? 私が首を縦に振ると思う?」
一生を添い遂げる相手であればある程度の信頼が必要だ。なのに一度も顔を合わせたことのな人物と一緒になるというのは、一眞から見ても納得しがたいものだった。
「でもわからねえな。なんでそんなことをするんだ?」
ここまで話を聞くだけに徹していたゼロも、黙っていられなくなって鞠莉へ問いかける。そこに返ってきたのは、シンプルでいて残酷な理由であった。
「鞠莉の自由を奪いたいから」
鞠莉の母は、昔らからダイヤや果南のことをよく思っていないということが語られた。先の張り紙も悪意があるような……ではなく、悪意があってやったことになってしまう。完全な私怨とも捉えられるが。
素直に言う事を聞いていた鞠莉が2人と関り、勝手に行動するようになった。その果てはこれまでの行動が物語っているだろう。
「それにスクールアイドルにも、いい印象がなかったのかも……」
だからといって、自由を奪うために縁談の話を……となるのは些か強引ではないかと思ってしまう。しかし、人の家にあれこれ言うのも遠慮したいものではある。
「それじゃあ、卒業旅行も……?」
「そう。ママにわかってもらおうと思って書置きしてきたの。私はあの時の私じゃない。自由にさせてくれないなら戻らないって」
「でもここまで本気になるとは思わなかったけどね」
確かに果南の言うとおりだ。Aqoursを現地に向かわせ、さらには張り紙までばら撒くとは。
「おい、これってお前たちが口を出して言い範疇を超えてないか?」
「正直なところ、難しい問題だと思います。でも鞠莉さんが困っているのなら、やっぱり……」
一眞にも……一眞たちでも家族の問題が関わってくるようでは、できることは限られてくる。しかしそれでも、助けたいと思っているのが友達というものだ。
ああやって聞いてきたゼロではあるが、どうやら予想通りの答えだったのか口元に笑みを浮かべている。
「天使ヨハネの願っ────!?」
ゼロと一眞が話している中、少女の絶叫と共に草木の賑やかな合唱が外から聞こえてきた。
「おいおい、どうした!?」
ベランダに移動してみると、どうやらいつの間にか移動した善子が手すりに乗りさらに足を滑らせて落下したらしい。
けれど木の枝に助けられ怪我はないみたいだ。
「よかった」
「ほんと堕天使ね」
「上手くないわよ! それより早く助けなさいよ~!!」
「カズくん」
「へい」
先ほどの空気から、若干ではあるが懐かしい雰囲気に戻った。張り詰めた空気を壊すように息を吐きながら、一眞は善子を助けるために下へと向かうのだった。
~~
「堕天使降臨!」
屋敷に戻るなり、天使ヨハネは堕天使ヨハネに無事戻ったらしい。そもそも元々のノリすらも問題あるというのは梨子の言葉である。
「善子、お前さ……」
「一眞、それ以上言うとあなたの明日はないわよ。あとヨハネ」
「へい」
ソファーで座っている一眞は何かを言おうとしたが逆鱗に触れる内容だったらしい。彼女に睨まれて口を閉じる。
「とにかく、これからどうしようか。千歌たちも巻き込んじゃったんだからちゃんと考えなきゃ」
全員が集まり、状況を共有しあった。ではこれからどうしていこうか。早速話し合いを始めようとした瞬間、力強くドアが開けられる。外国に来ても、Aqoursは”予想外に事態”とやらに好かれているらしい。
「ようやく見つけマシタ!」
なんと鞠莉母が屋敷に乗り込んできたのだ。
「こんなところに隠れているとは、またハグゥの入れ知恵デスカ?」
「違うわ! 私が考えたの。ママがしつこいから……」
鞠莉と母親の対面。普段であれば喜ばしい場面なのだが、今現在はそう言い難い。母親の乱入によって、部屋一帯には言い表すことのできない重たい空気が満ちていく。
「しつこくしてこなかったからこうなったのデス。小学校の頃に家から抜け出した時、学校を救うためにこっちちの学校をほったらかして、浦の星に戻った時……。パパに言われて堪えてきましたが、その結果がこれデス!」
母親に鞠莉は臆せず尋ねれば、彼女は丁寧に答えてくれた。
「何一ついいことはなかったではないですか。学校は廃校、鞠莉は海外での卒業の資格を貰えなかったのですよ!?」
耳の痛い話だ。母親の言う様に学校を救おうと日本へ戻ったが、多くは悪い方向へ向かってしまった。
卒業の資格を捨ててまでする必要があったのかと聞かれれば、首を縦に振ることも、横に振ることも躊躇ってしまうだろうと一眞は感じていた。
「待って、でもSchool idolは全うした。皆と一緒にラブライブは優勝したわ!」
しかし冷たく「それが」と返されてしまう。そんなものに価値はないと言っているような口ぶりだ。実際「スクールアイドルをやって何の得があったのか」と続けるように口にしていた。
「……くだらない」
母親の溢した一言に、誰もが反応する。しかし誰もが堪える。”こういう人”だと、鞠莉が言ったから。
「だから私たちは、鞠莉を外の世界に連れ出したの」
一度無駄だと判断してしまえば、どこまで行っても無駄なことだと判断してしまうのだろう。
スクールアイドルが認められない……この感覚はあの時と似ている。静真の説明会の時と。
「Shut up!とにかく、鞠莉の行動は私が────」
「くだらなくなんかない!」
鞠莉の手を引こうとするのをダイヤと果南が引き留める。さらに鞠莉の心からの叫びが、母親の行動にブレーキを掛けた。
「School idolは……くだらなくなんかない! もしSchool idolがくだらなくなんかないって、凄く素晴らしいものだって証明出来たら……私の好きにさせてくれる?」
無言で見つめる母に、鞠莉は続ける。
「ママの前でSchool idolが人を感動させられるって証明出来たら私の今迄を認めてくれる?」
「縁談なんかやめて」
「わたくし達と自由に会うことを認めていただけますか?」
果南とダイヤの様に言葉にはしなかったが、Aqours全員は3人の後ろに立ち母親へ訴えかける。
「いいでしょう。ただし、ダメだったら私の言う事を聞いてもらいマース」
それだけ言い残し、鞠莉母は部屋から出ていくのだった。
~~
「んで、どうすんだよ。母親にあんな啖呵切っといて何もないですってわけじゃねえだろ?」
「当たり前じゃないですか。ライブをするんですよ。ライブ」
「ライブ?」
「スクールアイドルですからね。見てもらうのが最速最短ってやつです」
あの日から数日が経ち、今は再び調査で離れていたゼロに近況を報告している最中だ。
鞠莉母に証明するにはライブをやるしかないと、翌日からライブ場所を探すことになった。ほとんどが観光の延長線上だったが、楽しむこともできたのでwinnwinnということで収まっている。
しかし場所を決めたのは鞠莉たちではない。ましてや千歌たちでも。
「今回のライブ、ルビィたちに決めさせてほしい」
それが今夜ルビィの口から出た言葉であり、1年生3人の総意であった。これまで頼りきりだったからこそ、今回は自分たちに……そうお願いされたのだ。
「オレはこれまでの事を知らねえが、あいつらも成長してるってことだ」
「はい、そうだと思います」
微笑む両者だったが、そこでゼロは指を指した。
「で、お前の方はどうなんだ?」
「え?」
「え? じゃねーよ。お前の顔に書いてあんだよ。絶賛お悩み中ですってな」
まさか言い当てられるとは思っていなかった一眞は、目を丸くして固まる。確かに悩んでいることはある。でもそれは……いや、彼だからこそ向き合ってくれる問題かもしれない。
「ゼロさんには敵いませんね。そうです。俺は悩んでる」
決意した一眞は、ポツリポツリと話始める。
「俺は……この星だけじゃなくて、もっと広く……多くの星を救いたい。助けを必要としている場所に駆けつけて、多く命を救いたい。ウルトラマンとして。でも……不安なんです。この星を、みんなと離れることが……。ウルトラマンなのに、情けない話だとは自覚してます……」
だがゼロは笑うことも、否定し軽蔑することもなくただ黙って聞いていただけ。彼の話が終わるまでずっと。
「オレはウルティメイトイージスの力で、いろんな次元のウルトラマンと共に戦ってきた」
ゼロは左腕に巻かれた銀色のブレスレット”ウルティメイトブレスレット”を一眞に見せながら話してくれた。
「そいつらとは滅多に会えねえ。それでこそ宇宙の一大事ってレベルじゃなきゃな。でも、オレはそんくらいであいつらとの繋がりが……絆が途切れたなんて思っちゃいねえ。例え別々の場所でも、それこそ別の次元でも、オレ達は繋がっている。想いはずっと……残っていく。ここにな」
そう言ってゼロの拳は、一眞の胸を叩いた。
「どんなに離れたって、どんなに時間が経ったって、その絆が途切れる訳じゃねえ。互いが互いを信頼し、背中を押しあっているんだ。今もどこかで戦っている仲間たちがな」
「ここに残っていく……決して途切れない……」
胸をさすりながら、一眞はゼロの言葉を繰り返す。
ここまで紡がれた絆は、そんな簡単に消え去ることはない。見えなくとも、触れることができなくとも、築かれた想いは残っている。それが力となり、背を押してくれる。
「まあ……親父たちや、メビウスからの受け売りみたいなとこもあるけどな」
などと笑っているゼロだが、彼の口から語ったことは受け売り以上に自身の経験に基づく部分が大半を占めていることだろう。だってゼロの話は、自然と一眞の胸の内に響いてきたのだから。
「つってもこれは参考程度の話だ。実際に決めるのは一眞、お前だ。それは忘れんなよ?」
「わかってます」
薄っすらではあるが、何かが見えようとしている。それだけでも十分だ。
「さて……オレはもう少しここらを見てくる。お前ははやく戻れ。Aqoursのマネージャーとしてやんなきゃいけないこともあるんだろ?」
「はい。ありがとうございます」
一眞はホテルへ。そしてゼロは街の方へそれぞれ歩き出していく。
戻っていく一眞の背中は、先ほどよりもどこかたくましく見えるのだった。
~~
翌日、太陽が眩しく見渡す限りの青空の元、一眞たちが居るのはローマ。
人々で賑わう中、隣にいる月がビデオカメラを構えようとしていたのは、スペイン広場の中にある130段以上の大階段”スペイン階段”。
「ビデオカメラ、ありがとな」
「ううん、こういうのは得意だからさ!」
今の彼女たちならば大丈夫だろうという安心感が一眞の中にはあった。
昨夜、千歌と曜も果南や鞠莉と話ができたらしい。ここに来た理由、そして新しいAqoursとは何なのかを。今の一眞と同じであれば、おそらく彼女たちも何かを掴んでいるはずだ。
「一眞くんはどう思う。今回のライブ」
月が問いかけてくる。今回のライブに失敗は許されない。月にとって、以前見たものが見たものなので若干の不安があるのだろう。だが自身を見つめ直すことができて、そして3年生とも話せた今であれば────
「最高の結果になると思うよ」
「そっか……うん、僕も楽しみだよ!」
「だろ? 講堂で見たもんとは段違いさ」
しかしここでアクシデントが。
「おい、一眞!」
声の方向に目を向けると、ゼロが走ってくるのが見えた。普段とは異なる彼の雰囲気を察し、少年の目つきから戦士の目つきに変わる一眞。
「ごめん月、ちょっと外す」
「ええ!? ライブ始まっちゃうよ!?」
「すぐ戻る!」
ライブを見れないのは残念だが、自分に課せられた使命がある。彼女たちを守ることにも繋がるため、投げ出すことはできない。
「ゼロさん!」
「レイバトスが仕掛けてきた。行くぞ!」
未だ日常を謳歌している人々を風の様に潜り抜け、2人は高台に上る。
彼らが見据えるのは海。そこには禍々しいオーラが立ち込めていた。そのオーラは3つの形を作り、怪獣の肉体をもって海に生れ落ちた。
「こんな時に……」
呼び出された怪獣及び、ロボット怪獣は
「ああ、こんな時だからこそかもな。オレ達を誘ってんだろう」
「……」
ゼロの推測通りであれば、自分らがイタリアに来ているのはバレていた。そして誘い出すかのように怪獣を呼び出した。まるで掌で転がされているようだ。
「だとしても……ですよね?」
「わかってんじゃねえか。オレ達がいる星で破壊行為なんざ、2万年早いぜ! 行くぞ一眞!」
「はい!」
例えレイバトスの誘いだったとしても、怪獣たちを暴れさせていい理由はどこにもない。あの3体を倒してライブを守り抜く。そんな決意を胸にゼロは左腕を突き出し、一眞はオーブカリバーを手に取った。
ゼロの言葉が一眞の悩み解決のきっかけになったかと思います。そしてライブ中に乱入をかましてくるレイバトスさんェ……。
今回登場させた怪獣の3体については特にこだわりとかはありません。強いて言うならば、出そうと思って結局出さなかった面子ですかね。(在庫処理みたいでなんか嫌ですけど)
それでは次回の久々戦闘回にてお会いしましょう。