ということで(唐突)物語はいよいよ終盤に突入していきます。
イタリアでのひとときを終え、無事帰国した千歌たち。燻っていた想いも、鞠莉たちとのライブを通して消えたように思えた。であれば、こちらでやることは1つ。もう一度、6人でのライブを……。
「誰もいないずら……」
帰国早々8人が足を運んだのは分校。どうやら千歌の携帯にむつ達から分校に来るようにと、メッセージが届いていたらしい。しかし校庭には誰の姿も見当たらない。
因みにゼロはまた別行動だ。
「おかえり~!」
すると古い校舎の窓が開き、中からむつ達が顔を覗かせる。そんな彼女たちに従い、中へと入っていく。
「ごめんね。ライブの手伝いお願いしちゃって……」
6人でのライブを開催するにあたって、むつ達へ手伝いをお願いしていたことを謝る千歌。しかし当の本人たちは全く気にしていない様子。寧ろ浦の星の生徒全員が協力したいと答えてくれたらしい。
「実はステージのイメージもできてるんだ」
イメージ図を黒板に描いていたらしい。9色の虹が掛かったAqoursのステージ、バックには富士山をイメージした装飾、ロゴはバルーンを使用したりとコンセプトなどが事細かく書かれていた。
「すごいな……」
「でもこんな立派なステージ……」
「とてもじゃないけど時間が……」
豪華なステージであることは確かだし、ありがたいと思う。しかし1から作っていくとなると、生徒の数だけでは間に合うものではないと感じてしまう。
「そう言ったんだけどさ」
「浦の星だってちゃんとやれるんだぞって証明したくて」
あれこれ言われている浦の星への印象をどうにかして変えようとAqoursが頑張っていることを知っている。だからこそ、他の生徒たちも背中を押され、ちゃんとやれることを証明したいのかもしれない。
「それでも数、足りないんじゃないのか? 音響とかそこら辺は?」
「うん、そこら辺は不足気味なんだよね……」
やはり生徒だけでは足りない。なにか策はないかと考え始めたところ、横の方から声が聞こえてきた。
「「「はじめまして……」」」
制服を見るに静真の生徒のようだ。どうしてこんなところに……という問いは、同じく静真の生徒である月が説明してくれた。
「僕のところに相談しに来てくれたんだ。まだ一部の反対はあるけど、協力したいって。まだ少人数ではあるけどね」
けれど協力してくれる人がいるのなら、大きな前進であることに変わりはない。
とかなんとか思っていると、静間の生徒3人の目は善子へ向けられていた。聞けば彼女たち、中学が一緒らしい。
「あ、前世を知る者……だっけ?」
「うっさい。一眞は黙ってて!」
声の様子からもかなりテンパっているようだ。さらに驚くべきことに、動画配信も観ているらしい。
そのまま写真を一緒に撮ろうとまで話が進み、連絡先交換というところに着地した。最初は戸惑っていた善子ではあるが、事が終わればどこか嬉しそうだった。
「よーし、やるぞー!」
「でも向こうで歌った時と違って今度は……」
意気込む千歌とは反対に、不安げな花丸。イタリアとは違い、次のライブでは3人がいない。一度そのことでミスを犯していることもあり、どうにも拭いきれないのだろう。
「……できる。できるよ!」
しかし、その不安を断ち切ったのはルビィの一言だった。淀みなく言い切った彼女の表情は晴れ晴れとしたもの。イタリアでの出来事が、彼女をより成長させたのだろう。
Aqours、浦の星、そして静真の一部生徒。それぞれが協力し、ライブを行うために動き出したのだった。
~~
「答えはでたか?」
沼津の街中を歩きながら、ゼロと一眞は話している。その答えとはこの星に残るか、それとも宇宙で多くを救うか……という旨のものだ。以前から悩んでいた一眞は、イタリアにてゼロに打ち明けたのだった。
「はい。やっぱり俺は……みんなを助けたい。だから……」
その想いはやっぱり変えられない。今も怪獣や宇宙人の侵略で被害を受けている者が、この広い宇宙のどこかにいるとなれば、放っておけるわけがないのだから。
一眞の出した答えを察したゼロは笑う。
「そうか。だったら、あいつらにも言っておけよ。無言で去るだけはやめとけ?」
「わかってますよ」
会話をしながら見慣れた街並みを歩いていると、ある石碑に視線を移す。そこは自分にとってもまた馴染み深い場所である。多くの供え物が置かれた石碑の前には、今もまた願いを叶えんと手を合わせる人物の姿が。
「私……親友と喧嘩しちゃって……でも私は仲直りがしたい。そのキッカケだけでも……どうかお願いします」
どうやら躑躅色の髪をした少女は友達と喧嘩したらしい。その仲直りのため、想い石へ祈っているのだろう。
「一眞、お前はどう思う。レイバトスについて」
するとゼロはそのようなことを問いかけてくる。レイバトスと以前対峙したわけだが、已然その目的は見えてこない。いや、宇宙を支配するという目的があるのは知っている。が、それ以前にこなすべき”何か”を隠しているように思えるのだ。
「宇宙を支配する……そのためにウルトラマンを倒すってのはわかります。けど、今はそのためのタスクをこなしているんじゃないかと……」
「この地球でか?」
「はい。イタリアでも、特に大事を起こしたわけでもない。俺たちと対峙した時、もっと怪獣を蘇らせることだって出来た筈です」
「でも、それをしなかった」
一眞は首を縦に振る。あの時に畳みかけることだって可能だった。しかしヤツはそれをせず、姿を消しただけ。
「時間稼ぎか?」
「おそらく。その過程でウルトラマンを倒せればそれはそれでラッキー……なのかもしれません」
宇宙を支配下に置くために邪魔なウルトラマンを倒す。さらにそのウルトラマンを倒すために必要な”何か”を手に入れるため動いている。それが2人の出した結論だった。
「あの野郎、何考えてんだか……ん? おい、お前の携帯か?」
何処からか聞こえてきた着信音。それは一眞のポケットの中からだった。彼がすかさず手に取って見ると、相手は千歌のようだ。彼女は確か家で梨子と共に作詞をしていた気がするのだが、何かあったのだろうか。
「はいもしもし~。……え!? それ本当か? うん、わかった」
通話を終えた一眞は来た道を急いで引き返していく。
「すみませんゼロさん。用事が入ったんでそっちはお願いします!」
人間の限界を超えたスピードで走っていく一眞の背中を何も言わず……何も言えずに見送るゼロ。その後再び戻った静寂の中で、ゼロの小さな溜息が木霊した。
合流した一眞と連絡を貰ったAqoursは喫茶店内で思わず声をあげてしまう。3年生から告げられた言葉が、あまりにも予想外だったからだ。
「「「理亞ちゃんがAqoursに入る!?」」」
要はこっちに転校してくるということだ。今のうちに手続きを済ませれば、ちょうどこちらと同じタイミングで学校にも通えることが可能だと果南が説明してくれた。
「そうしたいって理亞ちゃんが言ってたの?」
「いいえ。聖良はまだ話してないって」
「でも、それが一番いんじゃないかって」
ルビィの問いに鞠莉と果南が答えた。
理亞の事情を知る聖良だからこその選択。新しく始めようとするスクールアイドルが上手くいってないのであれば、これまで関係を結んだAqoursに所属するという選択の方が彼女の精神的にもいいと判断したのだろう。しかしまだ決定ではない。ここは千歌たち現Aqoursの話も聞いておきたいとダイヤたちは判断し、この話を共有したのだ。
「どう思う?」
次に一眞が尋ねる。
「そりゃ全然嫌じゃないよ? Aqoursは何人って決まりはないし」
「一緒にラブライブを頑張った仲間だしね」
千歌と梨子は異論はなさそうだった。さらに隣の席に座る善子も答える。
「いいんじゃない。面倒くさそうだけど」
「お前、一言多いって……」
「善子ちゃんよりも沢山教えてもらうことがあるずら」
そんな中ルビィが声を挟んだ。「ダメだよ」と。
「理亞ちゃんはそんなこと望んでない。Aqoursに入ったって、今の望みは解決しないと思う」
「……どうしてそう思うんだ?」
はっきりと語ったルビィに対して、一眞はさらに問いかける。その声は優しくもあり、同時に真剣だった。千歌たちもルビィの言葉に耳を傾ける。
「だって理亞ちゃんはSaint Snowを終わりにして、新しいグループを始めるんだよ?」
姉と大切にしてきた……姉とやっていたからこそ大切にしたいグループだからそれを終わりにし、新しくグループを作る。Saint Snowという雪の結晶に負けないくらいの……新たな雪の結晶を。無論、それはAqoursに入ることではない。
「イタリアでお姉ちゃんたちと歌った時にわかったんだ。お姉ちゃんはいなくなるんじゃない。同じステージにいなくても、一緒にいるんだって」
理亞は未だに気が付けてないだけ。Saint Snowを終わりにし、聖良が居なくなっても、全部が消えて無くなるわけではないということに。
Saint Snowと同じものを作らなければと、ラブライブ優勝を絶対に果たさなければ聖良に申し訳がないと……。そんな自分の想いが彼女自身を押しつぶし、気が付けていないのだとルビィは話す。
「理亞さんの気持ちは、多分ルビィが一番わかっていると思いますわ。姉が卒業した妹という立場として」
北海道に行ったとき、同じ立場としてライブを披露し理亞とルビィ。妹の成長を改めて知った聖良とダイヤ。同じ立場だからこそ理解できるのかもしれない。
「だとしたらどうすれば……」
梨子は俯く。何を伝えればいいのかはわかる。けれどその方法がわからないからだ。
「そんなの簡単だよ」
「ああ。教えてあげればいい」
「一緒にいるって、ずっと傍にいるよって」
「一番大きなDreamを1つ叶えて」
彼女がどうしても叶えたくて、それでも取りこぼしてしまったもの。それをみんなの力で叶える。だとすれば方法なんて、いつものようにやってきたアレしかない。
皆の考えが1つになったところで、早速彼女たちは行動を開始するのだった。
~~
誰もいない早朝。冷たい空気が場を支配する中、理亞は1人走っていた。ラブライブ優勝を目指す彼女にとっては日課なのだが、今はあることを考えないようにするために四肢を動かしているのだった。
(姉さまの大切な夢を……私が壊してしまった……!)
いつになってもあの日の光景は、脳裏から消え去ることはない。
地区予選での予想外の大失態。そのせいで落選し、聖良とともに決勝のステージに立つことは叶わなくなってしまった。
観客たちの声が耳を突き刺す。優勝候補だったのに、という言葉が体を突き刺す。そして何より聖良の頬を伝う雫が……理亞の心を突き刺す。
気付けば理亞は、今までの走行ペースから大幅に速度を上げていた。
そしてその悲痛な叫びは、あの時の後悔……そして今、Saint Snowを超えるようなグループを作れない己の後悔、悔しさがにじみ出たものであった。
「はあ……はあ……はあ……はあ……」
走り疲れた理亞は、とある建物を見上げる。
今は、何も考えたくない。脳に酸素を送っているこの瞬間、少しボーっとする。この瞬きのような間は、あらゆることを考えなくていい。ずっと……このままでもいいのにと思ってしまうくらい、理亞は苦しんでいた。
「お悩みかい?」
ふと、声を掛けられる。視線を移した先には黒い制服を纏った男の姿が。そんな彼の雰囲気は、どこかAqoursのマネージャーと似通っているようで……。
「昔の僕なら、適当なことでも言って闇に引き込んだろうけど……今はしたくないな」
「な、何?」
1人で訳の分からないことを口走る男に、理亞は思わず聞いてしまった。だが男は「忘れてくれ」とだけ答える。なんだこの男は? と理亞は怪訝な目を向ける。
「友人の頼みで北海道に来てたんだ。結果何も異常はなし。だったけど、偶然会った君はなにか訳アリ……って感じだね?」
普段、このような見ず知らずの相手に聞く耳を持たない理亞。しかしこの時だけは違った。何も知らず、親しくない者だからこそ……自分が抱えているものを聞いてほしかった。
「そうか……。それは辛いね」
彼女の話を聞いて、男は答える。
理亞も、しっかりと目を見て頷いてくれていたことから、彼は適当に話を聞いているわけではないと感じていた。
すると目の前の男も、おもむろに口を開き始める。
「僕もね……あることをずっと後悔しているんだ。もっと別の選択肢があったんじゃないのか。もっといい方法があったんじゃないのか。あの時……僕がもっと早く決断していれば……彼女が死ぬこともなかったのかもなって」
男は地面を見つめる。少し経って、息を大きく吸い込だ後に顔を上げた。両目は涙が滲んでいるように見えた。
彼も、取り返しのつかない後悔を抱えている。
「でもその後悔と同じくらいに、思い出ってのは残り続ける。消えては無くならないんだ。絶対にね」
寂しく笑う男。しかしその後、「これは友人からの受け売りだけど」と続けた。調子の狂う男ではあるが、彼も彼なりに前を向こうと足掻いている。
「けどこういった話は、僕よりも彼女たちの方が……適任かもね」
そう言って別の方向へ視線を向ける男。釣られるように理亞も同じ方向を見ると、再び制服に袖を通した聖良の姿が。
「その恰好……どうして?」
聖良は無言で、携帯端末を取り出す。するとそこから聞き慣れない声が。
『それでは、これよりラブライブ決勝延長戦を始めます!』
意味がわからない。ラブライブはもとっくに終わっている筈。なのに決勝とは? それに延長戦とは一体どういうことか。理亞の思考が一瞬止まる。
『決勝に残った二組を紹介しましょうまずは────』
どうやらAqoursとSaint Snowの紹介がなされているようだった。
「今から私たちだけの……ラブライブの決勝を行います」
静かに聖良は告げと同時に、ある衣装を手渡す。それは決勝の舞台に立てたらと決めていたものだった。衣装と同じくダンスや曲もだ。
「姉さま……」
「もし、Aqoursと競うことになったら……決勝の舞台に立つことができたら……あなたに伝えようと思っていた」
目に涙を浮かべ、理亞は聖良の胸に飛び込む。叶うことならもう一度……と。
「泣いてる場合じゃないですよ……」
そう語り掛ける聖良も声が震えている。
『一緒に進もう、理亞ちゃん!』
端末から聞こえてきたのは、遠い場所にいる友の声。
『甘えてちゃだめだよ。理亞ちゃんや花丸ちゃん、善子ちゃんと出会たから……ルビィも頑張れたこれたんだよ』
多くの人の出会いが彼女を成長させてくれた。その中でもより大きなものは、自分と同じ歳の者たち。出会いと成長を経て、今度は自分たちの力で進んでいかなければとルビィは話すのだった。
『ラブライブは遊びじゃない』
初めて会った時、自分が放った台詞を返されるとは。当時であれば考えられない。理亞と聖良はともに笑う。そして次の瞬間には、ステージで歌う強い眼差しへと変化していた。
「歌いましょう。2人でこのステージで……Aqoursと全力で!」
────Believe again────
結局踊ることもなく消えていく筈だったそれは、友たちのお陰で披露することが叶った。
もうないと思った姉とのパフォーマンス。本来はあり得ることのなかったこの瞬間を理亞は勿論、聖良も駆け抜けていく。そこにはもう迷いがないのは明白だ。
決勝とは豪華さなんてものは比にもならないが、しかしそれでも彼女たちの……雪の結晶の輝きは相変わらず眩しいものだった。
「……今のこの瞬間は、決して消えません」
すべて踊り終えた後に残ったのは喪失感ではなく、満足感だった。
聖良は理亞の手を取り、さらに語り掛ける。
「私と理亞のこの想いは……ずっと心の中に残っていく。どんなに変わっても、それは変わらず残っていく」
包まれた手が温かいのは、単にライブを踊り終えたからではない。
聖良の気持ちも、これまで積み上げてきたものも消えてなくなることはない。いくら形を変えようと、いくら時間が経とうと、そんなことは関係ないのだ。
「だから、追いかける必要なんてない。……それが伝えたかったこと」
Saint Snowのように……なんて気負う必要はない。
あり得ることのない、けれどあり得たSaint Snowのパフォーマンス。それを終えた姉妹は再度抱きしめ合うのだった。
答えを得たその場所から、羽根が空へ昇っていく。
その羽根ははるか遠く。Aqoursのいる場所へと渡された。
楽しい時間はあっという間。ずっと続けていたいと思うけれど、それは叶わない。3年生にとっては、これが正真正銘のラストライブ。だから全力で伝えるんだ。彼女ら3人の想いを。
────Brightest Melody────
朝日に照らされながら舞う青い羽根は、瞬く間に白へと輝きを変える。
これはSaint Snowと同じく、Aqoursが新しく進むための決意でもある。去る者、そして続ける者。その両者に訪れる明日へ踏み出すための曲。
「凄い……」
ライブを中継しつつ、間近で見ていた月がそんな声を漏らす。圧倒的な熱量で押し寄せたそれは月の心を揺さぶったのだ。
「すげえな……これがスクールアイドルか」
このライブを見ていたのは月だけではない。今回はゼロもその様子を見ていたのだ。
「ですよね。俺も……彼女たちからは勇気をもらってるんですよ!」
一眞は彼女たちの姿を眺める。今の彼女たちであれば絶対……そんな確信が彼の中にはあった。
「このライブを僕たちだけしか知らないなんて……そんなの勿体ないよ!」
スマホを操作しだす月の目の前、パフォーマンスを終えた千歌は歩き出す。
「わかった……私たちの新しいAqoursが!」
ようやく長いトンネルを抜け出せた……そんな確信を持てた時だった。
巨大な地響きが彼女たちを襲う。
「なに……!?」
「なんだよ一体……!?」
「アレ見て!?」
そう誰かが言った。すれば自然と皆の視線がある一点を見つめる。そこには巨大で邪悪なオーラが集まっていたのだった。
「ゼロさん、あれって……」
「ああ。間違いなくレイバトスの野郎だ」
ライブの余韻をブチ壊されたことに憤る2人。
ただ、これがレイバトスの仕業であれば、オーラの集まった場所から現れるのは間違いなく……。
「みんな、逃げて!」
彼女たちを一瞥し、逃げるように伝える一眞。さらに月にも避難するように駆け寄っていく。
「月、みんなと一緒に逃げて!」
「一眞くんは?」
「俺もそのうち合流する。だから先に行っててくれ!」
すると彼女は次の瞬間、思ってもみないことを口にした。
「嘘。君逃げないでしょ。ウルトラマンだから」
「……え?」
一瞬のことで思考が固まる。
彼女のそれは揶揄うとか、適当に言っている……というわけではなさそうだった。しっかりと一眞の目を見て言ってきたのだから。
「いつから知ってたの?」
「わかんない。でもさ、白いロボットの時も、イタリアの時もどこかに行くんだよ? 疑わないわけがないでしょ」
返す言葉がなかった。今迄は上手く誤魔化せてたかと思っていたが、流石に無理があったようだ。
「ありがと。君のお陰で、僕たちはこうしていられる。スクールアイドルを知ることができた。だから、ありがと」
月はそれだけ言い残すと、皆と共に避難していった。
「……ありがとうは、俺が言う方なんだけどな」
小さく呟いた一眞の言葉は警報の音にかき消される。
数秒後、彼はゼロと共にオーラの蠢く地点へと駆け出していくのだった。
「沼津に……何が……」
早朝に起こった異変は、既に聖良たちも知ることになった。
「こっちはハズレか」
そう言って携帯を覗き込んでくるのは、理亞と話していた男。覗き込んだ後、彼はそのままどこかへ向かって歩いていく。
「待って!」
そう言って理亞は男を止める。何処へ向かうつもりなのか尋ねたいのだろう。
「ちょっとやばそうだからね。僕も行かないと。今度こそ……後悔しないために」
「あなたは一体……」
聖良も同じように問いかけてくるが、男は笑うだけで答えない。
彼の手に握られているのは、円形の上部に鍔と柄が合体したようなものだった。
「みんなの絆……使わせてもらうよ!」
叫びと共に掲げたアイテムから光が放たれる。
「もしかしてあの人も……」
眩い光と共に、黒い体の彼は姿を現す。赤く煌めいた彼の眼は背後にいる2人をもう一度映し、明るくなりかけている空へと飛んでいくのだった。
Aqours、Saint Snowそれぞれの問題がひと段落したところにレイバトスがまたやらかしてくれました。因みに次に出るヤツはデカいです。
途中で懐かしい要素を入れてみました。STAGE1終盤で触れたヤツですね。あと途中に出てきた「躑躅色の髪をした少女」はモブです。あまり気にしないでください。
そして唐突に入った理亞と男の会話。彼もなんやかんやで後悔を抱えて生きてます。彼女と出会った時、異なる救い方をしていれば……と。
次回からレイバトスとの決着へ向けて話は動きます。またお会いしましょう。