耐性スキルのために100回死んだら、死神になりました 作:暁月 聖人
毒を受け続けて死にまくった日の翌日。俺はログインして城下町の広場でスキルの確認をした。
もう何回死んだか分からないがその甲斐はあった。【毒耐性中】を獲得したのだ。それ以上上げるには猛毒を受ける必要があるな。確か、奥に進むとデスポイズンスライムなるモンスターが出るらしい。そいつが吐く猛毒液を食らい続ければ、また上がることだろう。死にやすくなるだろうけど……。
でも、今回は別の耐性を手に入れよう。そう、麻痺耐性を手に入れよう。
麻痺は厄介きわまりない状態異常だ。だって、麻痺になったら動けなくなるんだから。俺が最も手に入れたい耐性スキルである。
「こいつだな」
だから、昨日よりも少し奥に進んで、【パラライズウルフ】という麻痺攻撃ばかりしてくる狼モンスターを見つけ、攻撃を受けた。
確率がそんなに高くないのか麻痺になるまで少しかかった。
「マジで動けない」
麻痺状態になっているため、倒れて動けなくなる。その間もパラライズウルフは俺に攻撃してきた。
と言っても、パラライズウルフの攻撃は俺にあまり効いてないのだが。1しか受けてないし。
「おかしいな。レベルは1のままだぞ?」
よほど攻撃力がないらしい。掲示板でボスと状態異常以外は初心者向けと書かれていただけはある。
しかし、もう麻痺は解けてもいいのに、まだ動けない。どういうことだ?
『スキル【麻痺耐性小】を取得しました』
え? まさかとは思うけど、麻痺をかけられ続けてるから麻痺が治らないってことか?
「……あー、暇だ」
しばらくしてHPは全損され、城下町に転移された。そして、すぐに麻痺耐性を強化するために再度パラライズウルフに挑み、麻痺を受け続ける。
昨日も思ったが、この作業は根気がいるな。だって、城下町とダンジョンを往復しまくるのだから。
「さて、張り切っていきますか」
俺は再び例のダンジョンに向かった。そして、麻痺を食らって城下町に死に戻るのだった。
何回毒や麻痺を食らい続けたのだろうか? 数えるのが億劫になり、30くらいから数えなくなった。
しかも、耐性スキル獲得の道は毒と麻痺で終わらない。凍結、睡眠、スタンとあるのだ。特殊な状態異常もあるそうだが……それは諦めよう。
凍結に対する耐性はアイスマン(雪色のビックフット)、睡眠に対する耐性はウトヒツジ(眠そうにうとうとした羊)、スタンに対する耐性は超光虫(めっちゃ眩しい蛍)で上げていった。
そして、【毒無効】、【麻痺無効】、【氷結無効】、【睡眠無効】、【スタン無効】を手に入れた。
さらに、死亡回数は100回は超えているらしかった。
というのも、【起死回生】というスキルを手に入れた時、取得条件にそんなことが書いてあったのだ。
【起死回生】
1日1回に限り、HPが1残った状態で復活する。また、今まで受けてきたダメージを倍にして相手に与える。
取得条件
レベルが1の状態で死んだ回数が100回に到達すること。また、それまでに魔法、武器による攻撃を一切行わないこと。
え? 何このチートスキル? 取得条件おかしい! こんなことするやつなんて普通いないし!!
「【死罰軽減】もそうだけど、何で運営はレベル1前提で手に入るスキルを実装してるんだよ……」
レベル1なんて1回でも戦闘に勝てばすぐに上がってしまう。そして、初めてログインした大体の人は戦闘して勝ってみたいはずなので、俺みたいに長期間レベル1の人はいない。
「ゲーマーに恨まれる要因が増えちまった……」
ただ耐性スキルを手に入れたかっただけなのに、何でこんなスキルが手に入るんだ?
「そんなことより、ようやくレベルを上げられる……」
苦労した……いや、マジで。始めてから1週間は経ってるぞ。
だが、どうするかな……。
「防具はおろか武器も金もない」
デスペナルティで失うのは経験値だけではない。金や所持品も失くなってしまう。だから、持っていた所持金は失くなったし、装備も失くなった。いや、装備は耐久値が全損したからか?
「仕方ない……素手で倒すか」
掲示板で素手で倒したとか自慢したやつがいた。素手で倒すことは可能なのだろう。時間はかかるだろうが。
場所は……森? いや、あのダンジョンでいいか。
運営はとあるプレイヤーによって騒ぎになっていた。
「嘘だろ!? 【起死回生】を手に入れたやつがいる!?」
「馬鹿な!? レベルを上げずに何をしてるんだ、そのプレイヤー!?」
【起死回生】は運営が悪ふざけで実装したスキルだ。手に入るわけないと踏んで凶悪なスキルに設定してしまったのだ。
そもそもの話、初めてすぐにレベルをあげることをせず、攻撃もすることもなく、ただやられまくって死んでいくプレイヤーが出てくるなんて誰も想像できないだろう。いたとしても100回も死ぬなんて普通ではない。
「名前は?」
「ブレイブというらしい」
「
勇者とは思えないプレイしているブレイブに運営は首を横に振る。
因みに、彼がブレイブという名前にしたのは自分の名前が『勇気』だからなのだが、運営がそれを知る由はない。
「【地獄神殿】を周回してる!? よ、よりにもよって、地獄神殿……」
「え? マジで? あそこってあのギミックがあるよな?」
「だ、大丈夫だろ? 多分……」
運営が話題に上げているギミックというのは地獄神殿での死亡回数に応じてボスが変動すると言うものだった。
地獄神殿のボスは【地獄鬼】という棍棒を持った鬼だ。だが、それが死亡回数が10回なら【地獄豪鬼】、30回なら【ツインヘッドウルフ】、50回なら【ケルベロス】と言った具合に強いモンスターへ変動していくのだ。当然、100回も地獄神殿で死んだブレイブが戦うボスは【地獄鬼】ではない。いや、それどころか変動するボスの中でも最強のボスになっている。
ろくにダメージが通らず、毒くらいしかまともに死ねないダンジョンで何でそんなギミックを実装したのだろうか?
「……見守るか」
「だな。もし万が一あれが単体で倒されたら……そのときになったときに考えよう」
「そもそもあいつは倒されないって。HPが一定以下になったら1回限りの即死確定攻撃するんだぜ?」
「いや、そんなボス実装するとかバカだろ」
あれ、あいつと呼ぶボスを作った運営の一人が親指をたてて言う。そいつに対して全員が冷たい視線を送るのだった。
無理もあるまい。そんなボスがいるとプレイヤー側に知られたらクレームが殺到すること間違いなしなのだから……。
俺は地獄神殿で経験値稼ぎを始めた。
「ふぅ。レベルが上がった」
素手でポイズンスライムを倒して、ようやくレベルが上がった。
しかし、初めてレベルが上がるのに1週間以上かかるって……。
「とりあえず……レベルを10くらい上げておきたいな」
ボスに単体で勝つにはそれくらいは欲しいよね。
ということで気張っていこう。
俺はモンスターを素手で倒していき、経験値やお金を稼ぐ。
攻撃を受けてもそんなにダメージは受けないし、状態異常にならない。なにも装備してなくても倒せるっていいね。時間はかかるけど……。
ある程度狩り、レベルが8になったところでログアウトした。
「うわ。またすごい時間になってるな……」
時間は夜の8時。ガッツリプレイしちまった。
「お兄ちゃん。いい加減にゲームを止めないとって戻ってきてる」
俺は被っていたVR専用ハードを取ってベッドから降りたところで、妹の桜が俺の部屋に入ってきた。
「おう、桜。母さん、怒ってる?」
「怒ってるよ。激おこ。もう、勇気お兄ちゃん、ゲームは程程にね」
「うぇーい」
「はいでしょ? 私も怒るよ?」
つめたい目で桜は俺を見て叱る。俺ははい、分かりましたと適当に返事した。
「それにしても、そんなに面白いの?」
「面白いぞ。レベルも8になったし」
「え? お兄ちゃんってそのゲームを始めてもう1週間になったよね?」
おかしくない? と目で訴えていた。うん。俺もそう思う。
「色々あるの。スキルの獲得とかスキルの獲得とか」
「私、ゲームのことはよく分からないけど、お兄ちゃんのゲームの遊び方がおかしいってことはわかったよ……」
桜は呆れのため息をついて、部屋から出た。俺もその後を追いかけるように部屋から出た。
尚、母さんにゲームのやりすぎとかゲームにかまけて成績が悪かったらどうなるか分かってる? とか説教されたのは言うまでもない。
第二回イベントで主人公はどう参加する?
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メイプルとサリーと行動(ハナは不在)
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兄妹だけで行動
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メイプル、サリー、ハナの三人と行動
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ブレイブだけで行動する(ハナは不在)