耐性スキルのために100回死んだら、死神になりました 作:暁月 聖人
シロップ、朧、ランタナの3匹が生まれてから翌日、俺達は渓谷の探索を続けていた。
テイムモンスターの3匹は今は一緒にはおらず、指輪にいる。何でもレベルが上がったことで【休眠】と【覚醒】というスキルを覚えたらしく、【休眠】で指輪に収納し、【覚醒】で呼び出すようだ。あれだ。指輪が某モンスター育成ゲームの某モンスターを収納するボールの役目を担えるようになったんだな。
昨日は下流を探索して数時間、霧の発生源と思われる壺を発見した。
泉の水を吸い上げている壺からは白い霧が出続けており、明らかに何かあると分かった。
「調べるか」
「メダルがあるといいね」
俺達は泉の中に入ったその時、それがイベントのトリガーだったのか風が突然止み、濃霧が一瞬にして俺達を包み込んだ。
「うおぉぉぉっ!?」
「うわっ! あぁぁぁっ!?」
そして、俺の体に浮遊感が襲いかかり、どこかに落下していく。
「ぐっ」
「きゃっ」
気づけば俺はどこかの洞窟へ落ちてしまっていた。サリーも同様に落ちてきており、すぐに上を見上げた。
「油断した。まさか、ここで落とし穴なんて」
「高そうだな。上るのは無理だ」
俺も見上げると穴はとても小さく見えるほど遠く見えた。
「っと敵さんだ」
「みたいね」
俺達の前に現れたのは白銀騎士だ。騎士は俺達に向かって駆け出し、剣を振るう。それを避け、左右から攻撃スキルで反撃して倒した。
「余裕余裕」
「あれ? メイプルとハナちゃんじゃない?」
騎士の先にメイプルとハナが見えた。俺達は安堵して近寄る。
だが、俺は違和感を感じた。あれは本当にメイプルとハナなのか?
「【
「【フレアドライブ】」
「「っ!?」」
2人が突然俺達に向けて攻撃してきた。攻撃を避けて後退し、冷や汗をかく。
あの2人は偽物だ。間違いない。2人が攻撃してくるとは思えない。
「「あははははっ!」」
「うっわっ。最悪だよ。尤も戦いたくないタッグが相手とか……」
「初心者コンビと言えば弱く感じるけど、その中身は異常なステータスと異常なスキル持ちだものね……」
片方は機動力は特化型並、火力は超圧倒的の魔法使い。もう片方は防御貫通攻撃でなければダメージを与えることを許さない超堅牢大盾使い。
お互いの弱点をカバーしあい、大体の敵を無傷で即掃討できる凶悪といえるタッグである。俺達が嫌な顔を浮かべるのは無理のない話だ。
「やるしかないか」
「ええ」
霧の中、何とかメイプルとは合流できた私はブレイブとサリーさんの声を頼りに歩いていた。
「あ、ここから聞こえる!」
「……穴?」
底を覗いてみたけどなにも見えない。だけど、武器がぶつかり合う音と2人の苦しそうな声が聞こえる。
……違和感がある。ブレイブがこんな声を上げる? そもそも底が見えないくらいに深いのにここまではっきりと音が聞こえるのはおかしい。
これって罠なんじゃ……。
「今行くね!」
「え!? メイプルさん!?」
メイプルさんは躊躇せずに穴へ飛び込んで行った。私も覚悟を決めて穴へ飛び込む。
「サリー!」
穴の底に落ちたところで、メイプルさんが驚愕の声が聞こえた。
メイプルさんの方を見ると私も驚いてしまう。あのサリーさんがダメージを負ったからだ。
ブレイブが懸命に騎士と対峙していたが苦戦してるようだった。
……やっぱり違和感がある。でも、使ってるスキルはブレイブのものだ。
「【激雷】!」
私は今は深く考えず騎士に強力な雷を落とす。その一撃により騎士を倒すことができた。
「助かったよ、ハナ」
「……机の引き出しの一番下の二重底」
「?」
反応しない? やっぱりこのサリーさんとブレイブは……!
「メイプルさん! 離れて!! そのサリーさんは偽物です!!」
「え?」
「【ディフェンスブレイク】」
「ふふふ。あははは! 【クロスサイズ】」
メイプルさんは心配して駆け寄っていた偽サリーさんに防御貫通のスキルで攻撃された。私も偽ブレイブの鎌で攻撃されたけど、咄嗟に避けて距離を取った。
「【カバームーブ】! これ、どういうこと!?」
「【ヒール】。ドッペルゲンガーってやつかもしれません」
【カバームーブ】で私のところへ移動してきたメイプルさんに私は回復させつつそう説明した。
「【地獄の業火】」
「【カバー】! ドッペルゲンガーって何?」
「簡単に言えば自分の分身です。もしも出会ってしまったら死ぬと言われてます」
偽ブレイブの魔法を防いでくれたメイプルさんが私の説明に納得の顔を浮かべた。
「【フレアドライブ】。まずいですよ。メイプルさん、ブレイブの近接攻撃は避けるか【悪食】で防がないと下手したら即死が発動します」
近づいてくる偽サリーさんに牽制で魔法を放ち、メイプルさんに言う。それにメイプルさんはハッとした。
「そっか!? サリーを麻痺で止めて、先にブレイブを倒そう! 【パラライズシャウト】!」
「あはははっ! 【フレアランス】!」
範囲魔法の麻痺攻撃で偽サリーさんを麻痺状態にしようとしたけど、偽サリーさんは何事もなく動いていた。
「麻痺に耐性があるの!? サリーには耐性のスキルなんてないのに……!」
「サリーさんが使えなかった魔法を使うところを見るにオリジナルよりも強化されたドッペルゲンガーってことですか。そうなるとブレイブも……厄介極まりないです。笑えないですよ、ホント」
とはいえ、偽サリーさん自体はそこまで厄介ではない。サリーさんの強さの由縁は色んなゲームから培ってきたPS。スキル、ステータスを真似できても異常なPSは真似できないはず。
だけど、偽サリーさんに集中すると偽ブレイブの即死であっという間に全滅だ。メイプルさんの言うように偽ブレイブを倒すことが先決。
でも、【起死回生】と【逆境】がスゴい厄介だ。あれで下手したら私どころかあのメイプルさんすらもカウンターワンパンされかねない。
……でも、倒す方法はある。私1人なら無理だったけど、メイプルさんと一緒なら……。
「メイプルさん。ブレイブへ接近します。【カバームーブ】で移動しつつ、私を【カバー】で守ってください。それと、【悪食】はブレイブの近接攻撃以外に使わないでください」
「わかった!」
「行きますよ! 【精霊結晶】!」
私は精霊結晶を展開して偽ブレイブへ接近した。
それを偽サリーさんが見逃すはずがない。私達に向けて接近し、攻撃してきそうになるけど、私は精霊結晶による魔法で牽制した。
偽サリーさんを近づかせてはダメだ。防御貫通スキルで攻撃されて、メイプルさんのHPが減ってしまう。
「【サイクロンカッター】」
「【カバームーブ】からの【カバー】!」
偽サリーさんは私へ向けて魔法を放つけど、メイプルさんが守ってくれた。
「【地獄火球】」
「【カバームーブ】! 【カバー】!」
「【風精霊の衣】! 【超加速】! 【聖魔剣】!」
私に向けて偽ブレイブの魔法が放たれる。それをメイプルさんが防ぎ、私は【風精霊の衣】、【超加速】でAGIを上げて一気に接近、漆黒の剣で偽ブレイブを切り裂いた。
普通はこれで終わる。でも、偽ブレイブは【起死回生】で復活して、白く輝く鎌を構えた。
「【カバームーブ】! 【悪食】!」
偽ブレイブのカウンターによる一撃はメイプルさんの盾で完全に防がれた。即死も【悪食】で攻撃を吸収されてため発動しない。
後は簡単だ。HPが1であろう偽ブレイブを倒すだけ。でも、ここからが本番だ。
「【
【起死回生】が無駄に終わった偽ブレイブは【逆境】によって高くなったAGIで逃げる。それを私は追う。距離を離れると魔法が当てにくくなるからだ。
偽ブレイブのAGIは【逆境】の効果で2.5倍。それに対して私は【風精霊の衣】の20%増加、【超加速】の50%増加で、完全に負けてしまっている。
だけど、【聖魔魔法】の熟練度が上がったことにより獲得した【
【
「【聖魔砲】!!」
近距離からの魔法攻撃。偽ブレイブは避けることができずに魔法を直撃して倒された。
だが、気は抜けない。まだ偽サリーさんが残っているのだ。
「ぐっ」
「メイプルさん! 【テンペストボール】、【操作】!」
メイプルさんが偽サリーさんに攻撃されてダメージを受けていたのを見て直ぐ様魔法を放つ。
放たれた魔法はすぐに躱された。でも、そんなこと予想していた私は魔法を操作して追撃する。
「嘘……」
相手は本物のサリーさんじゃない。躱せるはずはないと思っていたが、速さを全力で活かして躱していた。
魔法は自然消滅し、偽サリーさんは反撃で魔法を放つ。それをメイプルさんが防いでくれた。
「すみません、メイプルさん」
「ううん。でも、避けられちゃったね。当てられそう?」
……さっきのは偶然ではないと思う。
精霊結晶はまだ健在している。挟み撃ちで放って拡散させれば当たるはず……。
「【フレアドライブ】、【爆散】!」
私は精霊結晶を偽サリーさんを私と精霊結晶で挟むような位置に移動させると魔法を放つ。
挟み撃ちにあう偽サリーさんは逃げようとするけど、その瞬間に魔法を拡散させた。
「【跳躍】」
だが、それすらも高く跳ぶことで避けられてしまった。信じられない……。でも……。
「……メイプルさん!」
「【
メイプルさんの三つ首の毒竜が放たれる。空中なら逃げられないはずだ。
そう思ったのに、毒竜は偽サリーさんを透き通ってしまった。
「サリーの【蜃気楼】だ!」
「ここまで厄介だったとは……」
AGIを上げるスキルはまだ使えない。……いえ、使って接近するのは愚策。メイプルさんの【カバームーブ】圏内で行動するのがベストだからだ。【蜃気楼】で避けられてカウンターなんてことが起きるだろうし。
「どうする?」
「私が死ぬ前提なら手がありますが……」
メイプルさんの【ヴェノムカプセル】で追い詰めるという作戦だ。でも、私は毒にかかって死んでしまうし、時間がとてもかかる作戦でもある。
「それはダメ!」
わかってはいたけど、メイプルさんはこの作戦は却下した。
なら、どうしよう? もう少し動ける範囲が狭ければすぐ倒せるのに……あっ、それだ。
「メイプルさん。作戦があります」
私はメイプルさんに作戦を伝える。それにメイプルさんはやる気を出して、盾を構えた。
「【ガイアタワー】」
偽サリーさんの下から小さな山が勢いよく出てきた。だが、それを偽サリーさんはヒラリと避ける。
「【フレアドライブ】、【操作】、【ガイアタワー】」
今度は【フレアドライブ】を放って、操作する。それを避けられるも続けて【ガイアタワー】を放つ。
それを繰り返す。ただ無駄に魔法を放っているわけではない。偽サリーは後になって気づくだろう。
自分は誘導され、石の山に囲まれてしまい、移動範囲が狭まれていることに……。
「メイプルさん! 今です!」
「【
偽サリーが石の山のせいで移動範囲がほとんど奪われるとメイプルさんの【
偽サリーさんは石の山を使って壁ジャンプして上へ上へと逃げる。それが狙いに気づかずに。
「終わりです。【エクスプロージョン】!!」
偽サリーさんの向かう先に爆発を起こす。偽サリーさんは【蜃気楼】で逃げることもできずに爆発に巻き込まれ、消滅した。
「やった!!」
「やりましたね。でも、これは本物のサリーさんじゃないから通用したって感じです」
本物のサリーさんならこうはうまく行かない。途中で気づいて対応してくるはず。
「うーん。そんな難しいことはなしで、勝ったことを喜ぼう!」
「……そうですね」
「ハイタッチ!」
「ハイタッチです」
私はメイプルさんとハイタッチを交わし、勝利の喜びを共有した。
……さて、向こうは大丈夫かな? きっと、私達の偽物と戦っているんだろうけど……。
第二回イベントで主人公はどう参加する?
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メイプルとサリーと行動(ハナは不在)
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兄妹だけで行動
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メイプル、サリー、ハナの三人と行動
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ブレイブだけで行動する(ハナは不在)