木々の生い茂る鳥獣や昆虫の楽園に、暴力的な大きさと形状を持つ機械仕掛けの生命体が跋扈していた。
「メガトロン様、一体どうしてお逃げになられたんです?」
セントヒラリー山から離れたこの山岳地帯の麓にデストロン軍団はすっかり根を下ろしていた。剽軽な声を湿地帯に響かせるのはフレンジーであった。
「これではスタースクリームの奴も、どうなったか分からないじゃありませんか」
「バカ者! ロボスマッシャーが誤作動を起こしている可能性があるのだぞ! アレは洗脳に失敗すると大爆発を起こす危険があると先刻も説明したではないか!」
黒と淡青の翼を広げる二人のジェットロンは顔を見合した。赤い外眼部のレンズが胡乱な光沢を放つ。
「するってぇと、スタースクリームは死んじまったって事か?」
些々な疑問を洩らしたのはスカイワープだった。航空参謀の死について、それがこれからの日常に支障を来たすと考えている同胞は独りもいなかった。
「そうなるが……もし洗脳が上手く行ってたら、今は」
「サイバトロンの連中に粉々にされてるんじゃねえのか?」
サンダークラッカーの返事に、ブリッツウィングが口を挟んだ。何処となく活気づいた会話に兵士たちのリーダーは少々倦厭した。こうしている時間はあまりにも無駄だと結論を見出し、メガトロンはグレーの胸部に宿ったデストロンのインシグニアを擦りながら命令を下した。
「よいか者ども! スタースクリームが死んだと考えるのは早計だ。もし洗脳されず、そして逃げ延びていたとしたら厄介だ。それに備えこれからエネルギーを得るため工場を襲撃する! 行くぞ!」
メガトロンの部下一同は、彼の指令に一切の疑念を持たずに後を追った。
*
「司令官、こんな奴基地に連れて来たって仕方がありませんよ、デストロンの作戦に違いない!」
そこにいるスタースクリームに対する反意を抑え切れずにいるのはアイアンハイドだ。妙に大人しく連行された敵軍の参謀を迎え入れる珍事態に、首を傾げない者はコンボイ以外にいなかった。
「この変わった客を受け入れる必要はないさ、だが、客人には武装を解いてもらおう」
「言われなくても、こんな卑怯者の好む武器なんていらねエ」
サイバトロンたちは目を丸くした。下劣な彼が自分からナルビームを床に抛ったのを目撃していたからだ。
「ヘッ、今度はそういう企みなんだろ? 一丁ここは怪力ゴング様が口を割らせてやろうじゃないの──」
「待てゴング! それは彼が私を攻撃したらでいい」
スタースクリームは間が悪そうに、そして低く呻るように喋る。
「テメエら人の事ばっかり聞きやがって……少しは自分から話しやがれってンだよ」
「司令官、やはりコイツ記憶を失ったんでしょうか、明らかに戦意までありません……怖がりこそしませんが」
二人の間にマイスターが顔を覗かせた。コンボイ司令官は慎重な態度で接する。
「この様子は本当にそうかもしれん……だが、だとするとメガトロンはなぜ──」
「メガトロンだと? あの野郎まだ生きてやがるのか!?」
面前のコンボイを突き飛ばし、スタースクリームは威勢よく叫ぶ。
「アイツを放っておくんじゃねえ! 近くにいるのか? 今から叩き潰しに行くぞ! 次にまた何をするのか分かったもんじゃねえ」
ゴングはコンボイの言葉に従い、スタースクリームを羽交い絞めにした。
「コイツ、暴れるんじゃねえ!」
次第に二人は揉み合いになったが、直ちにコンボイが制止した。
「止せい!……スタースクリーム、お前はまたメガトロンを裏切ったのか」
「スタースクリームだとオ? あんなトランスフォーマーの面汚しと一緒にするんじゃ──」
スタースクリームのボディをした『彼』は、テレトラン1のスクリーンに反射された自分の姿をふと目にした。
「……こりゃヒデエ冗談だぜ」
「どうした?」
彼はコンボイの問いに、まるで自分が不本意に誰かに乗り移ったかのような振る舞いで息を潜めて語った。
「畜生……テメエらサイバトロンだろ? そんでもってオレはかの裏切者のスタースクリーム」
「そうだが……思い出したようだな。話を聞かせてもらえるか」
デストロンの裏切者の姿をとる『彼』は、その粗暴なセリフとは裏腹に、また歴史を守らねばならないと独りで考えていた。
同時に歴史が今まで守られていたのを確かめ、戦友たちとの成功を内心喜んでいた。
扇風機かけっぱなしで寝たら体ガチガチになりました。