最初の謀反は、惑星に不時着した時だった。
「……『メガトロン』! いいか、オレにはまだ洗脳装置の名残が残っていやがる」
次がゴールデンディスクをぶっ壊した時だ。
「なんだと!? 貴様このワシを脅すつもりかっ」
それで、三回目は……二度目の死を迎えた時。
「あァそうだぜ『メガトロン』。だがな、洗脳に失敗した時の措置として、自爆機能を実装したのはどこのどいつだ?」
そして今、役目を終え永遠へと旅立った戦士は、再びメガトロンの名を冠する者に反逆を企てるのである。スタースクリームのボディを持ったメタルスダイノボットを見守っているのは、コンボイ司令官だけではなかった。
「なぁ、どうするつもりなんだお前さんは」
ゴングがパーセプターに指を差したのと同じようにして、厭らしく問う。機能の不調を回復しつつあるのか、ダイノボットは大声で返事をする。
「うるせえぞアンポンタン! テメエはそんな事より戦いに専念してろ!」
沛雨みたいに降り注ぐビームレーザーの類を巧みに躱し、スタースクリームのボディは絶望的な空に舞い上がる。
「おい! 君はまさか!!!」
コンボイの裏返った声に、彼は振り返らなかった。
「このデカブツを恨むんだな、『メガトロン』!」
ダイノボットは時限爆弾のリミットに合わせて行動していたのである。……ボディと回路の拒絶反応に耐えながら。
「よ、よせええええええッッ!!!!!」
ロボスマッシャーによって洗脳された人格は、全く想定していないものだった。メタルスダイノボットという未知なるトランスフォーマーの部品が混在した事、そして自爆装置が誤作動でスタースクリームのボディに取り付けられてしまったという事がメガトロンの計算が狂った原因である。
ビルドロン師団に修復を任せているあの時に、ワシが点検しておけば──
「あばよッ」
彼はデバスターに向かって特攻した。ビルドロンの手違いによって甦った仮初めの命は、祖先への貢献という形で本当に最期を迎えられた。
*
スタースクリームの自爆によって、デバスターが鉄屑となった。結果的に、デストロン軍の大きな痛手に繋がる事件だったというのが共通認識だ。
「アダムス、コピーの居場所は判明したかね」
「いいえ司令官、今日も影ひとつ見当たりません」
かの事件以来、デストロンの活動は鳴りを潜めている。沈静化した敵軍を怪しむ者はいたが、しかし被害が出ないのは喜ばしかった。
「もう一年にもなりますよ司令官。諦めてもいいんじゃないでしょうか」
「……そうだな。いつも君にばかり任せてすまなかった。もう大丈夫だ、アダムス」
コンボイは毎晩、闇夜を見ては黒い自分の姿を重ねていた。
「ねえ司令官、この所疲れてない? スクランブルシティ計画は大丈夫?」
スパイクが気遣うが、彼の厚意は司令官に届く事はない。
「問題ないよ、スパイク」
*
そんな戦争の日々がいつしか終焉を迎え、グレートウォーと呼称されるようになった気の遠くなる未来。数万年という時が過ぎ、惑星ガイアに墜落した母船ユキカゼは乗組員の手によって改造され、サイバトロンの拠点として鎮座している。
「ん? ライオコンボイ、何持ってんだ?」
警備の任を終えたタスマニアキッドは総司令官が手にした破片めいたものに興味を持った。
「これか? 見てみろ、すぐにわかるぞ」
「どれどれ~……って、ゲェッ」
コピーマシンの焦げた回路の破片と、割れたレンズ部であった。これがコピーマシンだというのがすぐに判ったのは、やはり拾ってから相当眺めていたからに違いない。
「ライオコンボイ、なんでそんなモンまだ持ってるんだよぉ」
自分の失敗と、自分たちの不気味なコピーに襲われた記憶が彼の回路から呼び出される。ダイバーの機転によって解決してしまったというのも、また不服を感じてしまう原因となる。
「キッドを貶めるために持ってきたわけじゃない。……キッド、消えていった影のような彼らは、何を思っていたろうな」
「そ……そりゃ、俺たちに成り代わって本物になろうとしてたんだろ?」
ライオコンボイは、モニターからキッドの方へ振り向いた。その赤色の胸には、静かにエネルゴンマトリクスの光が揺れている。キッドは少々居心地の悪さを覚えていた。
「彼らは自分を本物と信じていたよ」
「結局何が言いたいのさ」
キッドは降参だという気持ちを自ら露呈し、浅慮を詰らないでくれと言葉の裏に意思を込めた。言外の意思表示はライオコンボイに伝わったようである。
「こんな装置……誰が創ったんだろうなと言いたかったんだよ」
*
惑星ガイアの大気圏に、まるで無重力空間における火のような丸い物体が漂っていた。
──ここはどこだ……クソッ、なんか知らねえが寒いったらありゃしねえ。ああ、ここは地球、なのか? メガトロンはこのデストロン軍の貢献者であるオレ様を差し置いてどこへ逃げたってんだ? ……大体、オレ様はどこに向かっているんだ? 方向指示器もありゃしねえ、ただ動いている事しか認識できやしない! 一体どうなってやがんだ!?
「お前は死んだんだよ……」
な、なんだテメエは!
「お前と同じ存在だ。かつて、お前やお前に似たスパークを持つパーソナルコンポーネントと一緒にされちまった影響で、オレの人格までお前のスパークに引っ付いちまったんだよ」
ふざけやがって、ワケの分からない事を!
「ハァ~ア……何万年もかかりそうだなア、この大バカ野郎に現状を教えんのはよオ!」
ダイノボットとスタースクリームは永遠の友達になったのかも知れない。
おわり
本来の歴史とは大きく異なる結末を辿ったものの、少なくともBWⅡの時代にとっては些末な出来事だったようです。
或いは、オルタニティのような存在が歴史を修正したのかも知れません。