FLOWER KNIGHT LEAF   作:藤宮ぽぽ

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3-4 あるいは、歴代最強の――

  

「……どう思う、団長さん。この編成?」

  

 

 騎士団の中枢部である、団長の執務室。

 そこは今、部屋の主のほかに、ひとりの花騎士を迎えている。

 

 

「……ちょうどいい機会だし、これで隊長の座はモミジに譲るわ」

 

  

 それでいいのか、という団長の問いに――あの子なら充分に務まるはずよと、スズランノキは笑いながら答えた。

 

  

「そもそも私よりあの子のほうがリーダー向きだって、団長さんも分かってるはずでしょ。私はサポート役に徹するほうが性に合ってるもの」

 

   

  

  

 この場の話題の焦点。

 それは、これまでスズランノキが隊長を務めていた部隊の再編成に関して、というものだった。

  

 害虫との戦いは、日々衰えることがない。ゆえに部隊の拡充や見直し、検討といった物事は、騎士団にとって常に切り離すことのできない案件だ。

 今回は再編成を機にメンバーを増やして強化を目指すのはもちろん、場合に応じて騎士団の中核として他の部隊を率いるということも視野に入れている。

 

 

「モミジが隊長となって先陣をみずから切るようになれば、その姿を見た他の花騎士たちは大きく勇気づけられるわ。まあ、身内にとってはハラハラすることも多いだろうけどね」

 

 

 戦場でのモミジの果敢さは、スズランノキだけでなく団長もおおいに認めるところだ。

 とはいえ、一方で懸念がないわけではない。

 

 

「モミジと、それにニシキギ。普段の生活でだって、2人の面倒を見るのは大変なんだから。だから……彼女は、絶対に必要なメンバーよ」

 

  

 だからスズランノキは強硬にイフェイオンを推すのか、と、団長は納得した。

 

  

「あの子の観察力なら、本当に危険なところまでモミジが足を踏み込もうとすれば、それを止めることができる」

 

  

 ……そして逆に、イフェイオンがなにか屈託を抱えたときは。モミジの真っすぐな性格が、そこに光を当ててくれる。

 

 見解は、期せずして一致していた。

 モミジとイフェイオン。実のところ2人はなかなか相性がいいのではないだろうか――と、団長とスズランノキは思っているのだった。

 

 

「私はニシキギの相手だけで、手一杯かもしれないから」

 

  

 やれやれといったふうに肩をすくめてみせたスズランノキが、さらに言葉を重ねた。

 

  

「モミジの剣には、絆が深くこめられているもの。だから、簡単に折れはしない。

 そして、そこに広範な視野と冷静さが加わったとしたら、よ? ひょっとしたら……」

 

  

 ――歴代最強の組み合わせ(コンビ)、とまで(うた)われることになるかもしれないわよ?

 

  

  

  ◇  ◇  ◇  ◇

  

 

  

 そして。

 2人の姿は、今日もまた害虫討伐のただなかにある。

 

   

 巨大な剣を高く掲げ、裂帛の気合いとともに振り下ろす。

 たったの一撃で、目の前の害虫が四散した。

 

  

「私は……一番になるっ!」

 

  

 その言葉を口にすると、身体の奥底からさらに力が湧きあがってくる。

 一息つくこともなく、そのままモミジは次の害虫の姿を探した。

 

 

「モミジ、いったん下がって!」

 

  

 イフェイオンの声が耳を打つ。瞬間、モミジは後方に大きく飛びすさった。

 それと同時に寸前まで彼女のいた場を、横合いから蜂型害虫が放った数本の針が突き抜けてゆく。そうする間にもモミジは態勢を整えなおすと大剣を一閃させ、死角からの攻撃を狙った害虫の一体を撃破した。

 ……もう一体の害虫が青白く光り輝く魔法の花の攻撃を浴び、消滅していくのを横目にしながら。

 

 

「ありがとう、イフェイオン。ちょっと危ないところだったかも」

 

「気にしないで。それよりも……見て」

 

  

 イフェイオンが指差した先。そこあるのは岩場だ。

 

  

「あの一番大きな岩の裏……あそこから横に伸びている影のひとつだけが、他よりもすごく大きい」

 

「ほええ、ほんとですー。ってことは、あそこでギリギリ身を隠してるやつが、きっと害虫のボスってことですよね、ね!」

 

  

 言うやいなやすぐにも駆けだそうとするニシキギを、スズランノキがあわてて止めた。

 

  

「……さ、どうする、隊長。それにイフェイオン?」

 

「……考慮するまでもない、スズランノキ」

  

 

 モミジは、かたわらを見やった。

 イフェイオンが軽く微笑んでいる。同意のうなずきとともに。

 

 

「一気に蹴散らしてやろう。スズランノキとニシキギは、周囲のザコをお願い。私とイフェイオンで、親玉を排除する」

 

「……あら。いいの、イフェイオン。その作戦だと、まるでいつかのときと同じようにならないかしら?」

 

「ううん、スズランノキ。あのときとは状況が違う。害虫の密度は明らかに前よりも薄いから、わたしとモミジは何も心配しないであなたたちに背中を預けられる。それに今回は団長もいないし」

 

  

 それ以上は、もう必要ない。ここにいるのは、最高の仲間たちだ。

  

 

  

  

 構えを取る。

 心気を澄ませ、再開される戦いに精神を集中させていく。

 

  

「私が、一番になる……」

 

「……違うよ、モミジ」

 

 

 肩を並べる、イフェイオン。

 そちらへ向かって、モミジは一度だけ大きく笑いかけた。

 

  

「……うん。言い直す」

  

  

  

 私たち全員で、一番になる!

  

  

  

  

   

「緑泉の風」 ―了―

  

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