空に浮かぶは大きい雲(ありふれ世界編) 作:あろえよーぐると
あのあと
実は歩太達は八重雫とは顔見知りである。彼女の実家が忍者の末裔で今も現役バリバリなので情報を仕入れる時に、これからお世話になるということと家も意外と近いこともあってリニスとご挨拶した時に初めて会った。歩太は顔見知り程度だがリニスとは同じクラスになったこともあり友人関係を築いている。
問題はそのクラスに八重樫の幼馴染み達4人が固まっていたこと。八重樫を通して挨拶や話し掛けられれば応答する程度の仲なのだが、リニスは友人指定されたのか天之河に昼食や下校の時によく誘われるのだが、その全てを断り続けていた。天之河は誘いを断られることに何か原因があると判断した。ちなみに八重樫や幼馴染みの一人である白崎という女子と三人で歩太のことを惚気たりしていたのだが何故か全く聞こえていなかった模様。
そして今日。リニスと歩太が二人で下校しているのを見て、天之河なりに原因を理解して解決のために歩太達に絡んできたのが始まり。
リニスは家に帰ってからも怒りが収まらなかったようで、猫姿で歩太の腹に顔を埋めて時折頭を動かし全力で甘えながら愚痴っていた。
「ホントあり得ません何なんですかアレは!毎回、笑顔振り撒いてくるし名前で呼ぶのは止めてくださいって言っても呼んでこようとするし、頭を撫でようとしてくるので強めに払い除けているのにそれでも撫でようとしてくるんです。女の子はみんな自分がそうすれば喜ぶって思ってるんですか!なろう小説のハーレムものじゃないんですよ!ここは現実なんですよ!」
「嫌だったよな。気持ち悪かったよな。今日初めて会った俺でも頭痛かったんだから一緒の空間にいたら当然だよな」
歩太はブラシに氣を込めながら毛繕いをする。そうすると精神と毛にヒーリング効果を与えてどちらもツヤツヤになるからだ。リニスの言葉数が徐々に減ってゆき、次第に意識が遠退き眠りにつく。一度でも精神と身体に直接作用するダブルヒーリングを受ければその虜にならない奴はいないだろう。
歩太はブラッシングを終えてリニスを優しく撫でながらこれからのこと考える。
この
原作主人公の代わりに愉悦神を八つ裂きにするのは決定事項。しないと地球に来る可能性仄めかしてたし。こっち来んな。何より退魔士としてどの角度から見ても邪神なあれを放置とかありえない。とりあえず斬魔剣:弐の太刀をたらふく食らわしてやろう。
次の日に天之河がリニスに形だけの謝罪をしてきたがリニスは華麗にスルー。そんなリニスの態度に何か言いたそうだったがオカンの八重樫が睨みを利かせ沈黙させていた。歩太には謝罪の言葉一切無し。
あれから一年が過ぎて二年生。歩太とリニスは原作開始時のクラスで日々を過ごしていた。
歩太はリニスを経由して八重樫雫だけでなく脳筋な坂上龍太郎、ヤンデレとサイコ属性(微レ存?)を持ってる白崎香織と交流ができた。天之河?ハハッ。
席についてリニスと会話をしていたがふと止まる。
「おはよう、南雲君!今日も時間ギリギリだね!」
いやいや笑顔で元気よく煽ってる様にしか見えないんだが。本当に好きなの?何で周りの視線とか空気が分からないのかねぇ。ストーキングするほど好きなら周囲からどう見られてるか気づけ。そんなんだからヒロインレースで優勝できずに負けんだよ。
どうやら途中から声に出てたようで、呟きを聞いていたリニスは噴き出しそうになった口を咄嗟に手で塞いで顔を下に向かせ身体を震わせていた。リニスも歩太から
さて、真面目に異世界拉致を防ぐことを考えた場合。歩太だけでは防ぐことはできない。できて多少の妨害くらいだろうか。日本で選りすぐりの術師を最低でも三桁はいないと完全に防ぐことはできないだろう。それに24時間体制で常に異世界の脅威に備え続けるには安倍晴明やサタンとか人外がうろちょろし過ぎていて土台無理な話。
故に占星術で凶兆と出た今日この日のために歩太達は準備をしてきた。
「本当、巻き込んでごめんな」
「異世界に渡るのはミッドチルダでは旅行とかで普通にありますし、私も他世界の魔法や技術に興味があります。
それに使い魔ですし…歩太の彼女なんですから一緒にいたいと思うのは当然です。あ、もし嘘だったらどこか旅行に連れてって下さいね」
「魔から人を守る組織に身を置く人間としては全部が俺の妄想で終わるんなら万々歳だしそんなことなくてもデートはバッチこいなんだが」
「まあ異世界でデートが
「世界の共通点はどっちも殺伐としてるところか。はぁ…」
運命の時間までまもなく。
「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」
爽やかに笑いながら気障なセリフを吐く天之河にキョトンとする白崎。少々鈍感というか天然が入っている彼女には効果がないようだ。
「え? なんで光輝くんの許しがいるの?」
昼休み時。歩太は原作主人公達のやりとりを眺めながら霊的直感が微細な変化を捕らえる。すると天之河の足元に純白に光り輝く円環と幾何学模様が現れた。その異常事態には直ぐに周りの生徒達も気がつく。全員が金縛りにでもあったかのように輝く紋様、俗に言う魔法陣らしきものを注視する。
「リニス、準備は?」
「いつでも。何処までも御供します」
その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。
「皆!教室から出て!」
自分の足元まで異常が迫って来たことで、ようやく硬直が解け悲鳴を上げる生徒達。未だ教室にいた愛子先生が咄嗟に叫んだのと魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。
光が収まりゆっくりと目を開いて真っ先に歩太とリニスは互いに無事を確認する。それから周囲を見渡し、まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。
背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのようにその人物は両手を広げている。美しく素晴らしい壁画なのだろう。しかし酷く歪で不快に感じる。まるで世界の全ては自分の物だと主張しているようにしか歩太には見えなかった。
どうやら自分達は巨大な広間にいるらしいということがわかった。造りからしてテレビなどで見たことがある大聖堂のような荘厳な雰囲気の広間。歩太達はその最奥にある台座のような場所の上にいるようだった。原作通り教室にいた生徒全員、巻き込まれたようだ。
この広間に三十人近い人々が、台座の前に祈りを捧げるように両手を胸の前で組んだ格好で跪いていた。
彼等は一様に白地に金の刺繍がなされた法衣のようなものを纏まとい、傍らに錫杖しゃくじょうのような物を置いている。その錫杖は先端が扇状に広がっており、円環の代わりに円盤が数枚吊り下げられていた。
その内の一人、法衣集団の中でも特に煌きらびやかな衣装を纏っている七十代くらいの老人がこちらに歩み出て、手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら外見に深みのある落ち着いた声音で話しかけた。
「ようこそトータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せた。
顔を埋めて歩太の腹筋を堪能するために必要以上に怒りを露にする猫リニス。
「ホントあり得ません何なんですかアレは!」グリグリ