空に浮かぶは大きい雲(ありふれ世界編) 作:あろえよーぐると
・神鳴流免許皆伝
剣術、格闘術、氣(霊力含む)の使い方
・陰陽術(色々)
陰陽五行、呪符(符術)、式神
・リリカルなのはの魔法
ベルカ式、使い魔契約、デバイス
オルクス大迷宮の前に(第3話)
現在、場所を移り十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通されていた。全員が着席すると絶妙なタイミングでカートを押しながら顔立ちが整った妙齢のメイド達が入ってきた。そしてお茶が行き渡りイシュタルは語り始める。
この世界はトータスと呼ばれ大きく分けて人間族、魔人族、亜人族の三種族がおり、人間族は北一帯。魔人族は南一帯。亜人族は東の巨大な樹海の中でそれぞれ生息している。この内、人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。
魔人族は数は人間に及ばないが個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していたそうだ。戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていなかったが最近になって異常事態が多発しているという。
それが魔人族による魔物の使役。
魔物とは通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだと言われている。この世界の人々も正確な魔物の生体は分かっておらず、それぞれ強力な種族固有の魔法が使え凶悪な害獣とのこと。
今まで本能のままに活動する彼等を使役できる者はほとんど居なかった。使役できてもせいぜい一、二匹程度だという常識が覆された。つまり、人間族は滅びの危機を迎えている。そのため創世神エヒトが人間族の救世のために歩太達を呼んだと。
「我々人間族が崇める守護神。聖教教会の唯一神にしてこの世界を創られた至上の神。人間族の危機を回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前にエヒト様から神託があったのですよ。あなた方という『救い』を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、エヒト様の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」
イシュタルはどこか恍惚とした表情を浮かべながら説明する。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。
イシュタルによれば人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。
神の意思を疑いなく、それどころか嬉々として従うのであろうこの世界の歪さに言い知れぬ危機感を覚えて畑山愛子は突然立ち上がり猛然と抗議する。
「ふざけないで下さい!結局この子達に戦争させようってことでしょ!そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ!私達を早く帰して下さい!きっと、ご家族も心配しているはずです!あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」
「お気持ちはお察しします。しかし、あなた方の帰還は現状では不可能です。先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」
『あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第といことですな』
「この時点で俺からしたら邪神の疑いを持つけどねぇ」
「勝手に呼び出しておいて戦え。終わったら帰れるかも?ですもんね。疑念が浮かぶのが普通かと」
「例えテンパってたとしても後々に疑念が沸いて不信を抱く人間もいるだろうけど……」
「あの残念な方…無駄にカリスマありますからどう転ぶのか」
「転ぶだけならいいんだよ。起き上がれる可能性が残ってるから」
「「はぁ…」」
歩太とリニスは神山を探索していた。トイレに行くと称して式神と入れ代わっていたのだ。そして式神を通して話を聞いていた。二人は何故探索しているかというと神山にある迷宮を攻略して神代魔法である魂魄魔法を手に入れるためだ。
原作では五番目に攻略された迷宮だがクラスメイトと離れる気満々の二人にとって七大迷宮の中でもっとも短時間で攻略できると思われるこの迷宮の探索は今この時が一番邪魔が入る可能性が低いので分かりきった話を座って聞くなどありえない。
それに術師でもある歩太にとって最初に手に入れたかった魔法でもあった。例え魔法適性がなく使えなかったとしても使い方を知るだけでも充分に参考になる。
「ん~?…あっ、そうか」
「見つかりましたか?」
「残念ながら。けど見つからない理由が分かった。見てくれ」
そう言って歩太は手に持っている羅針盤をリニスに見せる。
「すごいグルグル回っていますが…これは?」
「この世界の星の配置を確認してないから占えるか不安だったけど途中まで道筋を示していたんだ。しかし今はこれだ。縁が途絶えてる」
「つまり、魂魄魔法を手に入れることができないと?」
「おそらく条件を満たしてないからなんだろうな。原作ではさらっと手に入れてたけどあれは既に4つは攻略して条件が整ってたからか」
「最大でも4つの大迷宮を攻略していないといけないということですね」
「最速で手に入ると思ったんだが甘かったな~」
「前世の記憶ですし、忘れてる部分があるのは仕方ありませんよ」
「そうだな。じゃあ機を見て戻るとするか」
未だパニックが収まらない中、天之河が立ち上がりテーブルを強くと叩いえその音にビクッとなり注目する生徒達。光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。
「皆。ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。…俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って放っておくなんて俺にはできない。それに人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん?どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」
「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
ギュッと握り拳を作りそう宣言する天之河。無駄に歯がキラリと光ると同時に彼のカリスマは遺憾なく効果を発揮した。絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めた。彼を見る目は輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。女子生徒の半数以上は熱っぽい視線を送っている。
「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。俺もやるぜ?」
「龍太郎……」
「今のところ、それしかないわよね……。気に食わないけど私もやるわ」
「雫……」
「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」
「香織……」
いつものメンバーが天之河に賛同する。後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。愛子先生はオロオロと涙目で訴えているが天之河の作った流れの前では無力だった。結局、全員で戦争に参加することになってしまった。
しれっと戻ってきた歩太達はクラスメイト達から距離を置いていた。リニスは怖がって歩太の腕に抱き着きそれを歩太が慰めているように装っている。実際は念話で愚痴り合ってるだけだが。途中、天之河がリニスの様子を見て此方に向かってきたが2人で睨むと元の位置に戻っていった。
そして今は神山の頂上からイシュタルが唱えた呪文によりできた魔法の橋を渡りクラスメイト達と共にハイリヒ王国の王都に向かっている。
王都に着き、国王一同に紹介された後は夜には晩餐会が開かれたが歩太とリニスは疲れを理由に晩餐会を早々に切り上げて部屋で寛いでいた。
「これからどう動きますか」
「まず明日に天職や自身の能力が写し出されるステータスプレートが配られる」
「ほほう、それは非常に興味深いです。幾つかサンプルを貰えないでしょうか…」
「分かる。問題は俺達がどんな職業でどういう能力があるのかだな。偽装してたし、もしかしたら天職がない可能性もある」
「そうだったら残念ですね。特に私は人間ではないのでどうなるのか」
「そこだよなぁ…」
元々人間ではないリニスの偽装に関しては特に念入りに施したがあの偽神は一応でも超常の存在。バレている可能性が高い。対策も罠も準備しているので痛い目を見るのは彼方の方だと歩太は考えている。
「遅くなりましたしお風呂に入りませんか」
「そうするか」
「…お背中お流ししましょうか?」
「…頼もうかな」