空に浮かぶは大きい雲(ありふれ世界編) 作:あろえよーぐると
ちなみにリリカルのバリアジャケットって確か物理と魔法耐性に耐熱耐寒もあるのでグリューエン大火山はかなり楽チンです。
オルクス大迷宮……それは全百階層からなると言われている大迷宮である。七大迷宮の一つで階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現する。この迷宮は冒険者・傭兵・新兵の訓練に非常に人気がある。
それは階層により魔物の強さを測りやすいからということと出現する魔物が地上の魔物に比べ遥かに良質の魔石を体内に抱えているためだ。
魔石とは魔物を魔物たらしめる力の核で強力な魔物ほど良質で大きな核を備えており、この魔石は魔法陣を作成する際の原料となる。要は魔石を使う方が魔力の通りがよく効率的。その他にも日常生活用の魔法具などには魔石が原動力として使われるので軍関係だけでなく日常生活にも必要な大変需要の高い品である。
原作主人公はダンジョンから始まりダンジョンでヒロインに出会ってハーレムを築いて……って何か違う作品が浮かぶのでこれ以上は止めておこう。
現在、生徒達はオルクス大迷宮の正面入口がある広場に集まり博物館の入場ゲートのような入口から受付窓口制で迷宮への出入りをチェックしていた。ここでステータスプレートをチェックし記録することで死亡者数を正確に把握するためだ。
「遊園地の入場ゲートにしか見えねぇ……」
「随分としっかりしてるんですね。ここの職員は優秀なのかもしれません」
「そうかもしれないけど、何か安全バー下ろした後に『では、いってらっしゃい!』って言われるイメージが浮かぶ」
「心構えがなってない大所帯を対応してるにも係わらず、笑顔が崩れない所……流石はプロですね」
「ああ。あれはもう職人と言っても過言じゃないな」
歩太達はクラスメートを率いるメルドが引率の教師に見えた。
自分達の担任よりも担任してる。笑いそう……
歩太、畑山先生が可哀想ですよ……
アホなことを考える位に暇をもて余していた。
本来の世界線なら前日に香織がハジメの所に訪れてラブロマンスを繰り広げていたが、残念ながら此方ではリニスに手助けを乞うイベントがあり奈落に堕ちる前から銃を作成してその最終調整と弾丸の作成に夢中で魔力を使い果たして爆睡していた。ハジメの部屋の鍵は閉めていたので香織は暫くガチャガチャと開けようと試みていた。寝ているハジメの隣で添い寝出来るのではと頭に浮かんだからだ。
そこに自分の部屋に向かう歩太に目撃されて「えっ、何やってんの?」と問われ「ななな何でもない、よ? 明日は頑張ろうね、じゃあお休み!」と慌てて去った。
「あいつ何時から南雲の部屋のドア開けようとしてたんだ? 『ハジメ君と添い寝ハジメ君と添い寝……』って呟いていたけど正直引くわ」
◆◆◆◆
迷宮の中は、外の賑やかさとは無縁だった。縦横五メートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、オルクス大迷宮はこの巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。
一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。
その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。
「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」
ラットマンと呼ばれた魔物が結構な速度で飛びかかってきた。間合いに入ったラットマンを光輝、雫、龍太郎の三人で迎撃する。その間に香織と特に親しい女子二人、ロリ元気っ子の谷口鈴と鈴に引っ張られてグループに加わったメガネっ子の中村恵里が詠唱を開始。魔法を発動する準備に入る。
「「「暗き炎渦巻いて 敵の尽く焼き払わん 灰となりて大地へ帰れ──〝螺炎〟」」」
三人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎がラットマン達を吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。断末魔の悲鳴を上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て広間のラットマンは全滅していた。
そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調に階層を下げて行った。
「次!歩太達、前へ出ろ!」
メルドの指示に歩太とリニスは頷き、前へ歩み出す。
歩太の装備はブーツに丈夫なズボンと長袖シャツで上からフード付きの紺色のローブに袖を通して後ろ腰にナイフを一本、杖術にも使える胸元ほどの長さの杖を手に持っている。
リニスも似たような格好で違うところは袖がダボっとしている上着にローブではなく全身を覆えるマントを着て魔法補助の発動体の腕輪に短剣を二本ずつ左右の腰に差して計四本を装備している。
歩太達の前には狼のような人サイズの魔物が四匹こちらに向かってくる。
「どうしますか、歩太」
「とりあえず相手の足を止めるがてらダメージを与えるからその隙に」
「では二匹、貰いますね」
「まぁ妥当だな」
軽く打ち合わせをしてる間も勢いよくこちらに向かってくる魔物達に対して落ち着いてる二人を見て周りは心配そうな目で見てくるがそんな視線も気にせず自然体で対応する歩太達。
「えっと、それっぽい詠唱は……聖なる光よ 翼となりて 彼のものを祓いたまえ──〝光翼〟」
前に突き出した杖の宝玉から光の翼が現れ、羽ばたかせた瞬間に無数の光の羽が飛び出し魔物達に襲いかかった。その攻撃に怯んで地面に転がる。
「行きます」
リニスは〝縮地〟を使い魔物に素早く近づき短剣をそれなりの早さで振るい止めを刺していく。
「我は綴る 光の翼よ 今一つとなりて
彼のものを斬り裂く剣となれ──〝光翼剣〟」
歩太も〝光翼〟を変化させて光の剣を構成して残りを屠っていく。流れるような二人の作業に騎士団は感嘆の声を上げ生徒達は一部を除いて感心していた。そして戦闘が終了するとその一部が声をかけてきた。
「凄いじゃないか、リニス。でも魔物に近づくのは感心しないな。君は戦闘職じゃないんだからケガでもしたらどうするんだ。やっぱり俺の側でいる方が安全だ──ゲボォッ!?」
「あら、すみません。てっきり魔物が近づいて来たのかと思いまして、はしたなくも蹴り飛ばしてしまいました。
戦闘が終わったとしても無闇に視界に入らないで下さい。むしろ視界から永遠に消えて下さい」
「ナイスキック。じゃなくて…リニス落ち着け。気持ちは分かるけど魔物より殺意高いから…な?」
「しかし歩太! ここ二週間以上話し掛けられないように立ち回ってかなり二人きりを楽しめていたというのに、今も互いに目線で労う所を急に間に入ってきて邪魔されたのですよ!」
歩太がリニスを
◆◆◆◆
一行は問題もなく二十階層を探索する。
迷宮の各階層は数キロ四方に及び、未知の階層では全てを探索しマッピングするのに数十人規模で半月から一ヶ月はかかるというのが普通なとだとか。
暫くして擬態したロックマウントの咆哮に前に出ていた光輝・雫・坂上龍太郎がゲームでいうとスタンを浴びて一瞬身動きが取れなかった。その隙にロックマウントが目を血走らせながら模範的なルパンダイブで香織・鈴・恵里に向かってきた。
「「「ヒイィッ!?」」」
「こらこら、戦闘中に何やってる!」
慌ててメルド団長がダイブ中のロックマウントを切り捨てる。香織達は、「す、すいません!」と謝るものの相当気持ち悪かったらしく、まだ顔が青褪めていた。
そんな様子を見てキレる若者が一人。正義感と思い込みの塊、我らが勇者天之河光輝である。
「貴様……よくも香織達を……許さない!」
どうやら気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。「彼女達を怯えさせるなんて!」と、なんとも微妙な点で怒りをあらわにする光輝。それに呼応してか彼の聖剣が輝き出す。
「万翔羽ばたき、天へと至れ──〝天翔閃〟!」
「あっ、こら、馬鹿者!」
メルド団長の声を無視して、光輝は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろした。
その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。逃げ場などない。曲線を描く極太の輝く斬撃が僅かな抵抗も許さずロックマウントを縦に両断し、更に奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。
パラパラと部屋の壁から破片が落ちる。「ふぅ~」と息を吐きイケメンスマイルで香織達へ振り返った光輝。香織達を怯えさせた魔物は自分が倒した。「もう大丈夫だ!」と声を掛けようとして、笑顔で迫っていたメルド団長の拳骨を食らった。
「へぶぅ!?」
「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」
メルド団長のお叱りに声を詰まらせ、バツが悪そうに謝罪する光輝。香織達が寄ってきて苦笑いしながら慰める。
その時、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。
「……あれ、何かな? キラキラしてる……」
その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。
白魔法については光属性・回復・結界・付与系統の魔法が合わさったものとお考えください。