空に浮かぶは大きい雲(ありふれ世界編)   作:あろえよーぐると

8 / 8
『あー……テステス。聞こえるか、リニス?』
『感度良好。問題ありません』
『そっちはどうだ』
『順調に入口に向かって進行中です。予め設置したサーチャーで確認したところ、まもなく上の階の皆さんと合流しますので安全かと思われます』
『そっか。所でリニスはあれからどんな状態?』
『メルド団長に首トンされて気絶してるフリをしてます。彼に担がれてるので非常に汗臭いです。デオドランスやファブリーズ案件です』
『猫又で花も恥じらう女子高生にはオッサンの汗は物理的にも精神的にも余計にキツいだろうな。夜になったら時間通りに連絡する』
『分かりました。それでは』







奈落の底(第8話)

「うぅ…怖かったよ~、死ぬかと思ったぁ……」

 

 恵里は腰を下ろして自分を抱き締めるように三角座りの状態で生きてることの喜びと中々終わりが見えてこない長い長い落下の恐怖が入り交じった表情で涙を流している。

 

「いや~長かったな。101層まで36階分の距離だから当たり前っていえばそうなんだけど」

 

 ハハハ、と笑い元気そうな歩太に恵里は噛みつく。

 

「よく言うよ!落ちてる時に『うおぉ…天然のウォータースライダーかぁ……』って言って笑いながら滅茶苦茶楽しんでたじゃん!?ボクは本当に怖かったんだからね!?」

「よし。そろそろ探索するぞ、恵里」

「話し聞けよ、ばかぁーーー!!」

 

 恵里は地面から立ち上がり、さくさく移動を始めた歩太を罵倒しながら追いかけた。

 

 

◆◇◆◇

 

 周りは薄暗いが緑光石の発光のおかげで何も見えないほどではない。横に並びながら恵里は歩太にぶつくさと文句を言っていた。

 やれ、修行が厳しい。やれ、休日を増やして。やれ、もっと優しくして。やれ、もっと甘えさせて。

 

「いいかげん、ボクともシてくれたっていいじゃん!とことん尽くすタイプだよ、ボク」

「そう明け透けに言われると萎える」

「なんでだよッ!リニスさんとヤることヤってるの知ってるんだからねっ!」

「年季が違うわ。リニスとは何年も共に苦楽を乗り越えて、もうお互いに無くてはならない存在なんだ。だから、そういうこともするんだよ。別に恵里にも好意はあるし、抱かないとも言ってない。ちゃんと責任は取るさ」

「えっ……ホントに?」

「もちろん。それにリニスだって恵里を受け入れてるのは分かってるだろ?」

「……うん。初めはボクより先にアユ君に出会っただけのメス犬だと思って、いずれ処理しようと隙を見つけては事故と見せかけて何度も実行したんだ。けど平然と防がれちゃうし。

 たまにお仕置きされて、その日のご飯をボクの嫌いな物尽くしで出されたこともあった。

 でもリニスさんは怒ってはなくって…。子供に言い聞かせるように優しくしてくれて…。こっちが頷くと、ぎゅっと抱き締めてくれるんだ…。大切に想ってくれてるのがすっごく伝わってきて、気づけば大好きになってた。それに元の姿があんな可愛い猫だなんてギャップにもやられちゃったよね。あんなの反則だよっ」

「分かる。二つの姿を駆使して寄り添ったり甘えてきたりするからヤバい」

「掃除・洗濯・家事・子育て・戦闘ができて優しくて綺麗で可愛いくてスタイルも抜群とか好きならないはずがないよっ!」

 

 気づけばリニスの可愛さ談義となり盛り上がりだした2人だが、警戒は怠っていない。順調に足を進めていくと、直進方向の道に白い毛玉がピョンピョンと跳ねているのが分かった。長い耳もあって見た目はまんまウサギだった。

 ただし、大きさが中型犬くらいあり後ろ足がやたらと大きく発達している。そして何より赤黒い線がまるで血管のように幾本も体を走り、ドクンドクンと心臓のように脈打っていた。

 

「…なんか可愛くないなぁ」

 

 恵里は残念そうに呟く。その瞬間、ウサギがピクッと反応したかと思うとスッと背筋を伸ばし立ち上がった。警戒するように耳が忙しなくあちこちに向いている。

 

「グルゥア!!」

 

 獣の唸り声と共に、これまた白い毛並みの狼のような魔物がウサギ目掛けて岩陰から飛び出したのだ。

 その白い狼は大型犬くらいの大きさで尻尾が二本あり、ウサギと同じように赤黒い線が体に走って脈打っている。

 どこから現れたのか一体目が飛びかかった瞬間、別の岩陰から更に二体の二尾狼が飛び出す。

 

「キュウ!」

 

 襲われるかと思いきや、可愛らしい鳴き声を出してウサギがその場で飛び上がり、空中で一回転する。その太く長いウサギ足で一体目の二尾狼に回し蹴りを炸裂させた。

 およそ蹴りが出せるとは思えない音を発生させてウサギの足が二尾狼の頭部にクリーンヒットする。

 ゴキャ…、と鳴ってはいけない音を響かせながら狼の首があらぬ方向に捻じ曲がってしまった。

 そうこうしている間にもウサギは回し蹴りの遠心力を利用して更にくるりと空中で回転すると、逆さまの状態で空中を踏みしめる。

 地上へ隕石の如く落下し、着地寸前で縦に回転。強烈なかかと落としを着地点にいた二尾狼に炸裂させた。

 その頃には更に二体の二尾狼が現れて着地した瞬間のウサギに飛びかかるも、ウサギはウサ耳で逆立ちしブレイクダンスのように足を広げたまま高速で回転をした。

 

「「おおおっ!」」

 

 歩太と恵里は思わず歓声を上げる。飛びかかっていた二尾狼二匹が竜巻のような回転蹴りに弾き飛ばされ壁に叩きつけられ、壁に飛び散ってズルズルと滑り落ち動かなくなった。

 最後の一匹が唸りながらその尻尾を逆立てる。その尻尾がバチバチと放電を始めた。

 

「グルゥア!!」

 

 咆哮と共に電撃がウサギ目掛けて乱れ飛ぶ。しかし、高速で迫る雷撃をウサギは華麗なステップで右に左にとかわしていく。

 そして電撃が途切れた瞬間、一気に踏み込み二尾狼の顎にサマーソルトキックを叩き込んだ。

 二尾狼は仰け反りながら吹き飛ぶ。グシャ、と音を立てて地面に叩きつけられた。

 

「キュ!」

 

 勝利の雄叫び?を上げ、耳をファサと前足で払った。

 

「じゃあ恵里。修行を開始しようか、先ずあれな」

「はーい。縛りはあるぅ?」

「ナシで」

「お、全力でやっちゃっていいんだね。わかった」

 

 歩太達は大声は出していないが普段より小さい程度の音量で会話をしていたので、あのウサ耳がこちらを捕捉しないはずがない。

 

「キュゥウウ?」

「う~ん…先ずこの子で試してみよっか。じゃーね───〝秤剥(ひょうはく)〟」

 

 恵里はウサギの魂をその身体から強制的に剥がす魔法を唱えるとウサギは為す術がないまま力尽きる。

 

「お、上手くいったな」

「これでも降霊術師ですから。こっちに来てから魂に対する理解力がかなり上がったからね。その内、この分野に関してはアユ君を超えるかもよ?」

「はいはい期待してるよ。それで散らしてないその魂はどうするんだ?」

「ふふん、決まってるじゃん?経験値にするんだよ。──〝吸魂(きゅうこん)〟」

 

 魔物の魂は分解されて光の粒となり、恵里の身体に徐々に染み込むように入ってく。全て吸収し終えて彼女はステータスを確認した。

 奈落の底に着いた直前の恵里のステータスは、

 

==========

 

中村恵里 17歳 女 レベル:23

 

天職∶降霊術師

 

筋力∶160

 

体力:176

 

耐性:165

 

敏捷:132

 

魔力:198

 

魔耐:182

 

技能:

・闇属性適性[+降霊術][+発動速度上昇][+効果上昇][+詠唱省略][+魂魄汚染耐性][+魔力消費減少][+持続時間上昇]

・炎属性適性[+発動速度上昇][+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]

・魔力操作

・言語理解

 

 

==========

 

「前にアユ君に言われて地上の魔物でやった時は平気だったけど、やっぱり深層の魔物だからか取り込む時にちょっとピリッとしちゃった。アユ君、見て見てぇ」

「ほほう…あの足技だったし、納得の固有魔法だな」

 

 ウサギの魔物を吸収した後のステータスは、 

 

==========

 

中村恵里 17歳 女 レベル:25

 

天職∶降霊術師

 

筋力∶260

 

体力:276

 

耐性:265

 

敏捷:232

 

魔力:298

 

魔耐:282

 

技能:

・闇属性適性[+降霊術][+発動速度上昇][+効果上昇][+詠唱省略][+魂魄汚染耐性][+魔力消費減少][+持続時間上昇]

・炎属性適性[+発動速度上昇][+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]

・魔力操作

・天歩[+空力][+縮地]

・言語理解

 

 

==========

 

「レベルが2つしか上がってないのに100もステータスが上がってるよっ!」

 

 歩太は無邪気に喜ぶ恵里の頭を褒めるかのように撫でる。

 

「この調子でさくさく行こうか」

「おぉーーっ!」

 

 

 

 




 闇属性の降霊術を回復魔法みたいに光属性適性から別枠でスキル化するか悩んだ結果、とりあえず闇属性適性に混ぜました。後々に変更するかもしれません。
 あと恵里の魔力ステータスは低いのは最近になって魔力操作を手に入れたためです。後からバグっていきます。
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