ハッピーエンドは暫く待ってね
「オーホッホッホ!!!まだまだ沢山ありますわ!好きな食べて結構ですわ!」
婚約者の罵詈雑言に耐え切れなくなった周尽は益州でひっそりと暮らすべく荀家を出た。……までは良かったが今彼は三公を多数輩出した名門袁家の棟梁、袁本初に歓迎されていた。彼の目の前には荀家でも見た事がない豪華な料理が並んでおりそれだけも凄いのにこれらすべてが自分の為に用意されていると知っている周尽は片っ端からごちそうを食べていた。
そんな周尽を機嫌よさそうに見ている上座に座る袁本初。彼女はふさふさの扇を持って周尽の食べっぷりを眺めている。
「すげぇ……!どれもうまい!」
「そうでしょうとも、何せ中華を超えた先、四夷の調味料、料理法も使用し中華でも五本の指に入る当家の料理人が腕を振るっているのですから!これほどの料理は天子様でも中々食べられないと自負しておりますわ!」
「す、凄いな……」
「ですのでよく味わうとよろしいですわ!今しか……いえ、あの話を受けてくれるのでしたらこれらは毎日毎食食べられますわ!」
「……そうか」
周尽がこうして袁本初の歓待を受けているのには訳がある。実は周尽は荀家に婿に入る前に洛陽の私塾に通っていたことがあった。その際に袁本初や曹操と知り合った。
周尽はどちらかと言うと保守的思想に陥りやすく曹操とはあまり親睦を深める事は出来なかったが保守層の中では優等生だった袁本初とは親睦を深めることが出来た。
『凄いですね袁本初様は!』
『オーホッホッホ!!!そうでしょうとも。何せわたくしは三公を輩出した名門袁家の正当なる後継者!いずれ袁家の棟梁になるのですもの!』
このように周尽が褒め袁本初が自身の家柄を含んでの自慢を行うのが彼らの日常であった。これらの関係は私塾を卒業するまで続きこの頃になると周尽も袁本初も真名を預け合う程に親密になっていた。
『煉さん。もし、わたくしが袁家の棟梁となった時には。その、む、婿に来てほしいです、わ』
『麗羽……。分かった。その時は俺を迎えに来てくれよ』
『!勿論ですわ!必ず!迎えに行きますわ!』
私塾の卒業日、二人はそう言って約束を交わしたのだ。しかし、周尽は親の都合により荀家に婿に入る事となり二年もの間荀彧の婚約者として過ごし毎日続く罵詈雑言に耐え切れなくなった周尽は逃げ出したのだ。
そして彼は益州へと向かおうとしたのだがその矢先に袁家の旗を持った兵と遭遇。彼は袁本初直々の招きを受けこうして彼女の歓待を受け今に至っていた。
「わたくしは今でも忘れておりませんわ。約束通りわたくしの夫になってくださいまし♪」
「そうだな……」
彼としては何も問題はないのだが私塾の時にはそこまで感じなかった両者の格を感じしり込みしてしまう。田舎では名家という程度の彼の家と三公を輩出した名門袁家とでは釣り合いが取れないと感じたのだ。
しかし、袁本初はそれを読んでいたかのように話を続ける。
「家柄の事に関して考えているのなら心配ご無用ですわ!既に反対する者は黙らせました。もしまだ反対する者がいても手を打つ準備は整えておりますわ」
「お、おう。……何だか用意周到だな」
「当たり前ですわ!何せわたくしと煉さんとの約束を叶えるためですもの!どんな手を使ってでも叶えて見せますわ!」
袁本初の迫力に周尽は押される。まさかここまで、という気持ちと共にこんな自分をここまで考えていてくれている!という何とも言い難い感情がこみあげてくる。彼は久しぶりに自分を必要としてくれている人に出会い無意識に笑みを浮かべていた。
「……分かった。こんな俺でいいなら」
「……分かっておりませんね。“こんな”ではなく“あなただからこそ”選んだのですわ!わたくしは例え天下に比類なき知略を持っていようと天下に並ぶべきものがいない剛勇無双でも手足が無くても、病に侵されていようと“あなただからこそ”選んだのですわ!」
「……そうか」
ふと、彼は頬を伝う涙に気付く。二年の間に一度として言われたことのない自分を求める言葉。彼は昔から変わりなく自分をここまで慕ってくれている袁本初に心のうちで感謝した。
袁本初の約束を果たし袁家の婿になった彼の生活はこれまでとは激変した。
彼には常に二人以上の従者が付けられ周りのお世話をしてもらえるようになった。更には毎日の様に豪華な食事が出された。それでいて彼には仕事は与えられなかった。
「煉さんはわたくしの婿にでいてくれているだけで十分ですわ!政治に心を奪われる事なく毎日好きなようにしてくれて結構ですわ!」
と袁本初に言われていたためだ。とは言えここまでしてもらっては手持ち無沙汰になるのも時間の問題であった。彼はやる事がなくなり暇を持て余し始めたのだ。袁本初は毎日の様に忙しく政務をこなしており特に黄巾党と呼ばれる賊の鎮圧を行っており周尽とはあまり合えない日々が続いた。しかし、同じ部屋、同じ布団で寝ているため夜になれば会える為そこまで気にはしていなかった。
とは言え周尽が暇を持て余し気味には変わらないため最近では兵達に混じって体を動かすようになっていた。その度に袁本初の側近である文醜、顔良に留められたりするが適度な運動で済ますと許可を出すようになった。
彼は徐々に戦乱の兆しが見える中華においてひと時の穏やかな時間を過ごすのだった。
「よろしいのですか?麗羽さま」
「勿論ですわ。煉さんに危害があるなら止めますが適度に体を動かす程度なら止める必要もありませんわ」
訓練場にて走っている周尽を陰から見ながら顔良と袁本初は話していた。
「それで、荀家の小娘の方はどうなっていますか?」
「はい、曹操殿の元に向かうまでの一週間は懸命に探した様ですが今は政務で忙しいようで捜索は断念しています」
顔良の報告に袁本初は暗い笑みを浮かべる。自分と周尽の仲を邪魔する小娘がようやく諦めたと分かったからだ。だが袁本初はこれで気を抜いたりはしなかった。
「ですが警戒は怠らないように。曹操さんの力を借りたら厄介ですわ。もしそうなるなら……」
「……分かりました。手配しておきます」
袁本初の言いたい事を察した顔良は頭を下げた。普段はあまり優秀とは言えないが周尽が絡むと別人の様に頭が回るようになる。こういう時の袁本初に逆らうのは危険と顔良は心中で呟く。何せ周尽との結婚を反対した家臣たちを
「頼みましたわ。ふふ、それにしてもまさかあの小娘の婚約者になっているとは思いませんでしたわ」
「……」
袁本初は思いだす。自分に仕え僅か数か月で辞めていった猫耳の頭巾をかぶった小娘を。もし彼女が自身の婚約者の話をしなかったら彼との再会は出来なかっただろう。
袁本初は周尽の現状を知ると荀家の周りに密偵を配置し逐一報告をさせていた。そのおかげで彼の動きを察知し自身の元に連れてくる事が出来たのだ。
「彼との約束を邪魔する者は誰であろうと許しませんわ。そして、彼を手放す気もありませんわ」
袁本初は贅沢や好待遇など見えない鎖で自分の元に繋いでいる周尽を見ながら暗い笑みを浮かべるのだった。
これは寝取られというより寝取り返し(?)かな?
荀彧が曹操の前に袁紹に仕えていたという事なのでこういう形に。
周尽は袁家が曹操に領土を奪われるまでの短い間ヒモとして過ごすことになります。大丈夫!周尽関連では覚醒する袁本初が何とかしてくれるさ(望み薄)!
書いてほしい√
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婚約者とのハッピーエンド√
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婚約者を殺害√
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婚約者と一緒に駆け落ち√
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婚約者寝取られ√
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R18版(書けるとは言ってない)