オラリオの防衛者   作:リコルト

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ちなみに、多くの人が気になったと思いますが、ワールドトリガー原作の時系列は玉狛第二が二宮隊に勝利し、ランク戦が終了した直後です。那須隊の茜ちゃんはまだ引っ越しはしていないぐらいかな。茜ちゃん……退場は辛いって。


【幕間】玉狛支部にて

 

「遊真くん、修くん。ただいま」

 

 

「おかえり、チカ。」

 

 

「おかえり。訓練はどうだったか?」

 

 

 本部でのスナイパー訓練から帰ってきた雨取が帰ってくると、彼女達の所属する玉狛支部で留守を任されていた修と遊真がチームメイトである彼女達を出迎える。

 

「あれ?ヒュースくんは?」

 

「ヒュースはヨウタローと雷神丸の散歩に出かけているぞ。チカと入れ違いになったな」

 

 彼ら玉狛第二の四人目のメンバー、ヒュースはというと、玉狛支部の誰よりも強い信頼関係を結んでいる林道陽太郎と陽太郎の相棒であるカビパラの雷神丸の散歩に出かけるために雨取が帰ってくる十分前近くに外出している。角も専用のトリオン体で隠しているし、陽太郎がいるから大丈夫だろうと玉狛支部に残された修達も彼の外出という散歩に異論を言うことは一切しなかった。

 

「それにしても、レイジさんや烏丸先輩や小南先輩、それに宇佐美先輩達まで玉狛支部の全員が僕達に留守を任せて一斉に外出なんて珍しいよな……」

 

「うむ、オサムの言う通りだな。今日は何かあるのか?」

 

「あっ……遊真くん。もしかしたら…………」

 

 普段とは違う先輩達の様子に不審な所を覚える三雲と空閑。一方、二人に対して一つだけ心当たりがある雨取はそのことを三雲達に話そうとする。

 

 すると…………

 

 

『たっだいま~!』

 

 

「あっ、宇佐美先輩の声だ!」

 

 

 ちょうど良いタイミングで不在だった玉狛支部の面々が支部へと帰ってくる。先頭で一番に帰還を知らせた宇佐美を筆頭にゾロゾロと留守番をしていた三雲達と顔を会わせる。

 

「すまないな。留守を任せて」

 

「いえ、全然」

 

 同じ支部の先輩であり、戦闘の師匠である烏丸に対して三雲は大丈夫だったということを伝える。

 

 木崎や小南、烏丸や宇佐美も遠くに行ってきて疲れた感じはあるが、どこか誰かを悼む複雑な様子で静かにソファーに座っていると、沈黙を破るように空閑が訊ねた。

 

「そう言えば、今日こなみ先輩達は俺達に留守を任せてどこに行ってきたんだ?」

 

「えっ!?……あ、あー……そうね……」

 

 普段ならハキハキと答える小南だが、今日の小南はどこかボーッとしたような様子である。事情を知っている烏丸や木崎や宇佐美もその時の小南の気持ちは理解していた。

 

「…………もしかして、水谷先輩のお葬式ですか?」

 

「ミズヤ先輩?誰のことだ?」

 

「さぁ……?僕も聞いたことがない」

 

 突如、雨取の口から放たれた名前に空閑と三雲は首を傾げるが、小南達はその言葉を聞いて、目を見開いたような驚いた様子で雨取に視線を向けるのだった。

 

「……雨取。水谷のことを誰に聞いたんだ?」

 

 雨取の師匠である木崎が雨取に訊ねる。

 

「えっと……今日のスナイパー訓練で、荒船先輩から水谷先輩について聞きました」

 

「成る程……確かに水谷先輩は荒船先輩と同じ学校でしたし、本部でもよく一緒にいましたからね。雨取が荒船先輩から聞いたのは納得です」

 

 雨取の話に普段のイケメンボイスで烏丸が思い出すように納得し、同じように木崎達も納得するのだった。

 

「烏丸先輩、水谷先輩とは……?」

 

 話に追い付けない三雲は烏丸に訊ねる。そして、しばらくして烏丸は弟子の三雲に一言短く言うのだった。

 

「……三雲達は遠征に行くからな。ランク戦も終わったし、ここで水谷先輩について知るのはありだな…………修!」

 

「は、はい!」

 

「水谷先輩について教えてやる。遊真も興味があるならオペレーター室についてこい」

 

 

……………………………

 

 

 

……………………………………

 

 

 

……………………………………………………

 

 

 

「元東隊万能手……水谷聡人。この人が……」

 

 

 烏丸の紹介でオペレーター室のデータベースから三雲、空閑、雨取の三人は水谷聡人のデータをカタカタと閲覧する。

 

「驚いたな……東隊にはもう一人いたのか」

 

「うん。遊真君達が知らないのは無理ないよ。水谷先輩が東隊にいたのはちょっとしかいなかったから」

 

「ふむ。成る程……」

 

 空閑はモニターに映る水谷のデータを見て驚いた表情を見せるが、宇佐美の説明を受けて納得する。空閑が玄界に来たのはまだ一年も経っていない。一年前過ぎに消えた彼との面識はおろか、知る機会もほぼ無いだろう。

 

「みずや先輩は強かったのか?」

 

 空閑がボソッとオペレーターである宇佐美に訊ねるが、代わりに小南が答える。

 

「当然よ!水谷さんはかつて東さんが率いたA級一位時代の戦闘員兼オペレーターだったんだから!」

 

「「元A級一位のメンバー!?」」

 

「ああ、加えて水谷は俺の次にパーフェクトオールラウンダーに近い実力を持つ男だった。パーフェクトオールラウンダーになることは無かったが、その才を補うように水谷は医療やエンジニアリング、オペレートの才が優れていた。あいつ程の男は二度と現れることは無いと思うぐらいにな」

 

「それに射手の修に関係するが、水谷先輩は二宮先輩に次ぐNo.2射手のバイパー最強の使い手で、那須隊の那須先輩は水谷の弟子だ。あ、あと木虎も水谷先輩の弟子だったな」

 

「No.2射手か……そりゃ、強いな」

 

「那須先輩と木虎が…………!?」

 

 玉狛支部の面々によって明らかになる水谷の素性に三雲と空閑は驚きを隠せない。特に射手として通じるものがある三雲にとってその驚きは倍以上だろう。

 

 那須と木虎……いずれも三雲が対峙したことがある相手で、水谷の話を聞くまでは知る由も無いのは明らかであった。特に木虎に師匠がいたということは三雲以外でもあまり想像がつきにくい筈だ。

 

「でも、何でそんな実力のある人がボーダーにいないんだ?そんな人がいたら、今頃東隊はA級に上がれるぐらいの実力を持っている筈だぞ?」

 

(お葬式…………まさか!?)

 

 空閑は気付いていないようだが、勘が良い三雲はこの時全てを理解した。なぜ、玉狛第一の全員が朝早くから一斉に支部から出掛けたのか、先輩達がなぜ人を悼むような複雑な表情を浮かべていたのかを。

 

「……水谷先輩はもうこの世にはいない。あの人は一年前近くの遠征で遠征挺を守るために自らを犠牲にして襲撃してきた人型近界民と共に死亡したんだ」

 

「なっ!?遠征で……!?」

 

(烏丸先輩が言っていた遠征に行くなら一度は水谷先輩の話を聞いておいた方が良い理由はこれだったのか……)

 

 烏丸は三雲達に伝えたかったのだ。先日のランク戦で玉狛第二は遠征に行ける権利を取得した。かつてA級であったチームも混ざる中、そんな彼らに劣らない実力を持っているということを上位二チームに入り、遠征への参加という権利を取得したことで証明できただろう。けれど、そんな実力を持っていたとしても遠征には死と隣り合わせだという危険がある。かつてボーダーの誰もがその実力を優秀と認めた水谷でもそれを回避することが出来なかったことを。

 

「……そんな険しい顔をするな、修。俺……いや、俺達は別に今更お前達に遠征へ行くなと言っているわけじゃない」

 

「えっ……?」

 

「俺達はあくまで遠征にはこういう危険があるぞということを伝えただけだ。水谷先輩の話を踏まえた上で遠征に行くか、行かないかは修達の自由だ。まぁ、聞いた所で修達の意思は変わらないと思うけどな」

 

 三雲達は新結成チームであるため最下位のランクからのスタートでありながら、結果として二十近くあるチームの二番目の実力を持つチームとして成長した。その経過として、上位ランクという壁への挫折、新戦略の構築、そしてヒュースの加入と絶対に遠征部隊に選ばれるために色々な策を講じてきた。今更、それを棒にふることはしないだろうと彼らの成長を間近で見てきた玉狛第一の面々はよく理解していた。

 

 それを聞いて、三雲達は遠征に行くことを反対されているのではないと理解してホッとすると同時に、三雲は師匠である烏丸にあるお願いを申し出る。

 

 

「烏丸先輩…水谷先輩の試合って見ることができますか?」

 

 

「水谷先輩の試合だと……?確かに水谷先輩の記録はいくつか残っているが、どうして修は水谷先輩の試合をみたいと思ったんだ?」

 

 弟子からの予想外の申し出に烏丸は驚いた様子で三雲に質問を訊ね返す。

 

「はい……!遠征経験がある水谷先輩の実力がどういったものなのか知りたいし、水谷先輩の戦い方を自分の力に生かせるか一人の射手として確認したいんです!」

 

 烏丸をじっと見つめる三雲の強い言葉に烏丸は動揺する様子もなく静かに沈黙するが、しばらくして何かを思い出して決心したように答えるのだった。

 

「…………分かった。少し待ってろ」

 

 そう言い残して烏丸は自分の部屋のある方へと向かっていく。しばらく何かガサガサと烏丸の部屋から聞こえると、手にDVDを持った烏丸が三雲達の元へと戻ってくるのだった。

 

「修、これを使え」

 

「烏丸先輩、これは?」

 

「水谷先輩が入っていた時の東隊、その初陣のランク戦の記録で、相手は鈴鳴第一と諏訪隊だ。実況は三上先輩で、解説は風間さんと加古さんがやっている。解説もないただの戦闘記録を見るよりはマシだろう」

 

 烏丸は修に持ってきたそのDVDを手渡す。実はこのDVD……何事もなく受け渡しがなされているが、かなりのレア物である。水谷の詳しいランク戦の記録など今では古株のボーダー隊員が持っているぐらいで、烏丸も太刀川隊の時に手にいれたものである。海老名隊の残念なオペレーターならば、大金でも支払って手に入れるに違いない。もし手に入れたら、普段のようにニタニタと自室でそれを満喫するのは目に見えている。

 

「ふむ……諏訪隊も鈴鳴も俺達が戦ったことがあるチームだな。修、早く見てみよう」

 

「ああ、分かった」

 

 空閑に急かされるように修はDVDをブルーレイディスクに入れて、支部にある大きなテレビにそのランク戦の模様を映し出す。テレビに映された模様を見て三雲、空閑、雨取はおろか木崎、小南、宇佐美、そして烏丸もその失われた光景を懐かしむようにテレビに集中していた。

 

 

 

 

『始まりました!ランク戦夜の部!実況は風間隊オペレーターの三上、解説には風間隊隊長の風間さんと東隊とは縁がある加古隊の加古さんに来て頂きました………....………………』

 

 

 

 

 

 




次回はまた本編に戻ろうと思います!
幕間については少しずつ更新していく予定です!次回は東隊と共に今回出てきた水谷がいた時代の東隊のランク戦初陣の回想の話でも作ろうかなと思っています笑。
ちなみに、ダンメモを今日の生放送を見てガチでやりこもうと思いますので、たぶん更新遅れます笑。アストレアファミリア……ボイス最高でした!
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