オラリオの防衛者   作:リコルト

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アストレアレコード……泣きまくりでしたね。
まさかの展開の連続でした。
エレボスゥ………泣
めっちゃ良い奴やん。


オラリオに来て数日……

 

 

 

「はぁっ!」

 

 

「くっ!そらっ!」

 

 

 団員達による朝のパトロールが非番のアストレアファミリアホーム『星屑の庭』。団員の彼女達にとって、俗に言う休日と呼ばれる日なのだが、早朝の『星屑の庭』からは誰かと誰かが互いに戦い合っている声と何かがぶつかり合う音が辺りに響き渡っていた。

 

「そこっ!」

 

「ちっ!やるな、ミズヤ」

 

 その声と音の正体は団員同士で模擬戦を行っていた水谷と輝夜。二人は練習用の竹刀を使わずに水谷は刀をモチーフにした攻撃手(アタッカー)用トリガー『弧月(こげつ)』、輝夜は極東から持ち出した彼女の愛刀『彼岸(ひがん)深緋(こきあけ)』とどちらも下手すれば怪我をしかねない真剣を使っており、発せられる音も木のポクンッといった軽い音ではなく、ガキンッと鋭い金属音である。

 

 どちらも全身を使い、自身の得物を全力で振るうが、互いに危ない状況ながらも二人はどこかこの模擬戦を楽しんでいるような笑みを浮かべていた。

 

「はぁっ!」

 

「居合の太刀・一閃!!」

 

 長かった各々の刀がぶつかり合う剣撃は終わりを迎え、水谷は弧月による横薙ぎ、輝夜は極東で培った得意の居合の流派の一撃でこの模擬戦は終了する。

 

「……やはり刀に関しては輝夜には敵わないな」

 

「ぬかせ……どの口が言うか」

 

 一瞬の攻撃で決着した模擬戦。水谷は輝夜の頭の横で弧月を寸止めし、輝夜は水谷の右肩に刀を突き付けるという引き分けという形で朝の模擬戦は幕を下ろした。二人は勝負の結末を確認し終えると、納得したように得物を鞘へと収める。

 

「流石は極東の剣術を究めただけのことはある。俺も防御に徹するだけで精一杯だったよ」

 

「そんな中でも反撃してきた奴が何を言うか。だが、久しぶりにやりがいのある刀同士の戦いが出来て楽しかったぞ。そこのエルフだとすぐに終わってしまうからな」

 

 そう言って輝夜が視線を向けている方へ俺も同情するように視線を向ける。そこにいたのは…………

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ…ゲッホ……」

 

 

 大の字の姿で仰向けになっているリューである。彼女の手の側には先程輝夜との模擬戦で使われた木刀が転がっていて、彼女自身の土埃にまみれ、息も上がっている。言わなくても分かるだろう。彼女は俺の前に行われた模擬戦の試合で輝夜にボコボコにされたのだ。

 

 三十分以上も輝夜と戦い、引き分けた俺に対して、リューは僅か三分で敗北。オラリオにカップラーメンというものがあれば、ちょうど完成している時間である。

 

 最初はリューも動きは良かったんだが、輝夜のギアが少しずつ入ったことで剣筋のキレが鋭くなったのに対して、リューは疲労で彼女の俊敏さが失われていったからなぁ。加えて、居合という近接戦に特化した輝夜に対して突撃するのは無理があるだろう。カウンターでリューが輝夜に腹から刀による峰打ちを食らった時は全てを察した。

 

 うん……すごく痛そうだなと。

 

「まったく……剣の腕は以前よりも上がってきたが、体力が話にならんの。いい加減その短期特攻はやめないか、クソ雑魚エルフ。もっと先を見る戦いをせよ」

 

「だ…誰が……クソ雑魚エルフ……ですか!」

 

「おーおー、まだ反抗するだけの元気は残っているか。だが、今日は終わりだ。そろそろアストレア様達が目覚める時間だからな。クソ雑魚エルフはそれまでにその身体に付いた土埃を何とかせい」

 

「くっ……!」

 

 そう言って恨めしそうにリューは土埃を落とすためにお風呂場がある方へと急ぐように向かって行った。

 

「……なかなか厳しいな、輝夜は」

 

 俺は素直な感想を輝夜に述べる。だが、別にそれを悪いと思っているわけではない。あれぐらいの厳しい剣の指導は俺もボーダー本部長の忍田さんで経験しているし、別に意地悪で輝夜もやっているわけではないだろう。

 

「あいつはまだ甘過ぎるんだ。一見落ち着いているように見えてどこかバカみたいな所がある。現にミズヤが来る前に闇派閥の傘下の組織のアジトを襲撃したのだが、あいつはバカみたいに特攻して後半はバテバテで、私や団長がどれだけ肝を冷やしたことか。攻撃魔法が楽に使えるのも、まだ当分先の話になりそうだ」

 

「ん?リューは回復魔法の他にまだ魔法が使えるのか?」

 

 前にリューが少し回復魔法を使えるという話を聞いていたが、他にも魔法が使えるのは初耳だった。

 

「ああ。『ルミノス・ウィンド』……辺り一帯の悪を光で簡単に消し飛ばす奴の切り札と言っても良い魔法だ」

 

 まさかの攻撃魔法。しかも、広範囲に及ぶ魔法ときた。輝夜の話し方から察するに凄まじい威力を持っていそうと思っていたが、輝夜がそれをアストレア様に禁じられている理由も教えてくれた。

 

「簡単な話だ。ルミノス・ウィンドはまだあのエルフには手が余る魔法。ルミノス・ウィンドは詠唱のために集中力が必要だし、精神力(マインド)も大量に使う。あのエルフが一回でもそれを使うと、精神力の使いすぎで倒れてしまう精神疲弊(マインド・ダウン)を引き起こすんだ。だから、いつもあのエルフが使って倒れた後は私やアリーゼが回収していた」

 

 成る程……言葉通り一度きりしか使えない最後の切り札というわけか。それに一度使って倒れるのなら、戦場で使うのはもっての他だろう。それだけで戦線が崩れかねない。リューを回収するアリーゼと輝夜が肝を冷やすわけだ。ファミリアの総意としてアストレア様がリューにその魔法を禁じるのも理解できる。

 

「ただまぁ、魔法に必要な精神力は経験値を貯めれば増やすことはできる。そこはあのエルフの頑張り次第というわけだ。それよりもミズヤ……今日、お主当番じゃないのか?」

 

「当番?…………あっ!?」

 

「やれやれ……忘れていたのか」

 

 輝夜に言われて俺はあることを思い出して急ぐように『星屑の庭』のキッチンへと向かう。

 

 

 やばい……今日は朝の料理当番だったな。

 

 

………………………

 

 

 

………………………………………………

 

 

 

……………………………………………………………………

 

 

「ミズヤって本当に何でもできるわよねー」

 

 

 アストレアファミリアの食卓にて、アリーゼが俺を作った朝食を食べながらそんなことを口にする。ちなみに、今日の朝食はバターロールのような小ぶりなパンを主食に、焼いたベーコンとチーズを中に詰めたチーズオムレツ、レタスとトマトの生野菜のサラダという主菜と副菜を加えた誰もが食べやすい朝食だ。

 

「団長……もうミズヤが来て五日目だぜ。いつまでそんなこと言ってるんだよ」

 

「だって、ミズヤが完璧超人過ぎて私の団長の威厳というものが失くなって来ちゃうかもしんないんだよ!ファミリアにとって由々しき事態だよ!」

 

「はぁ……そんなことだろうと思った」

 

 アリーゼの話を聞いたライラを筆頭にアストレアファミリアの団員達は溜め息を吐きながら同じ事を考える。

 

「団長。そんなにミズヤに威厳を奪われるのが嫌なら、団長の座をアストレア様に返すのも有りよ。極東の似たような言葉で『大政奉還』という言葉があってなー」

 

「待って、輝夜!何で私が団長を降りる前提で話が進んでるのかしら!?そこは『アリーゼが団長にふさわしいよ☆』とかフォローが入っても良いところじゃない!?」

 

 ははは……相変わらず騒がしい彼女達だ。もうすっかりこの風景は見慣れたものになってしまった。

 

「それでもスゴいですよ、ミズヤさんは。料理も私よりすごい手際が良いし、美味しいんですから」

 

「ああ、全く!こんな高性能な男なのに貰い手が一切いないって良い意味で可哀想だと思うよ」

 

 そう言ってくれるのは俺と同じく朝食当番だった料理好きの人間(ヒューマン)であるマリューとお洒落が好きなアマゾネスのイスカだ。二人はあの騒がしい彼女達は真逆で、大人しく世話好きで穏健派という言葉が非常に似合う。年はこちらが一歳ほど年上なのだが、俺がまだオラリオの生活に慣れない数日前まではよく助けられたものだ。あ、あとイスカ。貰い手がいないってまだそんな年齢じゃないからな。まだ十七歳だぞ。

 

「そうか?別にそこまですごい事はしてないと思うが?」

 

「そんなことはあらへんよ。男というものは家事全般を全て女に任せようとする。ミズヤみたいな家事も出来る男はなかなかオラリオにはいないぞ。まぁ、どこかのエルフは未だに料理も全く出来ないけどな」

 

「なっ!?輝夜……!貴女って人は!!」

 

 輝夜の言葉でさらに食卓の会話がエスカレートしていく中、それを止めるように玄関の方から何かを鳴らすような音が聞こえ、それを機に話が一斉に止む。

 

「今のは玄関からか?」

 

「ああ。団員はここに全員いるし、来客という事だな。アタシが代わりに見に行ってやるよ」

 

 そう言ってすでに朝食を食べ終わっていたライラが代表して玄関へと向かう。

 

 

『はーい。おはよーございま……がっ!!?』

 

「「「がっ?」」」

 

 玄関から彼女の性格が滲み出た気だるそうな挨拶が聞こえたと思ったら、その直後に銃に撃たれて絶命した鳥のような彼女の声が聞こえた。心配になった俺やアリーゼ達は玄関に向かうと、そこには顔を赤くして気絶している直立不動のライラと三人の来客らしい人物がいた。

 

 真ん中にいる一人は金髪の爽やかそうなイケメンの男児……いや、あれはライラと同じ小人族(パルゥム)か?

 

 そして、その両脇に立つ翡翠色の髪が目立つ妙齢のエルフと髭を生やした戦士という言葉が似合うドワーフ。その外見からはいくつもの修羅場を乗りきってきたという貫禄が滲み出ている。

 

「あっ!フィンさん!おはようございます!」

 

「ああ、おはよう。アリーゼ」

 

 客人らの顔を見るや否やすぐにアリーゼは真ん中にいた金髪の男に挨拶を交わす。この前のシャクティといい、別のファミリアの知り合いだろうか?

 

「あらあら、ロキの所の三人の子供がホームにやってくるなんて珍しいわね」

 

「朝早くから訪れて申し訳ない、女神アストレア。ある人物に用事があってね。今ここにミズヤ聡人はいるかな?」

 

 金髪の男が指名したのはまさかの自分。アリーゼ達と知り合い同士の会話をしに来たのだろうと思っていたが、どうやら違っていたらしい。

 

 

「あ、それ俺です」

 

 

「ああ、君がミズヤ聡人か。初めまして、ロキファミリアの団長をしているフィン・ディムナだ。よろしく」

 

 

 

 

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