オラリオの防衛者   作:リコルト

14 / 24
ごめんなさい……今回は急展開すぎるかも。
いきなり話が進みすぎた感が自分でもすごいです……


対談と闇派閥の掃討戦

 

 

 

「あ……紅茶でよろしかったでしょうか?」

 

「うん、大丈夫だよ。僕らもそこまで長居はしないから」

 

 そう言ってマリューから客人用に淹れた紅茶を頂くと、美味しそうに三人は口をつける。その一連の動作からは冒険者というよりは貴族のようなどこか品の良さを感じさせる。

 

「それでうちらのファミリアのミズヤに何の用ですか?まさか大派閥お得意のスカウトとかではあるまいな?」

 

「とんでもない。別にそんなことをするために君達のファミリアに足を運んだわけじゃない。今日は個人的な興味で彼に会いたかったのと彼の実力を見込んでお願いしに来たんだ」

 

 輝夜の皮肉めいたキツイ言葉にも金髪の男は慣れたように爽やかそうな笑顔で対応する。これがオラリオ内で最強のファミリアの団長のカリスマ性と処世術と言うべきか。

 

「改めて自己紹介をしよう。僕はロキファミリアの団長をしているフィン・ディムナだ。小人族(パルゥム)で、年は君の二倍以上あるが、気軽にフィン……もしくは勇者(ブレイバー)と呼んでくれ」

 

 フィン・ディムナ。

 

 オラリオ最強の大派閥ロキファミリアを率いる団長で、冒険者としての実力はレベル5。年も三十三歳と冒険者としての経験も同じ団長であるアリーゼの倍以上に豊富で、最強のファミリアの団長として相応しい実力と経歴を持っている。

 

 また、彼はとある事情で衰退してしまった小人族の復興のために冒険者になり、自らが小人族の象徴となろうとした経緯から付いた二つ名は勇者(ブレイバー)。世界中で彼を知らない人は絶対にいない、とソファベッドで顔を赤くして横になって倒れているライラが倒れ際に話してくれた。

 

 何でも小人族にとってフィンという存在は誰もが会いたい有名人なものだとか。実際、彼にはファンクラブというものがあり、独身である彼に対してアタックする者が多く、ライラもその内の一人だとアリーゼがこっそり教えてくれた。

 

 まぁ、ライラの雰囲気とアリーゼ達の雰囲気、そしてアタックされる本人の雰囲気でライラのアタックがどういった結果だったのは何となく察せる。……ドンマイ。

 

「私はリヴェリア・リヨス・アールヴ。私も君のここ数日の噂を街で色々と聞いていて興味があった。フィン同様に私もリヴェリア……もしくは二つ名の方で呼んでくれ」

 

 リヴェリア・リヨス・アールヴ。

 

 フィン同様にロキファミリアの所属でファミリア最強のレベル5の魔術師。ファミリアのみならず、オラリオ内でも最強クラスの魔術師に付けられたその二つ名は九魔姫(ナイン・ヘル)

 

 翡翠色の髪を持つ彼女の種族はオラリオでも珍しいエルフで、しかも彼女はその中でもエルフ達に崇拝されるハイエルフと呼ばれるエルフの王族の出身らしい。年齢も外見に惑わされやすいフィン以上でエルフの長寿という性質から百歳は越えているとか。もちろん……女性に年の話をさせるつもりはないからな。女性にも色々あると思うし……。

 

「ワシはガレスだ。お主のことはフィンから聞いたばかりだが、なかなかの良い男じゃな。今後ともよろしく頼む」

 

 ガレス・ランドロック。

 

 中でも年老いた貫禄がある髭がトレードマークの彼も同じくロキファミリア所属の前衛で、勿論レベル5。付いた二つ名は重傑(エルガルム)と、ドワーフの体格に相応しい二つ名だ。つい一週間前まで自らを鍛えるために一人でダンジョンに潜っていたらしく、帰って来たのも昨日の夜ぐらいだとか。

 

 

 いずれもオラリオで数十人ぐらいしかいない希少な第一級冒険者達。普通の人ではお目にかかるどころか、対談すらも出来ない彼らがわざわざ足を運んでやってきたのだ。俺に用件があるといっていたが、一体何の用だろうか?

 

「君のここ数日の活躍は噂で聞いているよ。たった一人で事件を片付けたアストレアファミリアの新星、入団時ですでにレベル2という有望株。どんな人物かと思って見に来たら……僕たちの予想以上の男だったよ。戦わなくても伝わる噂を裏付ける程の実力と経験……何より同時に伝わってくる君の誰かを守りたいという意志が非常に良い。アストレアファミリアにはピッタリの人物だよ」

 

「は、はぁ……ありがとうございます」

 

 フィン……いや、フィンさん達に誉められて嬉しいのだが、話の先が一向に見えてこない。まさか、わざわざ会いに来て誉めただけで帰るわけではないだろう。

 

「さて、ここからが本題だ。君の実力を見込んで頼みがある。明後日に行われる闇派閥(イヴィルス)のアジトの掃討戦に君の力を貸してもらいたい」

 

「掃討戦……ですか!?」

 

 実力も俺以上はあるであろう人達から頼まれたのはオラリオを脅かす闇派閥の掃討戦への参加であった。第一級冒険者の三人だけでもアジト一つを潰すのは簡単そうに見えるが、それでも戦力として足りないのだろうか。俺もいきなり朝から飲み屋感覚で明後日に一緒に敵のアジトを潰すぞと言われて動揺を隠しきれない。

 

「ちょっと待て、勇者(ブレイバー)。闇派閥の掃討戦なんて話は聞いていないぞ。いきなりファミリアの面子を貸せだなんて都合が良すぎるんじゃないか?」

 

「そうだよ!フィンさん!いきなり闇派閥を潰すとか、ミズヤを貸してくれとか話についていけないんだけど!」

 

 フィンさんの申し出に対して、俺が答える前に輝夜とアリーゼがその申し出に反論するかのような態度に出る。どうやら、この掃討戦の話は予めアリーゼ達と決められていたような話ではなく、俺と同じように今日はじめて聞かされたようだ。確かにいきなり言われて納得しろと言う方が難しい。参加する側としても詳しい説明が欲しいものだ。

 

「アリーゼ達が言うように突然の話で申し訳ないとは思っているよ。だが、オラリオに長く住み着いていた一つの闇派閥のアジトが見つかったんだ……ミズヤ、君のおかげでね」

 

「俺、ですか?」

 

「ああ、順を追って話すよ。何よりこの掃討戦はアストレアファミリアにも元から参加してもらう予定だったし、アストレアファミリアにとって非常に関係がある話だからね」

 

 

…………………………

 

 

…………………………………………

 

 

………………………………………………………

 

 

「「「え~っ!!星屑の庭の襲撃作戦!!?」」」

 

 

「ああ、その通り。君達アストレアファミリアのホームである星屑の庭を襲撃するという作戦を明後日の夜に闇派閥の一端……モーモスファミリアが実行するという確かな情報を入手したんだ。僕達はそれに便乗して手薄になったモーモスファミリアのアジトを強襲する」

 

 

 フィンさんの話を要約すると、こういう事だ。どうやら、俺が先日捕まえた犯人達にそのモーモスファミリアの幹部が混ざっていたらしく、その男が自身のアジトの場所について吐いたらしい。ただ、その話には続きがあった。

 

 何でも重要な幹部を捕まえられたモーモスファミリアが腹を立てて、アストレアファミリアのホーム襲撃作戦を企てていたのだ。それが明後日の夜……フィンさんが立案した掃討作戦の同時刻であった。

 

「ちなみになんだが、モーモスファミリアってどんな感じのファミリアなんだ?」

 

「う~ん……上級冒険者の数はそこそこだけど、団員は七十人ぐらいと数が自慢の闇派閥かな。私達もよくモーモスファミリアの相手をしていたけど、数による力押しが強くて…」

 

 成る程、アリーゼが言うには質よりも物量で強引に押すタイプのファミリアか。それを経験したアリーゼの話し方から察するに余程苦戦したようだ。総力戦になっても約10対約70による団員の抗争はそれこそフィンさんみたいな人達がいなきゃ盤面は覆しにくいだろう。

 

「ということはつまり、フィンさんが言いたいのはこの掃討戦では敵のアジトを攻める側とアストレアファミリアのホームを防衛する側に別れて掃討するという話ですか」

 

「うん、察しが良くて助かるよ。彼らは団員数が多く、彼ら全員をアジトで一気に押さえようとすれば、制圧に時間がかかり、残党を生み出してしまう可能性が高い。そこで僕達は人数が分断される彼らの作戦にわざと乗っかって制圧しようと思っている。アストレアファミリアに囮役を演じさせるのは僕達もあまり乗り気では無いんだけどね」

 

「全く酷い話やわ……けれど、うちらのファミリアに手を出すなら話は別だ。それで、勇者様はどういった編成でこの掃討戦に臨むのでしょうか?」

 

 確かに輝夜の言う通り参加するのであれば、編成は大事になってくる。だが、おそらく…………

 

「モーモスファミリア襲撃班にはこちら僕、リヴェリア、ガレスの三人。闇派閥関連の作戦にはあまり下の冒険者を関わらせたくなくてね。加えて、そこにアリーゼ達を含めたアストレアファミリアの十一人を総動員する。そしてミズヤには「アストレアファミリアのホームの防衛ですよね、フィンさん」……その通りだ」

 

「待って!フィンさん!ファミリアの防衛をミズヤ一人に任せるのは危険すぎるよ!」

 

 

………………

 

 

…………………………………

 

 

………………………………………………………

 

 

 まさか……先に言われてしまうとはね。頼みにくいお願いだとは分かっていたが、すでに彼自身が理解していたか。

 

「考え直してよ!今回ばかりは一人じゃ駄目だってぇ!ミズヤが前に一人で八人倒した時とは人数も全然違うんだよ!」

 

「別に死のうとしているわけじゃない!しっかり説明するから!だから、泣くな、騒ぐな、揺さぶるな!?」

 

 輝夜達の手を借りて団長のアリーゼを何とか押さえると、揺さぶれてクシャクシャになった服を整えて、目の前の彼は落ち着いた様子で分かりやすく説明する。 

 

「まず、モーモスファミリアはアストレアファミリアと絡みがある以上リューまでのアストレアファミリアの構成員については知っているだろう。あくまで相手の作戦に乗っかろうとしているのに、見知ったアリーゼ達が総出でホーム前で防衛をしていたら、そのモーモスファミリアの襲撃作戦すらも無くなり、分断による掃討作戦も失敗に終わる。恐らく、モーモスファミリアの襲撃作戦は星屑の庭に眷属がいないことがベストなんだ」

 

「ん?どういうこと?」

 

「モーモスファミリアの話を聞く限り、彼らの悪行は殺人というよりは強盗や立て籠りといった自らの犯罪をパフォーマンスのように見せ示すものが多い。奴等にとっては恐らく、無人の星屑の庭を放火とかで襲撃できたならノルマ達成。そこに最悪アストレア様や眷属がオマケで巻き込まれれば、万々歳なんだろう。だからこそ、この防衛戦で俺が要になってくる」

 

 すごいな……まさか、僕の考えと同じ考えに至ったというわけか。戦略の組み方やその説明が明らかに上級冒険者のそれじゃない。戦闘の実力だけでなく、指揮官としても十分な素質を持っている。まさに僕の写し鏡みたいな青年だ。

 

 

 ミズヤ聡人……君に会って正解だったよ。

 

 

「恐らくモーモスファミリアの連中は入団したばかりの俺の存在は知らない筈だ。だからこそ、俺が星屑の庭の前で待っていても、他人だと勘違いした星屑の庭の襲撃班らはノコノコと確実に姿を表す筈…これがフィンさんの作戦でしょ?」

 

「はっはっはっ、まさか全て言われるとはね」

 

 これには僕も笑いしか出てこない。まさか、ノーヒントで年下かつ上級冒険者に作戦内容と意図を全て言い当てられるなんて。まだそんな年じゃないけど、僕の後継者と言われても不思議ではないと思うよ、彼は。

 

「けど、大丈夫かい?アリーゼ達が心配するように今回の掃討戦はあまりにもミズヤへの負担が大きい。最悪、別の作戦を考えることも可能ではあるが…………」

 

「いえ、大丈夫です。この作戦が自分でもベストだと思いますので。自分の役割はしっかり果たしますよ」

 

「…………分かった。作戦はこのままでいこう」

 

 

………………………

 

 

 

………………………………………

 

 

 

………………………………………………………

 

 

 アストレアファミリアとの対談を終え、僕達も自分の主神が待つホームへと帰還する。

 

「ガレス、リヴェリア。二人は彼……ミズヤ聡人についてどう思ったかい?」

 

 そう言って僕は隣を歩く同僚達に訊ねた。

 

「ワシは彼を気に入ったぞ。彼女達と同じように将来性が非常に高い青年だと思う」

 

「私もガレスに同意見だ。特にあのフィンの作戦を言い当てた事には驚いた。彼はきっと良い指揮官になるな」

 

 ミズヤと知り合い、二人は彼に良い印象を持った様子だった。勿論、僕もガレス達と同じ気持ちだ。今度は闇派閥関連無しで落ち着いて話がしたいものだよ。

 

「それよりもフィン。帰りにミズヤから何を貰った?やたらと二人で話をしていたが……?」

 

「ああ……これかい?」

 

 リヴェリアに訊ねられ、僕は帰り際に秘密裏に貰った物をリヴェリアとガレスに見せた。この二人なら、この道具についても口外はしないだろう。

 

 

「ミズヤが作った()()()()だそうだ」

 

 

……………………………

 

 

 

 

…………………………………………………

 

 

 

 

…………………………………………………………………

 

 

ー二日後・夜ー

 

 

 アストレアファミリアとロキファミリア三幹部との対談を終えた二日後の夜。フィンが得た情報と読み通りにモーモスファミリアは動き出していた。

 

 漆黒の黒いローブを被って人気が少なくなった街路を疾走する男達。彼らが向かっているのは襲撃地であるアストレアファミリアのホーム『星屑の庭』である。

 

「それにしてもアストレアファミリアのホームには今誰もいないんですか?」

 

「ああ、先にアジトに帰った偵察によればアストレアファミリア総勢1()1()()が外出したのを見たそうだ。最悪、今残っているのは無力な女神様だけだよ」

 

「けれど、噂では新入団員がいるとか…………」

 

「気にしすぎた。そんなのどうせ何処かの流浪者だろう。実際、アストレアファミリアが手を貸さず、一人で倒したらしいじゃねぇか。まぁ、この件が済んだら、仲間の恨みも込めてそいつにも復讐しねぇとな」

 

「ですよね!俺の気にしすぎですよね!」

 

 走りながら一人の団員が部隊の長に訊ね、部隊の長がそれに対して嬉々とした様子で応えると、邪魔な障害が無いと知った部隊の士気はグングンと上昇する。

 

「よし、そろそろ目的地だ。火属性の魔法が使える奴等は準備しろ!奴等のアジトを炭にしてやるんだ!」

 

 

 だが、この時彼らはまだ知らなかった。アストレアファミリアにはその新入団員が近くで待機をしていたことを……

 

 

 

 

 

 

変化炸裂弾(トマホーク)!!』

 

 

 

 

 

 

 

 アストレアファミリアの新入団員の右手に作られた変化弾(バイパー)、そしてもう片手に作られた炸裂弾(メテオラ)が一つに組み合わさった合成弾が襲撃部隊の死角である真横から襲い、追い撃ちと言わんばかりに真上からも雨のように降り注ぐ。

 

 

「ぐうっ!?襲撃だと!?」

 

 

 突然の襲撃による爆発で、部隊長は誰がやったのかと混乱するが、彼の目の前に先程の爆撃を引き起こした張本人が爆煙と共に姿を現した。

 

 

「お、お前は!?」

 

 

「アストレアファミリアの新入団員と言った所かな。ここからは誰一人行かせる気は無いよ」

 

 

 オラリオの住人達が寝静まった夜、水谷一人だけによる防衛戦が幕を開けるのだった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。