オラリオの防衛者   作:リコルト

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防衛戦の終結

 

 

 

 輝夜達アストレアファミリアの増援が参戦した事で、防衛戦は第二ラウンドに突入。いや、防衛戦というよりは残党狩り……最悪、蹂躙に捉えられてもおかしくはないだろう。

 

 何せモーモスファミリア側は水谷一人でも圧倒されていたのだ。そこに援軍が来れば、流石のモーモスファミリアも泣きっ面に蜂。まさに悪夢を見ているかのような光景でファミリアの団員らも少数の水谷達を囲ったはいいが、やけくそのような心理状態だった。

 

 

………………………

 

 

………………………………………………

 

 

「おらぁっ!こいつでも喰らいなぁ!」

 

『ぐあぁぁぁっ!!?』

 

 ライラが懐からお手製の爆弾を取り出して、蝶のように小柄な体型を生かして素早く辺りへと振り撒く。

 

 散った爆弾らが地面にカタっと音を立てて転がると、爆弾は手榴弾のように爆発をモーモスファミリアの団員達にもたらす。その爆発は地面を抉り、地形に影響を与える程の威力を持っていた。まったく容赦がない一撃だ。

 

変化炸裂弾(トマホーク)!」

 

『なあぁぁぁっ!!?』

 

 とまぁ、俺も例外じゃない。

 

 右手と左手を総動員して生成する射手の大技である『合成弾』がライラの攻撃のカバーに入る。俺が普段から使うバイパーに威力が高いメテオラを付与したことで、ライラの爆弾に負けず劣らずの一撃をもたらしていた。

 

 奴等はアストレアファミリアのホームを襲撃するために火矢や火薬といった物を持ってきていた。そっちは爆撃がありで、こっちは無しといった言い分は言わせない。

 

「ナイスだ!……ミズヤ!前方っ!」

 

 そう言ってライラは俺のカバーに感謝の言葉を送るが、一転してすぐに警句を送る。それはライラが言うように俺の前方から素早い動きでナイフを持った盗賊風の男達三人が襲いかかってきていたからだ。

 

「っ!!………………………」

 

 だが、生憎と合成弾を撃ってしまったばかりだ。再度合成弾を撃つには時間が必要だし、この距離で弾を撃てば俺にも被弾しかねない。

 

 だから………………

 

 俺は前方からの攻撃を避けるのではなく、俺の後ろから襲ってきた攻撃……仲間の金髪()()()の援護攻撃を避けて、その攻撃を前方から襲ってきた三人に当てる。

 

「ナイス、リュー」

 

「ミズヤもよく私の援護に気付きましたね」

 

 駆け付けたリューに助けられた形で彼女にお礼を言うと、彼女も入団したばかりの先日から想像ができない賛辞の言葉を言い返される。

 

 元々、こういったチームワークによる連携は旧東隊の時代からたくさん練習していた。味方がどんな状況にいるか、味方が何をしようとしているかの把握は朝飯前だ。

 

「いくぞ、リュー」

 

「ええ、ミズヤ」

 

 互いに背を預けてそれぞれの腰に着けられた得物を右手に握りしめ、俺とリューは残り僅かの敵に向かっていく。

 

「やぁっ!!はぁっ!!」

 

 リューが持ち前の素早さに風の魔力を纏わせることで嵐のような縦横無尽の連撃を浴びせる。対して俺は……

 

「グラスホッパー!!」

 

 機動戦用オプショントリガー『グラスホッパー』を展開。敵集団を囲うように複数顕現させ、俺はそれに流れるように乗って縦横無尽に弧月で斬りつける。

 

「旋空弧月!!!」

 

 そして、最後のグラスホッパーで俺は高く飛び上がり、敵集団の上空から弧月による遠距離斬撃を敵集団に向けて吹き飛ばすように振るう。

 

『ぎゃあぁぁぁぁ!!!』

 

 俺とリューのコンビネーションから逃れられた者はおらず、全員がリューに斬りつけられるか、俺の旋空弧月で無双系ゲームみたいに吹き飛ばされて意識を失っている。

 

「ふぅ、終わったか……」

 

「こっちも終わったぜー」

 

「私も全員の始末が済んだぞ」

 

 俺とリューが自分達に襲いかかってくる敵達を沈黙させて各々の得物を鞘へとしまう。すると、ちょうど良いタイミングで別の場所で他の敵達の担当をしていたライラと輝夜が報告するようにこちらへと合流してきた。

 

 だが…………

 

「いや……まだだな」

 

「どうしたんですか?ミズヤ?」

 

「指揮をしていた隊長らしき男がいない」

 

 ライラと輝夜が担当したモーモスファミリアの団員らの顔を見ても、あの多数の部隊を指揮していたそれらしき人物を見つけることが出来なかった。もしかして、あの乱戦の最中に隙を見て逃走したのだろうか。

 

「おい!ミズヤ!あれを見ろ!」

 

 屋根の上から探していたライラが何かを見つけたらしく、俺達はライラが大声で指差す方へ目を移す。

 

 そこには俺達に背を向けて急ぐように走り去ろうとする一人の男の姿があった。ただ、走り去るにはスピードが遅く、よくよく見てみると、彼の背中には重そうな金属製の盾らしきものがあった。

 

「何だあれ?盾を背負っているのか?」

 

「大方、私達の追撃をあの盾一つで防ごうとしているのだろうな。急いで逃げれば良いのに……バカな男よ」

 

「まるで亀ですね………」

 

 男の無様な敗走姿を見て、俺と輝夜とリューは思ったことを口々に話す。確かにリューの言うように遅く走る姿はまるで亀みたいだな。

 

 と、別にこのまま逃すわけにはいかない。

 

 距離は500mぐらいか。なら…………

 

 相手との距離が射手の弾トリガーの射程では厳しいと判断した俺は右手に新たな武器を顕現させる。その武器は俺にとって大事な人がお気に入りとして使っていたものだった。自分ではあまり使わない場面が多かったが、こう持ってみると何だか複雑な気持ちになる。

 

「ミズヤ、その武器は何ですか?」

 

 重量感が目でも伝わる対物ライフルを両手で固定し、照準を最後の標的に合わせた所で、リューがこの見たこともない武器について訊ねる。

 

「こいつの名前はアイビス。俺が最も尊敬していた人が使っていたお気に入りの狙撃銃(スナイパーライフル)だ」

 

 

 

……………………

 

 

 

…………………………………………

 

 

 

………………………………………………………

 

 

「ハァ……ハァ……早くアジトに帰らないと……」

 

 乱戦の隙を見てただ一人生き残った襲撃作戦の指揮を取っていた男は後ろを振り向くことなく、アジトに帰ることだけを一心に逃げ続けていた。

 

「あいつらには申し訳ないが…………俺の推測が正しければ、アジトは大変なことに。急がなければ……」

 

 男はその最悪な事態を食い止める為に奔走するが、時すでに遅し。男がそれに気付いた頃にはすでにロキファミリア三幹部とアストレアファミリア面々が制圧した頃であった。

 

 だが、それを男はそれを知らない。行ったところで、そのアジトの光景に絶望し、フィン達がいる今では自首をするような結果になってしまうだろう。

 

「ふっ……ここまで来れば……」

 

 男は息を荒げて初めて後ろを振り向く。戦場からかなり離れ、追ってが来ないことにホッとしたのだろう。

 

 だが…………

 

「なにいぃぃぃ!!?砲撃いぃぃぃ!!?」

 

 男の後ろには弾速が遅いものの、すごい轟音を立てて一直線上に迫る砲撃の姿があった。弾速が遅いため、もっと前に後ろを振り向いてその砲撃に気付けば、回避できただろう。だが、それはもう回避できない距離にまで来ていた。

 

「くっ……ならば、この俺の最後の希望である盾で守るまでだ!この盾はあの生意気な少年の魔弾を上手く防御していた!高い金額だったが、ここで役に立つとはな!」

 

 男はそう言って背中に亀のように背負っていた盾を構える。本来なら水谷のバイパーの追撃を避けるためのものであったが、男はここが使い時だと判断する。

 

 だが、それは勘違いであった。

 

 水谷が行ったのは狙撃。狙撃とは遠距離にいる敵を一発で仕留めるものだ。しかも、水谷が使ったのは狙撃手用トリガーの中でも最も威力がある『アイビス』。

 

 つまり、今放たれている弾は水谷が乱発するバイパーやメテオラの数十倍の威力はあるというわけだ。

 

 

「がはっ……!?な、なぜ……?た、盾が……!?」

 

 

 水谷のアイビスによる狙撃は盾を中心から射貫き、盾はガラスのように簡単にひび割れる。それでもその狙撃弾は威力が落ちることはなく、そのまま男の胸元へヒット。ドンッという衝撃と共にボロボロになった男は吹き飛ばされてしまう。

 

(もう……アストレアファミリアはこりごりだ)

 

 アストレアファミリアの襲撃を企てた事を悔やみながら、男はそのまま意識を失ってしまった……

 

 

………………………

 

 

 

………………………………………

 

 

 

……………………………………………………………

 

 

「よし……これで全員だな」

 

 5人で手分けして、50人近い団員全てを手錠にかけたところで、俺達はようやく一息つくことができた。

 

 時間はまだ深夜。何せ50人を倒すのに一時間も経過していない。本来なら、このまま何もなければ待機なのだが、フィンさん達の動向が分からない。

 

『もしもし、ミズヤ?聞こえるかな?』

 

「ええ、聞こえます」

 

 そう思っていると、フィンさんから通信機を通して耳に彼からの会話が聞こえてきた。

 

『こっちは全員無事捕縛が完了したよ。主神や団長も捕らえることができた。そっちはどうかな?』

 

「こちらも取りこぼしなく、全員の捕縛に成功しました。今さっき手錠をかけたところです」

 

『驚いた……まさかこんなに早く終わるとは』

 

 通信機の向こうでフィンさんが俺達の予想外の鎮圧の早さに驚いた声を上げている。

 

『そちらの状態は分かった。今、夜勤担当のガネーシャファミリアに捕まえた団員らの移送を行わせるつもりだ。こちらが終わり次第、そちらにも向かわせるからそれまで見張りをしてくれるかな?』

 

「分かりました」

 

 

 

 その後、ガネーシャファミリア所属の人達が来たのだが、50人近い数の引き渡しと移送だ。そう簡単に終わるわけない。結果として俺達が奴等を制圧するよりも時間がかかってしまった。

 

 アジト襲撃組とホーム防衛組の後始末が終わり、合流できた頃にはもう日が昇ろうとしていた頃だった。ファミリアが違うフィンさん達と一度解散した後、夜の作業で活躍した俺を含めたアリーゼ達が朝にも関わらずベッドに入ったのは言うまでもない。

 

 

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