捕まえた強盗を衛士らしき人物に引き渡した後、アストレアという女性と彼女が結成した組織、アストレアファミリアの団長であるアリーゼと呼ばれる赤髪の少女に連れられ、水谷は彼女達の拠点へと案内された。
場所は
予想外の形をした拠点に水谷は心の中でおいおいと少し言葉を濁らせる。
それもそのはず。彼はアリーゼからアストレアファミリアというものを聞いていた。いや、正確には彼女から自慢するように聞かされていたが正しいのだが。
アストレアファミリアは正義のファミリア。
そんな話をアリーゼから聞かされ、水谷は平和を維持する大切な組織だからその組織の拠点もさぞ大きいのだと、勝手に街一個分ぐらいの敷地を持つボーダーの拠点と比べるようにイメージしていたのだ。もちろん、勝手にイメージしたのは水谷であり、それを理解している彼は彼女らの拠点に非を言うわけではない。ただ、不動産みたいに家を紹介され、それに拍子抜けするように動揺してしまったのだ。
「ここが君達の拠点?」
「そう!名前は『星屑の庭』よ。ロキファミリアやフレイヤファミリアと比べて規模はまだ小さいからこんな拠点だけど、いつかは
目をキラキラとさせながら、夢を語るアリーゼに他のファミリアのメンバーはまた始まったよと言うように苦笑し、黒髪の着物の少女は『今やったら確実に財政は火の車やな』と鋭いツッコミを入れ、ピンク髪の小柄な少女も『間違いねぇ』とそれに同調する。そんな中で、俺に不審者を見るような視線を送った金髪エルフは素晴らしい夢だとアリーゼに唯一賛同しているんだが。
(まぁ、確かに言われてみればメンバー十数人の拠点だからこの位が妥当か。玉狛支部もこれぐらいだったし。それにしても……彼女達おもしろいな。ボーダーにいた頃を思い出す。あんな感じで色々な奴がいたんだよなぁ)
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「紅茶で良かったかしら?」
「ええ、大丈夫です。お構い無く」
アストレアから温かい紅茶が入ったカップを差し出され、水谷はそれを一口頂く。最初は彼女達の拠点に男性が来るのは初めてだと落ち着いた様子だったアストレアも少しソワソワしていたが、水谷にとって紅茶は好物の分類に入るものである。紅茶を頂いた水谷が美味しいと口から零すと、作った本人であるアストレアは嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「それで、聡人さんはどういった困り事があるのかしら?」
「ああ、実は…………」
拠点内に設置されたアットホーム感満載のソファに座りながら、水谷とアストレアが相談を始めようとすると、立ち聞きしていた金髪エルフが話に割り込む。
「待ちなさい、怪しい
「リオン……そんなこと言うものじゃないわ。彼はアリーゼを助けてくれたのよ」
「しかし、アストレア様!もし、彼がアストレア様に先程の見慣れない武器を向けたらどうするのです!」
そう言って金髪のエルフ───リュー・リオンは主神であるアストレアを強く説得し、アストレアも落ち着いた様子でそれを聖女のように優しくおさめようとする。
「ごめんね、ミズヤ。リオンが………」
「いや、大丈夫だ。彼女の言い分もよく分かる。それよりもいつも彼女はあんな感じなのか?」
リューの事について頭を下げるアリーゼに水谷は目の前で主神と今現在言い争っているリューについて深く訊ねる。
「そうですわね。彼女はうちのファミリアで唯一のエルフ。元々エルフという種族はプライドが高く、潔癖を好む種族なのですが、彼女の意地っ張りでバカ真面目な性分も重なり、ファミリアに入って一年が経ってもああ言ったトラブルは日常茶飯事ですの」
「だな~。今は少しマシになってきたけど、あいつと肌を触れることが出来るのは団長とアストレア様ぐらいだからな。同じファミリアの仲間同士で握手とかするだけでも間違ってあいつに投げ飛ばされるぐらいだぞ」
アリーゼの代わりに主神とリューが言い争っている様子をヤレヤレと呆れた様子で見ていた二人がそれに答える。
一人は和を意識させる着物と簪。そして、それに映える黒髪を持つ少女。名前をゴジョウノ・輝夜。このアストレアファミリアの団長であるアリーゼを支える副団長である。
そして、輝夜に賛同するピンク髪の小柄な少女。姿だけはこのファミリアで最も小さい方に分類されるが、どこか大人っぽい雰囲気を漂わせる。名前をライラ。アストレアファミリアではアリーゼや輝夜と並ぶ幹部的中心人物だ。
「成る程……要は見知らぬ人には易々と気を許せない気難しいやつというわけね。ちなみに、素性も明かさない不審者が二人の長であるアストレアさんと話すことを踏まえた上で二人は俺をどう思っている?」
そう言って水谷は二人に訊ねると、輝夜とライラは彼の座っているソファーの空いているスペースに右には輝夜、左にはライラという感じで挟み込むような形で座り込む。
「別に私はミズヤ様を邪険に扱おうとは思っていませんわ。うちの団長を手助けしてくれたわけですし、アストレア様が認めた者なのですから。むしろ、私個人としてはミズヤ様に興味があります。極東出身の風貌をしているにも関わらず、どこか異質な所が見られるミズヤ様に……ね」
「ワタシは別に最初からお前をリオンみたいに不審者とか思っていねぇよ。輝夜と同じでお前に興味があると思っている方だ。お前の素性も興味があるが、それ以上にお前が使っていた武器に興味がある」
二人の答えに水谷はそうか、と呟いてしばらく考えると、水谷は未だに言い争っている二人に聞こえるように一つの提案をする。
「なら、アストレアさんとファミリア団長のアリーゼ、それに俺の脇にいる二人を加えた面子だけで相談をしましょう」
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「聡人さん、本当によろしかったのですか?ここにいるアリーゼ達以外を部屋から閉め出したら、聡人さんに対する不審感が増すばかりだと思うのですが………」
アストレアの言い分も水谷にはよく分かる。実際、その提案をさけた際にリューはふざけるな!と文句を言っていたし、強引に部屋を追い出される最後まで抵抗していた。
「ええ、今から話すことはここにいる全員にとって信じられないような内容ですから。さっきみたいに話を遮られ、収拾がつかなくなることが目に見えています。そこで、俺がその話をしても大丈夫だろうという人物を選び、こういった場を設けました。ここにいない他のメンバーに対して素性が分からない人物が直接説明をするよりは見知った仲であるアリーゼ達から今から話す内容を間接的に説明してもらった方が彼女達も納得しやすいと思うので」
「それは納得ですわ。あのポンコツエルフがミズヤ様が話をする度に邪魔をしたら、相談のしようがありませんから。ちなみに、私やライラが選ばれた理由は何故でしょう?」
「二人がアストレアファミリアの中心人物であること。もう一つはあの面子の中で不審がることなく俺に純粋な興味を持っていたこと。この二つが主な理由かな?それと輝夜さん、
水谷がそう言うと、アストレアとアリーゼとライラは驚いたような表情を見せる。輝夜は水谷に一瞬動揺した表情を見せ、溜め息混じりに参ったと観念する。
「気付かれたか……これは驚いたわ」
先程までのお嬢様のような優しそうな声が一変して、武士のような力強い声を輝夜は発する。
「第一印象は大事だからな。まぁ、詳しい素性すらも晒していない俺が言える立場じゃないんだけど」
「ふふっ、確かにな。ミズヤ聡人……いや、ミズヤ。気に入ったわ。貴様がどんな素性のものであろうと、この輝夜、全て受け入れよう。さぁ、話してみせろ」
そう言って上機嫌になった輝夜は懐から扇子を取り出し、水谷に話を促す。その機嫌が良い様子にアリーゼとライラは珍しいものを見るような視線を彼女に送るが、視線に気付いた輝夜の一睨みで視線を一蹴する。
「じゃあ、まずは俺の素性について説明か。簡潔に言うと、俺はこことは違う世界から来た人間です」