『異世界から来た』
水谷のこの発言は彼の発言を全て受け入れると自信満々だった輝夜のみならず、女神であるアストレアでさえも驚かせる威力を持っていた。選別した面子だとはいえ、思考がフリーズするこれぐらいの反応はするだろうと水谷自身もある程度予想はしており、そのまま水谷は話を続ける。
自分は異世界でアストレアファミリアのような悪しき者達を倒す組織にいたこと、自分が持っていた武器はトリガーと呼ばれる自身が所属している組織が保有する専用の武器だということ、とある遠征の帰り際に敵に襲撃され、自分がそれを相撃ちにした形で退けたこと、アリーゼ達に会うまでの経緯を水谷は未だにポカンとする彼女達でも分かるように説明した。
「………以上が、俺の素性の全てです」
「あ~……、嘘はついていないよな?」
黙って水谷の話を聞いていたライラは言いづらそうに水谷へと訊ねる。それに素早く答えたのは水谷ではなく、全てを理解した雰囲気を醸し出すアストレアだ。
「ええ、彼が嘘をついている気配は全く無いわ。それに彼が言っていた事に思い当たることがあるのよ」
そうね、と思い出すような素振りを水谷達に見せ、アストレアはそのまま話を続ける。
「実は昨日の夜、天界から新たに神が地上に降りてくる気配に似ているものを感じとったのよ。ヘルメスやロキもそれを感じたらしくて、私に連絡してきたの。恐らくそれが……」
「間違いなく俺ですね」
水谷が目を覚ましたのは今日の午前。昨日の夜にあの路地裏に転移されたと考えれば、時系列もバッチリである。
「まぁ、アストレア様が嘘をついていないという事ならミズヤが言っている事は本当だろう。私はミズヤを信じる。でないと、私が嘘つきになるからな」
「アタシもミズヤの事は信用しても良いと思うぜ。それにコイツはアタシ達と同じ正義側の人間ときた。悪側の人間で無い以上、不審がる必要も排斥する必要もないだろ」
そう言って輝夜とライラは水谷の言っていることを信用するといった旨を彼に伝える。それを聞いた彼女達の主神であるアストレアと水谷はその答えに対して信じてくれて良かった、と安堵し、最後の一人に目を向ける。
「アリーゼ、貴女はどうなの?」
アストレアの言葉に水谷、輝夜、ライラの視線は赤髪の少女アリーゼに向けられる。
「団長……何か言ったら、どうなんだ?」
何も言わないアリーゼに輝夜も心配になり、声をかける。すると、アリーゼはそれにゆっくりと答える。
「そうだね……私はミズヤを信じる……
(((
今のアリーゼの話し方の雰囲気的に『けど』みたいな逆接が来ると思っていた輝夜、ライラ、水谷は思わず彼女を二度見する。順接が来るなんて思いもしなかっただろう。
「ミズヤの世界のお話聞かせてくれない☆?」
緊迫した雰囲気から一気に放たれるアリーゼの何事にも興味津々な可愛らしい少女の反応に水谷は困惑、アストレアは笑みを浮かべ、輝夜とライラは心配して損したとソファーにうなだれる。
「アリーゼは………いつもこんな感じなのか?」
「「……いつもこんな感じだ(だな)」」
ソファーでうなだれる二人の言葉に水谷はアハハ…と苦笑を浮かべて二人に同情し、自分の世界について語り始めるのだった。
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「へぇ~、ミズヤはそっちの世界のニホンという国から来たんだ!どういった雰囲気の国なの?」
「俺が戦っていた敵さえいなければ、戦争も無い平和な国だよ。文明もこっちの方がかなり発展している。ただ、そちらの世界でいう極東と似ている所が多いかな?日本も東側にある国で、輝夜が着ている着物や和風文化が今も健在だし」
「成る程、道理でミズヤに私と何処か似ている部分があると感じたわけか」
「ああ、俺も輝夜の姿を見て驚いたよ。異世界の筈なのに、自分の故郷を連想させる風貌をしているからな」
緊迫した空気は幕を下ろし、水谷達はそれぞれの世界について女子会のような雰囲気で話を進め、異世界の壁は無いと言える程すっかりと打ち解けあっていた。それは互いに平和を愛し、平和の為に戦うという共通点があったからである。
「飢えが無く、子供達が自由に勉強や遊びが出来る世界……かぁ。今のオラリオでは想像することも出来ない夢のような世界だよ。本当に信じられないな~」
水谷の故郷である日本について興味津々に聞いていたアリーゼは今のオラリオと比べて夢のような世界だと口にする。
「それはこちらも同じだ。この迷宮都市オラリオみたいにダンジョンというものはこっちの世界には無いし、神が下界に降りてきた事もエルフや獣人という種族も存在しない。ただ、神の名前はこちらも同じだけど。……まさか、アストレア
「しょうがないわよ。貴方はまだこの世界について知ったばかりなのですから。それに間違えたからといって私は天罰を下すような能力や権利も持っていませんし、こちらの世界出身の人達もよく間違えるものですよ」
水谷はアリーゼ達と話す中で、彼らがいる迷宮都市オラリオについて、この世界の歴史、そして天界の神様達がこの地上に降りてきたという水谷の世界では神話に近いレベルの実情を知ることが出来た。
ロキ、フレイヤ、ヘルメス………アリーゼ達の会話から出てきた神様の名前、水谷の世界でも名だけは聞いたことがある神様達の名前を聞いて彼は自分の世界で軽く勉強したことがある神話について思い出し、気付いてしまう。
アストレア。ギリシャ神話に出てくる正義を説く神様の名前で、彼女の持つ善悪を測る天秤は天秤座のモチーフになり、彼女自身は乙女座のモチーフになっている。
それに気付いた水谷は真っ先にアストレアへと頭を下げた。まさか、気軽に話していた人物が本当の神様だったとは。アリーゼ達が『様』を付けて呼んでいた理由もこの時に理解した。水谷は神話みたく無礼を働いた天罰を喰らうのではないかと覚悟する。
しかし、それを見たアストレアは別に構わないわと笑顔で水谷に頭を上げさせた。話を聞くと、神様達は地上で致命傷を負ったり、神の持つ能力を使用すると、天界に強制的に帰らせられるらしいと制限があるか。
ただ、相手は神。水谷はこれ以降、どんな神にも敬称で様を付ける事を律儀に固く誓ったのだった。
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「ミズヤはこれからどうするの?」
一時間程近くお互いの世界について語り合い、話題のネタもそろそろ尽き始めた所でアリーゼが水谷に訊ねる。
「そうだな……正直に言うとあまり決めてない。アストレア様が言うにはこちらの世界に流れ着いたのは俺だけみたいだし、仲間の安否も知ることができた。やることがあるとすれば、元の世界に戻る方法を探すぐらいなんだが………」
頬をポリポリと掻きながら、答えづらそうに水谷は話す。すると、アリーゼは机をバンっと強く叩いて、水谷にある提案をもちかける。
「なら!私達のファミリアに入らない?」
「えっ……アリーゼ達のファミリアに?」
アリーゼの提案。それは自分達のファミリアに入らないかという旨の勧誘に近いものだった。予想外の勧誘に水谷も度肝をぬかれた表情を見せる。
「団長のその提案に賛成。ミズヤとは気が合いそうだからな」
「おう、アタシも賛成だぜ。レベル2の暴漢を楽に倒せる人物がファミリアに来るなら、心強いし、大歓迎だ!」
「輝夜……ライラ……」
アリーゼの提案に輝夜、ライラも賛成の意を示す。三人から強く誘われる水谷に、トドメと言わんばかりにアストレアも提案の意を示す。
「行くアテも無いのでしょう?もし、私達のファミリアに入って頂ければ、ミズヤが所属していた組織の設備には負けるけど、不自由しない生活の拠点を私達はミズヤに提供しようと思っているわ。それにミズヤがファミリアに入ってくれれば、ライラが言っていたようにとても心強いし、
三人の少女と一人の女神による提案と説得に水谷はしばらく真剣に考え、考え抜いた答えを彼女らに告げる。
「分かりました……それじゃあ、お言葉に甘えてお世話になろうと思います」
水谷にとってここは誰も知り合いがいない異世界。衣食住を踏まえたゼロからの生活は正直言ってかなり厳しい。加えてこの世界のルールも知らない。それならば、知り合ったばかりであるものの、異世界から来た自分を信用し、戦力として勧誘してくれる彼女達の提案に乗る事が、互いにwinwinの利益をもたらし、最適解だった。
「けれど、その前に他のメンバーにさっき話した事を伝えないとな。いきなり、俺がファミリアに入りましたというのは流石に無理があるし」
「大丈夫!私達にまかせてよ!!」
その後、水谷の素性や事情はアリーゼ、輝夜、ライラ達によって他のメンバーに伝えられた。最初はやはり、アリーゼ達みたいに動揺していたが、彼女達の説得とアストレアの言葉はとても効果的で水谷について信用しようとする者達が徐々に増えていった。
結果、ファミリアメンバー全員が水谷を信用し、彼のファミリアへの入団は大いに歓迎されることになった。ただし、その内の一人である金髪エルフは最後まで彼を信用するのは早いと反対していたが、アリーゼとアストレアのお願いで仕方なく渋々彼の入団を許したのは言うまでもない。
ダンメモをしながら執筆しているのですが、輝夜の口調ってかなり難しい………笑