異世界ライフの楽しみ方・異聞『連邦の魔術師』 作:呑兵衛和尚
そちらを読まないと内容はさっぱりですので、そちらを読むこともお勧めしますが、あくまでも私が楽しむために書いているだけですので、あまりツッコミは無しの方向でお願いします
オーガスタ基地襲撃を阻止したマチュアとストームは、無事に連邦軍の追撃を交わしつ姿を晦ます。
あとは転移で十勝まで戻ってくると、自分たちのアジトである『吉野カンパニー』というダミー工場に戻ってきた。
表向きは廃材回収と機械整備工場であるが、その実態はマチュアたちの『なんちゃって、ソレスタルビーイング』の本拠地である。
「はぁ。アバオを殺そうかと思ったけど、殺せなかったよ」
「相手は創造神だから、普通にビームライフルで撃っても効果ないからな、神滅兵器でも用意ししないと無理だろうが、俺の神滅の槍も、マチュアの神滅の咆哮も使えないからなぁ」
「そうなんだよ。正史を守る、それにはアバオを倒すのが最短なんだけどさ、倒せないんだよ、どうすっかなぁ」
今日までの世界の歴史をストームは調べてみた。
結果、2人の知っている歴史通りに時間は進んでいる。
昨日のようにアバオが史実外のことを仕掛けてくると歪みが出るのだが、それはどうにか阻止。
まあ、今回はアバオの考えを予測しての行動だったのでなんとかなったが、次も同じことができるかというと自信がない。
「正史をぶっ壊す最短コースは」
「ガンダムの破壊、もしくはアムロごとホワイトベースの破壊だな。連邦のエースパイロットであるアムロを殺すのが最も早いだろう?」
ストームはそう告げるが、マチュアは指を立てて左右に振る。
「ちっちっ。アムロはエースパイロットじゃないよ。いや、エースだけどトップじゃないか。連邦のトップエースはテネス・A・ユング大佐だよ」
「……誰だそれ?」
「さぁ? 史実でも正史でもそうなのかわからんけど、そういう情報があったのよ」
「へぇ。まあ、それはそれで、次にアバオが仕掛けてくるのはサイド7、ホワイトベースにガンダムを引き渡す時が濃厚だよな」
「そうだね。そうなるとシャアも出てくるから厄介だよ。ぶっちゃけあたしゃ怖いわ」
そりゃそうだ。
アニメや漫画でシャアを知っている分、実際は敵に回した時にどうなるかなんて予想がつかない。
そこにアバオが関与して来るとなると、全く予測がつかないのは事実。
「でも、俺たちはこの反則級のモビルスーツを用意した。だったら、アバオも持って来る可能性はあるな」
「……『信楽焼のアバ王』の創造神能力がわからなおんだよ。あたしは『魔導・創造特化』だしストームは『精霊・戦闘特化』だろ? アバオはなにに特化しているのかわからない」
「そこんところの資料がないからなぁ。マチュアを超えた創造特化だったり、俺を凌ぐ戦闘特化なら、とっくにスーパーモビルスーツを開発したり、この前の戦いで引くことはなかったと思うから、この二つはないと考える」
それなら、なにに特化してあるのか?
そこを考えて次の手を考える必要はある。
いずれにしても、連邦軍にガンダムを引き渡す為にホワイトベースがサイド7に入港するのは9月17日。
あと二月以内にはサイド7に潜り込まないとならない。
しかも正攻法で行くしかなく、マチュアの転移では行ったことのない場所に向かうことはできない。
「そんじゃ、ジブラルタルに向かってサイド7に向かうためのチケットを手に入れるしかないか」
「そうだね。そのためになにをするか、チケット代を短期間に稼ぐしかないよなぁ」
「とは言え、何か稼ぐ方法あるか? 流石にこっちの世界で錬金術なんて使った日には、ジオン、連邦共に追いかけ回されるぞ?」
そうなのよ。
異世界ファンタジーの住人としては、こっちの科学文明での稼ぎ方なんてよく分からない。
いや、普通に商売をすればいいのはわかっているんだけれど、商業ギルドもない世界で、取引で稼ぐのは不可能である。
それならば。
「よーっし、ジオンのぶっ壊れて放置されたザク集めて修理でもしますか。それを売る」
「あー、それか。|物質修復(レストレーション)を使ってやれば、何体かの廃棄されたザクなら新品に戻せるか」
「そーいうことさ。そんじゃ、廃棄モビルスーツが大量に落ちている戦場にでも向かいますか」
──ポクポクポクポク……チーン
現時点で最も戦場として大勢の死者が出た場所は北米地区。
そこに向かってザクを回収するために、一度オーガスタ上空に転移し、魔法の箒でニューヨークへと向かうことにした。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
北米、ニューヨーク。
0079.2月に行われたジオン軍の大量効果作戦により、ニューヨーク基地は制圧され、施設は全てジオン軍に接収されてしまった。
その外縁部では、激しい戦闘があった名残が今もなお残っている。
「うほ〜っ。ザクの残骸もあるし61式戦車も放置されているわ。流石にジャンク屋もこの辺りまでは来れないのか」
「そうらしいな。建物の殆どが倒壊しているし、かなりの人が被害にあったのが窺えるわ」
足元に転がっている、ボロボロのクマのぬいぐるみ。
それを拾い上げて埃を落とすと、建物の近くにそっと置く。
そして手を合わせているストームの後ろでは、マチュアも静かに目を閉じて祈りを捧げている。
「マチュア、蘇生魔術は使えないか?」
「う〜ん。ここの世界の管理神が居ないからさ、許可が貰えないんだよ。流石に無許可での死者蘇生となるとさ、私にかかる負荷が多すぎるからさ……すまん」
「いや、俺こそ悪かった。まあ、いくら創造神とはいえ、できることとできないことがはっきりとしているからなぁ」
これが故郷の世界なら、いくらでも死者を蘇生できる。まあ冥府神の絶叫とお仕置きが待ってはいるが、決して不可能ではない。
それに対して、ここのような『他の創造神に捨てられた世界』というのが一番たちが悪い。
蘇生魔術に必要なお伺いを立てることができないから。
もっとも、正史のガンダムでも死者は死んだまま、生き返るなどあり得ない。
「せめて、魂が保管されたら、いつか転生の枠に乗るんだけどなぁ」
「そのためのサイコフレームの開発には、まだ10年近く掛かるし、正直言ってあれは危険すぎる……」
「そうだよなぁ。あの子だって、サイコフレームの実験台になっちゃったんだからなぁ……やめやめ、取っととザクを回収してリペアしましょ」
その後は二手に分かれて廃棄されたザクを回収しまくる。
そして一旦転移で日本に戻ると、吉野カンパニーの大型倉庫で|物質修復(レストレーション)の術式を発動する。
──シュゥゥゥゥゥ
三機分の残骸が蠢き、破壊された部位を埋めるように動き始める。
そして1日後には、新品同様のザクが一機と残骸が二機分残った。
同じことを毎日行い、別の戦場に向かってザクを回収、日本で|物質修復(レストレーション)を行い続けることで、9月1日には合計6機のザクを修復することに成功した。
「ほい、一機はストームが持ってて。わたしも一機持ってくから。あとの残骸は修理用の部品として|空間収納(チェスト)に納めて……そんじゃ、ジブラルタルのコロニー公社にいってザク売り飛ばしてサイド7に行きますか」
「そうだな、いい加減俺の出番がないから、そろそろ暴れたくなってきたぞ?」
「ん? 空に上がってシャアを止める?」
「それもありか、いや、それよりもアバ王を止めるのが先決か……本当に奴の得意分野が分からんな」
そこが掴めるなら難しくはない。
そこが掴み切れないからこそ、予測を立てて動くしかない。
とにかく、今はジブラルタルのコロニー公社の管理しているマスドライバーまで向かい、サイド7に向かうところから始めよう。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
UC0079、9月8日、ルナツー周辺
──ピッ
細工は粒々、仕上げを御覧じろって。
あの北米での敗北ののち、アバオは作戦失敗の責任を取るべく部隊を解体、宇宙方面軍へ志願した。
その際、アバオの持つ神威能力である『交渉により、対象者を意のままに操る』を駆使し、キシリア貴下のジオン公国軍海兵隊に配属。
通称『シーマ艦隊』のモビルスーツパイロットとして赴任することになった。
現時点での作戦は、連邦軍要塞の一つルナツーに対しての奇襲攻撃であったのだが、ここでアバオはシーマ少佐に対して意見具申を申し立てていた。
「サイド7に対して攻撃をしろだと?」
「はっ‼︎ 自分は元情報部将校候補生であります。私が掴んだ連邦軍のV作戦によりますと、現在のサイド7では連邦軍のモビルスーツ開発の最終段階が行われているものと思われます」
「それを信じろってぇのかい? いくら私が慈悲なき女と言われていてもだね、裏付けのない情報だけでサイド7に攻撃をするのは無理がありすぎるよ。ほら、とっとと出撃準備をするんだよ、作戦まで時間がないからね」
手をヒラヒラと張りつつアバオに告げる。
するとアバオは口元に笑みを浮かべる。
「サイド7には、あのシャア・アズナブルが向かっています。これが裏付けとなるかと」
そう。
アバオはサイド7宙域にシャアの率いる艦隊が移動していると言う情報を知っている。
そして、現在のジオン公国にも『赤い彗星のシャア』として存在していることも。
ただし、アバオはシャアの正体がキャスバルであることなど知らない。
歴史の修正力が、シャアにキャスバルと同じ力を与えたと信じているから。
それ故、今のシャアはジオン・ザム・ダイクンの遺志を継ぐものではなく、ただのエースパイロットでしかないと思っている。
それでも、アバオの口から発する言葉には力がある。説得する材料さえあらば、それは武器となって相手の思考を貫くことが出来る。
事実、今のアバオの言葉はシーマの心にも届いていた。
ここでアバオは、更なる追撃を試みる。
「もしも連邦軍の新型を手に入れられたとしたら、それを手土産にシーマ様の出世も見込まれましょう。あのアサクラ大佐の嫌な顔を見ることもなくなるかと思いますが」
「……アバオ大尉、モビルスーツ二個小隊を持ってサイド7に向かいなさい。我々は作戦遂行後にサイド7宙域に向かい合流します。連邦軍のV作戦を阻止し、『可能なら』敵開発中のMSを奪取すること」
「はっ‼︎ 任務拝命しました‼︎」
決して笑顔は見せない。
まだ、モビルスーツのコクピットに向かうまでは。
「緊急任務だ、プロペラントタンクの増設急げ‼︎コロニー内に潜入することも想定して装備を追加しろ、俺はヅダIIで出る‼︎」
整備員に指示を飛ばしモビルスーツデッキに向かう。
先日、追加搬入された新型モビルスーツ・ヅダIIのコクピットに潜り込むと、ここでようやくアバオは歓喜の表情になった。
「よーしよしよし。此処からが本番だ。アムロさえいなければ、ガンダムという歴史は終わるはずだ、今度こそジオン公国に勝利を‼︎」
アバオは知らない。
そのサイド7に、すでにマチュアとストームの2人が潜り込んでいることを。
まず初めに。
これは『異世界ライフの楽しみ方』というオリジナル異世界転移小説のアウトストーリーです。
登場する世界観は機動戦士ガンダムの世界をモチーフにしておりますが、設定上は『いくつか存在するガンダム世界の一つであり、パラレルワールド』ですので、正史や設定についてのツッコミは全て無用です。