登場人物全員がチート持ちな世界へようこそカイン様   作:なっち様

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異能力バトルが書きてえな、かくぞ


プロローグ

誰かが言った。

 

彼は世界で一番貪欲な男だ、それは自他ともに認めるところであり彼の貪欲さはとどまるところを知らない。彼ときたら金銀財宝はもちろんのこと家畜や土地、家と家財に飽き足らず果ては老婆までをも欲しがった。

彼は彼が欲するものすべてをいかなる手を使ってもその手中に収め、己のモノにしてきた。

 

そして気が付けば彼はこの世の全てを手に入れていた。

 

「ふわぁ」

 

 世界で一番大きな城の一室。

 小さなあくびとともに伸びをして彼、カイン・マークは目を覚ました。彼はベッドで靴を履いてから反対の壁に行き、カーテンから朝日が漏れ出ている窓を開けた。

 吹き込んできた冷たい風に頬を撫でられながら彼は窓の外に映る景色を眺める。

 眼下に広がる街もそれを通り越した森も荒野もそのすべてが彼、カインの物だ。カインが一通り景色を眺めていると部屋の大きな扉がコンコンと叩かれた。

 

「カイン様、お目覚めでしょうか? 朝食の準備が出来ております。食堂までお越しくださいませ」

 

「ああ、分かった。すぐに行く」

 

 カインが女中にそう告げると足音が遠ざかっていく、カインはそれを確認するとクローゼットから服を出して急いで着替えた。

 カインが食堂へ向かうと使用人が一斉に頭を下げる、それに手を上げることで返すとカインの視線はテーブルに向かった。そこには熱を閉じ込める銀のクロッシュが皿に被せられて並んでおりその前にはこの城に住む王族たちがカインが席に着くのをじっと待っていた。

 

「おはようございます陛下。最近はお城にいらっしゃることが多いですわね」

 

 その中の一人がカインに声をかけた、彼女はアビゲイル・フィリウス王女だ。アビゲイルはカインのことを陛下と言ったがカインは王ではないし彼女の父でもない。

 カインは己の欲するままにこの世界の全ての国を堕とし呑み込みそのすべてを支配下に置いている。そんな彼は王では収まらず手に入れた国を永遠に自分のものとするために自らの位を永世皇帝と定めた。つまりアビゲイルの言った陛下という言葉は正確にはカイン永世皇帝陛下という意味であった。カインの前では王ですら彼の所有物だ。

 

「ここ最近は【俺】の物欲を刺激するものが全く現れないからな」

 

 カインが席に着くと給仕がクロッシュを持ち上げ、閉じ込められていた料理のいい匂いが漂い始める。

 給仕が朝食の説明をしているのを横目にカインは物思いにふけっていた。

 先ほどカインが言ったように最近はカインの物欲を刺激するものが現れないのが彼の悩みだ。池の魚をすべて取りつくしてしまえば池に魚がいなくなるのは子供でも分かる簡単なことだ、ましてやカインだ。

 彼は己の貪欲さに従い魚どころか池の水を飲み干してしまった、世界という大きな池から。

 

「陛下が退屈しているなんて百年前の人間には考えられないでしょうね」

 

 いつの間に食事の挨拶が終わったのか各々が食事を始めているなかアビゲイルが笑った。

 

「あの頃はこの国を手に入れるのに忙しかった」

 

 カインもパンをちぎりながらあの頃に思いを馳せる、手に入れるのに苦労したが今日の朝食はその甲斐はあったとカインに思わせた。

 この男に侵略された側の一族の前でしていい発言ではないがそのことにアビゲイルを含め誰も何も言わなかった。カインがこの地を統治してから百年たっている、王族とは名ばかりで彼らは自分らがこの国の頂点という考えをもはや持っていない。そしてその考えはこの国だけではない、カインがこの城にいるのは単にこの城が世界で一番見栄えが良く大きいからにすぎない。

 

「不思議なものだな、何も持っていなかった頃の方が所有欲を満たしていてすべてを手に入れた今では手に入れるモノがない故に満たされないとは」

 

「陛下が貪欲すぎるのです」

 

「そんなもの分かっている」

 

 くすくすと笑うアビゲイルの顔は年相応に可愛らしく、いつも眉間にしわを寄せている父親の面影はその瞳の色にしかなく母親の色が強い、なるほど父親が猫かわいがりするわけだ。

 

 朝食が終わりカインは自室に戻っていた。

 腕を頭の後ろで組んでベッドで横になっている彼はこうしている今も自らの欲望が己の中で渦巻いているのを感じていた。しかし、無い袖は振れないではないが(むしろ持ちすぎている)無いモノを手に入れることは出来ない。ただただ胸を焦がすだけだ。

 彼は世界一の資産家だが、同時に冒険家でもある、古の盗賊王が隠した財宝や滅んだ王国の秘宝など数々のお宝を発掘してきた。普段なら今まで手にした宝を眺め己を慰めるのだが、これは宝を手に入れなければ収まらないだろうことは本人が一番分かっていた。

 

 カインがチリチリと失いつつある理性を意思の力で繋ぎ止めていると部屋の扉が叩かれた。

 

「私です。陛下、入ってもよろしいでしょうか?」

 

 声の主はアビゲイルだった。何用だろうか、用事があったのなら朝食の時に伝えればよかったのにと思いながらカインは入室の許可を出した。

 

「失礼します」

 

 そういってアビゲイルは部屋に入った、カインは部屋の中央にあるテーブル席に着くように促して自らも座る。

 

「それで何用だ?」

 

「陛下が、退屈しているようですから良いことを教えて差し上げようと思いまして」

 

「ほう?」

 

 カインは目線で続きを促す。

 

「陛下なら覚えておいででしょうが記憶喪失になった子供たちがいたでしょう?」

 

「ああ、あったな」

 集団で子供が記憶喪失など珍しかったのでカイルもその事件について覚えていた。何かの魔道具の影響かと期待して原因を探ったのだがそれらしいものは見つからず結局、記憶を一斉になくした子供たちがラベルを変えて新たなコレクションに加わっただけだった。

 

「記憶操作の魔術を使ってもダメだったのだろう?」

 

「ええなぜ記憶喪失になったのかの直接の原因は分かりませんでした」

 

「ではなぜその話を?」

 

「直接の原因は分かりませんでしたけど、直前の彼らの行動は分かりました」

 

 私の固有魔術によって、とアビゲイルは付け足した。

 固有魔術とはこの世界の魔術師全般が使える魔術とは違い、その人物だけが使える魔術を指す、アビゲイルは『記録』の固有魔術を持っていて、彼女は勿論のこと、人がした行動などを遡って知ることが出来る。

 

 勿論カインはアビゲイルにその魔術を使って原因を探らせたが、その時彼女はまるで記録そのものを丸ごと破壊されたように何も見えなかったと言っていた。

 

「どうやって分かった?」

 

「しらみつぶしに人や物の記録を辿って」

 

 アビゲイルはなんてことはないように言ったが彼女のその顔は誇らしげであった。

 それもそうだろう、彼女は記憶喪失の人間の記録を探すために町中の人間や建物の記録をさかのぼり続けたのだ。記録といったって見たいものだけを観れるわけではない、蓄積された記憶から子供たちを見つけ出したのだとしたら十分に誇れることだろうとカインは思った。

 そしてそこまでのことをしたアビゲイルをして直接の原因が分からないと言わしめるとはと興味を持った。

 

「結論から申しますと彼らは直前に■■■■■をしていました」

 

 ザザッ……。

 

「む?今なんと言ったのだ」

 

「ですから、●ですから、■■sw?」

 

 ザザッ……ザー。

 

 アビゲイルの言葉にノイズが混じり、言葉が壊れていく。

そのことにアビゲイル本人は何の違和感を覚えることもなくむしろカインのことを不思議そうに見ていた。明らかに異常な事態だというのにカインの心は水を得た魚のように生き生きとしだすのを感じた。

 

「あ?陛下、右、羅●●」

 

 だがさすがのカインとてこのまま壊れていく彼女を観察し続けるつもりはない、彼女の異常の原因を突き止めようと席を立ち上がった時。

 

 世界が壊れた。

 

どうやら世界が壊れるときは、音を立てて教えてはくれないらしい。

突然に始まり、突然に終わる。危なそうだから避ける、という当たり前のことは出来ない。

世界が上と下から同時に失われていく。

だが、カインは自らの立つ地面が失われていく最中でも冷静だった。

地は透明になっていき天井はとっくに無くなり空はその青さを失っていくなかで彼はまだ残っていた壁に取り付けられた窓をみた。

 

そこにはいつもの景色が、カインの物である全てがいつものように何も変わらずにあった。

 

カインはそのことを確認すると笑って消えた。

 

壊れていたのは二人だった。

 

 




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