「妖夢~ お腹空いたわ~」
「あ、はい。ただいま参ります」
幻想郷には幽霊たちの跋扈するエリアがある。それがここ白玉楼であり、そこの管理者西行寺幽々子は今日もまた庭師魂魄妖夢の料理を食べることを楽しみにしていた。ここだけ聞くと微笑ましいように思えるがその量と言うものは少しも可愛くない。慣れたものではあるが今日もまた数十キロの量を作らなければならないと考えるとため息の一つや二つも出ると言うものだ。
「さて、今日は何を作りましょうかね……あれ? 何か落ちてる」
剪定作業を途中で中断して主人のおやつ作りに行こうとしたその瞬間、庭の遠くにキラリと光る何かを発見した。気になったのでそこに近づくとどうやらただの手鏡であったようだ。白い縁がとられており突起が特徴的な丸い手鏡だった。こんなところに落ちているのは妙だとは思ったのですぐさま幽々子に報告しようと思った。
「あのー、幽々子様……え?」
幽々子に見せようとしたその瞬間、持っていた手鏡に思いっきり吸い込まれてしまった。まるでブラックホールのような引力であったため抗う術も悲鳴をあげる暇もなく鏡の中の世界に引き込まれてしまった。
「どうしたの~ 妖夢?」
声が聞こえたので庭に戻って妖夢の姿を確認しようとしたがそこには彼女の姿はすでになかった。
「……あら?」
鏡に吸い込まれたことなど露ほども知らない幽々子はおやつ抜きになるかもしれないという絶望に打ちひしがれていた。
「ふわぁ~ お腹空いたな。ケーキでも食べに行こうかな?」
ここは呆れるほど平和な土地、プププランド。ここに住む一人の若者カービィはお昼寝から目覚めた後、空腹から城にあるであろうケーキを食べに行こうとしていた。うららかな天気の中散歩していると前からとある人物が降ってきた。
「あれ? メタナイトじゃん。どうしたの? ケーキ食べに行かない?」
「うむ、ケーキもいいが……少し面倒事が起きてな」
「面倒事?」
体格は同じ位だが仮面をかぶっており、羽を生やして舞い降りたメタナイト。カービィとともに様々な世界を救ってきた彼だが少しいつもと様子が違う気がした。
「ああ。お前昔倒したダークマインドって覚えているか?」
「ダークマインド……ああ! 16年前にGBAで発売された鏡の大迷宮でのラスボスだね!」
「おい、メタいぞ。まあいいそいつのことなんだが、最近復活したっていう噂を耳にしてな」
「えー? でも僕確かに倒したはずなんだけど……」
「だから噂程度の話なんだが、少し鏡の世界に行って調査してきてくれないか?」
「うーん。分かった、ちょっと見てくるね」
「ああ、助かる」
メタナイトからの要請を受けてカービィは鏡の世界に行く準備をし始めた。一旦帰宅してケーキを食べた後、ピンク色の手鏡を取りに行った。これがあることで鏡の世界に行き来することができる。以前ダークマインドを倒した後に拾ったものであり時々なみのりスターライドしに行くことがある。
「じゃあちょっと待ってね。えいっ!」
手鏡を地面に向けてかざすと光とともに綺麗な姿鏡が現れた。
「ほぅ。そんな機能があるのか。ちょっと見せてくれないか」
「うん、いいよ」
カービィがメタナイトに手鏡を渡した。メタナイトは触った瞬間何かに気が付いた表情を見せた。
「……なるほどどうやら超レアものらしいな。どんな素材で出来ているか見当もつかない」
しばらく触った後カービィに返した。カービィは口の中にその鏡を保管した。口の中に入れておくことでいつでも取り出すことができるらしい。
「あれ? メタナイトは一緒に行かないの?」
「ああ。私は少し気になることがあるからな。また後で行くことにする」
「分かった。じゃあ先に行って待っておくよ」
カービィはメタナイトに笑顔で手を振り鏡の中に消えていった。それが長い間のサヨナラとなることなど微塵も思っていなかった。メタナイトの剣に反射した
「それにしても鏡の国は久しぶりだな~ マスターソードもきちんと刺さってるかな?」
マスターソードとは以前ダークマインドを撃破したときに用いた最強の剣のことであり、それがないと太刀打ちができなかった宝具であり、今は鏡の国のシンボルになっている。鏡の国は平和な土地なので盗まれる心配は基本ない。
「あ、もうすぐだな。多分噂程度だよね」
軽い気分でメタナイトの頼みを引き受けたことがこの後とんでもないことに巻き込まれていく。そんなことは思わずに鏡の世界に入国した。
「……あれ? え?」
以前来たときは海や宇宙、火山に城など様々な世界に行き来できるはずの鏡で溢れていた。しかし、今目の前に広がっているのはただの空虚な空間。こちらに来るのに使った鏡しかない。これではどの世界に行くこともできない。緊急事態と気付いたカービィはすぐさま口から先ほどの手鏡を取り出した。
「一旦メタナイトのところに戻らないと……」
パリィン!!
特別な素材で出来ているということはその耐久性も推して知るべしである。しかしその綺麗な手鏡には見るも無残な亀裂が走っていた。
「え!? 嘘、どうして?」
使ってからヒビどころか傷の一つもなかったものがいきなり壊れてしまった。これでは元いたところに戻ることができない上に進むこともできない。
「そ、そうだマスターソードは?」
この世界のシンボル、マスターソードはあらゆることを叶えてくれる万能な剣である。それがあれば境界を切り裂いて元の世界に戻れる。カービィは少し歩いて玉座にまで近づいた。
「……な、なんでないの!? それにディメンションミラーも……ない!?」
突き刺さっているはずのマスターソードがすっぽりと抜けられていた。偶然抜けることはありえないので誰かが引っこ抜いたのだろう。そして欠けた鏡。この二つのことが成し遂げられるのはたった一人しか思いつかなかった。
「ダークマインド……復活していたのか」
こんなことができるのはあのダークマインドしかいなかった。メタナイトが先ほど言っていた噂というのはどうやら本当のようであった。いや、そんなことよりも……
「この先どうしよう……」
今の状況は簡潔に言うと閉じ込められたという状況である。進退不可な上にコピーも不可。今カービィは史上かつてない危機に襲われていた。特にコピーできないということはコックになってお腹を満たすことができないということだ。このままでは餓死してしまう!
「うう、メタナイト……あれ? 向こうに誰かいる?」
カービィが一人寂しくしていると向こうに人影が見えた気がした。一応ダークマインドかもしれないと警戒してそこに近づいた。そこには一人の人型の女の子が倒れていた。
「あれ、アドレーヌ? ……じゃないか」
人型の女の子と緑色の服装でアドかと思ったがどうやら別人のようだ。眠っているようであるがもしかしたら何か知っているかもしれない。そう期待して起こすことにした。
「ねえ! 起きて。ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「うん……? 誰ですか……」
白髪の少女の瞼が持ち上がった。まだ視界はぼやけているが意識ははっきりしてきた。彼女の目の前に立っていたのは自分よりも明らかに身長の小さい人物のようだった。子どもかと思い目をこするとそこには見たことのない生物が立っていた。
「……キャアアアアーーーー!!!!」
「えっ、ちょ、待っ」
ザクッ!! ズシャッ!!
ピンクの亡霊がいるとでも思ったのだろうか、驚いた妖夢は腰に差していた二本ある刀の内の一本の白楼剣を手に取り、目の前のピンクボールに向かって切りつけた。楼観剣ではなく白楼剣だったのでカービィの体には傷らしき傷はなかった。だがその代わりに大きな変化があった。
「イテテ、いきなりどうしたの……え?」
「なんだこりゃ、また分裂してるじゃねえか!」
「アハハ、久しぶりの感じだね」
「ハァ……またあの辛いことをしないといけないのか」
妖夢の前には一個のはずだった桜餅が四個に増殖して、それぞれ赤・黄・緑の着色料で色づけられていた。妖夢は目の前に起きていることが理解できなかったので刀を鞘に納めることぐらいしかできなかった。
不意に思いついたので新連載することにしました。昔やっていた星のカービィ鏡の大迷宮を東方キャラと絡ませたら面白そうということでスタートしてしまいました。
今後も妖夢以外の東方キャラも出てくると思いますがカービィの舞台の方がメインになるので割合は小さいかもしれません。ご了承を。