ここまでを整理しよう。白玉楼で剪定作業をしていた妖夢は突然吸い込まれて鏡の大迷宮の世界に迷い込んだ。一方、ダークマインドが復活したとの報せを聞いたカービィは来るための手鏡を携えてやって来たものの破損して帰れない状態になってしまった。そんなとき妖夢に出会いがしらに斬りつけられて四つに分裂してしまった……
「こんな感じだけど皆分かったかな?」
「誰と喋ってるのですか?」
「第一話見てない人のためのあらすじだよ」
「メタいですよ」
明後日の方向に向けて誰かに話すイエローカービィ。分裂したというのに誰よりものほほんとしていた。良く言えば落ち着いている、悪く言えば呑気である。イエローにばかり目を奪われており他のメンバーはどうしているのだろうかと振り向いたそのとき、妖夢の背後には浮かび上がって目線がばっちり合ったレッドカービィが仁王立ちしていた。
「おいお前! あいつの仲間か何かか!?」
「え? な、何のことですか……?」
メンチを完全に切っておりあからさまな敵意が向けられていた。確かについ斬ってしまったが故意ではないし命に別状はなさそうだからそれほど怒るものかと思った。それにあいつというフレーズも気になった。
「落ち着いてレッド。どうやら僕たちよりもこのお姉さんの方が混乱しているみたいだし、とりあえず僕たちのことを説明した方がいいんじゃない?」
「むう……だがな。こいつがダークの奴の手下ってこともあるんじゃないか?」
「そのときは君の自慢の腕力の見せどころじゃないかな?」
「お、それもそうか!」
ピンクカービィの説得が成功してレッドを宥めることができた。この一連の会話だけでオラオラ系のレッドとリーダー的まとめ役のピンクという構図が妖夢には見えた。所々分からない単語はあったがここは大人しく相手のペースに合わせることにした。
「さっきイエローも少し喋っていたけど……ここは鏡の世界って言ってお姉さんの過ごしていた世界とは全く違う世界なんだ」
「幻想郷でも、外の世界でもないということですか……」
考えてみればおかしな話である。普通の世界に一頭身で喋る生物なんていない。それでいて幽霊とは違いしっかりと会話も成立する。彼らの言うことを嘘と断定できる証拠はなかった。
「それで私は皆さんを斬ってしまったわけなんですけど……どうして無事なんですか?」
「それは俺たちにも分からねえ。だが前にも似たことがあったから大丈夫だろ」
「……でもいつも上手くいくとは限らないよ」
見た目通り楽観的なレッドとは対照的に悲観的な態度のグリーン。同じカービィでもひときわ陰気な雰囲気が漂っていた。先ほどまでのレッドのような妖夢に対する敵意ではなく絶望感といった表現の方が適切だった。
「俺たち……今何もコピーできない上にどこにも移動できないんだぞ。この幽閉された空間で何ができるっていうんだ?」
グリーンの言う通りであった。確かに今の現状はいかに強大な力を持つカービィと言えど手出しができない状況であった。
「確かにな。オレたちは手ぶらで来たし……おい、そこの……名前は何て言うんだ?」
「わ、私ですか? よ、妖夢と言います」
「妖夢か。お前何か持ってるか?」
レッドが妖夢に指を差してここから脱出する手がかりを催促した。完全に疑いが晴れたというわけではないだろうが四の五の言っている場合ではない。
「とは言っても私の持ち物はこの二本の刀くらいで……あ。そういえば」
剪定作業中だったので必要最低限の物しか所持していないかと思っていたが、拾ったものがあった。妖夢はポケットから拾った手鏡を四人に見せた。その手鏡は割れておらず、綺麗な状態を保っていた。その手鏡を見た瞬間、四人は手鏡のごとく目を丸くした。
「そ、それって……ちょ、ちょっと貸して!」
ピンクが妖夢からその手鏡を拝借するとペタペタと何かを確認していた。他のカービィたちも同様に触ると安堵を確信した。
「お前、これどこで手に入れたんだ?」
「え? 私の仕えているお屋敷で偶然拾って……その瞬間こちらに飛ばされたんです」
「すごーい、妖夢ちゃん! ファインプレーだよ~」
どういうことか妖夢はよく分かっていなかったが感謝されて悪い気はしなかった。その手鏡を四人が一斉に持つと手鏡は突如として発光し出した。頭上に掲げた後に思いっきり振り下ろすと皆の目の前に立派なミラーが出現した。その現実離れした光景に妖夢はただボーっと見ていた。
「え、ええ? どういうことですかこれ!」
「僕たちは四人の力を合わせることで別世界につながる鏡を召喚することができるんだよ」
「す、すごいですね……」
「まあオレたちの知っているところしか行けない上にランダムなのが難点だがな」
つまりは今すぐに幻想郷に送還させてくれるわけではないということだ。もちろん今すぐに帰れるとは妖夢も思ってはいなかった。何しろ手がかりがなさすぎる。
「じゃあ行くぞ、妖夢」
「え? 私も行っていいんですか?」
「当たり前だろ! お前いいやつだしな!」
レッドカービィは妖夢の手を引っ張りそのまま鏡の中に突入した。残った他の三人も放っておくわけにもいかず追従して鏡の中に入って行った。
「う……ここは?」
妖夢たちが降り立ったこの場所はどこかのレンガ作りの屋敷のようだ。ところどころ蜘蛛の巣が張り巡らせていることから所有者はいないようである。だが何者かが潜伏している気配はあった。自分の住居も幽霊屋敷だが何倍も怖かった妖夢である。
「ムーンライトマンションっていうところだね。昔ボクたちがここを根城にしていたボスを倒したんだよ」
「今回もどうせそいつらが原因だろうしボコボコにしにいくぞ」
「え……ちょ」
イエローとレッドが説明しながら皆を引っ張って行った。怖がりな妖夢は顔を青白くさせながら無理矢理連れて行かれた。反論する暇もなかったので逃げ出すこともできなかった。
しばらく歩いていると最初の頃よりは落ち着いたので気になっていたことを皆に聞くことにした。
「あ、あの……ここにいるボスっていうのはどんな相手なんですか? 勝てるのでしょうか?」
「僕たちが今から相手にするのはキングゴーレムっていう岩の化け物だよ。攻撃力は高いけどその場から動かないから大丈夫だよ」
「前とかスロウをコピーしたグリーンがゼロ距離で仕留めたもんな」
「一番攻撃が当たらないところだからな。合理的に行きたかっただけだ」
スロウは吸い込んだものをキャッチして投げ返すというシンプルな技だがそのエネルギーは膨大であり、近距離でそのエネルギーを浴びると体力がゴリゴリ削れていくというものである。味方ながら恐ろしいと思った。こういう頭脳プレーをグリーンは担っているのである。
「でも不思議だな」
「どうしたの? グリーン」
「俺たちが来ているというのに……敵キャラの一匹もいないことだ」
「確かにそうだな。前はオレたち四人がかりでようやく捌ききれるかどうかの大群だったのにな」
「皆寝てるんじゃないの~?」
「いやいや、流石にそれはないでしょう」
妖夢も確かに気になっていた。かつての仇敵が再び来たというのにあまりにももぬけの殻すぎる。それに先ほど感じた気配はまだ消えてはいなかった。ただ単に向こう側が招集できずにトップしかいないという可能性もあるが……考えても答えは出なかった。
「まあ体力温存できたと思えばラッキーだし。それにもうすぐキングの部屋だよ。気合入れていこう」
ムーンライトマンションはそんなに広くはない。一度来たところなので迷子になることもなくスムーズにボス部屋まで来ることができた。体力はバッチリだが全員すっぴんであるのでそれが少々心許ない。だが向こうが出してくるガレブとかをぶつければ大丈夫であった。ボス部屋の大きな扉を開けると……そこには誰もいなかった。
「あれ?」
皆が気を取られていると大地が大きく振動した。何もなかった更地から巨大な岩が生えてきた。いや、何かコーティングされている。鋼か?
「ガハハ! 来たかガキども! ワシは今度こそお前らにリベンジじゃ! ん? 知らん小娘も一緒か。まあよい、粉々にしてくれようぞ」
「何だ!? キングが地面から出てきた」
不動と思われたキングゴーレムだったがまるでモーリィのように地面に潜ることが可能になっていた。
「それだけではないぞ。そぅれ!」
掛け声とともに何かが空から降ってきた。岩かと思いきや明らかにサイズが大きすぎる。吸い込みきれないので何とかかわした。良く見るとキングの腕があるべき位置になかったので腕まで動かせてしまっていた。
「ふーん、随分ゴツくなったじゃん。誰に指示されたの?」
「ガッハッハ。もう察しは付いていると思うがあえて言ってやろう。我らがダークマインド様が復活なされたのじゃ!」
噂は真実だった。倒したはずのダークマインドがどうやって復活したのかは分からないがこうしてキングゴーレムがいることが事実である。確実に倒すために部下たちもパワーアップさせたのだろう。
「あっさり簡単にバラすんだな。大丈夫なのか?」
「ああ問題はないぞ。なぜなら……」
かつてのダークマインドのように腕が分離して空中でカービィたちを手招き、いや挑発していた。
「お前らはここで終わりじゃからな!」
久しぶりに投稿しました~ ここからどんどんバトルシーンが増えていくと思います。稚拙ですが温かい目で見ていただけると幸いです。