「ガッハッハ! どうしたどうした。五人がかりでその程度か!」
カービィたちはキングゴーレムの猛ラッシュを何とかかわし続けていた。鋼コーティングされているので吸い込むことも不可能であり、途方に暮れていた。普段ならば瞬殺できるキングゴーレムごときですら五人がかりでも手こずっていた。
「クッソー、おい! なんで岩石攻撃してこないんだ!」
「そうだ! ガレブはどうしたんだ」
ピンクとレッドが吠えた。いつもならば無数の岩石が空から降ってきてそれをぶつけるのが定石だった。しかし今回は全く違っておりコピーの一つもできない。すっぴんで抗うほどの力はカービィたちにはなかったのである。
「ワシら、いやダークマインド様とて無策で復活されたわけではない。しっかりと貴様ら対策として部下たちを一切配置しないことにしたのじゃ」
コピーをすることでカービィたちはその本領を発揮できる。裏を返せばそれさえ封じてしまえば恐るるに足りないとダークマインドは考えた。それを各ボスたちに連絡してかつ今までの何倍もパワーアップしたのであった。カービィたちの考えているよりもはるかに本気で復讐を画策していたのであった。
「なるほど~ 道理で全然敵がいなかったんだね」
「そうとも。完璧なダークマインド様の計画じゃ。異分子が入ったのは気になるところじゃが」
キングは妖夢の方向を向いた。視線に気付いた妖夢はつい目を逸らした。雰囲気が恐ろしいというのもあるがキングの顔がいかついので直視は出来なかった。
「ともかくワシに抵抗する術のない貴様らなどワシの敵ではない。このまま潰してくれよう!」
再びゲンコツが降ってきた。妖夢に用はないようで四人のカービィたちを執拗に狙っていた。妖夢はそんな光景をただ見ているしかなかった。
(私は……どうしたらいいの?)
怖い。半霊という種族でありながら怖がりな妖夢であるのでこのようなお化け屋敷など大の苦手である。足もすくむ。しかし……妖夢は自分がカービィたちにしでかした行為を思い出していた。
(私がカービィたちを斬らなければこんなことには……)
頭の中では答えは出ていた。できることは一つだけであった。妖夢は腰に差していた楼観剣を握りしめてじっと前を見据えた。
「わ、私が行きます! 幽鬼剣『妖童餓鬼の断食』!」
妖夢が横一文字の斬撃を繰り出すとそこから放射状に弾幕が出た。どうやら違う世界でもスペルカードは発動するようだ。キングは両手でそれらの弾幕を受け止めた。強力な弾幕がキングを押しており鋼鉄の掌がガラガラと崩れた。だが手を崩壊させたところで弾幕切れであり本体にまでは届かなかった。
「ほう、小娘。やるではないか。このワシに傷をつけるとはの」
行く手を阻んでいた手が無くなったおかげで本体に近づくことができた。妖夢は距離を詰めて反対に一撃決めようとした。
「じゃが……甘いの!」
キングは振動と共に地面に再び潜ってしまった。そしてその直後に地上に出てくるとそこには破壊したはずの両手が復活していた。もちろん先ほどと同様にピカピカ輝いており妖夢の全力のスペカが無駄になった。
「ガッハッハ。これでも貴様らはワシに刃向う気概が……」
絶望しているであろう五人の顔を見ようと思ったキングだったが五人はこちらの顔を一切見ていなかった。
「すごーい! 妖夢ちゃん今の何?」
「私の世界での……武器みたいなものですけど、それより!」
「そんなのあるんなら先に出せよ! 全く」
「ご、ごめんなさい……」
「まあまあ」
「…………」
難敵との戦いの真っ最中だと言うのに肩の荷が降りたかのようにカービィたちは談笑していた。緊張の糸が解かれていないのはキングと妖夢の二人だけであった。
「おい貴様ら! ワシを忘れておらぬか!」
「あ、忘れてた」
「なんで忘れてるんですか! 私たちじゃ到底敵わない相手なんですよ!」
妖夢が当たり前のことをツッコんだ。妖夢のスペカでも倒しきることはできておらずカービィたちは倒す術はないからである。キングはその絶望の声色に満足気に鼻息を吹かしていた。
「大丈夫だよ。妖夢」
「ピンク!? あなたまで何を」
「確かにボクたちだけじゃダメかも知れなかったけど妖夢ちゃんのお陰でもう勝負はついたも同然なんだよ~」
「ああ! 今回ばかりはお前の勝ちだな!」
「……礼を言う。ありがとう」
「グッ、ワシを無視してもう勝ったつもりか。ナメるんじゃない!」
無視されたことで逆鱗に触れたのかキングは両手を地面に潜り込ませた。そして数秒後、二個だった手が四つ、八つ、十六と増えていった。
「貴様らともおさらばじゃ。喰らえ!」
空が鋼で覆われて四方八方から襲ってくる。このまま潰されて終わり……妖夢は真っ暗になりかけた。
「妖夢、さっきの攻撃を僕たちに向けて撃ってくれないかな?」
「え? でも……」
「早くしないと潰れちゃうよ~」
イエローが笑顔で恐ろしいことを言った。妖夢には考える時間もなかったので言われた通り妖童餓鬼の断食をもう一度放った。さっきの一撃でほとんどの力を使い切ってしまったので威力は抑え気味になった。だがそれで十分だったようで放たれた弾幕を皆が吸い込み飲み込んだ。すると四人の姿がいきなり変化した。四人の手にはさっきまで無かったはずの刀が携えられていた。頭には三角錐の帽子があり、そこには妖夢の半霊の模様が描かれていた。
「おっしゃあ! ソードコピーできたぜ!」
「でも普段と少し違うな。刀身もいつもより長いしそれにこんな緑色ではなかったはずだ」
「妖夢ちゃんの弾幕だから同じソードでも少し違うのかもね~」
「今頃コピーしてももう遅い!」
安置ゼロのキングゴーレムの弾幕であったが四人は――いや実際に力を行使したのはピンクカービィだけだったが――キング視点ではドーム状に積まれた両手が閃光を纏って全て弾け飛んだ。その中から出てきたのは無傷のカービィたち+1であった。
「な、何じゃと!? たとえコピーしたといえあの攻撃を捌けるはずがない!」
「あ~ 忘れてるかもしれないけど……ボクたち鏡の世界以降に毛糸の世界とかロボの世界とか色々行ったからパワーアップしているよ? このくらいじゃ全然平気だよ」
やはりメタいがコピーさえできれば難攻不落のこの要塞も打ち破れるかもしれないと妖夢はようやく希望が持てた。その絶望は妖夢からキングゴーレムにバトンタッチされた。鋼の肉体が青白く見えた。
「じゃあそろそろ終わらせようか。皆、地中に逃げられないように四方向から抑えて」
ピンクの号令とともに目にも止まらぬ速さでキングの周囲に駆け寄り、その肉体にソードが突き刺された。四方から攻められたので身動きが取れない状態であった。
「妖夢。トドメをさしてちょうだい」
「え!? 私ですか?」
「お前しかいないだろ。今回のMVPなんだし」
「お腹空いた~ 早く~」
「わ、分かりました!」
妖夢は残っている全ての霊力を込めた。重力と体重をかけるため浮かび上がりキングゴーレムの遥か頭上から刀身を振りかざした。
「ま、待て小娘! ワシはまだ……」
「獄界剣『二百由旬の一閃』!!」
ダークマインドによって改造された本体は両手とは違い最も堅くコーティングされていた。だがカービィたちが体力を削っているかつ無数のさっきの攻撃のおかげで強度が下がっていた。妖夢の今の獄界剣はキングゴーレムを両断するには十分であった。
「バ、バカな!! このワシがーー!!」
「いっけーー!!」
上から下まで完全に両断すると切り口から赤い弾幕が爆発した。内部から攻撃されてはひとたまりもなくムーンライトマンションのボスは完全に討伐された。
「や、やった……の?」
「やったぜ! よくやったな妖夢!」
「すごい威力だね~ 流石5ボスだね」
レッドとイエローが寄ってきた。妖夢は少しだけ考えた。ピンクがあの弾幕を粉々にしたことから皆も倒すことは出来たのだと思う。しかしトドメを譲ってくれたということは仲間として本当に認めてくれたことかと。斬ってしまったという罪悪感は消えたわけではないがそんなことそうでもよくなるくらい嬉しい気分であった。
「……ん」
「え?」
グリーンが妖夢の目の前にやってきて手を差し出した。握手の合図ということはそれはつまり……
「……うん。よろしくね、皆」
妖夢は握り返した。湧き上がる絆は握手という確かな形で現れた。
「あれ? あの光は」
ピンクが指した方向はキングゴーレムを倒した場所でありそこには何かが光っていた。拾い上げると見慣れたものが落ちていた。
「あ、やっぱり鏡の欠片だ……うん? どこ行くの?」
ボスを倒した後に出現する欠片が独りでに移動した。鏡は妖夢の方に行き腰に入り込んだ。腰に差していた手鏡を手に取るとそこにはすっぽりと収まっていた。
「キングを倒したから欠片もらえたんだな。あとのボスは八匹か。もっと力をつけなければな」
「そんなにいるんですね……」
「でも今日はおめでとうの日だね~」
「そうだな! じゃあそろそろ帰るか」
手鏡を妖夢が渡して帰りのゲートが開かれた。お化け屋敷のようなムーンライトマンションはほとんど瓦解されておりずっとここにいるのも危険だったのですぐさま本拠地であるレインボールートに帰還した。今日一日で鏡の世界奪還に前進した上にカービィたちと妖夢の絆も深まった。
「キングゴーレム……十分だと思ったのだがな。少し甘かったか? いや、あの魂魄妖夢といったあのイレギュラーの存在か。中々に興味深いな……フフフ」
妖夢に忍び寄る影。暗躍していることなど露知らずカービィたちはレインボールートに戻って行った。
読んでいただきありがとうございます! フフフ、キングゴーレムは9ボスの中で最弱……というわけではないです(ゲームではそうですが)。次に戦うボスは誰でしょうか? お楽しみに。ちなみにカービィたちの一人称は以下になります。
ピンク→僕
レッド→オレ
イエロー→ボク
グリーン→俺