妖夢と鏡の大迷宮   作:海老の尻尾

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第六話 最強の助っ人

「ふん、そんな闇雲に投げてもモーリィには当たらんぞ」

 

 一応モーリィは二人から距離を取ったものの、グリーンが放った剣はモーリィにかすりもせずに地面に突き刺さった。しかしそれは攻撃するためではなかった。

 

「じゃあグリーンさん、お願いします」

 

 妖夢はグリーンに二つある刀の内、短い方である白楼剣を手渡した。短剣とはいえいつものソードの長さの倍はあるその剣を両手で握った。ずっしりとしたその重量は妖夢のような非力そうな少女が持てそうにない代物だった。半人半霊はやはり常人とは違った。

 

「ああ、終わらしてやろうじゃないか」

 

 傷口が痛む。持久戦ではこっちが不利になるため速攻で勝負を決めなければならなかった。しかしグリーンは一歩も動こうとしない。相手が動くのを待っているようだった。さすがのモーリィもそれには気付いた。

 

「あれ、動かないの? じゃあこっちから……行くよ」

 

 動かないならばこちらが動くまで。モーリィはトドメを刺そうと勢いよくグリーンに爪を立てた。二度目の攻撃、それをグリーンは……避けられなかった。

 

「ぐぅう!」

「グリーンさん!」

 

 いくら気合を入れてもこの輝く舞台の上では攻撃は当たってしまう。爪はグングンと喰い込んでいく。このままでは先程の二の舞になってしまう。モーリィはこれで終わらせるつもりだった。しかしモーリィはグリーンの様子が違うことに気付いた。

 

「うおおおおおおおお!!」

「なっ!?」

 

 よく見ると爪はグリーンの体ではなく白楼剣に刺さっていた。どうやら間一髪勘で防いだようだった。喰い込みも止まり、根性で倒れずにモーリィの攻撃を抑えていた。

 

「へー、すごいね。よく止めたじゃん。でも……」

 

 モーリィの勢いがさらに増してどんどんグリーンは押されていた。何しろ怪我を負った状態で無傷のモーリィを相手にできるほど甘くはなかったからだ。爪と剣の間で火花が散る。折れることはないだろうが体ごと吹き飛ばされるのも時間の問題だった。その寸前、グリーンは渾身の声量で叫んだ。

 

「今だ! やれ妖夢!」

「!?」

 

 モーリィは目の前のグリーンに夢中になっており、背後からのもう一人の敵に気付くのが遅れた。少女は既に剣を抜いており、この何も見えず輝く中、モーリィとばっちり目が合っていた。

 

「人鬼『未来永劫斬!』」

 

 妖夢が得意とする早斬りがモーリィに襲い掛かった。モーリィも間一髪片手で攻撃を防いだ。妖夢の全力をもってしてもモーリィを切り刻むことはできなかった。だが妖夢の狙いはそこではなかった。

 

 パキィイン!

 

「えっ……ギャァアアアアーー!!」

「モ、モーリィ!!」

 

 突如悲鳴を上げたモーリィを見て傍観していたダークマインドが焦った。屈指の実力者であるモーリィのピンチなど今までほとんど見たことがなかったからだ。

 

「これで私たちと同じ土俵ですね、モーリィ!」

 

 振り下ろした楼観剣の剣先及びモーリィの足元には黒く細かい破片が散らばっていた。先程の妖夢の攻撃にはモーリィが装着していたサングラスを砕く意図があった。元々光が苦手だから暗い洞窟に籠っているモグラ。ならばその光を抑えるサングラスを狙えば効果は抜群である。案の定両目を手で抑えてもがき苦しんでいた。

 

「ば、馬鹿な! なぜモーリィの居場所が分かった⁉」

「ダークマインド。それをお前に教える義理はない」

 

 ふらつく足取りでグリーンは白楼剣をグッと握りしめた。剣に光が集まりエネルギーが高まってくる。未だに悶絶しているモーリィには自分の最期が近づいていることに気付いていないだろう。ありったけの力を込めて白楼剣を振り上げた。

 

「じゃあなモーリィ。ファイナルカッター!!」

 

 天高く跳び上がり、モーリィの頭上から体を真っ二つに切り裂いた。モーリィの巨体が大きな音とともに地面に叩きつけられて決着が着いた。

 

「くっ……フフフ」

「なっ⁉ まだ動くのですか」

 

 やっつけたはずのモーリィが何故か笑い始めた。まだ余力があるという現れなのだろうか。こっちの満身創痍の状態でまだ戦われたら流石に勝てない。そうグリーンがビクビクしていると笑い声が止まり喋り始めた。

 

「あーあ。もう勝負が終わっちゃうのか~ 結構楽しかったんだけどね」

「…………」

「ま、僕はここでやられちゃうけどダークマインド様は強いからね。それじゃあね、カービィと……妖夢ちゃんだっけ。頑張ってね~」

 

 そう言い残すとモーリィは爆散して跡形もなく消え去った。もちろん敵であるために情け容赦は禁物である。しかしモヤモヤとした思いは残っていた。もしも立場が違ったら楽しくやれていたのかもしれない、なんて彼を見て思ってしまった。

 

「さて……あれ?」

 

 閉じた瞼に異変が生じていた。光の度合いが薄まったような気がして恐る恐る目を開けた。すると辺りの洞窟は適正な光量に戻っておりはっきりと周囲を確認することができた。光っているのは洞窟内の特殊な鉱物の発光によるものだったが、モーリィの撃破によって解除される仕組みだったようだ。グリーンにとってはようやく見覚えのある洞窟の景色であった。

 

「ぐぬぬ……お、おのれ」

 

 ダークマインドの目つきがさらに険しくなった。仲間を分断させてここで始末する算段だったが見事に狂ってしまった。しかも有能な部下までも失ってしまい怒りがヒートアップしていた。

 

「さあダークマインド! 俺の仲間を返せ!」

 

 ダークマインドをようやく視認できるようになったグリーンは彼を指差して仲間の奪還を命令した。ダークマインドはしばらく黙り込んでいると何かを思いついたようで、ようやく喋り始めた。

 

「フッ、確かにそういう約束だったな。よかろう出してやる」

 

 随分と聞き分けよく要求に応じてきた。ダークマインドは近くに鏡を出現させて妖夢たちの前に持ってきた。コピー部屋のときに見た鏡と同じ形であった。

 

「誰を解放してくれるんですか?」

「それは出てきてからのお楽しみだな、クフフ」

 

 モーリィを倒せばピンク、レッド、イエローの内誰か一人を解放してくれる約束だった。正直今は誰でも非常にありがたい。これで次のボスに向けての戦力が増えるというものだ。

 

「お、出てきたぞ……えっ」

 

 鏡から出てきたのはピンク? レッド? それともイエローか? 否、そのどの色でもなかった。丸といえば丸の形状。しかしどちらかといえばフワフワの印象。しかも宙に浮いている上に目の数が一つしかなかった。

 

「ク、クラッコじゃねえか!!」

「……ふん」

 

 バリバリィ!!

 

「ガッ……!」

 

 火山燃え滾る灼熱の土地、マスタードマウンテン。その空の覇者クラッコがどういうわけか現れてしまった。クラッコは現れるやいなやグリーン目掛けて雷撃を繰り出した。感電したグリーンはその場に力無く倒れてしまった。

 

「グ、グリーンさん⁉ ど、どういうことですか! 約束が違うじゃないですか」

「ふん、なぜワシが貴様らとの約束を律義に守る必要がある。ワシには最強の助っ人がいるのじゃ!」

 

 ダークマインドはほくそ笑んでこちらを見つめていた。ハナから仲間を解放する気などサラサラなかったのだった。それに加えてもう力の残っていないこちらサイドに新たな刺客を送り込んできた。クラッコは以前戦ったときも苦戦を強いられた相手である。あの時はパラソルのコピー能力を使ってクラッコの高い攻撃力を逆に利用して反射して倒すことができた。

 

「それにこれでようやくカービィを一匹始末することができたんじゃ。後は妖夢、貴様を屠れば全てが終わるんじゃ。ゆけ、クラッコ!」

 

 クラッコはダークマインドの指示通り妖夢に襲い掛かった。妖夢も僅かな体力をもって再び人鬼「未来永劫斬」を繰り出した。しかし体力が有り余っているクラッコを相手にそれは無謀と言う他なかった。クラッコお得意の集中豪雨が妖夢ごと弾幕を押し流した。洞窟内で溺れるという経験を味わったのち、体勢を立て直そうとする妖夢にすかさずクラッコはタックルを仕掛ける。

 

「あ、危ない!」

 

 キィイン! という金属音とともにクラッコの眼球が妖夢の眼前に切迫しており、ギリギリ攻撃を受け止めた。しかしそれもダークマインドの想定内だった。

 

「フン、無駄じゃ。やれ」

 

 雷雲の化身クラッコは自身の体を光らせて放電した。電撃は妖夢に伝わり、刀剣とともに妖夢も崩れ落ちてしまった。体から煙が出ており気絶してしまった。

 

「これで終わりじゃ。もうワシらを妨げるものは……」

「ま、まだです……!」

 

 ボロボロになって気を失っていたはずの妖夢だったが何とか意識を取り戻した。フラフラガクガクになりながらも剣を杖代わりにして何とか立ち上がった。目の焦点さえも合っていないが負けるわけにはいかなかった。

 

「カービィさんたちが待っているんです。何としてでも倒させて頂きます」

 

 今までで一番の危機であることは間違いなかった。だからこそ手に力を入れなければならない。今、自分が倒れてしまったら誰も助けてくれる人がいないからだ。

 

「ワシらを倒せるのか?」

「倒します」

「クラッコに手も足も出ぬのではないか?」

「違います!」

「今度こそ消し炭にしてやろう!」

「迎え撃ちます!」

「妖夢ちゃんお腹空いたわ~」

「後にして下さい!」

 

 ゴチャゴチャ言ってくるが妖夢は集中力を高めた。一撃で倒せるほどの力を……ん、あれ?

 

「え?」

「お腹空いたわ~」

 

 その場にいる者全員が固まった。ここにいるはずのない人間(人間ではない)がいたからだ。

 

「ゆ、幽々子様!? どうしてここに!?」

「妖夢ちゃん追いかけて気付いたらここにいたのよ~。それよりももうすぐおやつの時間なんだけど……」

「チッ、新手か。まあいい。片付けろクラッコ」

 

 ダークマインドの命令通りクラッコは二人に襲い掛かった。妖夢が戦闘態勢に入るスピードよりもクラッコの飛行速度の方が高かった。このままでは激突するその瞬間だった。

 

「あ、綿飴かしら?」

 

 パクッ!

 

「えっ!?」

「何じゃと!?」

「ちょっとパチパチしてるけどこれも美味しいわね。いいおやつだわ~」

 

 空の覇者、雷雲の化身と言われる古参ボスクラッコは突如現れた亡霊、西行寺幽々子によって3時のおやつと化してしまった。




 幽々子様登場です! 一話に出てきた幽々子様ですがまさかのクラッコワンパンKOでした。次回はどうやってこっちの世界に来れたのかを説明しますのでもう少々お待ちください。
 元々幽々子様が妖夢たちのピンチに駆けつける構想はあったのですが、モーリィとの戦いで出す予定でした。ですがモグラを食べるという絵面よりもフワフワしているクラッコを食べた方が絵面がいいかなと思って変えました。その結果モーリィは苦戦しましたね。
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