妖夢と鏡の大迷宮   作:海老の尻尾

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第七話 幽々子登場

 これは妖夢が奇妙な鏡に吸い込まれた後の話である。白玉楼の主である西行寺幽々子は妖夢を探していた。理由はもうすぐで午後三時になるからである。日課のおやつの時間に妖夢お手製のおやつを食べる。これこそが至福の一時であった。

 

「どこにいるのかしら? あ、お庭かしら」

 

 妖夢の声が庭から聞こえた気がした。駆け足で庭に飛び出してみるもそこに妖夢の姿はなかった。それどころかこの辺り一帯から妖夢の気配が突如として消えたことにすぐに気づいた。主人であるからそれくらいの察知能力は有しているため、幽々子は不安に襲われた。

 

「妖夢ちゃん、おやつは……?」

 

 従者の身の安全よりも空腹が優先された。妖夢が強いことを信じているからこそ心配はしていないのだろうか。それとも単にお腹が空いているだけなのかもしれないが。ひとまず幽々子は指パッチンで旧友を呼び出すことにした。

 

「何よいきなり」

 

 目の前に突如現れた謎の空間から金髪の美女が現れた。これだけ聞くととんでもないことだが彼女たちにとってはいつものことだった。その美女の名前は八雲紫、幽々子とは腐れ縁の仲である。

 

「ねえ紫、ついさっき妖夢ちゃんが消えたんだけど知らない?」

「妖夢が? 知らないわよ。大喰らいのアンタに愛想尽かしてどこか行っちゃったんじゃないの?」

「よ、妖夢ちゃん……」

「ワワ! じょ、冗談よ! 妖夢がそんなことするわけないじゃない、アンタのこと大好きなんだから!」

「そ、そうよね……ホッ」

 

 軽口のつもりで言ったがかなり堪えたようだった。昔から妖夢関係のこととなるとこうなってしまう。それだけ過保護に育ててきたのもあるだろうが、心当たりがあるのならば改善しなさいよと紫は思った。

 

「でも確かに奇妙ね。私たちに気取られずにどこかに行くなんて。ちょっと調べてみるわね」

 

 紫はそう言うとスキマを閉じてしまった。しばらく時間がかかりそうだったので幽々子は屋敷に戻り、常備しているお菓子で食いつないでいた。

 

「これじゃないのよね~」

 

 同じ妖夢が作ったお菓子だが美味しいとは感じていなかった。時間が経っているという些細なことよりも何より、妖夢と一緒に食べていないということが大きかった。食事は二人、特に大好きな妖夢と一緒に食べるからこそ美味しく感じる。妖夢がいないことは幽々子にとって死活問題だった。

 

「あ、そうだわ。この前のあれを応用すればいいじゃないの」

 

 幽々子は妙案を思いつき服に仕舞ってあった扇子を取り出し、そこに何か文字を草書で書き始めた。短い暗号のようなものがサラサラと書かれ、書き終わると扇子は閉じられた。

 

「えーっと、これで私から妖夢ちゃん。つまり逆にすればいいのかしら」

 

 幽々子は扇子の持ち手を逆にして大きく扇子を振り下ろした。この暗号はいつでも妖夢を呼び寄せるための術式であった。お腹が空いたときや構って欲しいときなどに便利だと思い幽々子が独自に編み出した。今までは順手に持って妖夢を呼び出すことができていた。ならば今度は持ち手を逆にすれば妖夢の元に幽々子が行けるのではないかと考えた。

 

「あ、あら?」

 

 扇子から強い引力が生じた。その力は幽々子を取り込み、扇子の中に押し込まれてしまった。幽々子の目論見は見事大成功し、瞬間移動を果たした。

 

「ただいま幽々子。調べたけど……ってあれ?」

 

 紫が戻ってきたときには既に幽々子の姿はなく、屋敷の中には愛用していた扇子のみが床に落ちていた。

 

「幽々子もどこかに行っちゃったのかしら……これはもっとちゃんと調べる必要がありそうね。霊夢にも声をかけておかないと」

 

 こういうことから異変が生じたケースは今まで何回も見たことがあった。しかし紫自身が表立って動くと色々不都合が生じてしまう。ここは異変解決のプロの霊夢や魔理沙に任せることに決めた。本当は妖夢にも白羽の矢を立てたかったところだが当の本人がキッカケとなってしまっている。

 

 

 

 

 そして舞台は鏡の世界に移る。クラッコを撃破(完食)した幽々子は妖夢に軽く経緯を説明した。

 

「というわけで気付いたらここに来ていたってわけよ~」

「そ、そうでしたか。ご迷惑をおかけしました」

「いいのよ。妖夢ちゃんが無事で何よりだわ」

 

 深々と頭を下げる妖夢。その妖夢を幽々子はそっと抱きしめた。ポンポンと頭を撫でられながら豊満な胸の谷間にうずめられる妖夢は恥ずかしくもありつつ、その甘い香りに心を落ち着けていた。

 

「ク、クラッコを一撃だと……⁉ 貴様何者だ、化け物か!」

 

 ダークマインドはいつの間にか蚊帳の外になっていたが、目を大きく見開いて動揺しつつも問いかけた。以前敗れたことを改善して雷撃のエネルギー量を三倍搭載したにもかかわらず、あっさりとやられてしまったからだ。

 

「化け物だなんて失礼ね~。私は西行寺幽々子。この妖夢ちゃんの主のただの幽霊よ」

「お前のようなただの幽霊がいるか!」

 

 ダークマインドは目の前に現れた得体の知れない女に慄いていた。クラッコを撃破したその実力的に真っ向からやり合うのは愚策。そう感じたダークマインドは撤退を余儀なくした。

 

「チッ、仕方ない。ここは潔く去るとしよう」

「ダークマインド! 皆さんを返しなさい‼」

「フッ、断る」

 

 むざむざ相手の戦力を増やすようなことはしないダークマインドは一言だけ発すると体を鏡の中に隠して消えた。鏡はその場からスーッと消失して痕跡を消してしまった。

 

「クッ……逃がしてしまいましたか」

「妖夢ちゃん、あの大きな目玉は何なのかしら?」

 

 今度は妖夢が幽々子にこれまでのあらましを説明した。カービィという存在と一緒に行動していること、ダークマインドという悪者が支配しようとしていること。窮地に追いやられていることなど詳細に話した。

 

「そうなのね~じゃああのダークマインドを目玉焼きにして食べたらいいのかしら?」

「お腹壊しますよ。まあそうですね、何とか、倒しま……」

「妖夢ちゃん! 大丈夫⁉」

 

 幽々子が来たことで安心したのだろうか、蓄積したダメージが今頃やってきた。そのまま気を失って幽々子の胸の中で眠ってしまった。

 

「あらあらよく頑張ったのね。ゆっくりお休みなさい」

 

 

 

 

「う、ううん…… ハッ!! クラッコはどこに……!」

「あ、起きたのね。グリーンカービィちゃん」

 

 グリーンが目を覚ますと柔らかい感触とともに目の前には微笑んでいる幽々子がおり、その真横には綺麗な顔で寝息を立てている妖夢の姿があった。二人揃って膝枕をされておりそれに気付くちグリーンは跳び上がった。

 

「だ、誰だ⁉」

「あらもう起きたの。もうちょっと寝ていてもいいのよ」

「ダークマインドの手先か? それにクラッコはどうなったんだ?」

「落ち着いて下さいグリーンさん。その方は西行寺幽々子様、私の主です。クラッコも幽々子様が倒してくださいました」

 

 グリーンの驚きの声で幽々子の膝から起きた妖夢は困惑しているグリーンに事情を説明した。まずは敵ではないことを説明して厄介なクラッコをワンパンしてくれたことを話した。ついでにやって来た経緯も話してダークマインド側の勢力ではないことも念押しした。

 

「そ、そうか。妖夢の味方ならば安心だな」

「そうですよ幽々子様ですもの。ところで……もしかして幽々子様私たちが気を失っていた間に」

「ええ。快復しておいたわよ」

 

 今こうして平然と話せているのも幽々子が快復してくれたおかげである。かなりの重症を負っていたはずなのに何の痛みも疲労も感じていない。暇だから永琳のところに遊びに行って回復系の魔法を覚えていたのが役に立った。

 

「幽々子さん、本当にありがとう。恩にきる」

「ウフフ、いいのよ。妖夢ちゃんのお友達だもの」

 

 グリーンは幽々子の手を握り感謝を述べた。幽々子は微笑んで返していた。妖夢に仲間ができて保護者として嬉しいのだろう。

 

「とりあえず二人とも戻りましょう。ここに居ても仕方ありませんし」

 

 妖夢はポケットの中から手鏡を取り出した。ここに来れるようになったキッカケでもある手鏡はひとまず破損してはいなかった。あれだけの戦闘の後だからひょっとしてと思ったが想像以上に頑丈で妖夢は安心した。それに加えてここに来る前と比較して変化があった。

 

「あ、欠片がハマってますね」

 

 すっかり忘れてしまっていたがボスを倒すとディメンションミラーへと続くための鏡の欠片をゲットできる。モーリィとクラッコを倒したため一気に欠片は二つ回収された。拾った覚えはないのでおそらく自動的に鏡の元へと吸い込まれるのだろう。残るボスは六匹になった。

 

「早くダークマインドを倒さないとだな」

「ええ。皆さんの救出もまだですし」

「私も手伝うわよ~」

「助かります幽々子様」

 

 新たに幽々子が加わり強化されたボスも着実に撃破していっている。妖夢にとっては不安だった行く先も幽々子が来たことによって解消された。打倒ダークマインドに向けて妖夢は腰の剣を握りしめて気持ちを新たにし、レインボールートへと戻るのだった。




 チートキャラ幽々子様登場です。カービィ系の小説には幽々子様は外せませんよね。次回のボスキャラはメガタイタン&タイタンヘッドですね。どんな強化を施そうかなと今から楽しみです! 

p.sマスタードマウンテンは舞台として登場しません。期待していた人スミマセン!
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