SABER WARS Groove of the Galaxy!!   作:オリスケ

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2節 -幕間-

 

 

 

 ――自分を包む光は、時折、どうしようもなく暗い。

 

 血よりも紅く、この銀河のどんな魂よりも眩い光。とても眩しくて、熱いはずのエネルギー。

 目を開けば視界は紅に染まっている。迸るエネルギーが常に肌をビリビリと震わせている。

 なのに、彼女が真っ先に思い浮かべる感情は『暗い』だった。

 幾度目覚めても。幾星霜の時が経った気がしても。

 その光は、暗い。

 そんな筈ないのに、そう思う。

 

 

 恒星の中心は――少なくともその只中に居る自分の知覚は――いつも穏やかで、静かだった。

 まるで時間や空間といった世界を司る概念の何もかもが、恒星の熱に焼き尽くされてしまったみたい。

 光が埋め尽くしている。銀河最強の熱が満たしている。

 だから、そこには何もない。

 何も感じない。何も介在しない。

 光がその場所の全てだから、目を閉じても開いても大して意味はない。

 いつも夢を見ているみたい。だからもう、夢と現実の区別もついていない。

 思考さえ、眩い紅の光が塗り潰してしまっている。

 

 

 ……なのに、自分は『暗い』と思う。

 全部が光で満たされて。意識はふわふわで、自分という形さえばらばらで、思うって言葉の意味だってあやふやだけれど。

 

 

 なんとなく、暗い。

 そう感じるのはたぶん、光に混じる『ゆらぎ』のせい。

 火で炙られた空気が揺らぐような。大地に手を付けて、遙か下のマグマの流れを感じるような。静かで暗い深海にいる自分を、誰かが水面から手を叩いて呼んでいるような。

 どうしてか分からない。どういうものかも分からない。

 そういう『ゆらぎ』が、時折浮かんでは、光の中の自分に『自分』を思い出させる。

 瞬き程度のほんの一瞬、光が揺らぐ。

 また、光がゆらいだ。とくん、と一回。大きくゆっくり、何億年も生き続ける巨大な生き物の、億劫に鳴る心臓の鼓動のように。

 

 

「……如何したか、オルトリアノヴァよ」

 

 

 まばゆい光に包まれた意識では測りようもないが、たぶんゆらぎのすぐ後に、騎士がそう声を掛けてきた。

 騎士は、自分のいずれの思考も感じた訳ではあるまい。ただ彼は、光と共に生きるサーヴァントである故に、並外れた光への知覚を有していた。

 また、光がゆらぐ。とてもとても小さな、宇宙ネズミの尻尾が舞い上げる埃のような波が、立て続けに続いている。

 

 

「――ああ、痛ましい。お前は、憎んでいるのだな」

 

 

 ……憎んでいる?

 そうなのだろうか。光に包まれたあやふやな意識では、この『ゆらぎ』の暗さを説明する言葉はない。言葉はもっと、今の自分よりも低いステージで使われるものだ。

 

 

「ひとり孤独に宇宙を彷徨い、取り残され、さぞ恐ろしかった事だろう。空気からも、重力からも、人からも見放され、辛かっただろう。この宇宙を――空虚で凍えるほど寒い蒼輝銀河の暗闇を、さぞかし恨んだ事だろう」

 

 

 恒星の傍で、紅蓮の光を浴びる騎士が、言葉を紡ぐ。

 また、とくんと光がゆらぐ。光で構成される世界の、世界そのものがうねる。

 

 

「何も心配はいらない、オルトリアノヴァよ。お前はもう何も気にしなくていい。思うがまま、尽きぬ恨みの往くがまま、空虚な暗い世界を光で満たすといい」

 

 

 今までにない、揺らぎの連続。

 それはまるで――心臓の鼓動のようで。

 紅い光に、何か暗いものが滲んでくる。

 

 

「憎しみのまま焼き尽くせ。孤独を強いた銀河のがらんどうを破壊しろ。光は恐怖を産み出さないのだから、全てを光で包めばいい。お前の眩い極光で、お前に背を向けた何もかもの目を潰してしまうがいい」

 

 

 とくん、とくん、光が揺らぐ。

 光で塗られていた自分の世界が、掻き回される。

 紅い光に、暗い何かが混ざっていく。

 

 

 騎士の言うとおり、これは憎しみなのだろうか。

 誰かを恨んでいるのだろうか。

 分からない。分からない。

 だけど、揺らぎが続く。

 どうしようもなく、騒ぐ。

 

 

「貴様は最早、銀河最強の光だ――光らしく、何も考えずあるがまま、遍く全てを貫くがいい」

 

 

 そうだ、光は考えない。

 光は何にも侵されない。

 

 

 だから、そう。

 ――暗いなんて異常は、排除しなければ。

 

 

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