SABER WARS Groove of the Galaxy!!   作:オリスケ

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7章 決戦! 極光騎士団!
1節


 

 時が流れ、訪れる決戦の時。

 ミレニアムスツーカのコックピットには、立香達全員が集い、座席に深く腰掛けてシートベルトを付けている。

 操縦桿を握るルーデルが、代表して皆に告げた。

 

 

「いよいよ、あと五分でハイパーワープが終了し、俺達は再び極光騎士団の大軍勢に相見える事になる。おのおの覚悟はいいな!」

 

 

 発破を懸けられた立香とモードレッドは、互いに見つめ合って頷き――それから、傍らに座るXXを見る。

 XXは緊張に表情を固めていたが、そこにこれまでの悲観的な様子はない。蒼い瞳は、コックピットの向こうの流れゆく星々の、その先に待つ彼女を一心に見据えている。

 

 

「……必ず、えっちゃんを助けます。皆さん、力を貸してください」

 

 

 迷いなく、確かな希望を胸に抱いて、XXが言う。

 居並んだ一同が、彼女の背中を押すように、力強く頷いた。

 その様子を見て微笑んだルーデルが、誇り高き騎士が己の剣にするように、操縦桿をゆっくりと握りしめる。

 

 

「……では、マスター。俺から一つ頼みがある」

「なに、ルーデル?」

「令呪を一画、俺にくれ」

 

 

 立香は思わず、自分の右手に視線を投げる。

 魔力を増幅させ、サーヴァントに一時的ながら凄まじい力をもたらす令呪。強力無比ながら回数制限があるその力は、使い所次第で、戦いの結末を大きく左右する。

 そのうち一画は、ダース・ソルからXXを守るために使用した。残る令呪は、あと二画だ。

 

 

「……理由を聞いてもいい?」

「もう少しでハイパーワープが完了し、この船は元の次元に現出する――その瞬間、ミレニアムスツーカはもう一度ハイパーワープを敢行する。数キロの、ごく短距離のものだ。その為には魔力のリソースが足らん」

 

 

 そう言ってルーデルは、真摯に立香を見つめた。

 

 

「信じられないかもしれない。だが空の英雄として、確信を持って言おう。この決断が、君を勝利に導くために必要な一手だと」

「……」

「頼めるか、マスター?」

「……分かったよ。俺達を乗せて飛んでくれ、ルーデル!」

 

 

 立香は頷き、そして右手の令呪を輝かせ、一画分の魔力をルーデルに注いだ。

 溢れる凄まじいエネルギーに、ルーデルが昂揚に笑みを深める。操縦桿を握る手に、これ以上無く果敢な力が籠もる。

 

 

「さあ、行くぞ皆! ――銀河を救う、最終決戦だ!」

 

 

 ほとんど音もなく飛行していた艦内が、ビリビリと震え出す。

 感じる圧力に、誰もがぎゅっと身体を縮め、衝撃に備える。

 ハイパーワープが潰え、異次元の亜光速から、蒼輝銀河へと帰着する。

 光速に基づく物理法則が立香達に戻ってくる。

 ドンッ――と音を立て、伸張されていた空間が常理を取り戻す。

 コックピットの向こうに、蒼輝銀河の星空が現れ。

 

 

 

 

 

 

冥紅零滅(オブスキュラス)光仞(カリバー)

 

 

 次の瞬間、紅蓮の光が銀河を貫いた。

 オルトリアノヴァから放たれた極太のレーザーが、空間をねじ曲げ、軌道上の星々を破壊し、銀河の彼方までの一直線のあらゆる存在を滅却する。

 その光線から僅かに離れた宇宙空間に、再びドンッ――と衝撃が産まれ、ミレニアムスツーカが飛びだしてきた。

 

 

「やはりな! そんな単純な策で、不滅の飛行機乗りを捉えられると思うなよ《オルトリアノヴァ》!」

 

 

 操縦桿を握り、ルーデルが獰猛に笑う。

 コックピットの向こうに現れた景色は、立香達が覚悟していたそれよりも、遙かに圧倒的な光景だった。巨大に膨張した紅蓮の恒星を背景に、比喩でもなく星のような数の戦艦が漂い、船首をミレニアムスツーカに向けている。

 その夥しい数の戦艦から、胡椒粒のような小さな粒が撒き散らされた。それらは徐々に大きくなり、形を明瞭にし――視界を真っ黒に埋めるほどの小型機の群れになって、ミレニアムスツーカに向け迫り来る。

 

 

「揺れるぞ、全員掴まれぇぇ!」

 

 

 気合い一喝、エンジンを最大にふかし、その星雲の如く広がる小型機の群れに突貫する。

 恒星の紅に包まれていたコックピットの外の光景に、無数の小型機の影が落ち――たちまち、立香の視覚の許容値を越えた。

 それは傍目には、画面に走る砂嵐のようにしか見えなかった。ミレニアムスツーカは最大速度で飛翔し、夥しい数の小型機をくぐり抜けていく。

 それは大雨の降りしきる曇天の中を雨粒にあたらずに駆け抜けるような、神業そのものの技巧だった。機体同士の僅かな隙間を紙一重で抜けたと思えば、火砲を用いて強引に風穴を開け、あるいはミレニアムスツーカの翼で強引に叩き切り、進む。

 

 

「ハハハッ! 令呪の力は素晴らしいなマスター! よく見えるぞ。この濁流の如き敵機の群れの突破口も、俺達の勝利も!」

「お願いルーデル! 俺達をあそこまで連れて行って!」

「任せろ少年! スペース☆ライダーの誇りにかけて、お前の星よりも強い輝きを、導いてみせようではないか!」

 高らかにエンジンを唸らせ喇叭を奏で、敵機の中を突き進む。

 圧倒的な戦力差など物ともしないというように、ミレニアムスツーカは飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

    ◇

 

「我等がソルの威光を避けたか……小癪な」

 

 

 宇宙に広がる極光騎士団の大師団。

 その中央の一際巨大な旗艦の司令室で、ダース・ソルは小さく舌打ちをした。

 彼が立つのは、オペラハウスの円形ホールのような広い台座の上だ。そこから見下ろせる位置には扇状に広がる管制機器があり、沢山の騎士が戦況を詳らかに分析している。

 頭脳にあたる司令室は旗艦の頂点に位置し、半球状のドーム型をしていた。ドームは巨大なガラス張りになっており、一八〇度一面の紅く輝く宇宙と、戦場の様子を確認することができた。

ここから見えるミレニアムスツーカの機体は、遠く離れすぎていて、紙に落ちたインクよりも小さな黒粒としか映らない。その黒点に、更に小さな無数の小型艦群がる様子は、さながら磁石に吸い寄せられる砂鉄のようだ。

 しかし、圧倒的な数量差に反し、居並んだ管制スタッフから寄せられるのは、いずれも『撃墜』『補足不可』という報告。

 

 

「やはり、名付きのサーヴァント。端騎士の船で潰せるほど甘い存在ではないか……だがしかし、その余裕もいつまで持つかな?」

 

 

 ダース・ソルの声は乱れない。

 敗北の未来など、絶対に起こり得ないからだ。周囲には億を越える軍勢が居並び、その背後には、蒼輝銀河最大の力を持つ恒星《オルトリアノヴァ》が控えている。

 たかがサーヴァント数機とマスター一人に、恒星の輝きを曇らせる事などできようものか。

 

 

「旗艦を中心に小型機を更に展開。近づいてきた奴等を、数百万倍の物量で押し潰してしまえ」

 

 

 《オルトリアノヴァ》の威光を受けさせる価値もない。ダース・ソルは冷徹に、無感動に、ただただ圧倒的戦力差での圧殺を試みる。

 後は、時間の問題だ。逃げ続け、逃げ場を無くし、その果てに事故死するもよし。怒濤のように押し寄せる小型機の群れに為す術もなく飲まれるもよし。

 戦力差を思い知り、己の無謀を恥じ入り、絶望に飲まれて息絶えるがいい。

 

 

「ここで果てよヒロインX、カルデアのマスターよ。貴様等など、《オルトリアノヴァ》は愚か、この旗艦に辿り着くことも――?」

 

 

 侮蔑を孕んだダース・ソルの声が、疑問に搔き消える。

 ミレニアムスツーカと、それに纏わり付く小型機の群れが描く、小さな黒点。それはミレニアムスツーカの動きに合わせ、少しずつ移動している。

 その軌道は、本来の目的地である《オルトリアノヴァ》とは、てんで別の方向に飛んでいた。

 

 

「どうした、奴等はどこに向かっている?」

「不明です。圧倒的な戦力差に逃げ出しているのでは――」

「否だ。我等に楯突く輩が、例え死こそすれ憶するものか」

 

 

 管制スタッフの言葉をキッパリと否定し、ダース・ソルは鉄のように確固とした声で指揮を執る。

 

 

「奴等の行先を調べろ。必ず何かがあるはずだ」

「ですが……あそこは確かに包囲網が薄い場所ではありますが、鹵獲した資源を集約する倉庫ですよ。我等がソルを打倒するような物は――」

「……鹵獲した資源だと」

 

 

 ひやりと冷たいものを背筋に感じたダース・ソルが、手早くコンソールに指示を出す。

 管制室前面を埋めていたガラスの一画がそのままモニターになり、ミレニアムスツーカの向かう先の一画を拡大表示する。

 そこに映された物を見て、ダース・ソルの脳裏を疑問が埋め尽くした。

 

 

「何を、するつもりだ……?」

 

 

 そこは確かに、倉庫であった。襲撃した相手から奪い取った貨物や宇宙船などを一緒くたにまとめ、宇宙の無重力に任せ浮遊させている。

 

 

 

 

 

 ――その、雑多な物資の群れの中。大小様々な資源に紛れるようにして。

 ノウム・カルデアは、ひっそりと沈黙を保ち、銀河の無空を漂っていた。

 

 

 

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