幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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信念…もとい、新年あけましておめでとうございます。

元旦にスクライドを見て、3日にイデオンを見るというサンライズ殺法をモロに食らった筆者です。

こんなネタが頭に浮かんだのも、きっとイデの導きで脳が破壊されたからでしょう。

駄文ではありますが、暇つぶしになれば幸いです


正月企画『幼女がコズミック・イラに産まれていた場合』(New)

 これは本来の流れから少し外れたコズミック・イラのお話。

 

 正史との細かい剥離は数あれど、大きな一つはオーブ在住のアスカ家に齎された。

 

 それはアスカ夫妻に第三子と四子が双子で産まれた事だ。

 

「よくやってくれた! しかも新しい娘が二人も! ありがとう! ありがとう!!」 

 

 新生児室のベッドに並ぶ珠のように可愛い双子の娘を見て、アスカ父は大号泣をした。

 

 このオッサンが年始に日本酒をガバッってハッスルしたのが今回の騒動の発端で家族計画的には大誤算もいいところなのだが、そこは家族第一を公言している一家の大黒柱。

 

 嫁さんの入院中は日本人をルーツに持つ家系らしくオーブに設置された神社へお百度参りもしたし、無事に生まれた事で八百万の神々に感謝の言葉を捧げまくった。

 

「マユ、お姉ちゃん! お姉ちゃんになったよ!!」

 

「ああ、そうだな。俺も新しい妹が二人も増えたんだから頑張らないと!」

 

 そして末っ子脱却を果たしたマユは下の妹の姿に目を輝かせ、長男のシンも無防備な赤ん坊の姿に気合を入れ直す。

 

 なにせマユとは五歳差、シンに至っては十歳も離れた妹だ。

 

 共働きで日ごろから忙しい両親に代わって面倒を見る事を思えば、気を引き締めるのは当然と言えた。

 

 こうしてC.Eという修羅の世に生を受けた双子、ミユとミウは少し変わった子供だった。

 

 妹のミウは身体能力が非常に高く、頭脳の方も年不相応に聡明だった。

 

 舌足らずながらも二歳にして敬語で話すようになった時は、家族一同を大いに驚かせた。

 

 一方、姉のミユは口数の少なく大変大人しい子供だった。

 

 妹と同じく早期に言葉を覚えたものの、普段からぼーっとしていてポツリポツリと話すのだ。

 

 ただ勘が異様に鋭く、他人の心の機微には酷く敏感だった。

 

 その為にミウがぐずると誰よりも先に気が付いて抱きしめて頭を撫で、さらにはマユやシンが落ち込んでいる時も抱っこから頭に手を伸ばしてよしよしと慰めるのだ。

 

 そんな事もあって双子の間には自然に姉妹の位置づけが確立され、ミウはミユを姉として慕ってミユもミウを妹としてよく可愛がった。

 

 こうして幸せな日々を送っていたアスカ家だが、そこに思わぬ試練が舞い降りる。

 

 なんと母が勤め先の化粧品会社から異動が命じられたのだ。

 

 新たな勤務地は宇宙に浮かぶコロニー『ヘリオポリス』。

 

 コロニー内には会社の工場があり、そこの視察と問題があれば改善を行うのが任務だった。

 

「いやだぁぁぁぁぁぁっ! やだやだやだやだぁぁぁ!!」 

 

 辞令が下った日、家に帰ってきた母は床に倒れて手足を振り回し、さらにはブレイクダンスのごとく頭を中心に倒立して足をバタ付かせてまで駄々をこねた。

 

 その姿には母親の威厳など一ミクロンも存在しない。

 

「か…母さん」

 

「もう、ミユとミウも見てるんだよ!」

 

 その様にシンとマユは呆れ、そんな妻の奇行を見慣れているアスカ父は苦笑い。

 

「……かかさま、よしよし」  

 

「おかあしゃま、ぎゅー!」

 

 双子はと言うと、ミユはぐったりと倒れた母の頭を撫でてミウの方はコアラのように体に抱き着いていた。

 

「この子達と離れるとか無理ぃ……。もう仕事辞める。もしくはミウ達を連れてく」

 

 双子を抱きしめてさめざめと泣く母。

 

 その後に開かれた家族会議で、赴任期間が数カ月という事もあって女性陣がヘリオポリスへ行き、学業や仕事の関係からオーブを離れられない父とシンが本土に残るという結論に達した。

 

「ミユ、ミウ……むこうに行っても元気でな」

 

「いやだぁぁぁっ!! マユはともかく、ミユとミウと離れるなんてできない!!」

 

「殺すぞ、兄貴」

 

 涙ぐむ父としゃがみ込んで双子を抱きしめ号泣する兄、そんな兄の背中にローキックを叩き込む妹と。

 

 マスドライバー・カグヤの乗船場で繰り広げられたアスカ家の愁嘆場は、さながら離婚で引き裂かれる家族の様であった。

 

 カグヤで加速した旅客用のシャトルは、大気圏を超えて宇宙へと飛び出した。

 

「……ふわふわ」

 

「からだがプカプカしましゅ」

 

「ミユは宇宙初めてだったわね」

 

「私も初めてだよ。お母さんは行ったことあるの?」

 

「若い時に一度ね」

 

 無重力に目を見開くミユとミウに思わず笑う母は、マユの問いに懐かしそうに天井を見上げる。

 

 だからこそ、彼女達は気付かなかった。

 

「……うちゅう、あお」

 

「はい、いのちがキラキラでしゅ」

 

 窓から漆黒の宇宙空間を見つめる双子の眼に、たくさんの星が瞬いていた事に。

 

 無事にヘリオポリスへ着いたアスカ家女衆だが、数カ月で本土へ帰るという事なのでマユは学校に通わず自宅学習で済ませることになった。

 

 学校に行かない代わりに母が仕事の間は彼女が妹達の面倒を見たお陰で、アスカ家の面々はコロニーでの生活を問題なく過ごすことが出来た。

 

 そうして暮らしていたある日のことだ。 

 

 後ろからマユに抱っこされる体勢で姉の膝の上に座っていたミユは、何かを感じたように宙を見上げた。 

 

「どうしたの、ミユ?」

 

「……わるいひと、くる。コロニー、こわしちゃう」

 

 もちろん、最初はマユも三女のお腹に顔を埋めて日ごろの疲れを癒していた母も信じていなかった。

 

「わたしもかんじまちた。わるいひと、きます」

 

 しかし姉だけでなく末娘のミウからも真剣な目でこう言われると、一笑に伏すのは難しくなる。

 

 アスカ家の人間は、この双子が神がかったように勘が良い事を知っているのだから猶更だ。

 

 万が一の事を考えた一家は、緊急避難キットと保存食5日分を掴むとシェルターへ急いだ。

 

 このヘリオポリスのシェルターはコロニーが崩壊する事態が起こっても、脱出ポッドとなって宇宙へ逃れることが出来るのを母は知っていたのだ。

 

『非常事態発生! 非常事態発生!! 現在、ヘリオポリスは敵勢力の襲撃を受けています! 住民の方々はすぐに最寄りのシェルターへ避難してください!!』

 

「本当に来た!」

 

「すぐにシェルターへ入るわよ! マユ、ミウの手を放さないで!!」

 

 そしてミユ達の予感が的外れでなかった事を彼女達が知ったのは、最寄りのシェルターへたどり着いた時だった。

 

 母がミユを抱き上げ、マユはミウを背負ってシェルターの中へ駆け込む。

 

「お願い…これ以上何も起こらないで……」

 

「お兄ちゃん…お父さん……」

 

「…だいじょぶ、ここはねらわれてない」

 

「はい。わるいひと、あっちのほうです」

 

 そうして彼女達はシェルター奥の一角で、嵐が無事に過行くのを待ち続けていた。

 

 そうしてどれほどの時間が経っただろう。

 

「キャアッ!?」

 

「にゃっ!?」

 

 突然激震が奔ったと思ったら、シェルターがガクンと下へと射出されたのだ。

 

「な…何があったの?」

 

「……かかさま。ここ、うちゅう」

 

 焦る母にミユは告げる。

 

 彼女達は知りえない事だが、襲撃してきたザフトと地球連合の最新鋭艦『アークエンジェル』が内部で激しい戦闘を行ったためにヘリオポリスは崩壊してしまったのだ。

 

 当然、宇宙に投げ出された脱出ポッドに出来る事はない。

 

 近隣のコロニーからの救出部隊か、オーブ宇宙軍に回収されるまで宇宙を漂うだけだ。

 

 一日くらいは漂流するのも覚悟していたアスカ家を始めとするヘリオポリス市民。

 

 しかし事態はそれより早く動いた。

 

「キャアッ!?」

 

「うわっ!? なんだ?」   

 

「……キラ?」

 

「どうしたの、ミユ?」

 

「……キラがたすけてくれるって」

 

 彼等はアークエンジェルによって保護されたのだ。

 

 こうしてアークエンジェルへ乗り込んだ避難民たちだが、当然新造艦は軍事機密の塊。

 

 自由に動き回る事も認められず、彼等は居住ブロックの一角で軟禁同然の生活を送る事になった。

 

「んー……」

 

「どうしたの、ミユ?」

 

「……ミユがいっぱいひろがっていくかんじ」

 

「お母さん、どういう事なんだろ?」

 

「よく分からないわ」

 

 避難民の中にはアスカ家の面々もあり、ミユはザフトの部隊を相手に行われる逃避行の中で自分の意識が増大していくのを感じていた。

 

 そうして数日が経ち、隔離区画の前を通る地球連合の士官の会話に友軍と合流できるという話が出始めた頃だ。

 

「……キラ?」

 

 大きな戦闘があったのだろう、艦内を激しい揺れが襲った事で避難民たちが騒然とする中、ミユはスルリと隔離区画を抜け出した。

 

 直感の囁くままに廊下を歩いていると、そこには身を屈め声を押し殺して泣く栗色の髪をした連邦士官の姿があった。

 

 彼の名はキラ・ヤマト。

 

 工業カレッジの学生だったキラは成り行きで連合の最新兵器ストライクに乗り込む羽目になり、同じく軍事機密であるストライクを知った為に拘束された友人を護るために単身ザフトと戦っていたのだ。

 

 しかし追手であるザフト側には竹馬の友というべきアスラン・ザラがいる事実は、慣れない戦闘と共に彼の精神を激しく消耗させた。

 

 それに加えて、コーディネーター国家『プラント』と戦争状態にある地球連合の艦で唯一のコーディネーターという孤独感と周囲からの疑念の視線。

 

 さらには先の戦闘で父親を失ったフレイ・アルスターからの『あんた…自分もコーディネイターだからって、本気で戦ってないんでしょう!!』という暴言によって、キラの精神は限界に達しようとしていた。 

 

 ミユはそんな彼へ近づくと、裾をクイクイと引っ張った。

 

「君は……」

 

「……ミユ」

 

 何時の間に現れたのか、自分の袖を引く小さな女の子に驚くキラ。

 

 そんな心を知ってか知らずか、ミユはペコリと短い自己紹介と共に頭を下げる。

 

「ミユちゃん、君はヘリオポリスの避難民でしょ? だったら、こんな所にいたら怖い軍人さんに怒られちゃうよ」

 

 ミユが興味本位で出てきたと思ったキラは、他のクルーに見つかる前に何とか隔離区画へ戻そうとする。

 

 自分と同じオーブの国民、しかも幼い女の子が拘束される様を見たくなかったからだ。

 

「……キラ、しゃがんで」

 

 しかしミユは彼の言葉に応じようせずに、彼を見上げてくる。

 

「うん、わかったよ」

 

 キラは相手の言う事を聞く事にした。

 

 貸しを作れば、『さっきは僕が君の言う事を聞いたのだから』と目の前の幼女を隔離区画へ戻すことが出来ると考えたからだ。

 

 しかしミユの手が届く位置まで頭を下げた彼を襲ったのは予想外の事だった。

 

「……まもってくれて、ありがと」

 

 ミユは全身でキラの頭を抱えると、小さな手で撫でたのだ。

 

「あ……」

 

「……がんばったね、おつかれさま」

 

 最初は何が起こったか分からなかったキラだったが、普通より高い子供の体温と柔らかさ、そして優しく髪を透く感触に気が付くとダメだった。

 

「う…あぁ……ああああああああっ!!」   

 

 人肌のぬくもりと労わりの言葉は限界だった彼の精神に染み入り、まだ泣き足りなかった涙腺を決壊させたのだ。

 

 今まで戦って帰ってきても労いの言葉など殆どかけられなかった。

 

 親友を向こうに回して戦う事になっても相談すれば裏切り者と思われる可能性がある為に誰にも言えず、彼と刃を交えて帰ってきても連合の軍人達はそれが当然と言わんばかりの態度だった。

 

 友人達も大丈夫かと心配はしてくれるが、それだけだった。

 

 トールやカズイに至っては、ストライクに乗ってからはどこか怯えの視線を向ける始末だ。

 

 そこへ来てフレイの暴言である。

 

 キラとて16歳の少年。

 

 限界が来て当然なのだ。

 

「……よしよし」

 

 そこからキラはヘリオポリス崩壊から、ずっと胸に閉まっていた澱みを泣き声で詰まりながらもミユへと吐き出した。

 

 もちろん、彼自身も幼い子供にそんな事を理解できるはずがないとは思っていた。

 

 それでも一度口を衝いてしまえば、愚痴や不平不満を留める事はできなかった。

 

「……ん。キラ、いいこ」

 

 そんなキラの愚痴をミユは不満一つ零さずに聞いていた。

 

 もちろん、彼女も内容は分かっていない。

 

 けれど、泣いているミウを慰める時も妹のいう事は支離滅裂で意味が分からないので、その辺は慣れたものだ。

 

 そもそもミユがここに来たのは直感的に自分を護ってくれた人が悲しんでいると感じたからだ。

 

 そして妹の時と同じように頭を撫でてあげようと思い立っただけに過ぎない。

 

 幼女は基本的に本能で動くモノ、そこに深い考えなど無いのだ。

 

 そんな浅慮が仇になったのか、ここで思わぬ事態が発生した。

 

「うにゅっ!?」

 

 泣き疲れたキラが気を失うようにミユの身体を枕に眠ってしまったのだ。

 

 当然、4歳の幼女に16歳のキラの身体を動かせるわけがない。

 

 というか、絶妙な位置で頭が乗っている所為でミユも動くことが出来ない。

 

「ミユ―! ぎゃああああああっ!? ミユが軍人に襲われてるぅぅぅっ!!」 

 

 そこから自分の心配をして探しに来てくれた姉を盛大に誤解させてしまい、それを解くのに口下手な彼女が多大な労力を払う事になったのはミユにとって大きな誤算と言えただろう。

 

 こんな事があってからというモノ、キラは避難民の隔離施設へ現れるようになった。

 

 目的はミユを枕に寝る事である。

 

 最初は『連合の士官が幼女を狙って現れた』と避難民たちは最大限の警戒を露わにしていたが、ミユの言葉を通訳したマユからキラがオーブの国民であり、数奇な経緯を得て自分達を護るためにMSに乗っているのを知らされてからは非難の眼も鳴りを潜めた。

 

 件のアスカ家の方も境遇を知ってしまえば怒るに怒れないし、艦を護るキラにヘソを曲げられては全滅の危険がある。

 

 そこに戦闘のストレスで不眠症になっているとキラから聞かされれば、他の避難民の手前Noを突きつけるのも憚られる。

 

「ミユちゃん、ごめんね。また一緒に寝てもいいかな?」

 

「……ん。うぇるかむ」

 

 なにより当人が嫌がっていないので、苦々しくも見ているしかない。

 

 ちなみに姉を取られたと思ったミウは、ふくれっ面を隠そうともせずにキラと逆の側に陣取ってミユを挟み込むように寝るようになった。

 

 

 

 

 ミユとの出会いから数日後に発生したザフト襲撃。

 

 キラはその毒牙を打ち払う為、ストライクのコックピットにいた。

 

「キラ・ヤマト、艦の護衛はフラガ大尉が務める。ストライクはアークエンジェルを発艦後、遊撃としてMSとザフトの母艦を叩け。相手がGを出してきた場合はそちらの迎撃を最優先にするのだ」

 

「了解」

 

 副長であるナタル・バジル―ルの言葉に短く応じると、キラはパイロットスーツのヘルメットの中で深く呼気を吐き出す。

 

 彼は今、生まれて初めて強くなりたいと思っていた。

 

 ヘリオポリスから今まで何度も戦場に出た。

 

 そこで戦ってきたのは、死にたくないというのはもちろんだが護るべきものがあったからだ。

 

 しかし、それは『護るべき』であって『守護りたい』ではない。

 

 仮に状況が変わってストライクを動かせる軍人が現れれば、以前の彼なら迷うことなくそのシートを譲っただろう。

 

 しかし、今のキラは違う。

 

 彼には自らの寄る辺になってくれたミユという守りたい存在がいる。

 

 だからこそ以前のままではいられない。

 

 状況に流されて涙を流す弱い自分はいらない。

 

 そう考えた時、キラの頭の中に一人の漢が浮かび上がった。

 

 その男は常に逆境に立ち向かっていた。

 

 産まれ、生い立ち、そして置かれた弱肉強食の状況と差別や偏見。

 

 その全てに、なにより弱い自分に反逆し、拳一つで抗ってきた。

 

 漢の背中と黄金の拳に、キラは己が目指すべき答えを見た。

 

「そうだよな……そういう事だよなぁっ!」

 

 そう呟くとキラは被っていたパイロットスーツのヘルメットを外す。

 

 そして緊張で掻いていた汗を使って自らの髪を逆立てると、口元に不敵な笑みを浮かべる。

 

「武装への電源供給をカット! エネルギーの全てを右拳へ集中! 右腕の装甲およびフレームのフェイズシフト耐久値を限界まで上昇! 右腕の出力のリミッターを解除!!」

 

 ストライクのステータスを調整するキーボードを叩きながら、エールストライカーを全開にしてザフト軍へと突貫するキラ。

 

 そしてカスタマイズが済めば、今度は両手に持ったライフルと盾を相手に向かってブン投げたではないか。

 

「なっ!? 武器を投げるだと!」

 

「アイツ、正気か!?」

 

 戦いの初手で自分の武器を放棄する。

 

 その奇抜な行動に、先陣を切っていたジンのパイロット達は度肝を抜かれる。

 

 しかし、そこに気を取られた一瞬のスキが命取りになった。

 

「どこ見てんだ、オラァッ!!」

 

「ぐわぁあぁっ!?」

 

 エールストライカーの機動力の高さを生かして左へ回り込んだストライクが、ジンの胴体に右拳を叩き込んだのだ。

 

 その一撃でボディが大きく陥没し、動力源を潰されたジンは一瞬の間を置いてパイロットごと火球に化ける。

 

「なんだと! 馬鹿な!?」

 

「そらっ! もう一丁!!」

 

 僚機の末路に唖然としていたジンのパイロットも、殴った反動を使って弾丸のような速度でカッ飛んでくるストライクの右拳を受けた事で撃墜される。

 

「な…なんだよ、あれ!?」

 

「今までのストライクと全然違う!」

 

 後詰めで出撃していたGの内の二機、バスターに乗っていたディアッカ・エルスマンとブリッツの搭乗者であるニコル・アマルフィは驚愕に目を見開く。

 

「なにを呆けている! 迎撃だ! 奴を討つぞ!!」

 

「クッ! キラ!!」

 

 しかしデュエルのパイロット、イザーク・ジュールの一喝によって彼等はイージスを操るアスラン・ザラと共にビームライフルの銃口を向ける。

 

 だが、そんな四機もストライクの野生の獣の如き動きを捉える事はできない。

  

「俺はテメエ等が気に入らねえ! 俺等のシマに勝手に乗り込んできて、何もかもを台無しにしやがって! そのうえ、戦えねえ関係のない奴等が乗った船のケツを執念深く追いかけやがる! ムカつくよなぁ! ああ、ムカつくぜ!!」

 

 二機目のジンを殴った反動を使ってカッ飛んできたストライクは、周辺に散らばるデブリを足場に次々と飛び跳ねて瞬く間に間合いを詰めるのだ。

 

「だったらどうする? 決まってるよなぁ! テメエ等をブチのめして、這いつくばらせて、二度と舐めたマネが出来ねえようにするだけだ!!」

 

「ひっ!?」

 

 国際チャンネルで己の怒りをぶちまけたキラが最初に狙いを定めたのはブリッツだった。

 

 ロクな反応も出来ずに懐を取られたニコルは、モニター越しに見えるストライクの眼光に小さく悲鳴を上げる。

 

「衝撃のぉぉファァスト! ブリットォォッ!!」

 

 瞬間、ストライクの全エネルギーを注ぎ込まれた右腕が黄金に光り、ブリッツの胴体を容赦なく穿った。

 

 ストライクと同じくフェイズシフト装甲を備えていたブリッツは、ジンたちのようにコクピットを潰される事は無かった。

 

「うわああああああっ!?」

 

 しかし黄金の拳が与えた衝撃は内部の精密機器を軒並みブチ壊し、パイロットのニコルも砕けたモニターの破片を浴びながら気を失った。

 

「ニコル! なにやってんだっ!!」

 

 その様に慌てて銃口を向けようとしたバスターだったが、得物の銃身が長物だったのが災いした。

 

 ブリッツを殴り飛ばした反動を推進力にしたストライクは、ディアッカの見ていたモニターを振り切って彼の目の前に現れたのだ。

 

「毎度毎度後ろからコソコソと! このタマ無し野郎がぁ!!」

 

 罵声と共に飛んできたストライクの右足がバスターの脳天を強かに打ち、更にはそれを足場に遠心力を込めて振りぬかれた右拳がバスターの頭部へ突き刺さる。

 

「ぐあああああああっ!?」 

 

 衝撃に首の接合部が耐えきれなかったバスターは、頭部を失ってはるか後方へと吹き飛ばされてしまう。

 

「へへ……」

 

 宇宙の闇に消えていくバスターの身体を見ながら、ストライクの中でキラは頬を伝う汗を舐め取る。

 

 もちろん、彼の性格が豹変したわけじゃない。

 

 頭に浮かんだ『強い男』になりきろうと必死になっているだけだ。

 

 しかし、今までの戦闘とは違って思うがままに強い言葉を浴びせて相手を殴り飛ばす。

 

 その行為は今までキラが知る事の無かったカタルシスを齎していた。

 

 そしてカタルシスと理想へと少しでも近づいている実感は、戦場の恐怖を闘争心に変えてキラの心を強く補強する。

 

「キラ! もうやめろ!! 俺達は同じコーディ「うるせえッッ!!」!?」

 

 この状況でも説得しようとしていたアスランの通信にキラは怒声を浴びせる。

 

「テメエ等が仕掛けてきた喧嘩だろうが! 今更ガタガタ抜かしてんじゃねえ!!」

 

 言葉と共に加速の勢いのままイージスの持つライフルを蹴り飛ばすと、ストライクは再び右腕を振りかぶる。

 

「撃滅のぉ! セカンドブリットォォッ!!」

 

「キラ!? ぐあああああっ!!」

 

 黄金の拳で強かに胸部を打ち据えられたイージスは各部からスパークの火花を吹きながら母艦の方向へ吹き飛ばされていく。

 

「ストライクぅぅぅぅぅっ!!」 

 

 仲間たちがやられた事で怒りのままにビームサーベルを引き抜いて襲いかかるデュエル。

 

「遅ぇっ!」

 

 しかし必殺を期して放たれた一刀は空を切る。

 

「抹殺のぉ! ラストブリットォォッ!!」

 

 その返しは黄金の拳。

 

 それを受けたデュエルは相棒のバスターのように首を吹っ飛ばされる事は無かったが、宇宙空間を縦回転しながら母艦であるガモフの甲板に叩きつけられた。

 

「どうしますか、隊長?」

 

「……撤退だ。あの新たなストライクの力、侮れば大きな代価を払う事になる」

 

「はぁ…はぁ……やった」

 

 転身して去っていくザフトの艦を見ながら、キラは小さく息をつく。

 

「僕は…少しでも強くなれたかな?」

 

 そう呟く彼の視線はアークエンジェルの居住区を捉えていた。

 

 

 

 

 キラの新たなファイトスタイルは連合軍にとって賛否両論だったが、彼らの意見にキラは取り合おうとしなかった。

 

「気に入らねえならテメエ等がやれよ。俺はちゃんとザフトの奴等をブチのめしたんだ、文句を言われる筋合いはねえ」

 

 以前とは別人レベルの彼の態度に艦長であるマリューやナタル、そして戦闘班の上司であるムウも呆気に取られて言葉が出なかった。

 

 それからもキラは強い男と定めた少年をなぞる様に、彼と同じような態度を取り続けた。

 

 もちろん、マリューたちに反抗するのは勇気がいった。

 

 カレッジの仲間たちが己の変わりように難色を示しても、それを貫くのは胃が痛む思いだった。

 

 それでもキラが我を通したのは、脳内の少年が残した言葉があったからだ。

 

『一度こうと決めたら、自分が選んだのなら、決して迷うな。迷いは、それが他者に伝染する。選んだら進め、進み続けろ』

 

 そう、自分はあの時に決めたのだ。

 

 強くなりたいと、弱い自分に反逆すると。

 

 全ては自分の弱さを、醜さを受け入れてくれた小さな女の子を守る為。

 

 ならば、他の道に目移りする暇はない。

 

 真っ直ぐに己の選んだ道を最速で駆け抜ける。

 

 キラはそれが選択するという事だと魂に刻んだ。

 

 それからのアークエンジェルの航路はトラブルが多く発生した。

 

 物資、とくに水不足を解消する為に地球連合軍に破壊されたコロニー『ユニウス7』で墓荒らし同然の行いを余儀なくされた。

 

 そこで水分の掘削作業に従事していたカレッジの学生が漂流していた脱出ポッドを拾えば、中から現れたのがプラント最高評議会議長の娘であり歌姫と称される敵側のVIP、ラクス・クラインだった。

 

 ラクスは連合の司令部へ連行される事となっていたが、いつの間にか仲良くなっていたトールとミリアリアの頼みでキラがザフトへ返した。

 

 その際に煮え切らないアスランが二、三発キラにぶん殴られたのだが、その辺は特に問題はない。

 

「ったく、何時までも親友ヅラしてんじゃねえってんだよ。テメエと俺は敵同士だろうが」

 

「……キラ、よしよし」

 

 一連の騒動から帰ってきたキラがミユのお腹に顔を埋めて愚痴っている姿を見るに、親友の態度がよほど腹に据えかねていたのだろう。

 

 避難民の中にはプラントの歌姫について知りたい者もいたが、荒々しさが増したキラに問いかける勇気は無かった。

 

 こうして紆余曲折を得て、アークエンジェルはクルーの古巣というべき連合宇宙軍第八艦隊へ合流することが出来た。

 

 第八艦隊の司令、ハルバートン提督はここでヘリオポリスの避難民をオーブへ帰還させる手続きと同時に、戦時判断で徴兵されたキラ達カレッジの学生組も連合軍から除隊させるつもりだった。

 

 軍事機密保持という理由はあれど、中立国であるオーブの国民を使い続けるのは流石に国際社会の眼が許さないと判断したためだ。

 

 もはや戦う目的がミユと避難民を護る事に移行していたキラは、迷うことなく除隊申請にサインした。

 

 トールやミリアリアなどのカレッジの仲間は、父親が殺された事でコーディネーターへの復讐心に取り付かれたフレイを放っておけないと除隊を拒否して連合軍に残った。

 

 キラはその選択を咎める事は無く、『せいぜいがんばりな』とアークエンジェルに乗り込む仲間たちを見送った。

 

 選択する事の重大さを知った彼は、友人達が如何なる道を選ぼうとそれを尊重したのだ。 

 

 しかし、運命はキラを戦場から逃そうとしなかった。

 

「ザフトの襲撃です! ローラシア級3! ナスカ級2! MS多数!!」

 

「なんだとっ!?」

 

 アークエンジェルが地球へ降下しようとしていた時、ザフト軍が襲撃を掛けてきたのだ。

 

「フラガ大尉! ストライクは出せんのか!?」

 

「無茶言わんでください! こんな滅茶苦茶な設定、普通の奴に使えるわけないですよ!!」

 

 通信越しのハルバートンに怒鳴り返すフラガ大尉。

 

 アークエンジェルの頼みの綱である彼でも、キラが特別にカスタマイズしたストライクの操縦は不可能だった。

 

「どうしますか?」

 

「……仕方あるまい。この一戦だけ、キラ・ヤマト君の助力を乞おう」

 

 避難民が乗るオーブ行きのシャトルに乗ろうとしていたキラだが、慌てて自分を止めた連合士官の言葉に不機嫌そうに舌打ちを漏らす。

 

「しゃあねえな。ミユちゃん、パパッと片付けてくるから待っててくれや」

 

「……ん、いってらっしゃい」

 

 ミユに見送られたキラはシャトルでメネラオスからアークエンジェルへ移ると、すぐにストライクに乗り込んだ。

 

「坊主! 右腕用の強化ナックルとラミネート装甲、注文通りに仕上げてやったぞ! 最後の仕事だ、しっかりやってこい!!」

 

「あいよ!」

 

 メカニックの責任者であるコジロー・マードックの言葉を背に発進するストライク。

 

 幸い、敵側のGは先の戦いで受けたダメージが大きかった為に出撃しているのはデュエルだけだった。

 

「面倒な真似しやがって! 片っ端からブチのめしてやるぜぇ!!」

 

 エールストライカーの推力と右の剛腕から繰り出される拳打の反動を利用して、次々にジンを殴り壊していくストライク。

 

 その様は、獲物を食い荒らす肉食獣のようだ。

 

「ストライクぅぅぅぅっ!!」

 

 しかし、そんなストライクにビームの雨が降り注ぐ。

 

「チッ!」

 

 直撃しそうな数発を右手のラミネート装甲で弾き、他の射撃を回避するキラ。 

 

 そんなストライクへ向けてイザークは吠えたてる。

 

「前に貴様は俺達の事が気に入らんと言ったな! その言葉、そっくりそのまま返してやる!! 俺は顔の傷と屈辱を刻み付けた貴様が生きている事が我慢ならん! その姿を見るだけでハラワタが煮えくり返る!!」

 

「そうかい! だったら意地を見せてみろ! そんでもって喧嘩だ! 喧嘩をやってやるぅあぁぁぁぁぁっ!!」

 

 ナックルによって前回よりも更に肥大した右腕を振りかぶって突進するストライク。

 

「素手の攻撃が貴様だけの専売特許と思うなよッ!!」

 

 その光景を見ながら、イザークが選んだのは手にした武器を投げ捨てる事だった。

 

 前回の敗北の後、イザークは屈辱を噛み締めながらストライクに勝つ方法を悩み続けた。

 

 交戦データを基にしたシミュレーターに籠り、戦術を幾つも組み立て、それをかたっぱしから試していく。

 

 しかし獣のように獰猛なストライクを仕留める事は一度も出来なかった。

 

 そうして思考錯誤を繰り返す中、イザークの頭に天啓が舞い降りた。

 

 それは『ガンダムファイターなら、己の拳で相手を真正面から撃ち砕け!!』というものだった。

 

 既存の戦い方ではあの黄金の牙を持つ獣は倒せない。

 

 ならば敢えて相手の土俵に立つのも手だ。

 

「貴様が黄金の拳なら! 俺は白銀の指ィィッ!!」

 

 そう結論付けたイザークは、ストライクとの交戦データを基にフェイズシフト装甲の白兵戦仕様を再現した。

            

 デュエルのエネルギーを一点に集中した事で白銀に光る掌こそがその証だ。

 

「シェルブリッド!」

 

「シャァイニング!」

 

 エールストライカーの精密な操作でグルグルと回転し、遠心力を拳に込めながら突撃するストライク。

 

 対するデュエルも白銀に光る左手を大きく振りかぶる。

 

「バァァァストォォォッ!!」

 

「フィンガァァァァッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――s.CRY.ed----------------

 

 




・CEに生まれた因果を呼び寄せるのに定評がある幼女

この時空でも生まれながらのニュータイプ。

けれど、陽蜂もクマも無いので無力な幼女。

先達がいないままに宇宙に出た所為で、無駄に肥大したNT能力を制御できずに妙な因果を呼び寄せてしまった。

この世界でも妹がいるお陰でとっても懐が深い。
 
この後、無事にオーブへ帰って父や兄と再会するも、同じく生還したキラに付きまとわれる事になる。

この世界の『由詑かなみ』枠ではない……はず。

・本来の道から斜め上に吹っ飛んだスーパーコーディ

ヘリオポリス崩壊から度重なるストレスによって精神が崩壊寸前のところを、幼女によって癒された。

それだけならよかったのだが、強くなりたいと思ったのが運の尽き。

その際に結ばれた縁が並行世界からトンデモない因果を引き寄せる事になる。

彼の魂に刻まれたのは拳一つで世界相手に意地を通す黄金の獣。

しかもアニメ版とマンガ版のダブルパンチである。

そんな獣の生きざまに脳を焼かれた彼は、本来の優しい少年から粗野な漢へと脱皮を始める。

同時に幼女への道ならぬ想いも抱き、虎視眈々と狙うように。

彼が想いを成就してロストグラウンドへ幼女を連れていくか、幼女の兄の怒りを買って人理焼却されるかは神のみぞ知る。

・ライバル枠に昇格した銀髪おかっぱ

度重なるストライクへの敗北から、妙な扉を開いてしまったザフトレッドの一角。

『輝く指』に関してはGジェネやら何やらで散々擦られているので割愛。

ここから額に赤い鉢巻を締め、MF方向に進化していくデュエルを愛機にストライクと拳を合わせる事になる。

そして最終回ではアズにゃんかパトリックをぶっ飛ばして、一話まるまる使ってどこぞのスーパーコーディとガチ喧嘩をするのだろう。 

・親友枠だったのに扱いが雑なズラ

イージスの中でずっとスタンバってました
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