幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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メリークリスマス。

少し遅れたけど、許してつかぁさい。


幼女とあいとゆうきのおとぎばなし -06

 国連決議から数日後、アメリカ政府を通じて国連へと豊芦原瑞穂国から文章が届いた。

 

 厳重にロックされたアタッシュケースの中に収められていたのは、10ページ程度の短い冊子だった。

 

 自分達の要求通りに秘匿技術を吐き出したと思っていた、各国の代表は薄っぺらい紙束に不満を露わにした。

 

 血の気の多い国々では、日本帝国やアメリカなど宇宙軍を持つ国に要請して威嚇攻撃をしろという案が国連議会で出たほどだ。

 

 しかし、それも専門家である科学者達が資料の内部精査を行うと一変した。

 

 そこに記されていた『ミノフスキー物理学』は既存の科学技術とは掛け離れた代物だったからだ。

 

 未知の物体であるミノフスキー粒子は静止質量がほとんどゼロで、正か負かいずれかの電化を持つ。

 

 さらには不可視のフィールドを形成する事が可能な素粒子だというのだ。

 

 彼の素粒子が作り出す領域は内部を伝播しようとする電磁波、マイクロ波から超長波に至るまでのほとんどの電磁波を著しく減衰させる。

 

 その為、レーダーなどの索敵装置や無線による誘導、さらには通信をほぼ不可能としてしまうのだという。

 

 また、ミノフスキー粒子は、粒子間に起こる電気力とT力によって、正と負の粒子が交互に整列する性質があるらしい。

 

 その際の粒子の並び方が綺麗な立方体を形成することから作り出す領域場は『立方格子フィールド』と呼ばれ、この立方格子フィールドは他の粒子や原子の動きを安定化させる作用がある。

 

 その作用は核融合炉の制御や飛行システムなどに応用が可能だと言うのだ。

 

 前述した電磁波の減衰は、ミノフスキー粒子の作り出す立方格子フィールドの持つ他の粒子や原子の動きを安定化させる作用によるものだ。

 

何故なら電磁波は『電子の波』で信号を送っているので、その『電子の波』が安定化されてしまえば減衰や遮断は避けられないからである。

 

 たった十枚の資料、しかしそこに記載された情報は途轍もないモノだった。

 

 もしこの『ミノフスキー粒子』が存在するのなら、素粒子物理学に終止符を打つと言っても過言ではないだろう。

 

 しかし、だからこそ学者達はミノフスキー粒子の存在を眉唾物と一笑にふした。

 

 今まで信じていた現実を根底から覆されれば、否定したくなるのが人間というものだ。

 

 たとえそれが自分達とは隔絶した科学力を持つ存在から提示された物でもだ。

 

 だが、そんな愚かな思考に囚われない者も地球にはいた。

 

 その一人が京都にある帝都大学が国連へ貸し出した研究室を根城にしている女性科学者、香月夕呼だった。

 

「ミノフスキー粒子か……。本当にそんな物が存在すると思う?」

 

「あるでしょうね。例の豊芦原瑞穂国からすれば、与太話を担ぎ出して私達を煙に巻く理由がないもの」

 

 親友である日本帝国軍人、神宮司まりもの問いかけに彼女はマグカップで湯気を立てるコーヒー片手に答える。

 

「それで、この技術って使えるものになりそうなの?」

 

「そこまでは分からないわ、この冊子に書かれているのは力学の基礎の基礎だもの。けど───」

 

「けど?」

 

「もし、実用化が可能なら世界は一変するでしょうね。他の粒子や原子の動きを安定化させるフィールドを形成できる粒子、これが本当なら光学兵器やバリア。さらには原子力に代わる次世代の反応炉なんかも可能でしょうし」

 

 自他共に認める天才である親友の言に、まりもは唖然とする。

 

 次世代の反応炉は分かるとしても光学兵器、即ちレーザーがBETAの専売特許ではなくなるというのだ。

 

 もしそれが実現すれば……いや、九州戦役で豊芦原の機体はそれを使用していたと噂で聞いた。

 

 つまり、人類が振るうことのできる新たな剣が目の前にあるという事だ。

 

「でも、本当にいいのかしら?」

 

「なにが?」

 

「それだけの技術を放出するなんて、豊芦原にも痛手でしょうに」

 

 そう呟くまりもの言葉を夕呼は鼻で笑う。

 

「多分痛くもかゆくも無いんでしょう。だから国連の馬鹿共の要請でホイホイ吐き出したのよ」

 

「えっ?」

 

「ねぇ、まりも。私達が未開の人間に蒸気機関を教えたとして、それで困る事があると思う?」

 

「思わないわ。だって、私達にとっては廃れた過去の技術……ちょっと待って!」

 

 夕呼の問いかけに応えていたまりもだが、途中でその表情を驚きへと変化させる。

 

「そうよ。きっと、このミノフスキー物理学は豊芦原にとっては古い技術なのよ。だからこそ公表に踏み切った。実際、九州戦役の際には通信やレーダーに障害は出ていないわ。それは彼等がミノフスキー物理学とは別の形で光学兵器を用い、巨大建造物を宙に浮かせていた証明。おそらく、あの浮島はもっと強力な手札を持っているはずよ」

 

「どこまで底なしなのよ、あそこは……」

 

「だからこそ人類がBETAに打ち勝つには、あのコロニーの技術が不可欠なのに……それを国連のクソ馬鹿共がっ!!」

 

 絶句するまりもをしり目に、突然怒りを噴火させた夕呼は手にしていた資料を机へ叩きつける。

 

「なにが『子供というのは怒鳴りつければ言う事を聞くもの』よ! たとえ責任者が子供でも、その側近がいるでしょうが!! あの子がもし帝国でいう皇帝と同じ立場だったらって、どうして考えられないの!! そんな人物に舐めた態度なんか取れば責任者が許しても部下が激発するし、そうなったら奴等の銃口はこっちに向く事くらい分かるでしょ!!」

 

「ゆ…夕呼……」  

 

 親友が見せるあまりの剣幕に引き気味にならざるを得ないまりも。

 

 そんな中、夕呼は自分の席に座り込んで片手で額を押さえる。

 

「……学術書なんて基礎と応用を合わせたら本1、2冊じゃすまないわ。モノによっては10000ページ超える事だってあるの。つまり、このペースだとミノフスキー物理学の全てがこちらへ開示されるには下手をすると100年はかかる。果たして、それまで人類が残ってるかしらね」

 

「えっ! じゃあ、豊芦原は……」

 

「この紙切れはこちらの言う事に従った体を見せた嫌がらせ、本気で技術の開示をする気はないってことよ。当然じゃない。助けようとした相手に『仲間にしてやるから持てる技術の全てを寄こせ』なんて言われて、誰が『はい、分かりました』っていうってのよ。とはいえ書かれている内容は難解だから凡人共にはコレでも理解できないでしょうけどね」

 

 唖然とするまりもに肩をすくめてみせると、夕呼は手にしていた資料を机の上に投げ捨てる。

 

「じゃあ、どうするの?」

 

「コッチの権限を使って日本政府を通して豊芦原とコンタクトをとるわ。あそこの技術は必ずオルタネイティヴ4計画の助けになる。こんなくだらない事で逃がす訳にはいかないのよ」

 

 こことは異なる歴史では『横浜の魔女』と呼ばれた女傑は、凄絶な表情と共に覚悟を吐き出すのだった。

 

 

 

 

 科学者達が天から与えられた情報に右往左往する中、旧中華人民共和国では異変が起こっていた。

 

 間引きの為に重慶ハイヴから湧き出るBETAを駆逐していた統一中華戦線の戦術機部隊が正体不明の敵と遭遇したのだ。

 

 ソレは突撃級の突進を片手で受け止めると強固な外殻を拳一つで叩き割り、要撃級を鋭く伸びた爪で八つ裂きにした。

 

 深紅に彩られた金属のような皮膚は戦車級の噛みつきはおろか光線級のレーザーも通さず、剛腕が示す膂力は要塞級を真正面から殴り殺す。

 

 唖然とする統一戦線の衛士達をしり目にBETAを殺戮し終えると、ソレは標的を彼等へ切り替えた。

 

 撤退しようとした数機は天へと吼えたソレが呼び寄せた雷に撃たれて消し炭となった。

 

逃げられないなら倒すしかないと覚悟を決めた衛士達は手にした火器から鉛弾を浴びせた。

 

 しかし36㎜突撃機関砲はもちろん、120㎜滑腔砲もソレの紅い外皮に傷一つ付けることができない。

 

 ミサイルコンテナを積んでいた一機が16基の全弾一斉射撃を行ったが、それもまったく歯が立たなかった。

 

 手も足も出ない事が分かった衛士達は己を待つ運命に恐怖して顔を歪めたが、彼等の絶望はまだ終わりではなかった。

 

 襲いかかったソレは頭部や下半身などを破壊して戦術機を擱座させると、胴体部のコックピットをこじ開けて衛士を引きずり出した。

 

 そして腹にある巨大な口で狂ったように悲鳴を上げる人間の上半身を食いちぎると、美味そうに咀嚼したのだ。

 

 もちろん、中華戦線の衛士達は仲間が戦場で食われるのを見るのは初めてではない。

 

 しかしあの時は戦術機の外殻と群がる戦車級に隠されて、人が食われる様を直視していなかった。

 

 さらに言えば、自分達を餌と見做されているなど今とは多くの事が違い過ぎていた。

 

 蛇に睨まれた蛙、獅子を前にした小鹿など、捕食者を前にした獲物の気分を否応なしに味わった彼等は一気にパニックになった。

 

 しかし如何に悲鳴を上げて悪あがきをしたところで、隔絶した戦力差が覆るわけがない。

 

 こうして彼等は全てソレの餌食となった。

 

 部下と同様に自身を守っていた鋼の巨人から引きずり出された部隊長は、食われる寸前にソレへこう吐き捨てた。

 

『……悪鬼』と。

 

 そう、そこで殺戮の限りを尽くしたのは要塞級に迫る巨体を持つ巨大な鬼だったのだ。

 

 鬼は戦場に動くモノがいなくなったのを確認すると、荒野となった中国大陸に吹く砂塵の中へ姿を消した。

 

 その後、この部隊の全滅はBETAによるものと処理されたが、彼等が遺した聞く者の身の毛もよだつ通信は軍内に一つの噂を作り出した。

 

 戦場には人食いの鬼が現れるという怪談めいた噂を。

 

 

 

 

【第二の人生】過酷な世界を生きる転生者を応援するスレ【地獄変】(3スレ目)

 

309 姉さま命

 

おーい! 誰かいるかー?

 

 

310 名無しの転生者

 

あ、姉さま命だ! 

 

 

311 名無しの転生者

 

このスレ屈指の生還者(リターニングマン)だ!

 

 

312 姉さま命 

 

その呼び名はヤメレ

 

 

313:名無しの転生者

 

だって、あの混沌すぎる世界を生き抜くとか普通出来んぞ 

 

 

314:名無しの転生者

 

ラスボスがアレだった時はマジで絶望だったし 

 

 

315:名無しの転生者

 

原作のラスボスだった喜び神(笑)Zなんかメじゃなかったよな

 

 

316:名無しの転生者

 

Z呼びはよせ 

 

クソコテ様に消されるぞ

 

 

317:姉さま命

 

私が生き残れたのは姉様の結んでくれた縁のお陰だよ

 

それが無かったらアレには勝てなかった

 

 

318:名無しの転生者

 

ですよね 

 

 

319:名無しの転生者

 

それで今日はどうしたんだ?

  

聖戦も終わってそっちは平和なんだろ

 

 

320:姉さま命

 

こん中にマブラヴに詳しい奴いるか? 

 

 

321:名無しの転生者

 

あれ?

 

姉さま命、履修してないの? 

 

 

322:姉さま命

 

私、前世も女の子

 

あれってエロゲじゃん

 

全年齢版も出てたらしいけど、グロいの無理だったから手を出してない

 

 

323:名無しの転生者

 

その割にはデモンベイン知ってたよな 

 

 

324:姉さま命

 

スパロボで知ったんだよ 

 

原作はやってない

 

だからマブラブもスパロボ経由でBETAってキモい敵が侵略してくるぐらいしか知らん

 

 

325:名無しの転生者

 

マブラブってスパロボ出てたっけ? 

 

 

326:名無しの転生者

 

昔のソシャゲでほんのちょっとな 

 

それで、マブラヴの事を知りたい理由はなんだ?

 

 

327:名無しの転生者

 

地球にBETAでも攻めてきたか? 

 

けど、姉さま命の世界ならまず負けないだろ

 

 

328:名無しの転生者

 

宇宙怪獣にも勝ったからな 

 

BETAに負ける要素がない 

 

 

329:姉さま命

 

実は姉様が並行世界からSOSを感じ取ったんだ

 

『タケルちゃんを助けて』ってさ

 

だから今、ゲートを通ってマブラヴらしき世界に来てる 

 

けど、キーワードのタケルちゃんが誰かも分からんしSOSが誰からかもさっぱりなのよ

 

 

330:名無しの転生者

 

まあ、マブラヴの事を知らんかったら分からんわな 

 

そのメッセージだと発信元は鑑純夏だろうな

 

でもってタケルちゃんは白銀武

 

マブラブの主人公とメインヒロインだ

 

 

329:姉さま命

 

鑑純夏に白銀武ねぇ

 

つまり、この二人を助けたらOKってこと?

 

 

330:名無しの転生者

 

待て、姉さま命 

 

お前のいる世界、今何年だ? 

 

 

331:姉さま命

 

今は……1998年の8月17日だね 

 

それがどうかした? 

 

 

332:名無しの転生者

 

という事は帝都が陥落して少ししたくらいか 

 

 

333:名無しの転生者

 

たしか武ちゃん達が住んでたのって横浜だよな

 

ギリギリセーフって事になるのか? 

 

 

334:姉さま命

 

帝都って日本の京都の事か?

 

陥落なんてしてないぞ

 

 

335:名無しの転生者

 

あれ? BETAの日本侵攻って1998年だよな

 

俺の知識間違ってる?

 

 

336:姉さま命

 

BETAの日本侵攻はあった

 

けど、私達が九州の時点で止めたもん

 

 

337:名無しの転生者

 

えぇ……

 

 

338:姉さま命

 

だって、こっちに着いたときには日本攻められてたんだよ? 

 

SOSで言われたの日本名だし、そりゃあ助けるでしょ

 

 

339:名無しの転生者

 

まぁなぁ

 

けど、そうだとしたら話はややこしくなるぞ

 

 

340:姉さま命

 

なにが?

 

その鑑純夏と白銀武を家族と一緒に安全な場所に保護すればいいだけでしょ?

 

 

341:名無しの転生者

 

横浜がBETAに滅ぼされてないとしたら、幼女にSOSを送ったのはその世界の鑑純夏じゃない可能性大なんだわ

 

 

342:姉さま命

 

……なんやて? 

 

 

 

 

 どうも、BETAの佐渡島侵攻予定日を間近にして、日々大わらわな幼女です。

 

 対BETAの戦いが迫る中、私達も微力ながらも対策を講じていたりする。

 

 まず、雷蝶夫人の部下さん達もコロニー市民になったので機体を用意した。

 

 白羽の矢を立てたのは百式改って機体をベースに黒塗りで、和風にカスタマイズした忍者風なMSで名を『百鬼丸』というらしい。

 

 彼等はそれを見て『雷蝶様の百士貴を輝かせる為の黒子のようだ』と評した。

 

 でも気に入らないという訳ではなく、『あの方をお支えする我々に、これほど相応しい機体はない』と頬を緩ませていたのにはホッとしたけど。

 

 部下の人達は雷蝶夫人ほど超人的ではないので、モビルトレースシステムは無し。

 

 コックピットは極力戦術機に近づけたけど、やっぱり思い通りに動かすとなると時間がかかるみたい。

 

 だから今は機種変更訓練に精を出している。

 

 他にもウォーケン少佐や島津司令官など、私達より長くBETAと戦ってきた人達から意見や感想を聞いた。

 

 次の……ううん、これからの戦いで何が必要かを確かめる為だ。

 

 私がこんな事をしようと思ったのは、寝る前にミウとBETAとの戦いをどうするか話をしたからだ。

 

 ミウが言うにはZ-BLUEは軍隊としてはあまりに異質らしい。

 

 一騎当千のスーパーロボットと最新鋭の機体に乗ったエースパイロットがゴロゴロいる部隊。

 

 Z-BLUEの一番有効的な使い方は、その力で一点突破して敵の中枢を叩くことだそうな。

 

 BETAとの戦いに例えるなら、オリジナルハイヴに殴り込みを掛けるって感じらしい。

 

 なので、私達が今までやってきたような『スーパーロボットでドッカン』して『アムロ大尉をはじめとするエースパイロット軍団で敵部隊をグチャグチャ』にして『最後はガンバスターやハロみたいな殲滅兵器でサヨナラっ!』という戦法は普通の軍隊にはできないのだ。

 

 そういう意見もあって、私も戦術という物を一から勉強するつもりで御用聞きをしたわけである。

 

 その結果、Gシステムのデータの中から色々と兵器を生み出すことになった。

 

 お陰で火星のアステロイドベルトや何やらから、資源にする為に小惑星や隕石を幾つも取りに行ったし。

 

 ハロにワープ航行機能があって本当に良かった。

 

 まあ、他にもコロニーを作ることになるだろうし、どちらにせよ資源は必要になるんだけどね。

 

 そんな訳で今日も今日とて日本帝国とアメリカに貸し出した演習場に来たわけなんだけど……

 

「あら、プリンセスだわ!」

 

「相変わらず、チョコチョコ歩いていて可愛いわね!」

 

「ほら! お菓子あるから食べていきなよ!」

 

「……んぉ?」

 

 こんな風に私が来たのを目ざとく見つけたアメリカ軍の女性士官さんに回収されてしまった。 

 

「今日はどうしたの?」  

 

「次は私が演習に出るから見ててよ! 肩にイルカのマーク付けたイーグル!」

 

「相変わらず髪質いいなぁ! ボリュームも多いから撫で心地いい!」

 

「うにゃあ!?」

 

 彼女達は軍生活で可愛いモノに飢えているみたいで私をよく捕獲するのだ。

 

 そして抱っこ、頬ずり、ほっぺにチューなど揉みくちゃである。

 

『コラー! ミーちゃんはネコでもぬいぐるみでもないんだよ!! 降ろしなさい!!』  

 

 ひーちゃんがこうして注意してくれないと、30分くらい解放してくれなかったりする。

 

 最初は遠慮して遠巻きに見てたのに、気が付いたら半分ペット扱いだよ!

 

 そういうのはレイお姉さんだけでお釣りが来るから!

 

 どうしてこうなった!?

 

「い…いいのか? 彼女はこの国の姫君なんだぞ」

 

 まあ、日本帝国の人達はこんな感じで結構遠慮がちなんだけどさ。

 

「ノー・プロブレム! プリンセスもスキンシップがある方がいいって言ってたもん。ね?」

 

「……ん」

 

「それでもやり過ぎですわ。少しは自重してくださいませ」

 

 なんとかアメリカンなお姉さま達へのサービスを終えると、今度は野太い声が掛かってきた。 

 

「よう、姫さん。この頃はよく顔を出すな」

 

 視線を上にあげれば日に焼けた小麦色の肌と右の眉の真ん中にある傷が特徴のおじさんが、男っぽい笑みを浮かべている。

 

 身長は2m程度、私が約二人分である。

 

「……ソンネンのおじちゃん、こんにちわ」

 

「おう!」

 

 そして頭にグローブみたいな手が置かれると少し乱暴に撫でられる。

 

 この人はデメジエール・ソンネンさん。

 

 アメリカ軍の少佐で、コロニー在留部隊の戦車乗りを纏めている。

 

「佐渡島のBETA侵攻が目前ですもの、私達も訓練は必要ですわ」

 

 ソンネンおじちゃんの問いにミウはそう答える。 

 

 ちなみに、我が妹は最初にこの人を見たとき随分と驚いていた。

 

 後で聞いた話だと、Gシステムのデータに並行世界の彼が載っていたんだってさ。

 

 なんでも宇宙世紀の1年戦争でジオン側で戦車に乗って戦っていたとか。

 

「こちらとしては、お前さん達が出る必要が無いようにしたいんだがな」

 

「ここで生み出した兵器は全て実戦経験ゼロですのよ。もしもの事を想えば出し惜しみはできませんわよ」

 

「そう心配しなさんなって。機種変更はキッチリ仕上げてある。61式もフェンリルもお呼びが掛かれば即舞台に上がれるさ」

 

「もちろん帝国軍も準備は万端だ。あんないい戦車を託されたんだ、乗りこなさないと罰が当たる」

 

 ソンネンのおじさんに言葉をつづけたのは帝国軍で戦車隊を率いている西住少佐。

 

 この人はソンネンのおじさんに比べて身長は小さいけど、そのゴツさでは引けを取らない。

 

 坊主頭に丸眼鏡も相まって絵本で読んだ柔道家って感じなイメージだ。

 

「お陰で部下たちには随分と血反吐を吐かせちまったけどな」

 

「ソンネン少佐のシゴキはキツそうでしたからね」

 

「何言ってやがる、コタロウだって大概だったじゃねえか。そっちの部下達はお前さんの事を『鬼だ』って愚痴ってたぜ」

 

 楽しそうに笑う二人の戦車乗りさん達。

 

 その声を聴いたのか、二人の軍人さんが歩み寄ってくる

 

「まったく笑い事じゃないですよ。少佐達は合同演習の時だって、本当にシャレにならなかったんですから」

 

「まあ、あれがあったからこそナイトメア・フレームを乗りこなせるようになったんですけどね」

 

 二人の話に混ざったのはゲイリー大尉と重野中尉。

 

 この二人は帝国・アメリカと所属の違いはあるけど、元々歩兵としてBETAと戦っていたらしい。

 

 島津司令が言うにはBETAは小型種でも能力は人間を大きく凌ぐそうで、戦場での歩兵の殉職率は高いんだって。

 

 だから私は考えたのだ。

 

 歩兵さん達がより安全に戦場に出て戦える装備はないかと。

 

 でもって、操縦の簡単さなどなどを考慮して白羽の矢が立ったのがキリコさん達が乗っていたATとカレンお姉さんの操るナイトメア・フレームだったのだ。

 

 最初はATを作ろうと思ったんだけどさ、スコープドックとかって『鉄の棺桶』って呼ばれていたらしいじゃん。

 

 さすがにそんなのに人様は乗せられないので、脱出機構が付いているナイトメア・フレームを採用することになった訳です。

 

 今のところ日本帝国とアメリカに渡しているのはサザーランドっていう機体。

 

 ランスロットや紅蓮は操縦難易度も癖ありありなので、ひーちゃん曰く初心者さんにはこの辺がいいんだってさ。

 

 多元世界では旧式に片足を踏み込んだ機体なので、そのまま作るような真似はしていない。

 

 フレームや装甲をガンダリウム合金製にしたり、動力をCE用MSのバッテリーを小型化したものにしたり、骨格や関節の強化に伴ってアサルトライフルの口径を戦車級を倒せる程度に大きくしたりと改良も行っている。

 

 そのおかげか歩兵の皆さんからは癖が無くて慣れると使いやすいって割と好評である。

 

「だったら声を枯らした甲斐があったってもんだ。お前さん達には俺等が大物食いするための露払いをしてもらうんだ。しっかり頼むぜ」

 

「分かってますって、少佐。その代わり、大一番にはド派手にブチかましてくださいよ」  

 

「そうそう。少佐達とフェンリルは戦術機から爪弾きにされた俺達にとって、希望の星なんですから」

 

 そう笑ってソンネンのおじさんとゲイリー大尉は拳を合わせ、西住少佐と重野中尉は笑いあう。 

 

 今はこうして仲良くしているけど、演習の最初の頃は戦車兵とナイトメア乗りは凄かったのだ。

 

 慣れない歩兵さんのナイトメア・フレームが戦車の横をフラフラ走っていたら、『なにやってんだ! 轢き潰されてえのか!!』って管制室で聞いているコッチまで竦みあがるような声でソンネンのおじさんや西住少佐は叫びまくってたもん。

 

 あの時は見学に来てた私も半泣きになってしまったもんだ。 

 

 さて、私達も訓練しようとシミュレーターへ足を向けた時だ。

 

 演習場内に警告音が鳴り響いた。

 

「どうした!?」

 

『───監視衛星からの入電だよ。地球のBETAに大規模な活動があったみたい』

 

 ソンネンのおじさんが上げた鋭い声にひーちゃんは壁に世界地図を投影する。

 

 そしてアップされたのは……どこだっけ?

 

「姉様、インド亜大陸ですわ」

 

「……ありがと」

 

 ううむ……地理は苦手にございます。

 

 それはともかく、動いたBETAはインドにあるボパールってハイヴのものらしい。

 

 数は九州を襲ったのと同程度、行先は───

 

「奴等、インドネシアに攻め入るつもりか」

 

「たしかあそこにはインドの臨時政府もあったよな?」

 

「インドからの難民も相当数いた筈だ」

 

 ひーちゃんの示す情報を見ながら口々に話す軍人さん達。

 

「おひいさま、どうするのかしら?」

 

 その様子を見ていると、警報を聞いて駆けつけたのだろう、部下のお兄さん達を引き連れた雷蝶夫人が問いを投げてきた。

 

「……たすけにいく」

 

『そうだね。今のインドとインドネシア連合軍に、あの規模のBETAを倒す術は無い。このままだとインドネシアは全滅の可能性は高いもん』 

 

 そういう事なら猶更だ。

 

 例のSOSって理由があったとはいえ、日本だけ助けて他の国を助けないのは不公平だからね。

 

 そんな訳でいざ出発と思ったんだけど、私の決定を聞いた軍人さん達がさらに騒がしくなった。

 

「ウォーケン、駐屯地にいるんだろ? 今ボパールハイヴのBETAに動きがあった。侵攻先はインドネシアだ。プリンセス達が援軍を出すそうだから、本国に連絡とって同行の許可をもらってくれ! あぁ? 理由は新兵器の実戦データの取得って事でいいだろ!!」

 

「島津司令、こちらもおひいさま達に同行したいと思います。何もせずに恩人だけを戦場へ放りだしては、帝国軍人の恥となりましょう!」

 

 どうやら、皆ついてくるつもりらしい。

 

「陽蜂、はるかぜの増設作業って済んでましたっけ?」

 

『うん。けど、両軍と武装を運ぶとなればもう一隻船が必要になるよね』

 

「あちらには避難船の役割もありますものね。───そういえば、あれは出来てますか?」

 

『ちょっと待って。……今、製造が完了したってさ』

 

 妹とひーちゃんの会話を聞いて、私はある事を思い出した。

 

 そういえば、これから必要になるからって、船を一つ造ってたっけ。

 

 そんな訳で私たち専用の造船ハンガーへ向かうと、そこには一隻の戦艦が鎮座していた。

 

「完璧……完璧ですわ、姉様!!」

 

「……ん。りっぱ」

 

 嬉しさを爆発させるミウの隣で、船を見上げた私は感想を呟く。

 

 鋼色と下部は赤く塗られた水上艦艇を思わせるデザインの船。

 

 全長は420mとヱクセリオン級に比べると小さいしデザインは古めかしいけど、聖戦で見た最新鋭の船に負けない迫力がある。

 

 これからはこの子がメインで使う艦になるのだ。

 

 『はるかぜ』はコロニーで造った兵器を地球へ運ぶことを考えて3kmに大きくしちゃったし、難民の保護船という事もあって前線には出し辛くなる。

 

 なので、第二の足が必要になったのだ。

 

 でもってミウにデザインを任せたわけなんだけど、随分とゴツいモノになっちゃったなぁ。

 

「……ふねのおなまえ、ミウがきめていい」

 

「よろしいんですか?」

 

「……ん。この子はミウのアイデア、だからミウがつけてあげて」

 

 私の言葉にミウは嬉しそうに笑う。

 

 そして高々とこう宣言したのだ。

 

「この船の名前はヤマト! 宇宙戦艦ヤマトですわっ!!」

 

 ヤマトか。

 

 うん、いい名前だと思う。

 

 このヤマト、ひーちゃんが言うには動力にバスターマシン用縮退炉が3基積んであるんだって。

 

 でもって、武装は大出力ビーム砲と直撃すればラー・カイラム級でも一撃で撃沈させられる高威力実弾の撃ち分けが可能な三連装主砲だ。

 

 副砲は主砲と同じく三連装の大口径レールガン。

 

 艦橋後部にある煙突式ミサイルポッドに、船体の後ろと最後尾に対艦ミサイルも完備。

 

 さらに艦前面にはヱクセリオンから受け継いだ光子魚雷、対空防御としてレーザーパルスビーム砲が各所に積んである。

 

 でもってミウ曰くヤマト目玉装備が艦首に備わった大口径バスタービーム砲。

 

 その威力は宇宙怪獣の軍団を薙ぎ払ったガンバスターの三倍である。

 

 高威力すぎて地球上のどこで使うのか疑問だけど、こっちの宇宙にも油断ならない敵がいるかもだ。

 

 備えはしておいたほうがいいだろう。

 

 ちなみにミウはこの装備を波動砲って呼んでたけど、何か拘りでもあるのかな?

 

 その後、日米両国から許可が降りた事で急ぎ兵器と人員の移動が始まった。

 

 私達と雷蝶夫人はヤマトに、そして他の人達ははるかぜだ。

 

『みーちゃん、ミウ。出港準備完了だよ』

 

「姉様、言わせていただきますわね」

 

「……ん。がんばって」

 

「では、ヤマト発進!」

 

 ミウの宣言に従って、ハロ達の操縦で豊芦原の港を発つヤマト。

 

 この世界にきて二度目の戦いだ。

 

 少しでも多くの人達を助けられるように頑張ろう!!

 

 

 

 

 幼女達が地球へと進路を取った頃、遥か宇宙のかなたではある存在が険しい表情を浮かべていた。

 

「よもや、別次元から彼奴等が現れるとはな」

 

 腕を組みながら苦々しい顔を隠そうとしないのは、黄金の体躯を持った偉丈夫。

 

 人が彼を見ればこう称するだろう。

 

 鬼神、と。

 

「これでは、あの工作機械を送り込んで芽を摘んだ意味がないではないか」

 

 左手に巻物を持ち、空いた方の手で顎髭を親指で擦りながらため息を出すのは猿の顔を持つ神だ。

 

「あの生き汚さこそが人類の……アレに選ばれた種族の為せる業よ」

 

 そんな猿神の言葉に呆れと侮蔑を表すのは蒼を基調にした鎧を着込み、兜と一体になった頭部を持つ武神。

 

「それでどうするのだ?」

 

「無論決まっている」

 

 錫杖を手にその身に蛇を絡ませた龍顔の神の問いかけに、鬼神は重々しく口を開く。

 

「ゲッター線は宇宙に在ってはならぬもの。我等の庭に現れたのならば、奴等がまだ未熟な内に刈り取るまでよ」

 

 宣言と共に宇宙の闇を睨みつける鬼神。

 

 その黄金の視線が示す先は地球のある方向だった。  




ゲッペラー様「通常兵器で倒せる敵なんて甘え! スーパーロボットと殴り合えるくらいに強くないと!!」(人類に進化を促すダンスを踊りながら)

鬼獣・紅が地球に現れました。

鬼獣・紅(新ゲッターロボでプロトゲッター(新の場合は全て戦闘用ゲッター)6体を相手に無双したイケメン。プロトタイプなら、ゲッタービームもトマホークにも耐える装甲を持つ)

鬼獣の発生に伴い、鬼も湧き出るようになりました。

マブラブ星人の生存難易度が跳ね上がりました。
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