幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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 お待たせしました。

 またしてもコッチが完成してしまいました。

 制作2時間って、どれだけ集中してるんだ私。

 次は剣キチを仕上げねば……


幼女、赤い変態に狙われる

 皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

 

 名無しの幼女あらためミユです。

 

 早速ですがインダストリアル7のテロ防止に間に合いませんでした。

 

 私達が現場に到着した時にはコロニーは相当な被害を受けており、下手人のネオ・ジオンは『ロンド・ベル』という地球連邦軍に追い払われた後。

 

 こうなったのもシン兄が私の受け入れ先を探す為に寄り道したのが原因なのは明白。

 

 私の所為で下手を打たせてしまうとはマジですまねぇ、兄貴ィ……

 

 まあ、受け入れ先探しと言った割に、そういった施設に一切寄らずに行く先々のコロニーを観光しまくった事に関しては、私のおなかもぷくポンになったので不問にしておこう。

 

 さて、今私達はネェル・アーガマというロンド・ベル隊の戦艦の中にいる。

 

 この艦にはシン兄の友人達が所属していたらしく、今はシン兄と旧交を温めている。

 

 しかしあのカミーユ・ビダンという人、私の直感センサーに超引っ掛かるのだ。

 

 インダストリアル7に着く前から存在を感じる事が出来たし。

 

 あの人もニュータイプというモノなのだろうか?

 

 ナイフみたいに尖ってるところもあるけど、繊細で優しいっていう人となりを見るに悪い人じゃなさそうだけど。

 

 他にも気になる人はチラホラといる。

 

 ファ・ユイリィにカツ・コバヤシ、あとはバナージ・リンクスか。

 

 前の二人はそうでもないけど、バナージさんは存在感が大きめ。

 

 まあ、それでもカミーユさんにはかなわないけどね。

 

 未だに慣れないクマさんヘルメットを取るのに四苦八苦していると、後ろから手伝ってくれる人がいた。

 

 視線を向けるとそこに立っていたのは眼鏡を掛けた20代の美人さんと、鼻の辺りに傷がある黒髪ロングの陰のあるイケメンだった。 

 

「……ありがと」

 

「どういたしまして。あなたもザフトの人間……なわけがないわよね」

 

「何言ってんですか、スズネ先生。この子、下手したら幼稚園児ですよ」

 

 苦笑いするスズネと呼ばれたお姉さんに呆れるロン毛のお兄さん。

 

 随分と仲がいいなぁと思っていると、二人は自己紹介をしてくれた。

 

「はじめまして。私は西条涼音、見習いだけど学校の先生をしているわ」

 

「俺はヒビキ・カミシロ。高校生でジェニオンのパイロットだ」 

 

「……ミユ」

 

 高校生や学校の先生が何故に軍の精鋭部隊で戦っているのかは謎だが、人間誰しも事情というモノがあるのだろう。

 

 私だってクマさんや出自という探られると痛い腹を持っているのだ。

 

 興味本位で問いただすのは無粋というものだ。

 

「しかし凄いな、このロボット」

 

「本当に可愛いわよねぇ」

 

「……クマさん」

 

 どうやらこの二人はクマさんに興味があって見に来たようだ。

 

 確かに戦闘用ロボットとしてはファンキーなデザインをしているからね。

 

 この船の人達もけっこう見物していったし。

 

 何人かは『もしかして元はアッガイなのか!?』と言っていたが、アッガイというのはどんな物なのだろうか?

 

 興味が湧いたので時間があったら調べてみよう。

 

 軍隊にしてはアットホームな雰囲気なので向こうもこっちも会話が弾んでいるのだが、生憎と長居はしていられない。

 

 何故ならこの艦はネオ・ジオンに追われているらしいのだ。

 

 シン兄もその辺は弁えていて挨拶だけしたら出るといっていたのだが……そこはツッコむべきではないだろう。

 

 せっかくの友人との再会なのだ、私だって野暮な事はしたくないしね。

 

 さて、そんなことを言っていると直感センサーに引っ掛かるモノがあった。

 

 この船の左上……ハサウェイ・ノアとクェス・パラヤ……えっと困ってる?

 

「……スズネせんせ」

 

「なにかしら、ミユちゃん?」

 

「……クェスとハサウェイがこまってる。ふねのうえ……」

 

 天井を指さしながらそう言うと、スズネ先生は分からないといった感じで首を傾げた。

 

 まあ、こんな説明じゃ分からないよね。

 

 クマさんで助けに行ってもいいんだけど、私が行ったら最悪こっちが迷子になりかねない。

 

 ここまでの道中にシン兄から教えを受けていても、まだまだクマさん初心者は抜け出ていないのだ。

 

 どう説明したものか困っていると艦内放送が流れてきた。

 

『全クルーに通達。本艦の直上に小型艦を確認。念のため各員は配置に就き、非常事態に備えて下さい』

 

 よかった、船の方もキャッチしてくれたらしい。

 

 困っている人がいるのが分かってて見捨てるのは、正直言っていい気分がしないしね。

 

「凄いわねミユちゃん。どうしてわかったの?」

 

「……かん」

 

「勘って、第六感とかそういうモノなのか? もしかして超能力者とか……」

 

 驚きながらも頭を撫でてくれる涼音先生にドヤっと胸を張っておく。

 

 あとヒビキさんは穿ち過ぎです。

 

 これもニュータイプのちょっとした応用なのだ! ってごめんなさい、テキトウ言いました。

 

 

 

 

「どうだ、カミーユ?」 

 

 新メンバーであるジェニオンのパイロットコンビと話すミユを見ながら、シンはカミーユに問いかける。

 

「あの子がニュータイプなのは間違いないだろう。今も俺が感知できなかった船を感じ取ったみたいだしな」

 

 親友からミユの裏の事情も教えられたカミーユは、ポヤッと虚空を見ている幼女を見て溜息を吐いた。

 

「正直な感想を言わせてもらえば、ミユをどこかに預けるのは反対だ。あの子の力は強すぎるうえに、それを制御する方法が分かっていない。あれではネオ・ジオンや連邦のニュータイプ研究所の格好の餌食になるぞ」

 

 高くニュータイプとして覚醒している者は優秀なパイロットになりやすい。

 

 実に嫌な事実だが、それはカミーユ自身も認めざるを得ない事だ。

 

 しかも今まで会って来たニュータイプの中でも最高クラスの力を持つ彼女は親友の妹のクローンだという。 

 

 万が一何処かの組織に捕らえられたとして、その事が発覚したならば彼女にどんな悲惨な未来が待っているかなど想像もしたくない。

 

「そうだよな。やっぱりミユは俺が護らなくちゃ」

 

 気合を入れ直す親友を見ながら、カミーユはほんの少しだけ不安を感じた。

 

 こちらが言っている事は間違いないはずなんだが、何故か妙なスイッチを入れたような気がするのだ。

 

「………シン、早まるなよ」

 

「なにがだよ?」 

 

「いや、忘れてくれ」

 

 自分でも何を言っているのかと思いながら軽く頭を振るカミーユ。

 

 彼の感じた不安が杞憂に終わるかどうかは神のみぞ知るだろう。

 

 

 

 

 戦場のクマさんことミユです。

 

 シン兄共々大ポカをやらかしました。

 

 私が感じ取った事故で遭難した民間シャトルも無事に救出され、そろそろお暇しようとクマさんに乗って宇宙空間に出たのですが、間が悪い事にネオ・ジオンが襲ってきました。

 

 それもこれもシャトルから出てきたクェスとかいうハイテンションガールが、私をぬいぐるみよろしく抱っこしまくったのが原因である。

 

 お蔭でハサウェイ君の方が陰の薄いモブ顏くらいしか分からなかったじゃないか!

 

 つーか、クェス嬢は『こんなに小さいのに分かってるなんてスゴイ!』と連呼していたが、いったい何が分かっているのだろうか?

 

 自分が言うのも何だが、言葉を尽くしたコミュニケーションを捨てたら人間おしまいだと思うの。

 

 さて、この世界に来て何度目か分からない現実逃避は止めにしようか。

 

 現在、こちらに向かって赤いロボットがもの凄い速度で突っ込んできています。

 

 まあ、それは別にいいんだよ。

 

 早いって言ってもシン兄がマジになったのと同じくらいだし。

 

 私じゃ動きが分かってても反応が追っつかないからどうしようもないしね。

 

 問題はあの機体から流れてくるイメージなんですよ。

 

 なんなの、全裸! 仮面! 赤い彗星ってさ!?

 

 しかも事あるごとにもっさりした金髪のイケメンだけどちょっと太めのおっさんの顔がチラつくし!

 

 もしかしてあのおっさんもすっぽんぽんでロボット動かしてるのか!?

 

 ああいうのは幼女の特権であって、おっさんがやったら事案確定だからね!

 

『ほう、これほどの力を持つ者がいようとは。是非とも私に協力してもらいたいものだ』

 

「……ヒッ!?」 

 

 ヤバい、ロックオンされた!

 

 通信じゃなくて脳に直接語り掛けるとか、どれだけ変態のレベルが高いんだ!?

 

 ここは一刻も早く保護者にヘルプコールをしなければ!

 

『どうしたんだ、ミユ!』

 

 私は震える手で、こちらを守る様にデスティニーを配置しているシン兄に通信を繋いだ。

 

「……はだかんぼのへんたいかめんが、みゆをねらってる。たすけて」

 

 幼女ボディ初の長文だが、これでもまだ奴の危険性を説くには足りない。

 

 頼む、私のニュータイプ能力よ! 変態の人相をみんなに伝えてくれ!!

 

 

 

 

「……はだかんぼのへんたいかめんが、みゆをねらってる。たすけて」

 

 涙目になりながら通信で助けを求めてきた妹分。

 

 聞き捨てならないながらもどこか要領の得ないセリフに思わず首を傾げた瞬間、シンの脳裏に強烈なビジョンが浮かび上がった。

 

『ほう、これほどの力を持つ者がいようとは。是非とも私に協力してもらいたいものだ』

 

 そんなセリフと共に悪趣味な仮面を付けたオッサンがMSを全裸で操縦しながら、ニヤリと笑みを浮かべるという代物だった。

 

 その姿はまごう事なき変態。

 

 奴はいったい自分の妹にどんな『協力』をさせようというのか!? 

 

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 そこまで考えた瞬間、シンは我を忘れるほどに激怒した。

 

 先ほどのカミーユからの忠告もあって、ロリコン疑惑まで追加した変態を抹殺せねばと決意した。

 

 頭が沸騰しそうな怒りによって自分の中を隔てていた何かが壊れ、次の瞬間には種が弾けるように全ての感覚がクリアになる。

 

 今ならデスティニーの性能を余すことなく引き出すことができる!

 

 灼熱の憤怒の中でも冷静な部分がそう判断すると同時に、シンはスロットルを全開にした。

 

 背後に広げた光の翼を羽ばたかせると、デスティニーは矢のような速度で赤い機体へと襲い掛かる。

 

「むっ、速い!」

 

「ミユに近寄るな、この変態野郎ぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 減速など一切考えずにレーザー対艦刀『アロンダイト』を振り下ろすデスティニー。

 

 これにはさすがの赤い機体も回避は間に合わず、咄嗟に盾でガードしたものの右後方へと一気に吹っ飛ばされてしまう。

 

「さすがは次元世界最強と言われた部隊の一翼を担う者か……チィっ!?」

 

 AMBACで体勢を整えた赤い機体だが、次の瞬間にはビームや実弾、さらには次元力弾といった多種多様な攻撃が彼に襲い掛かる。

 

 寸でのところで回避に成功したものの、それらは全てロンド・ベルの機体から放たれており、込められた軽蔑・嫌悪といった感情に赤い機体『シナンジュ』を駆るフル・フロンタルは戸惑いを隠し切れなかった。

 

 畏怖や怒り・憎悪ならば戦場でいくらでも味わった事がある。

 

 だが今向けられたモノは生ゴミの上を蠢くゴキブリを見たかのような軽蔑や嫌悪だ。

 

 赤い彗星に足り得る器として生きてきた彼にとって、それらは馴染みの無い感情だった。

 

 そもそも何故ここまで嫌悪されるのかが分からない。

 

「どういう事だ? 総帥の代わりを務めているとはいえ、私は彼等とは初対面のはずだぞ」

 

 コクピットの中で思わず首を捻るフル・フロンタルだが、分からないのは当然である。

 

 類稀なる共感能力で自分の事を感じ取ったミユが色々と歪曲してイメージを受け取った結果、露出狂のド変態としてロンド・ベルのメンバーに強烈なイメージを植え付けたなど、神ならぬ彼が見抜けるわけがない。

 

 あと彼の名誉の為に言っておくが、パイロットスーツを着ない事はあってもフロンタルは全裸でモビルスーツを操縦する趣味はない。

 

 しかし現実と言うのは残酷である。

 

 ミユが植え付けたイメージの強烈さから───

 

「全砲門開け! あの幼女趣味の変態野郎をクマに近づけるな!」 

 

「了解。奴の薄汚い≪ピー≫を使い物にならなくしてやりましょう」

 

 軍人としては気弱ながらも常識的な大人であるオットー艦長は義憤によって勇猛さを発揮し、普段は冷静な副長のレイアム・ボーリンネアも女性の敵を排除する為に敵意を剥き出しにしている。

 

「ヒビキ君、絶対にミユちゃんに近づけちゃダメよ!」

 

「わかってますよ。あんな社会の汚物は跡形もなく消滅させてやりますよ!」

 

 ジェニオンを駆るヒビキ・カミシロは持てる技術の全てを使って次元力から生成されるエネルギー弾を連射。

 

「ファ! カツ! いいわね!!」

 

「はい! あんな小さな子を狙うなんて許せない!!」

 

「赤い彗星を気取ってるクセになんて変態なんだ!」

 

 エマを始めとするエゥーゴ出身組はガンダムMKⅡ、メタス、リゼルの砲身が焼き付けと言わんばかりにトリガーを引く。

 

「やれやれ、トンだ変態だ。こいつはガンダムパイロットじゃなくてスイーパーの仕事だぜ」

 

「奴の趣味がどうであれ、破壊する事に変わりはない」

 

 ヒイロ・ユイとデュオ・マックスウェルは紫紺に塗られたリーオーのビームライフルで的確にフロンタルを狙い撃ちにし、

 

「クワトロ大尉! あなたは何やってんです!?」

 

 最後にカミーユは怒りのままにリゼルのビームランチャーを発射する。   

 

 精鋭部隊の集中攻撃をここまで受けて、未だに直撃一つ無いのはフロンタルが赤い彗星の再来に相応しい腕を持つが故だ。

 

 だがしかし、その攻撃の苛烈さは彼をネェル・アーガマから遠ざけていた。

 

「新たなガンダムの姿を確かめようにもこれではな……」

 

 そう呟くフロンタルを赤い高出力ビームが襲う。

 

 紙一重で躱せば、間を置かずに咬み付いてくるのはシナンジュの推進力をも上回る速度で迫るデスティニーだ。

 

「チィ……! しつこいぞ、ザフトのガンダム!」

 

「アンタは俺が墜とすんだ! 今日、ここで!!」

 

 全速力で放たれる大剣の刺突にシールドを吹き飛ばされながらも、フロンタルは距離を取ろうとスロットルを吹かせる。

 

 同時に牽制としてビームライフルを数発放つが、その悉くをデスティニーは回避してみせる。

 

 想定を上回る性能を示すデスティニーにフロンタルが舌打ちを漏らした瞬間、横薙ぎに振り抜かれたアロンダイトのレーザー刃は回避行動に移っていたシナンジュの右足首を斬り飛ばした。

 

「冗談ではない! ───この感覚はっ!?」

 

 『箱』の鍵となるガンダムを見る前に機体を損傷させてしまった事に歯噛みするフロンタルだが、悪い時には悪い事が重なる者である。

 

 馴染みがあるプレッシャーを感じた瞬間、ビームサーベルを抜こうとしていた右腕が黄色の一射によって撃ち抜かれたのだ。

 

「アムロ・レイ……やってくれる!」

 

「落ち着け、シン。何があったかは知らないが、戦場で冷静さを無くしたら死ぬことになるぞ!」

 

「アムロさん!」

 

 飛行形態のリ・ガズィでシナンジュへ向けてビームキャノンを放ちながら、アムロは殺気に溢れていたシンへ忠告を放つ。

 

 アムロが現れては単独での突破は無理と判断したフロンタルは、アンジェロ・ザウパーが率いる親衛隊と合流しようとする。

 

 しかし─── 

 

「すみません、大佐! 後退します!」

 

 フロンタルの耳を叩いたのは、そのアンジェロの沈んだ声だった。

 

「何があった?」

 

「クマにしてやられました……」

 

「なんだと?」

 

 まさかあのふざけたMSに親衛隊が全滅させられたというのか?

 

 馬鹿なと思って視線を巡らせれば、レーダーに映っていた僚機が次々に作戦空域外へと撤退しているではないか。

 

 真偽はどうであれ、こうなっては作戦は失敗である。

 

「やれやれ……これではハマーンの嘲笑は免れんな」

 

 そう言い残すとフル・フロンタルはデスティニーの追撃がない事に安心しながら宙域から姿を消すのだった。

 

 

 

 ……ヘルプを求めたシン兄は変態を連れて何処かへ行ってしまった。

 

 それはいいんだが、後ろから現れたザクモドキはどうしたらいいのやら。

 

 クマさんのキュートな姿に見惚れてコッチを見逃してくれる……

 

『あのふざけたモビルスーツも捕獲対象だ。大佐が奴等を引き付けている間に回収するぞ』

 

 ……ワケないよねぇ。

 

 助けを求めたいけど、あの赤い変態の動きが速すぎてロンド・ベルの人達は手一杯って感じだ。

 

 まあ最初にヘルプコールを掛けたのはコッチなんだから、自衛くらいはするべきだろう。

 

 そんなワケで覚悟を決めた私は、ザクモドキ達を相手する事に決めた。

 

 敵は5匹もいるが、なに怖れる事は無い。

 

 奴には一度勝っているし、私だって一週間前のようなクマさんド素人ではないのだ。

 

「……よし」

 

 気合を入れた私はすすめのアクセルを踏みながら十字パッドの上を押し込む。

 

 するとリボンから火を噴きながら加速するクマさん。

 

 此処までの旅路でクマさんがデスティニーについて行けるくらい速いのは知っている。

 

 そんなワケで食らえ! 助走を付けてのくまぱーん……あ。

 

 一人目にくまぱんちを決めようとした私だが、目測を誤って頭からサクモドキへとツッコんでしまった。

 

 ドゴムッと小気味いい衝撃がコクピットに伝わると、頭突きを食らった形の一匹はやはり手足がバラバラになりながら吹っ飛んでいく。

 

『トーマス!?』

 

『奴め、見た目と違って狂暴だぞ!』

 

『落ち着け! 接近戦が危険なら遠距離から撃ち落とせばいい!!』

 

 赤紫の趣味の悪いザクモドキの指示によって、他のサクモドキがバンバンビームを撃ってくる。

 

 一週間前は2匹だったから躱せたけど、今回は四匹いるうえに赤紫が妙に上手い!

 

 その所為で何発かクマさんに当たってる!?

 

「……くまさん、だいじょうぶ?」

 

 問いかけてみると「クマの装甲は『ナノ・ラミネートコート』並の耐ビーム性を持っているから大丈夫」との返事が返ってきた。

 

 ナノなんたらコートというのは何なのだろうか?

 

 それとメッセージが全部ひらがなで出るの、何とかならないかなぁ。

 

 とにかくビームの効果は薄くても食らい続けるのはヤバい事に変わりない。

 

 というか、銃を撃たれてるという事実でちびりそうだから勘弁してほしい。

 

「……なんとかしないと」

 

 こうなったら禁じ手である「くまびーむ」を撃つしかないか。

 

 ……いや、撃つとなんか何もかもが無に還るような気がして仕方がない。

 

 それよりもビームが効かないのなら無視して突っ込む方が確実だろう。

 

 なにせクマさんの攻撃をくらえば相手は一撃で壊れるんだし。 

 

 私は恐怖に震える本心を抑え込みながらペダルを踏み込んでいく。

 

 加速するクマさん、迫る光弾、そしてそれに先立って見える敵意。

 

 集中力が増せば増す程、相手の動きが見えていく。

 

 それは今の動きだけじゃない。

 

 一瞬先、二瞬先に相手が行うであろう行動すらも手に取る様に分かっていく。

 

 なので、奴等が張った弾幕は拍子抜けするほどアッサリと潜り抜ける事が出来た。

 

『くそっ! なんて機動だ!?』 

 

 焦る一体の懐に飛び込むと、同時に銃を叩き壊すと同時に───

 

「くまぱーんち」

 

 くまさんの拳が首元に入ったソイツは胸の装甲を大きく陥没させると共に、吹っ飛んだ首を追うかのように縦回転しながら宇宙の闇へ消えていく。

 

 そしてすかさず焦りの感情を見せる二匹目にも───

 

「くまぱーんち」

 

 パンチを食らった左肩を胴体に埋め込ませた奴は、激突した三体目共々手足をまき散らしながら吹き飛んでいった。

 

『おのれぇ、道化の分際でぇ!?』

 

 残る赤紫は例のビームの斧を手に突っ込んでくるが、生憎とその動きも読んでいる。

 

 得物を振り上げた瞬間に奴の足元へ飛び込んだ私は、頭に浮かんだイメージのままに『くまぱんち』ボタンを押す。

 

「じげんはおーりゅー、そうてんぐれんけーん」

 

 宇宙というステージを利用した足元から伸びあがるジャンピングアッパー。

 

『ぐわああああああああっ!?』

 

 それは赤紫の股間を見事に捉え、両足と腰の部分をバラバラにしながら奴を宇宙の彼方へと吹き飛ばした。

 

 ふわふわと浮かぶクマさんの体勢を整え、周囲にもう敵はいない事を確認した私は深々と息を吐いた。

 

 まさか拳一つでなんとかなるとは、人間為せば成るとはこの事だろうか。

 

 ところで『じげんはおーりゅー』ってなんなんだ?

 

 そんな疑問はさて置き、とりあえずは船に戻る事にしよう。

 

 此処だけの話、ちょっぴりチビっちゃったからお股が気持ち悪いのだ。

 

 そうして船に向けてペダルを踏もうとした瞬間、私の直感アンテナに反応があった。

 

 アムロ・レイ…連邦の白い流星…機械いじりが好き…優しい大人…鬼畜天パ。

 

 ふむ、今回も悪い人じゃあなさそうだ。

 

 ところで『鬼畜天パ』ってなんなんだろう?

 




本日の被害者

全裸大佐 ロンド・ベル隊からド変態扱いされる。

大佐大好き 幼女のラッキーパンチが股間を直撃。

逆シャアの地雷娘 幼女を妹にしようと虎視眈々と狙っている。

シスコン シスコン魂で『針』を抜いて種割れ覚醒。
     三回行動おじさんが知ったら憤死する所業。

赤い彗星 最も期待を寄せる後輩から熱い風評被害を受ける。

連邦の白い流星 幼女に鬼畜天パ呼ばわりされた。

ノア家のドラ息子 影が薄い。

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