幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話 作:アキ山
幼女「……かみさま、かみさま」(因果みゅんみゅん因果みゅんみゅん。守護神ガチャSSRを祈願中)
甲児「光子力エネルギーが戻った! ゼウス、貴方の意思は俺が受け継ぐからな!!」
クソコテ「ゼウスって誰だぁ?」
何処とも知れない宇宙空間の中、私とクマさんは紫の暴君ことジェミニアと対峙していた。
息苦しくなるほどの威圧に抗ってファイティングポーズを取ると、ジェミニアもそれに応えるように両手に剣を構える。
肌を刺すような緊張感の中、先手を取ったのはジェミニアだった。
背面のブースターから緑のエネルギーを放出させて襲い来る巨体を前に、私はクマさんの右腕に『くませいばー』を展開する。
加速の勢いを乗せて振るわれる右の袈裟斬りに『くませいばー』を合わせようとすると、相手は寸前でそれを止めて左の胴薙ぎを放ってくる。
先日の敗北で嫌というほど幻惑されたフェイントだが、そう何度も引っ掛かるほど私はマヌケじゃない。
それを読んでいた私は左の『くまぱんち』で迫り来る刃を跳ね上げると、そのまま相手との距離をさらに詰める。
クマさんの解析によるとジェミニアの武器は両手のエネルギー発射機関と剣だけだという。
つまり、こちらの拳が届くほどの超接近戦は得意ではないという事だ。
だからこそ私はそこに勝機を見出した。
初手を弾いて相手の懐に飛び込み、身体がくっつくくらいの超接近戦で『くまぱんち』を連打する。
これこそが某ボクシング漫画の主人公を参考に考案した『風神くまぱんち戦法』だ。
「くまぱーん───」
先ずは一発と右手を引いた瞬間、後頭部に衝撃を受けた事で私とクマさんは勢いのまま一回転して倒れ込んでしまう。
慌てて体勢を立て直そうとする私の目に映ったのは、こちらを串刺しにすべくと剣を振り上げるジェミニアの姿だった。
◆
クマさんと一緒に敗北を知ったミユです。
先日戦った酔っ払いことガドライトのおじさんは本当に強かった。
相手から感じた殺気を元に動いても、攻撃の軌道を変えられたりフェイントだったりで防御も回避も出来ない。
むこうが言うには『コマンドアーツ』って武術の応用らしいんだけど、直感が行動の起点になっている私にとっては相性が悪すぎる。
それに加えてジェミニアの力も凄くて、クマさんも真正面から当たり負けしてしまった。
『くまびーむ』が使えたら一矢報いる事ができたかもだけど、今となっては負け犬ならぬ負けクマの遠吠えだ。
そんな強敵を退けてくれた甲児お兄さんと『かみさま』には感謝しかない。
『ざんねん! みゆちゃんのまけだよ!』
クマさんスーツのシールドグラスに映ったメッセージに私は深くため息を吐いた。
そう、先ほどのジェミニアはクマさんが戦闘記録から組み上げたシミュレーターなのだ。
「……なんでまけた?」
『みゆちゃんがぱんちするよりはやく、あいてのちょっぷをくらったんだ』
リプレイ映像を見ると、懐に飛び込まれた時点でジェミニアは右の剣を捨てていた。
そして引き絞ったクマさんの右手が放たれる前に、打ち下ろしの手刀がおっきな後頭部を襲ったというワケだ。
これで10戦10敗……クマさんの操縦にも慣れてきたので一度くらいは白星を挙げられると思っていたのに……無念。
『みゆちゃんはつよくなってるよ! あきらめずにかんばれ!!』
「……ありがと」
クマさんの声援を背にコクピットを後にした私は、マクロス・クォーターの格納庫で大きく伸びをした。
我ながら不思議なのだが、私はジェミニアにリベンジしたいと考えている。
普通ならあれだけコテンパンにやられたら二度と戦いたくないと思うはずなのに、私の心の中で燻るナニカがそれを許さない。
自分でもらしくないと思うけれど、このくやしさは理屈じゃないのだ。
こんな私を見て葵さんは『可愛い見た目してるのに、君も私達みたいに熱いモノをもってるんだね』って笑っていた。
その笑顔を見て即座に『いかく』のポーズを取った私は悪くない。
そのあと、悪ノリしたジョニーさんが『このクマもノヴァ・ベアーに名前を変えますか』と言っていたが当然却下である。
小動物な私が『チームD』に編入なんてされたら、あっという間に骨になってしまう。
そもそもクマさんをどうやってダンクーガと合体させるというのか。
エイーダさんは『抱っこすればいいんです』って言ってたけど、それだと戦えないじゃん。
そんな事を考えながら歩いていると、居並ぶロボットの中にマジンガーZの姿が見えてくる。
「……かみさま、ありがと」
その前で足を止めた私は柏手を打ってマジンガーZに感謝の気持ちを捧げる。
彼は私と甲児お兄さんの命の恩人だ。
お礼を言うのは当然の事だろう。
祈りを終えてマジンガーを見上げると、鉄の仮面を思わせる顔に笑みが浮かんでいるように見えた。
今日も彼は上機嫌のようで私も嬉しい。
日課の操縦訓練を終えた私は、ある人の姿がない事を確認してサロンの椅子に腰かけた。
「C.C.がいなくてホッとした?」
楽しそうに笑みを浮かべるカレンお姉さんの言葉に私はプイッと顔を背ける。
C.C.さんは『チームD』と違った意味で苦手な人だ。
ガドライト戦の後に行われたお説教大会でも私が逃げられないように『チームD』の面々で取り囲んだ挙句、説教の間ずっとほっぺたをむにむに引っ張っていたのだ。
ただでさえオットー艦長、ジェフリー艦長、カレンお姉さん、シン兄の四人に怒られているのに、こんな事をされてはお説教に集中など出来るわけがない。
おのれ……
お説教の後に『少しは反省したか、小娘』と笑っていたので『C.C.オババさま』と呼んだら、さらに10分むにむにされた。
おのれぇ…………
「しっかし、あの時は本当に笑ったわ。アイツをオババ様呼ばわりするの君くらいだよ」
そう言いながら頭を撫でてくるカレンお姉さんに私はコクリと頷いて見せた。
あの人の暴虐を思えばそれくらいは当然の酬いである。
ホイホイ弄べるほど幼女のほっぺは安くないのだ。
というかあの人がほっぺをいじくる所為で、この頃はレイさんも会う度に私の頬をツンツンしてくるんだぞ。
シンジさんが謝ってくれなかったら代金でチョコレートを要求しているところだよ、まったく。
さて、私達は東京付近に次元振動で出現した別世界を調査すべく移動している。
タケルさんが言うには現在この世界の次元境界線は比較的安定しているけど、シンジさん達の世界のように時おりコッチへ別次元の世界の一部が転移してくる事があるそうだ。
うん、何を言ってるのか分からないって?
大丈夫、私にもわかってないから。
要するに地震みたいにちょくちょく次元振動が起きて、それを切っ掛けに別次元の一部がこっちへ迷い込んで来るって事だろう。
それで、現れた世界や人々が地球にとって害悪でないかを調べるのが今回の任務というワケ。
しっかし新しい世界との出会いかぁ……。
不謹慎かもしれないけど、そういうのってワクワクするよね。
そんな事を考えていると艦内放送が鳴り響いた。
『全艦に告ぐ。転移してきた新たなエリアで戦闘が確認された。各クルーは所定の位置に就き、不測の事態に対処せよ』
何という事だろう、これでは未知との遭遇が台無しである。
早急に戦闘行為を終わらせて、ファーストコンタクトをやりなおそうと格納庫へと足を向けようとしたところ───
「どこにいくの、君はこっち」
カレンお姉さんにワシッと頭を掴まれた。
うぬぬ……いい機会だから修行の成果を見せようと思ったのに。
「もう一回、葵達とC.C.を呼ぼうか?」
「……や!」
私の天敵達を使うとは卑怯なり!
こうなっては仕方がない。
今回は大人しく待機しておくことにしよう。
私はトボトボとブリッジへと向かう道へ足を踏み出した。
◆
「ぐあああっ!?」
獣を思わせる四足歩行形態になったアブダクターの指揮官機ミスラ・グニスに、人型へ変形したマクロス・クォーターの対艦重ビームが突き刺さる。
その機動兵器とは比べ物にならない一撃は、赤い装甲を砕きながら特機と同等の大きさを持つミスラ・グニスを吹き飛ばした。
「クソッタレ! なんで躱せねぇ!?」
アルテア界からこの世界へ侵攻を行っていた部隊の現場指揮官カグラは、不可解な出来事に噛み締めた歯を軋ませていた。
周りをブンブン飛び回ってクモ型の無人機であるロー・グニスを墜としている飛行機や機動兵器の攻撃ならまだしも、ミスラ・グニスは明らかに鈍重な母艦の攻撃が躱し切れない。
飛躍的に運動性と機動力が上がる獣化形態を使っても、まるでこちらの動きを先読みしているかのように回避運動を取った先に相手の砲撃が置いてあるのだ。
「あり得ねぇ……俺があんなデカブツに負けるなんてあってたまるかよぉぉぉぉっ! トゥララララララぁぁぁぁっ!!」
カグラの怒りの咆哮と共に再び獣となったミスラ・グニスは宙を蹴って駆けだした。
「気を付けろ! 指揮官機がまた突っ込んで来るぞ!!」
「そう何度も抜かれてたまるかってね!」
マクロス・クォーターの防備を務めていたクランとミシェルが迎撃に当たるが、カグラは野生の獣さながらの直感と動きで二人の防御をすり抜ける。
「雑魚が! テメェ等の相手はデカブツをぶっ潰した後にしてやるよ!!」
自身の後方へと置き去りにした青と赤のコンビへ捨て台詞を残して、愛機をさらに加速させるカグラ。
あとはクォーターの喉笛を噛み千切るだけと前を向いた瞬間、彼の背筋は凍り付いた。
彼の目の前には砲身を展開し、馬鹿げたエネルギーを溜め込んだデカブツの銃口が待ち構えていたからだ。
「マクロスキャノン、ブチかませェェェェッ!!」
「往生しやがれぇぇぇぇぇぇっ!!」
ジェフリーの指示を受けて、普段のお姉キャラからは想像のつかない悪鬼の形相でトリガーを引く操舵手のボビー・マルゴ大尉。
「う…うわあああああああああっ!?」
放たれた重量子の嵐に巻き込まれたミスラ・グニスは嵐に舞う木の葉のように海へと吹き飛ばされた。
◆
マクロス・クォーターのブリッジでマスコット兼レーダーをしているミユです。
「……ひっと」
「やったね、ミユちゃん! また命中よ!!」
敵指揮官機が吹き飛ぶ光景に索敵担当のモニカさんが私に抱き着いて頭を撫でてくれる。
全弾命中は我ながら出来すぎだと思います。
「しかしここまでの精度とはな。どうやって奴の動きを予測したのかね?」
「……かん。けものはこころにまっすぐ。よみやすい」
そう、あのパイロットから感じたのは獣の匂いだった。
葵さん達のようなイメージじゃなくてまんま獣、獣臭い。
というか、イメージで悪臭がしたのはガドライト以来なんだけど、これってどういう基準なのかなぁ?
「喜んでる場合じゃないわよモニカ。あの野獣、まだ懲りてないわ」
航空機管制のキャサリンさんに言われて席に着くモニカさん。
レーダーを見ると敵指揮官機のマークはたしかに残っている。
予想以上のタフさだなぁと思っていると、後方のかなり離れた距離から嫌な気配を感じた。
「……ジェフリかんちょ、うしろからてき」
「なんだと……モニカ君!」
「後方約1キロに熱源反応! これは……機械獣です!!」
表示されたモニターに現れたのは巨大なギリシャ神話に出てくる石像や、人間と動物の合いの子みたいな悪趣味なロボット達。
そして指揮官機の上に立っている人影を見た瞬間、私は思わず息を呑んでしまった。
身体の右半分は女性で左半分は男性という奇抜さももちろんだけど、あんな姿になった悲哀や何かの使命感などがごちゃ混ぜになった思念が強烈だったからだ。
「……とりすたん、いぞるで」
あしゅら男爵と名乗る一組の夫婦の成れの果ての本来の名を口の中で転がしていると、誰かの視線を感じた。
うつむいていた顔を上げれば、視線の主であるあしゅら男爵はまるで嘲るような笑みを浮かべていた。
「それがお前達が用意した奴等への切り札か。一つ目の覚醒に成功した事で二つ目の条件を解放しようとしているようだが、果たしてうまく行くかな?」
「どういう意味だ、あしゅら男爵!」
「さてな。これが分からぬのなら貴様が真実には程遠い場所にいるという事だ、兜甲児!」
指揮官機に挑むマジンガーに対して嘲りの笑みを浮かべるあしゅら男爵。
あの人はいったい何を言っているのだろうか?
その後宇宙魔王という侵略者の軍団も参戦して目まぐるしく戦局が変わる中、事態が大きく動いたのは何処からともなく飛んできた三機のマシンが合体してアクエリオンというロボになった時だった。
「……ひゃっ!」
合体の瞬間、私の直感センサーに引っ掛かったのは強烈な快感だった。
「どうしたの、ミユちゃん?」
「……なんでもない」
変な声を上げてしまったせいでキャシーさんに気遣われたけど、さすがに恥ずかしくて本当の事は言えなかった。
あ、誤解の内容に言っておくと気持ちいいって言うのはエッチィ意味じゃないから。
上手く説明できないけど、言うなれば水が交じり合うように男の人と女の人が繋がって、お互いを理解しあえる喜びっていうのかな。
そういう思念が流れてきたんだよね。
その後は余韻でポケーっとしている間に戦闘は終了。
最後はアクエリオンがクォーターを狙っていた獣ロボをジャンピングアッパーで吹っ飛ばして締めでした。
戦闘が終わった後、興味があったのでキャシーさんに『ロボットで合体するのは気持ちがいいのか?』と聞こうとしたのだが、ここでも幼女変換が炸裂した。
「……がったいするの、きもちいい?」
この質問にブリッジにいた人全員が目を丸くし、私はキャシーさんから淑女とは何たるかという説教を受ける事になってしまった。
……理不尽である。
現時点における幼女好感度
だいすき
ブライトかんちょ、シンにぃ
すき
甲児にいちゃん、赤木のおにいちゃん、タケルさん、かみさま、アムロたいい
ちょっとすき
オットーかんちょ、カレンおねえさん、21世紀警備保障のみんな、郁恵さん、メランのおじさん
ふつう
その他のロンド・ベルメンバー
いかく
C.C.おばあちゃん、チームDのみんな