幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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幼女を取り巻く温かい環境

クソコテ「ツバつーけた! 俺のモン!!」

クマさん「進化! 進化! 進化!!」

某アンチさん「進化の果てに宇宙を滅ぼすおぞましき二本足、ド許せぬ! 宇宙防衛術・逆螺旋の構え!!」

全裸「私の協力者になってくれないかな? (*´Д`)」

あしゅら「悪い事は言わん、星間都市山脈オリュンポスに来なさい」

プレイヤー「さあ、機械獣を覚醒させるんだ。そして一匹だけ残して他を倒したら、くまびーむで初号機を吹き飛ばすんだよ(無限ループ)」

保護者、全員悪人



幼女、疑われる

 どうも。

 

 Z-BLUEのお姉様がたによる『ミユちゃんおしゃれ期間』が終わってホッとしているミユです。

 

 女の子だからおしゃれしなさいって理屈は分かるんだけど、クマさんスーツを着ている時に感じる産まれた場所に戻ってきたような安心感は格別なのだ。

 

 なので、普段から着用するのも仕方がないと理解してもらえると幼女としては助かります。

 

「そんじゃ、改めてみんなにも紹介するぜ。エレメントのユノハ・スルールだ!」

 

「よ……よろしくお願いします」

 

 さて、クォーターのラウンジでは新しく入ったというエレメントの紹介がされている。

 

 アンディさんの言葉に続いて緑のぬいぐるみを抱きながら頭を下げる茶色いふわふわ髪の小柄なお姉さん。

 

 ユノハさんというらしいんだけど、彼女の出す気配というか思念には覚えがある。

 

「……はずかしいのひと」

 

「ふぇっ!?」

 

 私がそう言うとユノハお姉さんはビクリと肩を震わせた。

 

「ミユ、知ってるのか?」

 

「……すがたはみえないけど、はずかしいってきもちはずっとしてた」

 

「考えを知られていたなんて、は……恥ずかしい」

 

 シン兄の問いにそう答えると、顔を真っ赤にしたユノハお姉さんの姿が徐々に薄れていく。

 

「透けてる!」

 

「おい、彼女大丈夫なのか!? 彼女の身体、ドンドン薄くなってるぞ!」

 

 突然の事に驚くクランお姉さんとアルトさんにアマタさんが苦笑いを浮かべる。

 

「えっと……これがユノハのエレメント能力なんだ。羞恥心を感じると自分の身体を透明化させてしまうんだって」

 

 なるほど、だから思念は感じても姿は見えなかったのか。

 

 いつもいつも部屋の隅から『恥ずかしい』って聞こえてたから、幽霊でもいるのかと内心ビビッてたんだ。

 

「私、学園生活に馴染めなくて……それで消えてしまいたいって…思っていたんです」

 

 姿を元に戻したユノハお姉さんはところどころ詰まりながら自分の思いを吐露し始める。

 

 エレメントってモロイさんを筆頭に個性的なメンバーが多いから、引っ込み思案な人はさぞや辛かっただろう。

 

「でもシンジ君の頑張る姿を見て、私も変わらなくちゃって思って……」

 

「え…僕……ですか?」

 

 そう言いながらシンジさんの方を見てほほ笑むユノハお姉さん。

 

 当のシンジさんはいきなり水を向けられて焦ってた。

 

「はい。シンジ君の頑張る姿は私に勇気をくれました。だから……」

 

「───あの時頑張れたのは僕の力じゃないですよ。僕の事を信じてくれたZ-BLUEのみんなや励ましてくれたミコノさん、それに逃げていいって言ってくれたミユちゃんがいたからです」

 

「ミユ、そんな事を言ったのか?」

 

「……いってない。でも、かんがえがもれちゃった」  

 

 アルトさんの問いかけに私は首を振って否定する。

 

 この思念駄々洩れ問題に関しては割と本気で何とかしないといけない。

 

 これの所為でいつか痛い目に遭うような気がするんだよねぇ……。 

 

「ミユちゃんはどうしてそんな事を思ったんだ?」

 

「……そげきならミシェルさんやクルツさんがいる。じゅうもリモコンでうてるようにできる。シンジさんがやるひつようない。……あのさくせん、ネルフがじぶんのてでしとをたおしたいから、しにかけたシンジさんをひっぱりだしたとおもったから」

 

 シン兄の問いに私がそう返すと、集まっていた皆が渋い顔になってしまった。

 

 もしかしてこれって邪推だったりするのかな?

 

「あ~……あの時は時間が無かったのと場の雰囲気で気にしなかったけど、言われてみれば素人のシンジに任せるのはおかしいよな」

 

「いいんです、桂さん。僕はあの作戦に参加した事を後悔してません。だって、あそこで逃げなかったから僕は自分の事が少しだけ好きになれたから」

 

「そうか。お前がそう言うのなら、俺は何も言わないよ」 

  

 シンジさんの吹っ切れたような笑みに桂さんが引き下がるの見て、私は内心胸を撫で下ろした。

 

 ポロッと出した意見であそこまで空気が険悪になるとは思わなかったよ……

 

 シンジさん、場を納めてくれて本当にありがとう。

 

「けど、ミユってばボーッとしてる風に見えて実は色んなこと考えてるのねー」

 

「確かにな。年の割に頭も回るようだし、前の戦いではあしゅら男爵から勧誘まで受けていたようじゃないか。───お前、いったい何者だ?」 

 

 感心するゼシカさんの後でカイエンさんが、またしても面倒な爆弾を放り込んでくる。

 

 ぶっちゃけ、それに関しては私が一番知りたいんですが…… 

 

「どういう意味だ、カイエン。お前、ミユの事を疑ってるのか?」

 

「以前この娘はマジンガーZの事を神と呼び、その声を甲児へと伝えていた。マジンガーはミケーネ文明の遺産を基に建造されたロボットだ。その声を聴ける娘がミケーネ由来の機械獣を強化して、さらにそれを扱う幹部から勧誘されたのだ。疑うなという方が無理だろう」

 

 なるほど、話としてはちゃんと筋が通っている。

 

 今までの『かみさま』絡みの事や先の機械獣の覚醒を考えれば、私がトリスタンとイゾルデのように古代ミケーネ人の生き残りだと言っても全然違和感が無いもんなぁ。

 

 思い返せば幼女ボディの身元を記していたのはクマさんの中にあった身上書だけだし……私って本当にマユ・アスカのクローンなのか?

 

 なんか妙なモノが混じってたりしてないよね……

 

「───くだらないな」

 

 またしても重くなった空気にラウンジの皆が黙る中、深い深いため息と一緒にシン兄はカイエンさんの疑惑を切って捨てる。

 

 必死に冷静を装ってるけど、身体がからにじみ出てるオーラは半端ない!

 

 ウチのお兄ちゃんキレる寸前だよ!?

 

「なんだと?」

 

「ミユは俺の妹以外の何者でもない。それが納得いかないって言うのなら船を降りて聖天使学園へ帰れ。仲間を信じられない奴なんてZ-BLUEには不要だ」

 

 薄暗い室内で触れれば斬れるような赤い眼光と共にカイエンさんへそう言い放つと、シン兄は足早にラウンジを出て行ってしまった。

 

 私の為に怒ってくれるのは嬉しいけど、これはあまりよろしくない。

 

 カイエンさんもアクエリオンに乗るエレメントの一人だ。

 

 戦場に出れば背中を預ける事だってあるだろう。

 

 だったら人間関係は良好にしておかないと。

 

「……あやしくてごめんなさい」

 

 私はカイエンさんに頭を下げると、そのままシン兄を追ってラウンジを出た。

 

 正直色々と言いたい事や伝えないといけない事はあるけれど、幼女ボディではこれが精いっぱいだ。

 

 それにシン兄のケアも必要だし。

 

 カミーユさんから家族の事は逆鱗だって聞いてるから、ばっちり甘えて癒しを提供しておかないと。

 

 

 

 

 シンとミユが立ち去ったラウンジには重苦しい雰囲気が漂っていた。

 

 その中で最初に口を開いたのはワッ太だった。

 

「なあ、カイエンの兄ちゃん。なんでミユにあんな事言ったんだよ?」

 

「理由はすでに告げた。敵の手先の可能性がある人間を隊の中に置いておくなど愚行以外の何物でもない」

 

「カイエンさん、それはおかしいですよ」

 

 目を閉じてそう返すカイエンに待ったをかけたのはワッ太の隣にいる正太郎だ。

 

「何がだ?」

 

「僕もミユちゃんが古代ミケーネ文明に関わりがある可能性は否定しません。ですが、それだけであしゅら男爵の手先だと言うのは暴論です」

 

「あの娘は前の戦いで機械獣を強化した。それが何よりの証拠だろう」

 

「それじゃあ順序が逆ですよ。あしゅら男爵はミユちゃんに機械獣を覚醒させる力があるから勧誘したんです。それに通信で聞いた当時のミユちゃんの反応からして、あの現象は彼女が意図したモノとは思えません。仮に彼女が向こうの手先だとすれば、直衛に配置された時点で初号機を狙わないのはおかしいでしょう」 

 

 流暢に持論を重ねる正太郎にムスッとした顔で口を閉ざすカイエン。

 

 その様子を見た桂木桂はテーブルに頬杖を突きながら溜息を吐く

 

「そもそも、何でおまえさんはあのお嬢ちゃんにキツく当たるんだ? ヤシマ作戦の前は普通だったじゃないか」

 

「身元もわからん人間が部隊にいる事が不安だと思うのはおかしいか?」

 

「おいおい、次元漂流者にそれを言っちゃあダメだろう」

 

「どうだかな。その設定自体も怪しいものだ」

 

 そう吐き捨てながら桂達から顔を背けるカイエン。

 

 先ほどとは別の居心地の悪い空気が漂う中、席を立ちあがってカイエンの元へ行く者がいた。

 

 彼の妹のミコノ・スズシロだ。

 

「カイエン。私ね、こっちに来て言われた事があるの。『エレメント能力も無いのに何でここにいるんだ? 役に立たないから元居た場所に帰れ』って」

 

「なんだと!? 誰がそんな事を言ったんだ!!」

 

 突然の妹からの告白に、さっきまでの態度を忘れて激昂するカイエン。

 

 しかしそんな彼を待っていたのは見た事がない程に冷たい妹の視線だった。

 

「……今のはウソ。でも、どうしてカイエンは怒ってるの? これって今さっきシンさんやミユちゃんにあなたがした事と同じだよ」

 

「……ッ!? それとこれとは話が違うだろう!」 

 

「何が違うの? ミユちゃんが怪しいのが事実だって言うなら、私が役立たずなのも事実じゃない」

 

 苦し紛れに吐き出した言葉も、ミコノの凍えるような言葉の前に敢えなく消し去られる。

 

「確かにミユちゃんの不思議な力を怪しんでる人もいるよ。でも、それを子供のミユちゃんに面と向かって言うなんて、それがどれ程デリカシーのない事かも分からないの?」

 

「……ッ」

 

 カイエンは喉まで出かかった言葉を呑み込んだ。

 

 自分に自信が持てずに引っ込み思案なミコノがここまで我を露わにするという事は本気で怒っている証拠だ。

 

 ここまで怒ってる妹を見るのはカイエンでも数える程しかない。

 

「カイエン。あなたもエレメントなら自分の力を制御できない子を見て来たでしょ。ミユちゃんだってそうなのに、それをあげつらってスパイ扱いするなんて───」

 

「そこまでだ、ミコノ」

 

 反論しないカイエンに怒りが溜まって来たのか、徐々に声を荒らげ始めたミコノの追及を止めたのは同じエレメントのシュレードだ。

 

「シュレードさん……」

 

「それ以上言ってはいけない。家族といえど言葉で絆が断ち切れてしまう事もある」 

 

「はい……」

 

 シュレードに諭され、頭が冷えたミコノは顔を俯かせる。

 

「………」

 

「すまないが、少し親友を借りていくよ」

 

 バツが悪そうにミコノから目を背けるカイエンの肩を抱いて、ラウンジを後にするシュレード。

 

 シンと静まり返った空気の中、『ミコノさんって怒らせると怖いんだ……』というアマタの声だけが虚しく響いた。

 

 ラウンジを出てしばらく歩いたシュレードは、周りに気配がない事を確認して俯いているカイエンに声を掛ける。

 

「親友、また見てしまったのか?」 

 

「……ああ」

 

 確信が込められた問いかけにカイエンは苦虫を噛み潰したような顔でうなずいた。

 

『絶望予知』

 

 これこそがカイエン・スズシロの持つエレメント能力だ。

 

 『絶望予知』は名前の通り絶望的な内容の未来を予知するというモノだが、任意で発動する事は出来ないうえに内容は抽象的。

 

 さらには変える事が出来るかも不明という非常に使い勝手が悪いものである。

 

 彼がミコノを戦闘から遠ざけようとしているのはこれが大きな理由だった。

 

「何を見たんだ?」

 

「ミユが……あの娘が打ち砕かれ全滅した俺達を無感情に見下ろしていた」

 

「彼女が俺達を倒したという事か?」

 

「わからん。だが、ビジョンには複数のパターンがあった。最初に見た時は奴の背後に恐ろしい魔神の影が立っていた。他にも巨大な魔獣や数多の邪神など、奴が引きつれているモノは違っていたが……」

 

「破滅のビジョンは変わらないという訳だな。……事情はわかった。だが今回の事はやり過ぎだ」

 

「わかっている。俺も予知の影響で焦り過ぎていた」

 

 カイエンがああ言ったのは皆がいる前で揺さぶりを掛ければ、少しはボロを出すんじゃないかという考えからだった。

 

 だが結果はこの有様だ。

 

 ある程度自分の評価が下がるのは覚悟していたが、まさかミコノが本気で怒るなど計算違いもいいところだ。

 

「事情は分かった。彼女については俺も気に掛けておこう」 

 

「頼む」

 

「その代わり、今後はこんな事はなしにしてくれ。彼女が何もしていない以上、疑いを掛けたところでお前の評判が落ちるだけだ」

 

「……ああ」

 

 生返事に近い声と共にシュレードに背を向けるカイエン。

 

 彼はそのまま自室に戻ると、固く握りしめた拳を自分の額へ叩きつける。

 

「いつもいつも……このクソ能力がッ! もう少し具体的な情報を寄こしやがれ!!」

 

 

 

 

 あの騒動から二日が経った夜、私は東京のお台場をネェル・アーガマのブリッジから眺めている。

 

 なんでも宗介さん達が所属する傭兵組織ミスリルを襲撃したテロリストが、カリーニンという彼等の上官を人質にしてこの場所を占拠したらしい。

 

 しかも犯人であるテロ組織『A―21』は、カレンお姉さんが新日本解放の為に所属していた『黒の騎士団』の下部組織だったというのだから世間は狭いと言うべきか。

 

 『A―21』や傭兵が駆るASにマリーメイア軍のモビルスーツ、そして五飛さんのガンダムがお台場を占拠し、それを迎え撃つためにZ-BLUEのロボット達も出撃している。

 

 私は前回の件もあって出撃は許可されなかった。

 

 これは仕方がない事だろう。

 

「ひだりのASはうえからとりつこうとするけど、それはおとり。ほんとはみぎからふねのそこをねらってる」

 

「艦長、ミユちゃんの言う通りです! 右側のビルを盾にしてASらしき熱源が本艦に移動しています!」

 

「よし! 左の敵は対空機関砲で牽制! 右に誘導ミサイルを叩き込め!!」

 

 先ほどから戦闘にかこつけてお台場の街を破壊しているテロリストのAS達。

 

 私には彼等の考えが分からない。

 

 直感センサーにはちゃんと彼等の想いは伝わってきている。  

 

 軍の採用試験に落ちた。

 

 民間軍事会社は書類選考で撥ねられた。

 

 警備会社に入っても仕事にやりがいを感じられずに辞めた。

 

 学校の話題についていけない。

 

 授業を受けても勉強が分からない。

 

 常に狙われていないか、気を張ってしまう。

 

 自分の今いる場所が場違いにしか感じられない。

 

 レジスタンスでは小隊長を任された。

 

 軍では部下が10人単位でいた。

 

 戦場では馬鹿みたいに高価な兵器を操ってたのに、平和になったらコンビニや駐車場で客に怒鳴られながら頭を下げる自分がいる。

 

 俺の居場所はここじゃない。

 

 僕の居場所はここじゃない。

 

 私の居場所はここじゃない。

 

 ワシの居場所はこんなところじゃない!

 

 彼等の心の声には悲痛があった。

 

 嘆きがあった。

 

 憤りがあった。

 

 失望があった。

 

 そして自分達を受け入れない平和への憎悪があった。

 

 けれど、そんな声達は私の心に届かない。

 

 命懸けで勝ち取った平和をそんな事くらいで捨ててしまえる彼等があまりに理解できないからだ。

 

 『そんな事くらい』と部外者が言うほど、彼等の苦悩は軽くは無いだろう。 

 

 当然だ。

 

 どれだけ言葉を凝らしても彼等の苦しみは彼等にしか分からないのだから。

 

 けれど、それは平和や祖国の解放を求めて散って逝った仲間達が納得するに足る理由なのだろうか?

 

 仮に彼等の活動が成功し二つの日本や世界が再び戦乱に落ちたとして、彼等は仲間の墓の前で胸を張って自分の行いを報告できるのか?

 

 もし私が彼等の立場なら口が裂けても言えないと思う。

 

 例えばZ-BLUEのみんなと戦って地球に平和を取り戻した後、『自分が社会に上手く馴染めなかったから、みんなが命を懸けて築き上げた平和を壊しました』なんてどんな顔で言えばいい?

 

 そんな報告するくらいならビルから身を投げた方が百倍マシだ。

 

「アイツ等の事を理解しようとしているのならやめておけ」

 

 不意に掛かってきた声に私は思わず肩を震わせてしまった。

 

 視線を向ければ艦長席でオットー艦長が苦い顔でこちらを見ている。

 

「どうして分かったか不思議か? そんなところで百面相されれば嫌でも気づくさ」

 

 なんと私は無意識の内に思っていたことが顔に出ていたようだ。

 

 恥ずかしくて自分のほっぺをむにむにしていると、そんな私を見てオットー艦長は小さくため息を吐いた。

 

「……あのひとたち、みんないきづらいっていってる。じぶんのいばしょがないって。へいわのためにたたかっていたのに、むくわれないって」

 

「報われない、か。ずいぶんと甘えたセリフじゃないか」

 

「え?」

 

 そう吐き捨てるオットー艦長に私は思わず聞き返してしまう。

 

「マリーメイアの蜂起の後、私もADWの退役兵やレジスタンスに対する政府の対応を調べてみた。負傷者への義肢や生体再生手術の医療補助。自立の目途が立つまでの生活保護に職業や就業支援まで。個人としては十分な保障がなされていたよ」

 

 驚いた。

 

 政府はそこまで手厚い対応を取っていたのか。

 

「凄いですね。普通の退役軍人より優遇されてるんじゃないですか?」

 

「その辺はドーリアン外務次官とナナリー代表が積極的に働きかけたらしい。政府の都合でADW側は軍縮するのだからとな」

 

 なるほど。

 

 正直なところ宇宙で軍縮云々の話を聞いた時は『全ての元凶じゃん!』なんて悪いイメージを持っていたけど、その分の保障はしっかりやってたんだ。

 

 勝手なイメージで失礼な事を思ってしまった。

 

 これは要反省である。

 

「旧世紀のベトナム戦争や一年戦争の例にあるように、戦場からの帰還兵というヤツは社会に馴染みにくい。長い期間殺し殺されの生活に浸っていたから戦場の癖が抜けんからだ」

 

 一年戦争はUCW世界の元となった宇宙世紀で起きた、ネオジオンの原型であるジオン公国と地球連邦政府の宇宙と地球を舞台にした戦争の事だ。

 

「その前例があるからこそ保障やケアには政府も気を配っていた。実戦経験のある兵士がテロリストになっては政府も堪らんからな」

 

「ですが彼等はテロリストに堕ちてしまった。社会が自分達を受け入れなかったという名分で」

 

「そんなモノは甘えだよ、副長。勉強が分からない? 仕事が分からない? 当たり前だ、一を聞いて十を理解するほど有能なら兵士になんてならんよ。それに勉強なら教師に分かるまで聞けばいいし、仕事なんてモノは最初は上からバカ扱いされながら覚えるもんだ」

 

「たしかに私も通信兵研修の時はこれでもかって罵倒されました。今思えばあの時の教官怖さや悔しさで勉強したから憶えれたんですよね」

 

「俺も俺も。レーダーを読み間違えた時に食らった教官の拳骨がメチャクチャ痛くて、二度と食らうもんかって猛勉強したわ」

 

 ミヒロお姉さんの言葉にレーダーを見ていた男性士官が同意する。

 

「社会に出れば客には丁寧に対応するのは当たり前だし、自分に非が無くても頭を下げなきゃならん事だってある。その程度で世間が自分を受け入れないなど、ふざけてるにも程がある」

 

 私はバイトの経験は無いから分からないけど、世の中ってそんなに厳しいんだ…… 

 

「奴等は自分達は平和の為に戦った英雄だからもっと優遇しろとでも言いたいんだろうが、そんな寝言が通る程世の中は甘くない! 何より許せんのはそんな下らん与太話の為に年端もいかん子供を戦場へ引っ張り出しとる事だ!!」

 

 言っている内に自分の言葉で頭に血が昇ったのだろう、艦長はモニターに映る赤く塗られた巨大ASを指さした。

 

 カレンお姉さんからの情報だと、あのASには13歳の男の子が乗っているらしい。

 

「……私は一年戦争でア・バオア・クーの戦争に参加していた。当時はまだまだケツの青い新米で、サラミス級の一隻で通信兵をしていたよ」 

 

 深く息を吐くとオットー艦長は官帽を被り直して語り始めた。

 

「その時に襲い掛かってきたのはジオンの学徒兵達だった。私は彼等の断末魔を聞き続けたよ。最初はジオンの為、国の為と勇んでいても死ぬ間際には母親に助けをもとめるんだ。……堪らんかったよ。ア・バオア・クーの戦いが終わった後、私は二度とあんな事が起こってはならんと思った」

 

 オットー艦長の独白にブリッジの誰もが言葉を挟めずにいた。

 

「だから私はZ-BLUEという部隊は好かん。いかに有能だろうと世界を救った部隊の隊員だろうと、子供を戦場に出す軍などあってはならんと思っている」

 

 モニターに映るマジンガーやトライダー、エヴァ初号機を見ながら苦々しく言い放つオットー艦長。

 

 けれど、彼から感じる想いは嫌悪じゃなく心配だ。

 

「とはいえ、私には彼等を止める権限はない。こんなくたびれた中年士官の言葉で止まる連中でもないしな。……だからせめてお前さんだけは戦場に出んでくれると助かる」

 

「……オットーかんちょ」

 

 オットー艦長の言葉に思わず答えに詰まった瞬間、私の背筋に何とも言えない悪寒が走り抜けた。

 

 慌ててモニターを見ると、そこには宗介さんのアーバレストが巨大ASの両足を破壊しているところだった。

 

「どうした、ミユ?」

 

「……ダメ!」

 

 オットー艦長の心配を背に私が声を発した瞬間、ASの巨体は地面から突き出した緑色の触手の群れに貫かれた。

 

「なっ!? メタルビーストか!」

 

 驚く竜馬さんの声を嘲笑うかのようにモズの早贄のように全身を貫かれたASを包み込む触手たち。

 

 その生物のような動きをする癖に金属質な光沢をもつ奴等は、こちらの驚きを嘲笑うようにそのまま地面へと消え去ってしまった。

 

「なんだったんだ、あれは……」

 

 重い沈黙に包まれるブリッジにはオットー艦長の茫然とした声だけが虚しく響いた。

 

 

 

 

 お台場埠頭に置かれたコンテナ区域。

 

 夜の闇が包むその場所には闇よりも黒い一つの影があった。

 

 それはアシラによく似た黒いクマのロボット。

 

 違いは彼の機体に比べて数段鋭い赤く光る眼だろう。

 

『サンプル回収完了』

 

『このラムダ・ドライバという機構は興味深い』

 

『サイコフレームと組み合わせれば生体コアのサイコフィールドをさらに強化できるだろう』

 

『他にも新鮮な素材も手に入った』

 

『コレを原料にすれば予備の作成もはかどるだろう』

 

『UGセルの自己増殖機能によって我々の子機も完成した。これを活用して更なる進化に励もうぞ』       

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