幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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エイプリルフールで書いた没ネタです。

供養代わりにUP

暇つぶしにご利用ください


エイプリルフール没ネタ供養

 眠りから目覚める時の感覚は、水底から引き上げられるのに似ている。

 

 酷く重い瞼を開くと、私の視界に映ったのは少し薄汚れている見慣れた天井だった。

 

 正直また起きられるとは思ってなかったので、蛍光灯の光を感じた時は不思議な感慨を覚えたものだ。

 

 物心つく前からずっと使っている簡易な寝台から身を起こすと、ギシギシと体の節々が軋んだ。

 

 鈍った体と床に無造作に捨てられて折り重なる多くの点滴パック。

 

 そして記憶よりも数枚先まで捲られたカレンダーは、アクシズが地球に落下しようとしていたあの日からかなりの時間が経ったことを教えてくれる。

 

「……せいせん、シンカ、まじん」 

 

 眠っている間に見た長い夢、その中で出てきた重要な要素を私は舌足らずな口で転がす。

 

 あれはきっと夢じゃない。

 

 こことは別などこかの世界、そこにいる私が体験した現実なのだろう。

 

 どうしてそんな物を見たのかは分からない。

 

 けれど、私はこの存外の偶然に感謝していた。

 

「……ミユ、つよくなった」 

 

 夢の中で行われていたのは地球人や異星生命体、さらには神魔までもが宇宙の覇権を争った大戦争だ。

 

 たとえ夢による追体験でもそれを潜り抜けた事は、私がこれから生き抜くうえでプラスになるにちがいない。

 

 ギシギシと音を立てる寝台から降りると、隣に置かれたベッドに動きがあった。

 

 振り返ると同じ簡素な寝台の上には明るい茶色のボリュームのある髪に蒼い少し垂れた目と、私とうり二つな4歳程度の女の子がこちらを見ている。

 

「ねえしゃま」  

 

「……ミウ」

 

 舌足らずな声で呼びかける双子の妹に、私は彼女の名を紡ぐ。

 

 私達には親に付けられた名前は無い。

 

 代わりにここの大人から与えられたのは、形式番号と言う数字とアルファベットの羅列だけだ。

 

 だから私達はお互いに名前を付けた。

 

 私はミユ、そして妹はミウ。

 

 研究者たちが聞けば実験動物の傷のなめ合いとでも笑うだろう。

 

 でも、私達にとっては何よりも代えがたい宝物なのだ。

 

「……ミウ、いいこ」

 

「えへへ……」

 

 私は何時ものようにミウを抱きしめると、ゆっくりと優しく頭を撫でる。

 

 たとえ双子でも私はこの子のお姉ちゃんなんだ。

 

 ちゃんと支えてあげないと。

 

「ゆめをみました。すごいたたかいのゆめ」 

 

「……ミユもみた」

 

 どうやらこの子も私と同じモノを垣間見たらしい。

 

 恐らくミウの視点は、あの世界にいた姉より大きな甘えん坊の妹のモノだろう。

 

 正直、大人しくて素直な妹が彼女のように苛烈になると困るけど、あの戦闘技術を得られたとすればありがたい。

 

 これまでモルモットとして職員達のいいようにされてきたのは、私達に何の力も無かったからからだ。

 

 けれど今は私もミウも実戦をはじめとする様々な経験を得た。

 

 もう奴等の都合に振り回されるつもりはない。

 

「そういえば、おとながいましぇん」

 

「……ん、おかしい」

 

 そうだ。

 

 何時もならこの部屋は職員によって監視され、私達は起きるとすぐに実験を強要されていた。

 

 それがないという事は研究所に何かがあったかもしれない。

 

『機械獣接近! 機械獣接近!! 職員はただちにシェルターへ退避せよ!!』

 

 部屋の扉を開けてみると案の定だった。

 

 廊下には警報音と共に赤い光が全体を照らすように点滅し、こんなアナウンスまで流れていたのだ。

 

 けれど機械獣は英雄『兜甲児』の活躍によって10年前に全滅した筈だ。

 

 それが今更になって甦ったというのだろうか?

 

「ねえしゃま、どうしましょう?」

 

 いや、考えるのは後にしよう。

 

 この研究所は違法性故に極秘にされているから、ちゃんとした部隊は置いていない筈。

 

 仮に配備されていても相手はスーパーロボットの代表たるマジンガーZと渡り合った機械獣だ。

 

 量産型のMS程度では歯が立たないだろう。

 

「……にげるばしょ、にげるばしょ」

 

 活路を求めて私はちんまい脳みそを私は必死に動かす。

 

 研究所にはシェルターが完備されているけど、大人達の姿がない事を思えば全て満員と見た方がいい。

 

 機械獣が暴れる事に耐えられる保証もないし。

 

 となれば、私達に取れる生存への手は一つだ。

 

「……ミウ、MKⅡでにげる」

 

「あれをつかうのでしゅか? でも、あれは……」

 

 ミウの言いたいことは分かる。

 

 私が挙げたのは各種サイコミュ試験で使っているサイコガンダムMKⅡという巨大なMSだ。

 

 研究員がヨーロッパの何処かで壊れて捨てられていたのを回収・レストアしたそうだけど、実験データを取るのが目的なので完全に修復はされていない。

 

 間違いなく武器類に関しては使用不能にされているだろう。

 

 正直戦えるかどうかも怪しい代物だ。

 

「……あれしかない。にげるチャンスもいまだけ」 

 

 『恐るべき子供達計画』で生み出されたこの身は、父親譲りの並外れたニュータイプ能力で連邦軍から恐れられている。

 

 それを考えればこの研究所から解放されることは生涯ないと見るべきだ。

 

 さらに母に高値で売られた私達には戸籍が存在しない。

 

 つまり社会的には存在しない人間という事になる。

 

 それは外部からの助けも期待できないという事だ。

 

 このまま行けば私達を待つ未来は、用済みになるまでデータ取りに使われるモルモットとしての人生。

 

 そんなのは絶対にイヤだ!

 

 私はミウと普通の生活を送りたい!

 

 アクシズ墜としの時に感じた、ととさまにも会ってみたい!

 

 あの時に感じた希望を信じる優しい意志はきっと間違いなんかじゃなかった!

 

 夢で言われてたみたいな、き…鬼畜天パなんて嘘偽りに決まっているのだから!! 

 

 そう覚悟を決めた私は、ミウと共に格納庫に置かれたMKⅡへと乗り込んだ。

 

「……ジェネレーターきどうかくにん。はっしんシークエンス、よし」

 

「リンク・サイコミュ───」

 

「……ミウはサイコミュ、ダメ。ねぇねだけでいい」

 

「ねえしゃま……」

 

 動き始めたMKⅡで閉じられた格納庫のシャッターをこじ開けて前に出ると、すでに機械獣たちは研究所の目前にまで迫っていた。

 

「どうするんでしゅか? ジェネレーターのしゅつりょくがおさえられているから、ぶきはつかえません」 

 

「……だいじょうぶ」

 

 不安げな妹にそう答えると私は意識を集中する。 

 

 夢の私は多種多様な異能を備えていた。

 

 その中には機動兵器を介して魔法を放つというモノもあった。

 

 そう、魔法である。

 

 御伽噺でしかお目に掛かれない代物を、彼女は直感的に学んでぶっつけ本番で使って見せたのだ。

 

 あの魔法は大導師と呼ばれる悪の魔法使いから借り受けたモノらしい。

 

 そして発動に必要なのは精神力と強い憎悪だ。

 

 精神力は分からないけど、憎悪の方は生い立ちのお陰で不自由していない。

 

 だから思い出せ!

 

 夢での感覚を! あの時に紡いだ力ある言葉を!!

 

 私があの子と同じならできる筈だ!

 

「ABRAHADABRA……しにいかずちのせんれいを!」

 

 私の言葉に応じて、機械獣たちへ向けたMKⅡの右掌から闇色の雷撃が飛ぶ!

 

 それは数体の胴を貫くと、火球となった犠牲者を置き去りに地平の果てへと消える。

 

「ねえさま、それ……!」

 

「……ねぇね、まほうつかい。さくてき、おねがい」

 

「は…はい! きかいじゅうたち、きます!!」

 

 こちらを脅威と捉えたのだろう、機械獣たちは横隊侵攻からこちらを包囲するように襲ってくる。

 

「……ン・カイのやみよ!」 

 

 私の言霊に応じて、MKⅡの身体に備わった多数の砲門から黒い弾丸が吐き出される。

 

 重力波を放ちながら飛ぶ6つのマイクロブラックホール弾は私の意志に従って次々に機械獣へ食らいつくと、装甲や内部機構を問わずに敵の身体を抉り取った。

 

 本当なら11発の弾を放つ魔法なんだけど、残念ながら私にはこれが精いっぱいだ。

 

「ねえさま!」

 

 強烈な脱力感にフラリと体を傾けそうになった私に、ミウが心配の声を上げる。

 

「……だいじょうぶ」

 

 とはいえ、魔法を使うのはかなりしんどい。

 

 精神的にゴリゴリ削られる感覚は言葉にできない辛さがある。

 

 繋がっているとミウにもこの辛さを味わわせる事になると思うと、やっぱりリンク・サイコミュを切って正解だった。

 

 ぶっつけ本番で使えたのはいいけど、今の私だとこの二つが限界だ。

 

 そして、私の体力だと長い戦いには耐えられない。

 

「……たんきけっせん」

 

 だから取るべき戦法は間を置かずに手を出して、こちらがへばる前に相手を殲滅する!!

 

 ン・カイの闇で牽制と誘導を行い、そこをABRAHADABRAで撃ち抜く。

 

 そうして十数体の機械獣を倒すことができた。

 

 けれど、そこで私の精神力が底を突いてしまったのだ。

 

「アブ…ダ……ケホッ!」

 

「ねえさま!」

 

 それでも無理やりに呪文を唱えようとすると、言葉を遮って血を吐いてしまった。

 

 駄目だ、もう魔法は使えない! 

 

 全天周囲モニターに映るのは、巨大な斧になった手を振りかぶる機械獣の姿。

 

 それを見た私はシートベルトを外すと、盾になるためにミウへ覆いかぶさった。

 

 かみさま!

 

 せめて、せめてミウだけでも助けて!!

 

 私がそう願った瞬間、通信機から裂帛の気合が迸った。

 

『させるか、機械獣め! ロケットパーンチ!!』

 

 そして空飛ぶ鉄拳が脇腹を貫いて機械獣を破壊する。

 

 顔を上げると腕の主はマジンガーZではなく、ジムみたいな顔をしたマジンガーの廉価品だった。

 

 たしかイチナナ式っていうマジンガーの量産型だったっけ。

 

 そしてその背後からは蒼を基調にした巨大戦艦と暗色がメインでツギハギが目立つMSっぽい機動兵器が続いている。

 

『これより研究所および守備隊を援護します! 総員、機械獣を迎撃してください!』

 

 あの船の艦長なんだろう。

 

 若い女性の声に従って艦の部隊は機械獣へ襲いかかる。

 

『そちらのパイロット、聞こえますか? こちらはドライクロイツのミツバ・グレイヴァレー特務中佐です』

 

 船から送られた通信に出ると、モニターに映ったのは高校生くらいの金髪の美人なお姉さんだった。

 

 そんな年で中佐とは、すごいエリートだ。

 

「……う」

 

 何とか声を返そうとしたんだけど無理っぽい。

 

「たすけて! ねえしゃまをたすけて!!」

 

 呻く事しかできない私に代わって、ミウが艦長さんへ向けて声を張り上げる。  

 

『こ…子供!?』

 

『どうしてあんな小さい子が!』

 

『ドライストレーガー最大船速! あの子達を保護します!! 機動部隊は機械獣を近づけないで!!』

 

『分かった! クソッ! あんな子達が戦場に出るなんて!!』

 

『……あの子達、姉妹なんだ。───アズ機、援護に回ります!』

 

 戦艦と機動兵器たちによって次々に倒される機械獣たち。

 

 その光景を見ながら私の意識は闇へと落ちていった。

 

 

 

 

「ふざけるな、このクソ野郎!!」

 

「ぐはっ!?」

 

 兜甲児は研究所のシェルターに隠れていた責任者という白衣の中年男性の頬に渾身の拳を叩き込む。

 

 科学者として一線を引いていたとはいえ、これでもスーパーロボットのパイロット。

 

 人並み外れた身体能力から繰り出される拳を受けた所長は派手に吹き飛び、壁に後頭部をぶつけた拍子に意識を飛ばす事となった。

 

「アムロを騙して子供を作らせただと! その子供達をニュータイプの実験のモルモットにしていただと!! テメエ等、俺の親友をなんだと思ってんだ!!」

 

 残った研究所の職員達は甲児の発する憤怒に怯えて声も出ない。

 

 ドライクロイツが研究所の調査を行う事になったのは、保護した双子の幼児の妹であるミウからの訴えがあったからだ。

 

 曰く、自分達は生まれてずっと実験動物として生きてきた。

 

 脱走がバレたら殺されるから研究所に返さないで、と。

 

 こんな事を言われてはミツバをはじめ、ドライストレーガーの面々も無視などできない。

 

 ミユとミウの身体にあった多数の注射痕や背中の識別用のバーコードなどから幼女の訴えが嘘でないと判断した彼等は研究所の調査を断行したのだ。

 

 その結果は見事なまでに黒。

 

 さらに双子は今から10年前アムロ・レイがシャイアン基地で幽閉されていた時期に、彼から脱走の意志を取り除き腑抜けにする為に宛がわれた娼婦との間にできた子であることが判明した。

 

 娼婦は連邦軍からアムロの子を孕むことを要求されており、その子供をモルモットとして提供することを条件に多額の報酬を約束されていた。

 

 だからこそ避妊具に細工を施した彼女は、軟禁生活でアムロが捨て鉢になっていた事も相まって子供を身ごもる事に成功したのだ。

 

 そしてこの研究所で双子の姉妹を出産した女は、約束通りに我が子を引き渡し報酬を得た。

 

 もっとも、その直後に機密漏洩防止の為に抹殺された彼女が金に手を付ける事は無かったが。

 

 そうして彼女達は連邦軍の思惑通り、ニュータイプの才能を受け継いで生まれてきた。

 

 しかし計画発案者と連邦軍上層部にとって誤算だったのは、彼女達の才覚はあまりに強力すぎる事だった。

 

 目を見ただけで相手の思考を見抜き、距離が離れているにも関わらず己に向けられた害意を敏感に察知する。

 

 その為に研究所の人間がいくら懐柔しようとしても、双子は一切心を開くことがなく貴重なサンプルと分かっていても暴力で強引に従わせるしかなかった。

 

 さらにシミュレーターで模擬戦をやらせてみれば一年戦争からの古参のベテランはもちろん、エースと言われる凄腕パイロットや秘密裏に造りだした強化人間の試作体達も手も足も出せずに敗北した。

 

 3歳程度の子供がこの結果を叩き出した結果に、計画に関わっていた連邦軍の高官たちは少女たちの力を恐れた。

 

 仮に兵器転用してこちらへ牙をむこうものなら、この娘達を止める術はないと。

 

 彼女達は計画名の通り『恐るべき子供達』だったのだ。 

 

 しかしニュータイプ研究のサンプルという目で見れば、双子はこの上ない程に良質な素材だった。

 

 その為に彼等は薬物によって強制的に双子の成長を止めた。

 

 如何にニュータイプ能力が優れていようと、力のない幼児ならば今まで通り逆らうことはできないと考えて。

 

 彼女達から齎されたデータからサイコガンダムを始めとする連邦軍式サイコミュシステムに反映され、それはフォウ・ムラサメなどの人工ニュータイプたる強化人間の錬成にも利用された。

 

 研究所のデータに目を通した甲児は文字通り怒髪天を衝いた。

 

 甲児とアムロ・レイは一年戦争やドクターヘルとの戦いで共に轡を並べた戦友だ。

 

 だからこそ、アクシズ墜としの阻止をアムロ一人に任せて彼を失ったことを未だに後悔している。

 

 そこに来て、親友の尊厳を踏みにじるこの事実である。

 

 怒るなと言う方が無理だ。 

 

 ここに同じく戦友であるゲッターチームがいたら、研究所の人間は全員ボコボコにされた上に顔の皮を剥ぎ取られていた事だろう。

 

 甲児の見せたあまりの殺気に研究員たちが怯えていると、ドライストレーガーの艦長であるミツバが前に出る。

 

 そして研究員たちへゴミを見るような目を向けてこう言った。

 

「彼女達は我々が保護します。異論はありませんね?」

 

「何を言っている! あの二人は我々が購入したサンプル……」

 

 反論しようとした研究員だったが、ミツバが放つ鋭い視線に口ごもってしまう。

 

「黙りなさい! 彼女達は人間であって貴方達の玩具じゃない!! それに貴方達は罪人として監獄へ行くのです、研究など続けられる筈がないでしょう!!」 

 

 毅然とした態度で研究員たちを断罪するミツバに、気絶した所長に代わって副所長が唾を飛ばす勢いで反論する。

 

「我々の研究は連邦政府も認めている! 軍の人間である貴様等に止める権限などあるものか!!」

 

「ならば、この研究で行われていた事の全てを世に公表して、その是非を地球人すべてに問いましょう。幼子をモルモットにする事が正しいと貴方達が思うのなら問題ないですよね?」

 

 ミツバの返しに副所長は慄然する。

 

 この研究所で行われた事が白日の下にさらされれば、ムラサメ研究所やオーガスタ研などで行われた強化人間に関する非人道的実験も芋づる式で暴かれることになる。

 

 そうなれば、長年の戦乱で疲弊し弱体化した今の地球連邦は大打撃だ。

 

 下手をすれば、国としての体裁を保てなく可能性もある。

 

 正規軍に籍を置く人間がその引き金を引くなど正気の沙汰ではない!

 

「連邦を破壊するつもりか!? 軍人の貴様が……!」

 

「その通りです! 子供が生贄となる違法な研究を良しとするならば、連邦政府に存在する意味はない!! 未曽有の危機が迫る今、そんな組織に地球の舵取りなど任せられるモノですか!!」

 

 20にも満たない少女が纏うモノとは思えない覇気と共に、己の信念を言い放つミツバ。

 

 それに気圧された副所長はヘナヘナとその場にへたり込むだけだった。

 

 

 

「アムロ、腕部の調整を見てください」 

 

「ああ、すぐに行く」

 

 双子がドライストレーガーに保護された頃、北米のシャイアン基地に行方不明とされていたアムロ・レイの姿があった。

 

 青いツナギを纏って黒い油を頬に付けた彼は、戦争を知る前のメカ弄りを趣味としていた少年時代に戻ったようだった。

 

 アクシズの落下を防いだ彼は、νガンダムと共に宇宙を漂っていたところを哨戒中の連邦艦隊に保護された。

 

 そして後にアクシズショックと呼ばれる奇跡を起こした事を恐れた連邦軍によって、1年戦争後と同じようにシャイアン基地に幽閉される事となったのだ。

 

 公私におけるパートナー、そして人質としてチェーン・アギ准尉を付けられて。

 

「フィールドモーターのトルク値が低いな。もう少し上げられないか?」

 

「今の部品だと少し難しいですね。たしか倉庫にはジェガンの予備パーツがあったので、そこから引っ張ってきましょう」

 

 そんな彼は有り余る自由時間を利用して格納庫に置かれたMSを弄っていた。

 

 メンテナンスベッドに固定されているのはRX78-2。

 

 一年戦争時に彼が駆り、数々の逸話を残した初代ガンダムである。

 

 そんな伝説の機体も今や型落ちも型落ち、口の悪いモノなら骨とう品と揶揄する代物だ。

 

 シャイアン基地に運び込まれた理由も、アムロの無聊を慰める為の玩具にすぎない。

 

「ビームライフルはどうなっている?」

 

「中身のパーツを殆ど入れ替えたので、性能的にはジェガンのモノと同じくらいには上がりました」

 

 だから基地の職員は気付かなかった。

 

 伝説のMSがその牙を徐々に取り戻し始めている事に。

 

「ここに囚われて随分と経ってしまったが、何時までも足踏みをしているわけにはいかないからな」

 

「ええ。あの時にサイコフレーム越しに感じた声、その主に会いに行かないといけませんからね」

 

 チェーンの言葉にアムロは力強く頷く。

 

 第二次ネオジオン抗争の際、チェーンとアムロはある意志によって命を救われている。

 

 チェーンはお守りとして腰に下げていたサイコフレームを通じて意志の主がサイコフィールドを展開した事で、錯乱したハサウェイの凶弾から乗っていたリ・ガズィ共々命拾いする事が出来た。

 

 そしてアムロはアクシズの破片が軌道を変える際、限界を迎えたνガンダムのオーバーロードをサイコフレームを通じて抑えてくれた。

 

 その時にアムロは感じたのだ。

 

 彼を一途に慕う幼い意志を。

 

 自分と、おそらくはシャアがあの修羅場から生還できたのには偶然・必然に問わず多くの要因があるのだろう。

 

 だからこそアムロは願う。

 

 あの意志の主と会ってみたいと。

 

 これは連邦の白い流星が戦場へ舞い戻る数週間前の話である。

 

 

 

 

 暗い暗い意識の闇の底、私はそこで一人の女と対峙していた。

 

「ふぅん、君がそうか。これはまた面白い精神をしているね」

 

「……なにかよう?」 

 

 眼前にいるのは闇のような黒の髪に血を吸ったように赤い唇、そしてたわわ過ぎるくらいに育った胸が特徴の眼鏡美人。

 

 私はこの女の事を知っていた。

 

 夢の中で私の娘として生を受けた邪神ナイアだ。

 

「そんなに警戒しないでくれ、広義的に見れば君も僕のお母さんなんだから」

 

 バレバレの泣き真似をするナイアだけど、私はそんな物には騙されない。

 

 私に向く彼女の眼は、明らかに新しいおもちゃを見つけた子供のそれだからだ。

 

「やれやれ、随分と余裕がないようだね。仕方ないから本題に入ろうか」

 

 私が冷たい視線を向けていると、ナイアは肩をすくめると自分の胸の谷間に手を入れる。

 

 ……私の大平原とは雲泥の差じゃないか、くそぅ。

 

「君の手助けをしたくてね、これを届けに来たんだよ」

 

 そう言って差し出したのは一冊の古びた本だった。

 

「……これは?」

 

「魔導書・ナコト写本、その複製さ。」

 

 魔導書……たしか記憶に出てきた魔導士が使っていた本だっけ。

 

 私が魔法を使っていたから、その補助の為に持ってきたということなの?

 

「複製と言っても僕手ずから書き写したものだ、オリジナルにも負けない性能は保証しよう。ほら、ご挨拶」

 

 そう言うとナイアの手の中にあった魔導書が光を放つ。

 

 次に現れたのは、ゴスロリ衣装を着た女の子だった。

 

「私はエセルドレーダ、ナコト写本の精霊です。お見知りおきを、マスター」

 

「力ある魔導書は魂を持ち、精霊として人の姿を取る事ができる。彼女がその姿を見せたという事は、君を主と認めたからさ」 

 

 そう言えば、アル・アジフだったっけ。

 

 夢に出てきた彼女も魔導書の精霊だったはずだ。

 

「……どうして、ミユにてをかすの?」

 

 胸に渦巻く疑問を投げかけると、彼女はニコリと笑みを浮かべる。

 

「子供は親の役に立ちたいと思うものさ」

 

「……ミユ、ナイアのおかあさんじゃない」

 

「同じだよ。君には分からないかもしれないがね」

 

 そう言うとナイアの身体が徐々に薄れていく。

 

「用は済んだし、僕はお暇させてもらおうかな」

 

「……ナイア」

 

「なんだい?」

 

「……ありがと」

 

 我知らずに口を突いた言葉、それを聞いたナイアは小さな笑みを浮かべる。

 

「君のこれからは波乱に満ちたモノになるだろう。健闘を祈るよ、お母さん」

 

 そんなナイアの言葉を最後に、私の意識は浮上を始める。

 

 そうして目を覚ますと枕元には二つの人影があった。

 

 ミウ、そして精神世界で渡された筈のナコト写本の精霊、エセルドレーダだ。

 

「お加減はいかがでしょうか、マスター」

 

「ねえしゃま。このひと、だれ?」

 

「……ミユたちのみかた。それでいい?」

 

 ミウにそう答えたモノの、イマイチ自信が無かったので私はエセルドレーダへ問いかける。

 

「はい。私は貴方の僕です」

 

 すると彼女は表情を変える事無くそう答える。

 

 何時ものように精神感応で真偽を確かめようとしたけど魔導書の精霊だからなのか、彼女の意志は読み取れない。

 

 だからだろう。

 

「……ミユたち、うらぎらない?」

 

 こんな言葉が口を突いたのは。

 

 そして彼女は見事なまでの礼でこう言った。

 

「マスターが私を不要であると思わない限り、裏切りはあり得ません」

 

 

 

 

 ミユが意識を取り戻したのと同時刻、ドライストレーガーの格納庫では双子と共に回収されたサイコガンダムMKⅡの修理作業が進んでいた。

 

「まったく、動力炉にリミッターなんて掛けやがって。外すのが面倒じゃねえか」

 

 チーフメカニックのジークン・リューは愚痴をこぼすと、装甲が外されたサイコガンダムの核融合炉周辺で作業をしているスタッフに指示を出す。

 

「そこの! ジェネレーターの外装取り付けといてくれ!」

 

「分かりました!」

 

 ジークンの指事に威勢よく返事を返すと、その作業員は剥き出しになった融合炉にある物を押し付ける。

 

 人間なら作業用アームなどを介さねば触れる事の出来ない機体の心臓。

 

 しかしそんな事を意にも介さない作業員の指先には、六芒星を象ったペンダントトップがあった。

 

 そしてペンダントトップは溶けるように融合炉と一つになると、その周辺に一瞬だけ紫色の細胞壁のような文様が奔る。

 

 一連の様子を確認すると、作業員は誰にも気づかれる事無く格納庫を去った。

 

 そんな彼女の背をサイコガンダムMKⅡは怪しい光を称えたデュアルアイで見送るのだった。

 




30世界幼女A

 この世界ではアムロの娘であり、同時にニュータイプのモルモット。

 実年齢は10歳だが、薬物によって成長が止められている為に肉体は4歳相当。

 NTレベルは相変わらずの限界突破。

 幼少期からの虐待じみた実験体経験や守るべき双子の妹がいる事から、相互理解が本質な己の力を相手の害意を見抜くことに特化させた。

 その結果、彼女のNT能力は目を見るだけで相手の思考を見透かし、悪意や敵意は距離が離れていても察知する等、ほぼ読心術レベルと化している。

 実は相当な人間不信であり、ドライクロイツに保護されたあともそれは改善されていない。

 同時に現状ではドライクロイツの庇護下から出れば自分達は生きていけない事も承知している。

 彼女達が積極的に戦場へ出るのは、己の有用性を証明することが生存の術と考えているため。

 人を陥れようとする者、利用しようとする者とは死ぬほど相性が悪い。

 その反面、思考と行動が直結しているような直情馬鹿には懐きやすい。

 その為、エルドラチームやヴァンには懐いている。

 並行世界同位体である多元世界幼女との縁を基に魔導士の才覚を開花させるも、それを察知した邪神(娘)に目を付けられる羽目に。

 実は隠しパラメーターとして『大導師様ゲージ』というモノがあり、幼女が世の中クソと思う度に溜まっていく。

 MAXになると大導師(ロリ)となり、憎悪のままに世界を滅ぼそうとするラスボスになる。


30世界幼女B

 幼女Aの妹。

 この世界では戦闘用スーパーコーディではないが、その代わりに血統も相まってNTレベルがカミーユ並みに高い。

 転生者でもキリシマ様人格も無ければ身体が急成長してもいない為、お姉ちゃんっ子な甘えた幼女でしかない。

 実はエースパイロットレベルのMS操縦技術を有しているが、本人が姉と離れたがらない為に一人で戦場に出ようとしない。

 なので基本的にエセルドレーダと共にサイコMKⅡのサブパイが役目。

 幼女Aを人間に繋ぎとめる最たる楔なので、彼女に何かあると大導師化待ったなし。


エセルドレーダMKⅡ

ナイアが書いた同人誌から生まれた精霊。

基本的な能力はコピー元と一緒。

邪神お手製の魔導書の為、原本と比べても性能の劣化は無い。

幼女達の事は初マスターという刷り込み効果に心の闇も相まって好印象。

この世界のおねロリ枠。


サイコガンダムMKⅡ


第一次ネオジオン抗争でZZに撃墜されたモノを研究所が回収、レストアした機体。

サイコミュ試験機としての役割だけを求められているので、武器類はエネルギーバイパスとジェネレーター出力にリミッターを加えられて使用できない様にされていた。

ドライストレーガーでの修復と改修作業によって元の力を取り戻すが、その際に邪神によって心臓部へ多元世界幼女が使っていたタリスマン(2代目)を組み込まれる。

UGセルとサイコフレームに幼女の魔力、その他諸々が組み込まれた事で鬼械神として覚醒していく。

幼女の大導師ゲージが溜まると『リベル・レギスMKⅡ』へと変貌。

『ABRAHADABRA』、『ン・カイの闇』を放ちながら全身の砲門から魔力バフ付きのメガ粒子砲をまき散らし、それをけん制に『ハイパーボリア・ゼロドライブ』を狙ってくる。

       
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