幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話 作:アキ山
1.クソコテ様の巫女という名のヨメ
2.全裸大佐とアンジェロ君を生暖かく見つめる
3.コーウェン君・スティンガー君と一緒にゲッペラー打倒の旅に出る
4.シンカを諦めて、反螺旋のイイ声の人の母星で眠る
5.オリュンポスの新たな巫女として、ハーデス様に仕える。
6.グーラに嫁入りして宇宙魔王の娘になる
7.アナハイムに入社してオーガスタ研に勤務
8.ミカゲの傍でアポロニアスにフラれる度にm9(^Д^)プギャーする
9.やっぱりクマさん
一番いい答えを頼む
※)これはネタです。
アンケートと取ってしまった読者の皆様には謹んでお詫び申し上げます。
紛らわしいマネをしてすみませんでした。
ここではないどこか、無限に広がる情報の海で『カレ』は思考していた。
「よもや、彼等がこうも早く行動に出るとは……」
気品すら感じる若くハリのある声に込められているのは、にじみ出るかの如き苦悩だ。
「彼等はシンカの為にもっとも必要なモノを読み違えている。このまま下らぬ行動を許しては我等やあの娘はもちろん、この世界の未来までもが閉ざされてしまう」
そうなってしまえば希望の灯は潰え、残されるのは正道から外れたシンカによって産まれる邪神だろう。
「彼等をいたずらに刺激しない様に行動を控えていたが、そうも言ってはいられないか……」
そう呟くと『カレ』は海から水を一つ掬いあげる。
「この世界の希望となるべき戦士達は、彼の者達にその力を抑えられている。ならば、私程度の力でも少しは助力となるだろう」
そう呟くと手杓の中で揺れていた水はゆっくりと天へ向けて昇り始める。
「アルティメットガンダム細胞よ、そのデータを読み取り戦士達の新たなる力になってくれ」
ゆっくりと螺旋を描きながら天へと還る水の帯、その神秘的な光景が終わると『カレ』はもう一度手に水を汲みあげる。
「彼等が動き出した以上、彼女にも護衛を付けておく必要があるだろう。思ったよりもお転婆な娘のようだからね」
言葉と共に念を込めると水は一人でに動き出し、やがて人の形を取った。
「役目を終えて眠りに就いているところすまない。どうか私に力を貸してほしい」
「要件はなんだ? 死人を起こすような真似をしたのだ、相応の事情なのだろうな」
呼び出した人影の問いに『カレ』は頷き返した。
「この世界……いや、数多の並行世界の未来に関わる事だ。この娘を護ってもらいたい」
言葉と共に手を軽く振るとスクリーンとなった水に幼い少女の顔が映し出される。
「この娘は何者だ?」
「『ムスヒの巫女』。我々が総力を挙げて生み出した希望だ」
「むすひ……なるほど、産魂か。日本神道において天地・万物を生成・発展・完成させる霊的な働きを指す概念だな」
「彼女は数多の思念や想いを繋ぎ、然るべきモノを新たな階梯へとシンカさせる触媒となる者。だが、彼女はまだその役目を果たすほどに成熟していない。悪しき者に利用されれば、取り返しのつかない事になるだろう」
「よかろう。誰かを影ながら護り導くのは私の得手、あの娘が自分の役目を果たすまで護り通してみせよう」
「───頼む」
人影は消えた後、『カレ』は遥か上空の水面を見上げ目を細める。
「気付いてくれ、同胞たちよ。もはや事態は我々の世界が生き残ればいいというモノではない事に」
◆
みなさん、こんばんは。
モニターの向こうで起こった緊急事態に動揺しているミユです。
本日スゥイート・ウォーターというコロニーで行われていた地球連邦の大統領とネオジオン代表との会談。
世界中に配信されていたその話し合いは予想外の結末を迎える事になった。
なんと代表だったハマーンという女性が突然辞任し、ネオジオン総帥を名乗る男が現れたのだ。
金髪をオールバックにした容姿端麗な20代後半の男、その名をシャア・アズナブルという。
その姿を見て動揺するZ-BLUEのメンバーを他所に、モニターの向こうにいる彼は地球連邦政府への独立と宣戦を宣言してしまったのだ。
「カミーユ! シャア・アズナブルってことは、あれはクワトロ大尉なのか!?」
「…………モニター越しでも、はっきりと分かった。あれは───俺達と共に戦ったクワトロ大尉だ」
「シャア……! これがお前の選んだ答えなのか!」
苦渋の表情を浮かべるカミーユさんとアムロ大尉。
彼等には申し訳ないけど、私はほんの少しホッとしていた。
「……ぜんらのへんたいさんじゃなかった」
さて私がシャア・アズナブルから感じた事だが、彼が発していたのは『地球を守る』という強い信念。
そして、その為ならどんな泥でも被るという覚悟だった。
これが具体的にどういう事なのかは分からないけど、この二つはモニター越しでもしっかり伝わって来たんだけど……
ここまで強い感情なら私よりも彼を知っているアムロ大尉にも伝わってると思うんだけどなぁ。
シャア・アズナブルはアムロさんのライバルだというし、そういった視点が気付くのを邪魔しているのかもしれない。
「……アムロたいい」
「ミユ。今の報道から君は何か感じたのか?」
「……シャアはへんたいさんじゃない」
「いや、そこはいいから」
カツさん、うるさい。
私にとっては死活問題なんだよ!
一組織の総帥が変態で私の身体を狙ってるとか、どう考えてもシャレにならないだろうが!!
「……あと、シャアはちきゅうをまもろうとしてる。そのためならどんなどろもかぶってもいいって」
言葉だけだと信用性が低いかもしれないので、私が感じたイメージも送っておいた。
するとアムロ大尉やカミーユさんは心配が薄れたのか、少し落ち着きを取り戻してくれた。
「───そうか。君はこう感じたのか」
「クワトロ大尉、まだ貴方を信じていいんですよね……」
「安心するのは早いぞ、カミーユ。奴が泥を被る覚悟をしたのなら、どんな過激な事をやるか分からん。その時は俺達が奴を止めるんだ」
「その時はオレも手伝いますよ。クワトロ大尉が暴走したら止めるって約束してますからね!」
先ほどまでの苦渋に満ちた顔から一転して笑顔を見せるアムロ大尉にカミーユさん、そしてシン兄。
シャアと面識があるメンバーの動揺が収まったのはいいのだが、こんな幼女の意見をアッサリと鵜呑みしていいのだろうか?
モニター越しだし間違ってる可能性だってあると思うんだけど……
「今まで預言者みたいにバリバリ物事を当ててたお前さんの言葉だ。そりゃあ信用だってするだろうさ」
そんな事を考えているとデュオさんがワシワシと頭を撫でてきた。
「もっとも、その分トラブルメーカーなのは玉に瑕だけどな」
それについては返す言葉が無いです、ハイ。
ともあれ、ネェル・アーガマのブリーフィングルームに蔓延していた混乱も治まる気配を見せた事に安心していると、会談の特別番組を映していたモニターに突然ノイズが走った。
何事かと驚いていると、間を置かずして中国人っぽいイケメンの少年の顔がデカデカと現れた。
「五飛!」
その顔を見て思わず叫ぶデュオさん。
なるほど、あれがマリーメイアに付いたガンダムのパイロットか。
『聞こえるか、Z-BLUE』
「わざわざ、このタイミングで通信を送りつけてきたってことは、嫌みの一つでも言うつもりなのか?」
『ネオジオンの宣戦布告に伴い、マリーメイア軍は地球連邦平和祈念館があるブリュッセルに部隊を降下させる』
デュオさんの皮肉にも全く表情を変えずに、五飛さんはマリーメイア軍の次の狙いを告げる。
「平和祈念館だと? あの施設に何の意味がある!?」
『あそこからマリーメイア軍は全世界に向けてメッセージを配信する。地球連邦外務次官リリーナ・ドーリアン、ナナリー・ヴィ・ブリタニアと共にな』
ゼクスさんが放った問いの答えを聞いた瞬間、室内にいた誰もが息をのんだ。
ドーリアン外務次官もナナリー代表も連邦政府の要人だ。
それがマリーメイアの手に落ちていた事が予想外だったのだ。
『ヒイロ、俺達の決着をつける時が来た。ゼロに乗って指定する場所まで来い』
「マリーメイア軍の地球降下が確認されました! 目標地点と思われる場所はブリュッセルです!!」
「クソッ! ネオジオンの宣戦布告で混乱している隙を狙ってやがったのか!」
ブリッジにいた恋人のヒルデさんからの報告にデュオさんは舌打ちを漏らす。
『Z-BLUE。お前達が…この世界が正しいと言うのなら、お前達の正義を俺に見せてみろ』
「……まって」
そう言い捨てて通信を切ろうとした五飛さんに私は待ったをかけた。
『今の声は誰だ』
「……ミユ」
五飛さんの問いかけに応じて私はモニターの前に出る。
『子供だと? 貴様等、なぜこんな子供を軍艦に乗せている!』
「……そんなこと、どうでもいい。あなたにききたいことがある」
憤る五飛さんの言葉をバッサリと切り捨てると彼は他のメンバーに向いていた視線を私へ定める。
『なんだ、娘』
「……あなたはいつもミユたちにただしいのか、きいてきた。だからこっちもききたい。───あなたはただしいの?」
『……なんだと?』
「あなたたちが、すてられたへいしなのはしってる。みんなに『いらない』っていわれたのもしってる。だから、せんそうするのがただしいことなの?」
『───なるほどな。たしかに俺だけが行動の是非を問うのは公平とは言えんか』
そう言って苦笑いを浮かべた五飛さんは、次の瞬間には先ほどよりも真剣な顔でこちらに視線を向ける。
『娘、俺達は自分の行動が正しいとは口が裂けても言えんだろう』
彼の言葉に私は内心驚いていた。
雰囲気からして、彼なら『俺達こそが正義だ!!』くらいの事は言うと思っていたからだ。
『だが世界はこと善悪のみで回るほど単純なモノではない。悪と分かっていても通さねばならぬ筋がある、貫かずにはいられぬ信念がある。俺達が戦争を起こすのはその為だ』
「……みんなからきらわれるよ?」
『覚悟の上だ。この名が歴史に悪と刻まれようと俺達は自分の信念を貫く』
その言葉を最後に五飛さんからの通信は切れてしまった。
シンと沈黙に包まれるブリーフィングルーム。
これはもしかしなくてもやってしまったのではないだろうか?
「……ごめんなさい」
モニターを背にみんなへ頭を下げると誰かがポンと手を置いた。
視線を上げるとそこには何時もの通り、ポーカーフェイスなヒイロさんがいた。
「気にするな。お前のお陰で奴の真意が知れた」
「ヒイロ、どうする気だ?」
「五飛の誘いに乗る。奴が覚悟を決めている以上、決着を付けねばならない」
ゼクスさんの問いにそう返すとヒイロさんはそのままブリーフィングルームを出て行ってしまった。
「総員、解散しろ! マリーメイア軍が行動を起こしているんだ、モタモタしている暇は無いぞ!!」
オズマ隊長の指示でゾロゾロとブリーフィングルームから出て行くZ-BLUEのメンバーたち。
私もブリッジへ行こうかと思っていると青カブトが頭に飛びついて来た。
次の瞬間には脳裏には見た事も無いガンダムの姿が浮かび、この子が何を意図しているのかも伝わって来た。
「……アムロたいいとカミーユさんをよぶの?」
そう問いかけるとコクリと頷く青カブト。
青カブトから伝わったスケジュールだと、調整や試運転なんかを考えたらブリュッセルに着くまでギリギリらしい。
これからマリーメイア軍と戦うのなら少しでも戦力を増やすべきだろう。
私は出口に並んでいるアムロ大尉とカミーユさんを見つけると彼等の方へ駆け寄った。
「……アムロたいい」
「どうしたんだ、ミユ?」
「……かくのうこ、きて。カミーユさんも」
「俺もか?」
二人を引き連れて格納庫に足を運ぶと、一足先に部屋を出ていたシン兄がデスティニーを調整していた。
「ミユ、お前は出撃しちゃダメだぞ」
私を見るなりこんな事を言うシン兄。
心配しなくても当面は大人しくしてます。
「……ちがう。アムロたいいたちのMSをつよくする」
「えっ!?」
驚くシン兄を置いてクマさんの中から例のタブレットを取り出した私は、青カブトから伝えられたとおりに操作を行う。
「……アムロたいい」
幼女ボディで話すよりもデータを見てもらった方が早いだろうと、私は今回の計画の概要が書かれたページを表示したタブレットをアムロ大尉に渡した。
「───これはっ?!」
「どうしたんですか、アムロさん」
タブレットに目を通して驚きの声を上げるアムロ大尉にカミーユさんが声を掛ける。
「ここに書かれているのはリ・ガズィとリゼルの強化計画だ」
「強化計画って、今から改造したらマリーメイア軍との戦いに間に合いませんよ」
「それに関してはこの機体に組み込まれているUGセルというモノを使って間に合わせるらしい」
「UGセルって、なんですかそれ?」
アムロ大尉の説明に首をかしげるシン兄。
「クマに内蔵されているナノマシンだそうだ。主な用途は自己修復だが、設計データを記憶させることで短期間での改修も可能らしい」
「そう言えばジェミニアと戦った後で勝手に直ったとか言ってましたね、このクマ」
「これからの戦いを考えるとゼータやνガンダムが手に入らない以上、試してみる価値はあると思う。アストナージ!」
カミーユさんの言葉に頷くとアムロ大尉は整備主任のアストナージさんを呼び出した。
「どうしました、アムロ大尉」
「これを見てくれ」
「こりゃまた可愛らしいタブレットで……なんだこりゃあっ!?」
クマさんタブレットのデータに中身が飛び出そうになるくらいに目を見開くアストナージさん。
そういう反応をされるとこっちも不安になるんですが……
「可能だと思うか?」
「ナノマシンは専門外ですから何とも言えませんが、このクマ公が自己修復したのは本当ですからね。リゼルはカツの分があるんで先ずはそっちで試してみては?」
「それでいいか、カミーユ?」
「俺は構いません。正直、これからの事を思えばリゼルだと厳しいですし」
「よし。ミユ、頼めるか」
「……ん」
許可が下りたので私はクマさんに乗り込んで、私はクマさんの手をリゼルというMSの身体にぺたんと付ける。
「それだけでいいのか?」
「……だいじょうぶ。あとはだれもさわっちゃダメ」
「説明では3時間ほどで改修が完了するらしい。終わればまずはドラゴンズハイヴのオートメンテナンスマシンに掛けよう。それで危険が無ければ整備班が確認してOKなら試運転だな」
「ブリュッセルまで11時間と少し。うまく行ったとして大尉のリ・ガズィを改修したら時間はギリギリですね」
提案しておいて無責任だと思うが、私もその辺は確証が無いので是非とも上手くいってほしいと思う。
「しかし謎ですよね、このクマ。こんなナノマシン、どっから手に入れたんでしょう?」
「わからん。それと頓挫したZ計画の機体データが保管されていた事も気になる」
「もしかしたら他のデータもあるかもしれませんね」
「調べてみますか。ミユ! もう一度タブレットを持ってきてくれないか!」
なにやら大人たちが会議をしている中、クマさんの中でポケーッとしているとシン兄からお呼びがかかった。
とりあえずタブレットが欲しいという事で持って行くと、アストナージさんやアムロ大尉が興味津々で弄り始めた。
「これは……νガンダムの発展型か!」
「νガンダムのフルアーマープランもありますね。今ある資材で作れるかな?」
「ガンダムMKⅢか、スペックを見る限りだといい機体だな。ほかにもメタスの改修型もあるのか。これはリゼルを開発する過程の機体かな」
「デスティニーの強化プランはないかぁ……」
何だか知らないけど、タブレットの中には色々なデータが入っていたらしい。
本当にこのクマさんは何者なのだろうか?
こうしてデータを漁っている内に3時間が経ち、カミーユさんのMSは見事にガンダムへ進化した。
安全の為に掛けられたドラゴンズハイヴのオートメンテナンス、そして整備班の確認作業も問題は見つかる事無く、移動中に行われた試運転も上々の結果を残した。
これを受けてアムロ大尉のリ・ガズィも改修する事になり、全ての作業が終わった時には私達はブリュッセルの目前にまで来ていた。
『各員、出撃準備! 第一目標はドーリアン外務次官とナナリー代表の救出だ!』
私は今回もマクロス・クォーターでお留守番だ。
「……みんな、がんばれ」
私は皆の無事を『かみさま』に祈った。