幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

32 / 84
 今回の話は難産でござった。

 というか、第三次Zのこの話、ウイングゼロ以外がサーペントの攻撃で撃破されるんですよね。

 うん、普通に考えてありえねーや。

 МSやナイトメア、ヴァルキリーはまだわかるとして、ゴッドマーズとかマジンガーをサーペントの砲撃で堕とすとかムリでしょ。

 初号機なんか落としたら暴走するし。

 という訳でその辺はガッツリ改変。

 拙作の世界でマジンガーがサーペントに落されたら、クソコテ様が降臨するだろうしね


幼女、心を繋げる

 ネオジオンが参戦してから数分、彼等は2機のガンダムと1機のナイトメアの前に劣勢を強いられていた。

 

「なんてザマだ、クソッ! 行けよ、ファンネル!!」

 

 モスグリーンとイエローに塗装されたヤクト・ドーガを駆るギュネイ・ガスは、悪態と共に両肩のシールドにマウントされたファンネルを放つ。

 

 敵はガンダムどころかモビルスーツですらない、撃破するのにファンネルのレーザー一発でお釣りがくる脆弱なナイトメアだ。

 

 しかし、その一発が当たらない。

 

 相手は馬鹿げた機動と速度で宙を飛び回ると、ギュネイの狙いを予め知っているかのように紅い軌跡を残して回避してしまうのだ。 

 

「何故だ、何故当たらない! それにこの感覚……誰かが俺を見ているのか!?」

 

 先ほどから自分の攻撃だけが延々と空を切る不甲斐なさと何者かに観察されているような不快感で、ギュネイはアームレイカーに拳槌を叩きつける。

 

 ギュネイという男はネオジオンにおいて若手の中では指折りのトップエリートである。

 

 強化措置で高いサイコミュ能力を手にし、与えられた専用機では戦端を開く前に散発した連邦との小競り合いでエースに恥じない戦果をあげた。

 

 今回の作戦でも総帥である『赤い彗星』シャア・アズナブルの跡目が自分であると証明するために、彼のお気に入りであるカミーユ・ビダンを打ち取る腹積もりでいた。

 

 なのに、Z-BLUEの隙を突いて挑んだ戦いでこの体たらく。

 

 ギュネイが悔しさで歯を軋ませる中、彼と同様に己の不甲斐なさに怒りを募らせる者がいた。

 

 フル・フロンタルの親衛隊長であるアンジェロ・ザウパーだ。

 

「馬鹿なッ!? いくら相手がガンダムだとしても、この私が手も足も出ないなどッ!?」

 

「お前の動きは全てリークされている。勝ち目は無いぞ」 

 

 ガンダム・ヘビーアームズの圧倒的な銃火の前に左手ばかりではなく、愛機の右肩までも根こそぎ吹き飛ばされた彼は激しく振動するコクピットの中で怒声を上げる。

 

 この戦いは初めからおかしかった。

 

 如何にガンダムとはいえ相手は火力に特化した重武装、機動力で勝るギラ・ズールなら容易にかき回せるはずだった。

 

 だが蓋を開けてみれば、まるでこちらの行動を先読みしているかのように的確な射撃が飛んでくる。

 

 回避した先にミサイルがあった時には思わず自分の目を疑ったほどだ。

 

 あの時は自分だから左手を犠牲にして生き残る事が出来た。

 

 他の親衛隊員ならとっくの昔に棺桶の中だろう。

 

『私は誇りある大佐の親衛隊だ! 貴様ら如きに後れを取るなど───』

 

『そうか。だが、終わりだ』

 

 自分を奮い立たせるために気炎を吐くアンジェロだったが、返って来たのは冷たく簡潔な宣告だった。

 

 何をといきり立つのもつかの間、レーダーの警告音に左を見れば親衛隊員の首を狩りまくったもう一機のガンダムが猛スピードで間合いを詰めて来る。

 

『なめるな! その程度の突進など!!』

 

 安く見られた事の怒りを込めて腰部に接続されたシュツルムファウストを放つアンジェロ。

 

 直撃し爆炎に包まれるガンダムに口角を釣り上げたのもつかの間、爆発の中から無傷で現れたガンダムに表情を強張らせる。

 

『この程度で僕のサンドロックは止められない!』

 

 懐に飛び込むと共に大きく曲刀を振りかぶるガンダム。

 

 両腕を奪われたギラ・ズールに凶刃を回避する術はない。

 

『お…おのれぇ!?』

 

 アンジェロの怨嗟の声を背景に、交差するように振るわれた巨大なショーテルはギラ・ズールの頭部を刎ね飛ばすのだった。

 

「アンジェロ!」

 

 頭部を失い仰向けに倒れる赤紫のギラ・ズールにギュネイは一瞬目を奪われる。

 

 気に食わない男だが同じネオジオンの同僚、それを討たれて無視できるほど彼は冷酷ではない。

 

『よそ見してんじゃないよ!』

 

 だが、その隙を見逃さないのが『ZEXIS』そして『Z-BLUE』の切り込み隊長の一人である紅月カレンだ。

 

 回避に専念していた紅蓮のエナジーウイングのスロットルを全開にすると、紅い軌跡を残してヤクト・ドーガの懐へ飛び込んだ。

 

「ちぃっ!?」

 

『弾けろ、ネオジオン!!』

 

 本能でギュネイが身を捻った次の瞬間、右肩に掛かった紅蓮の異形の右腕から深紅の輻射波動が迸る。

 

「右腕が!? クソッタレェッ!!」

 

 まるで水が沸騰するかのように内側から膨張を始めた右肩に、背筋に寒い物を感じながらビームサーベルを一閃させるギュネイ。

 

 黄色のビームの刃が奔った次の瞬間、切り離されたヤクト・ドーガの右腕が爆炎を上げる。   

 

「───機体各所に不具合が出てるか。カミーユ・ビダンと戦う事も出来ずになんて無様な……」

 

 そう呟きながら自身の機体が放った爆炎を目くらましに、ギュネイはアンジェロの機体を回収して撤退する。

 

「今回は負けを認めてやる。だが見ていろZ-BLUE! 俺はこんなところで終わる男じゃない!」

 

 しかし敗北を知ってもなお、ギュネイの目はギラギラと剣呑な光を放つのだった。 

 

 

 隊長格の二機の気配が戦場を離れて行くのを感じながら、私は深々とため息を吐いた。

 

 ニュータイプの思念を読み取るのって普通の人よりクリアに感じるから楽なんだけど、その分感情がモロに伝わってくるから疲れるんだよね。

 

 赤紫のザクモドキはともかく、もう一人の隊長格は真っ直ぐな人で本当に助かった。

 

 例の全裸マンみたいに歪んだ性的嗜好を持ってる人だったら、思念の読み取りが二度と出来なくなるところだったよ。

 

『本当に助かったよ。ありがとうね、ミユ』

 

「……カレンおねえさん、おつかれさま」

 

『カレン、時間が無い。平和祈念資料館へ急ぐぞ』

 

『僕達をフォローしてくれた彼女へは挨拶を含めて、この騒動を止めた後に伝えましょう』

 

「わかった」

 

 そう言うと紅蓮と2機のガンダムは通信を切って平和祈念資料館へと移動していった。    

 

「ミユちゃん、何をしたの?」

 

「……てきのうごきをカレンおねえさんたちにつたえた」

 

「こっちと同じ事をしたわけね」

 

 キャシーさんの質問に答えるとラムさんが納得したように頷いた。

 

「ネオジオンの部隊は撃退した。本艦も平和記念博物館を目指すぞ!」

 

「OK ボス!」

 

 再編もままならないマリーメイア軍残党の攻撃をピンポイントバリアで強引に突っ切った私達は、無事に平和祈念資料館へと辿り着く事が出来た。

 

 しかしそこで待っていたのは更なる難題だったのだ。

 

『我が軍を相手にここまでたどり着いた事は褒めてあげましょう。しかしこの資料館のシェルターに張られたシールドは突破できません』 

 

 マリーメイアが送って来た挑発に確認を行ったところ、たしかにシェルターには強力なシールドが張られていた。

 

「この出力では機動兵器では突破は難しいな。かといって本艦やスーパーロボットの火力では外務次官達も危険に晒してしまう」

 

 ジェフリー艦長が唸り声をあげていると、私の直感センサーがここに近づく何者かの強烈な決意を感じ取った。

 

「……かんちょ、うえ」

 

 私の声にクォーターのモニターが上空を映すと、そこには片方の羽をもぎ取られたボロボロのウイングゼロが資料館にゴツいライフルを向けていた。

 

『ウイングゼロ!?』

 

『ヒイロッ!』

 

 みんなが機体の状態からヒイロさんを心配する中、彼が通信を繋げたのはなんとマリーメイアだった。

 

『───確認する。シェルターシールドは完璧か?』

 

『な…なにを……』

 

『シールドは完璧なんだな?』

 

『勿論です。自分の無力さを思い知りなさい!』

 

『了解した』

 

 一瞬戸惑ったものの強気な返答を返すマリーメイアに、平坦な声でそう呟くヒイロさん。

 

 ……ううん、あれは平坦なんかじゃない。

 

 込められた決意が強すぎて、そう聞こえるだけだ。

 

「ウイングゼロから高エネルギー反応!」

 

『アイツ、本当にぶっ放すつもりだ! 全員ズラかれ!!』

 

 デュオさんの警告にクモの子を散らす様に退避するZ-BULEの機体達。

 

 皆が影響の及ばない位置へ移動した瞬間、ウイングゼロのライフルからもの凄いビームが放たれた。

 

 着弾と同時にもの凄い音を立てて吹き上がる爆炎。

 

 それでもシェルターを破る事はできないみたいだ。

 

 そしてシールドが健在である事を確認すると同時に放たれる二射目のビーム。

 

 夜空を切り裂く黄色い光の帯は大地を揺らして再び爆炎を巻き起こす。

 

「……すごい」

 

 その光景に私の口から思わず言葉が漏れる。

 

 威力もとんでもないけど驚くべきはヒイロさんの射撃精度だ。

  

 あれだけのビームをほとんどズレることなく、同じ場所に撃ち込んでいるのだから。

 

 反動やらなにやらで銃口がブレる事を考えると、あんな真似は普通出来ない。

 

『お……おのれぇ! 予備も含めて出せるサーペントは全て出せ!!』

 

 動揺したデキムの声と共に、平和祈念資料館の周りから次々と新たなサーペントが現れる。

 

『ヤロウ、まだこれだけの戦力を隠していたのか!?』

 

『奴の事だ。シェルターシールドを破れずに俺達が疲弊したところを圧し潰す為に予備戦力を隠していたのだろう。おそらくはプロバガンダとして、この戦場の光景も中継されているはずだ』  

 

『よくわかるな』

 

『奴とはオペレーション・メテオ以前から縁があるからな』

 

 デュオさんとトロワさんの会話を他所に、サーペント達はガトリング砲の銃口を上空に向ける。

 

 彼等の狙いはウイングゼロだ。

 

『みんな、ヒイロを護るぞ! 飛行可能な機体はウイングゼロの盾になれ! その他の者は敵機の掃討だ!!』

 

 アムロ大尉の指示によって、スーパーロボットを中心にして飛べる機体がウイングゼロの壁になり、その他のメンバーはサーペントへ襲い掛かる。

 

「艦長!」

 

「我々もウイングゼロの支援に入る。ピンポイントバリアの出力を最大限に上げておけ!」 

 

「……かんちょ、ミユもいく」 

 

「だめだ、危険すぎる」 

 

「……ウイングゼロはボロボロだった。なら、かべはおおいほうがいい」

 

「しかし……」

 

「クマさんはがんじょう。ビームにもつよい。だいじょうぶ」

 

 私がそう畳みかけると、ジェフリー艦長は少し悩む素振りを見せた後で首を縦に振った。

 

「───わかった。ただし、絶対に無理はするな」

 

「……ん!」

 

 ブリッジを飛び出した私は青カブトに運んでもらって、人型に変形したクォーターが移動する間にクマさんに乗り込んだ。

 

 リボンストライカーを全開にして格納庫から飛び出すと、飛行形態になったカツさんのリゼルがエンジンの辺りから煙を吹いて下降し始めていた。

 

『そのクマ……ミユか!』

 

「かわる。クォーターにもどって」

 

『けど……』

 

「……そのこはガンダムになる。こわしちゃダメ」

 

『わかった。無理はするなよ』

 

 帰艦するカツさんの穴を塞ぐ形でクマさんを移動させると途端にコクピットに振動が走った。

 

 モニターで下を見ればこちらに向かってくるのは銃弾にミサイル、さらには野太いビームの群れだ。

 

 火花に爆炎、そして弾けるビームがモニターを染める様に私は思わず目を閉じてしまった。

 

 盾になると覚悟を決めて出て来たけれど、やっぱり怖いものは怖い。

 

 それに戦場に出た所為か、さっきよりも強くマリーメイアの兵士達の思念が吹き付けてくるのだ。

 

 なんとかカットしようと頑張ってるけど、数の多い所為でとてもじゃないけど捌き切れない。

 

 グルグルと頭の中が回る不快感に必死に耐えていると、通信から切羽詰まった声が聞こえた。

 

『これ以上は……きゃあっ!?』 

 

『ファ!』

 

 ファさんの悲鳴に目を開けると、エンジンの部分から火を噴いたメタスが落下するのが見えた。

 

 助けに行こうと思っても二機分の穴が空いたらウイングゼロが撃墜されてしまう。

 

 地上ではメタスの落下に気付いた赤木さん達が救助に向かっているけど、それも間に合うかどうかわからない。

 

 自分の不甲斐なさに歯噛みしていると私の脳裏に一つの言葉が過った。

 

「……あしたをすくえ?」

 

 何の事だかさっぱり分からないでいると、突然メタスの真下に七色の光が溢れた。

 

 そして次の瞬間には、青と赤の巨大ロボットが現れてメタスを受け止めたんだ。

 

『バルディオス! それにゴッドシグマ!!』

 

 赤木さんの歓声を背に、バルディオスと呼ばれた青いロボットは私達と同じ高度まで上がってくる。

 

『ケガはないか、ファ』

 

『はい。ありがとうございます、オリバーさん』

 

『亜空間航行でなんとかZEXISのみんながいる場所に着いたのに、これはいったいどういう状況なんだ?』 

 

『マリン、闘志也。状況は後で説明する。今はウイングゼロを護ってくれ』

 

『みんながやっているように盾になればいいんだな』

 

『分かったぜ! 行くぞ、ジュリィ! キラケン!』

 

『おう! ゴッドシグマの頑丈さを見せてやる!!』

 

『あまり無茶はし過ぎるなよ、闘志也』

 

『マリンさん、ファさんは僕がクォーターまで運びます』

 

『頼む、ルカ』

 

『マリン、俺達も行くぞ!』

 

『ああ、気合を入れろよ雷太!』

 

 突如として現れたスーパーロボットに手が止まったのもつかの間、彼等が防御に回ると知った途端にマリーメイア軍から更なる攻撃が飛んでくる。

 

 クマさんやスーパーロボットはまだ健在だけど、モビルスーツやナイトメアは危険だ。

 

 なんとかしないとと思った時、ジェミニアと戦った時のようにクマさんの身体から赤い光が漏れ始めた。

 

『感応波レベルの上昇を感知。ラムダドライバを補助にしてサイコフィールドを展開するよ!』

 

 平仮名でこう表示されると、Z-BLUEを取り囲むように赤い障壁。

 

 それはビームや弾丸を容易く防ぎ、私達の真下にいたサーペント達を後方へと吹き飛ばした。

 

『このバリアは……』

 

『この感じ……ミユが張っているのか』

 

『ミユ! 大丈夫か、ミユ!』

 

 困惑するカミーユさんとアムロ大尉の声を押しのけるように、こちらを心配するシン兄の呼びかけが響く。

 

「……だいじょうぶ」

 

 銃弾と共に先ほどまで頭の中で響いていた兵隊たちの声が聞こえなくなったので応える余裕もできたけど、同時に私の中にこのままではダメだという思いも生まれていた。

 

 たしかに彼等は敵だし、ジェフリー艦長もテロリストの心に歩み寄るなと言っていた。

 

 でも、クマさんと外に出た私は彼等の持つ不平や不満に隠された本当の願いを知ってしまった。

 

 彼等は……ううん、彼等も地球を守りたいのだ。

 

 ADWの悲惨な戦争を繰り返させないという決意、トレーズさんの遺志を継ぐという忠義、もしくは地球にいる大切な誰かを想う愛情。

 

 理由は人それぞれだけど、その意志は本物だった。

 

 そして私には彼等の願いを否定する事はできない。

 

 だって、それは私が大好きなZ-BLUEのみんなが胸に秘めた物と同じなのだから。

 

 皆を護るために張った障壁、それが彼等の願いを拒絶する壁になった事を悲しく思っていると、私の後頭部に青カブトがしがみ付いて来た。

 

『少女よ、君はどうしたい?』

 

「……え?」 

 

 突然頭に響いた声に私は思わず身体を震わせる。

 

『君は彼等の意思を感じ取り、それを尊いと思った。ならば君はどうすべきだと思う?』

 

 どうしたいのか?

 

 どうすればいいのか?

 

 頭の中に浮かんだ疑問はグルグルと巡る。

 

 アムロ大尉はニュータイプは誤解なく他人と分かり合える可能性だと言った。

 

 私もそうだとするのなら、今こそその力を使うべきじゃないだろうか。

 

「……おなはし。みんなでおなはしする」

 

 マリーメイアの兵士達の想いをZ-BLUEに伝え、Z-BLUEの信念をマリーメイア軍に知ってもらう。

 

 地球を想う彼等の想いは同じなのだから、誤解なく伝える事が出来たらきっと不毛な戦いは終わる筈だ。

 

 あしゅら男爵や宇宙魔王にアブダクターと地球を狙う勢力は多い。

 

 きっとZ-BLUEだけじゃ手が足りなくなる時が来る。

 

 だから、彼等のような人達は無駄にしてはいけないんだ。

 

『ならば願うといい。その願いが君の心からの物なら機体はきっと力を貸してくれるだろう』

 

 私は深く息を吐くと、眼を閉じて声の言うように心から願った。

 

 思い浮かべるのは対話のテーブル。

 

 皆が想いを語り合える場。

 

 分かり合えるという希望。

 

 頭の中でイメージが明確になると同時に、クマさんが纏う光が赤から緑へと変わるのが分かった。

 

『同志達よ、君達の取り込んだラムダドライバは有効に利用させてもらう。当初の予定通り【ビースト】の手綱は貴方達ではなく彼女が握るべきだろう?』

 

 広く意識が広がっていく中、脳裏に浮かんでいた青カブトの姿が誰かのシルエットへと変わっていく。

 

 顏は分からないけど、青い騎士が着るような服に身を包んだ誰か。

 

 彼は私を優しげな目で見ている事はわかった。

 

『さあ、ムスヒの巫女の初舞台だ。エレガントに行こう』

 

 

 目を開くとクマさんの放つ緑色の光が周辺を覆っているのが見えた。

 

 見た目的には変化はそれだけだけど、中身はまったく別である。

 

 実はここにいる敵味方含めて全員の思念が繋がっていて、考えてる事が駄々洩れなのである。

 

 当然ながら皆さん大混乱。

 

 話し合いの為にこの場を作ったのに、みんな好き勝手に考えるものだから思念のキャッチボールどころかドッジボールですらない。

 

 なんというか、四方八方当てずっぽうという感じに想いが乱れ飛んでいる状態だ。

 

 何より拙いのは私がこの空間の仕様をさっぱり分からない事だろう。

 

「うにゅう……」

 

 というか、この空間を維持する事自体がかなりキツい。

 

 当然、人の心の中には悪意とかもあるから、それが来ると頭が痛むのだ。

 

 この状態だと正直1分維持できたら御の字だろう。

 

 その間にどうにかして場を纏めないのに……

 

 この場を作るサポートをした青カブトはいないし。

 

 人を煽ったのなら最後まで面倒を見ようよ……

 

 思わず途方に暮れそうになるのを頭を振って何とか踏みとどまる。

 

 現実逃避にはまだ早い。

 

 私がやった事なんだから最後まで責任を取らないと!

 

 意識を集中すると無規則だった思念達にある程度の指向性を持たせられる事に気が付いた。

 

 なのでZ-BLUEのみんなにはマリーメイア軍の想いを、マリーメイア軍にはスペースノイド以外の地球を狙う勢力の事を知ってもらう。

 

 もちろん私の想いも込みでだ。

 

 幸いな事にむこうはZ-BLUEが地球の守護者を担ってきたのを知っている。

    

 彼等の想いが本当なら共闘、もしくは停戦してくれるかもしれない。

 

 正直な事を言えば双方にはちゃんと話し合いをしてもらいたかったのだが、それをするには私の体力が足りなすぎる。

 

 この空間を作るのも、みんなの意識を繋げるのも何もかもが初めて尽くし。

 

 ここで高望みをしては大ポカをしてしまうだろう。

 

 ズキズキと痛む頭と時間と共に力が抜けて行く身体に歯を食いしばって活を入れていると、Z-BLUEの皆から温かい思いを感じた。

 

『いいじゃないか。多少やり方は間違ってもアイツ等の想いは俺達と一緒なんだ。軍にいられないのなら、大グレン団に入れてやるさ』

 

 シモンのアニキ。

 

『それなら竹尾ゼネラルカンパニーでもいいじゃん! これから忙しくなりそうだし、腕のいい社員は大歓迎だ!!』

 

『という事は私にも念願の部下ができるんですね!』

 

『相手は元とはいえ正規の軍人だ。追い越されなければいいな、木下』

 

『ひどいですよ、厚井常務~』

 

 ワッ太君と竹尾ゼネラルカンパニーのみんな。

 

『それならコスモクラッシャー隊でもいいな。なにせこっちはロゼがいるんだ、敵を迎え入れるのは初めてじゃない』

 

『大塚長官なら彼等の境遇を知れば温かく迎えてくれるでしょうしね』

 

 ケンジ隊長とタケルさん。

 

『おいおい、それならブルーフィクサーも行けるだろ』

 

『なにせこっちにはマリンの奴がいるんだ』

 

『S1星人の俺を仲間として受け入れたんだ、同じ地球人を拒む理由はないさ』

 

 ……青いロボットの人。

 

『思考ではなく相手の想いが自然と伝わってくる……』

 

『刹那の使うGN空間に似ているけど、なにかが違う』

 

『そうだな。ここはあれよりもニュータイプ同士の共感に近い』

 

『アムロ大尉……』

 

『カミーユ、バナージ、ここの感覚を忘れないようにしよう。これはきっと人の可能性の一つだ』

 

 アムロ大尉とカミーユさん。

 

 というかバナージさんもニュータイプだったのか……

 

 次々とZ-BLUEの皆が私の想いに賛同していくと、今度はマリーメイア軍の方からも少しずつ温かい思いが現れ始める。

 

『アイツ等、お人好しだよな。というか、あんな小さい女の子もいたのかよ!?』

 

『どう見てもマリーメイア様より小さいんだけど! あんな女の子を戦場に出すとか何考えてんの!?』

 

『なんかネオジオンのヤバいロリコンに狙われてるから保護してるらしいぞ。あとあのクマロボで勝手に出て行くからむこうも手を焼いてるんだとさ。むこうの兄貴分って奴が言ってた』

 

『ネオジオンのロリコン……シャア・アズナブルか』

 

『シャア・アズナブルだな』

 

『シャア! シャア! シャア!』

 

 なんだか話題が変な方向に行ってるんだけど……

 

『うん? なんかシャアじゃないらしいぞ。フルフロンタルってパチモンらしい』

 

『フルフロンタルって……全裸を自称するとかどんな奴なんだ?』

 

『まごう事なき変態』

 

『なんか動画みたいな思念が流れてきた……って、こりゃヒデェ』

 

『全裸でモビルスーツに乗る上にアゴい笑顔で幼女に告白するとか……ネオジオンの奴等、未来に逝きすぎだろ』

 

『素でエグい』

 

 もう変態の話はいいんだよ!

 

 誰だ! あのイメージを憶えていたのは!?

 

『ともかく、もうデキムの爺さん担ぐのは無理だな。あの子の他にも子供いるみたいだし、もう銃口向けられねーや』

 

『連邦政府だけならともかくドクターヘルの残党に宇宙魔王、他には使徒なんて化け物までいるんだ。トレーズ閣下の遺志を継ぐ為とはいえ、さすがにな』

 

『地球圏安定RTAではクロノの早期打倒は必須』

 

『その辺は正義のミカタ様に任せるさ。閣下や皇帝ルルーシュを倒したZEXISだ、そのくらいはやってくれるだろ』

 

『なら、俺等の知りうる情報を伝えとくべきだな。そう言う意味じゃあこの空間は便利でいいや』

 

『テレパシーは漢の夢』

 

 なんだかトンデモない情報が流れて来たぞ。

 

 地球連邦を裏から牛耳る組織があるそうだ。

 

 デキムはそいつ等の手先で、今回の反乱は地球市民のスペースノイドへの反感を煽る事を目的にしていたらしい。

 

 そして、むこうの軍にいる人の大半はそれを承知の上でデキムを担ぎ上げていたのだ。

 

 全てはトレーズ・クシュリナーダがADWで行おうとした『クロノ』という地球の影の支配者を打倒する為。

 

 その為にバートン財団の資金と軍事力、そしてこの決起を利用していたんだって。

 

 ネオジオンと同盟を組んだのも彼等が憎んでいたのは現連邦政府なので、『クロノ』と現政府を倒した後、新政権とスペースノイドの交渉の窓口にするつもりだったそうだ。

 

 それで肝心の『クロノ』についての情報だけど、彼等もADWでトレーズに存在を聞いただけで詳しい事は知らないらしい。

 

 でもってADWで倒せなかった以上、融合したこの世界でもいるだろうという事で動いていたそうな。

 

 うーむ、かなりふわっとした情報だけど、それでもADWの人達が信じてたって事はマリーメイアのお父さんは凄い人だったのだろう。

 

 というか、もう限界である。

 

 もの凄くグダグダだったけど、この空間って役に立ったのだろうか?

 

 私のギブアップと白旗を上げると、クマさんから出ていた緑の光は消える。

 

 実際に流れていた時間は1分ほどだけど、その短い時間が戦場に与えた影響は大きかった。

 

 なんと地上にいる全てのサーペント達が私達に向けていた武器を降ろしているのだ。

 

 中にはコクピットから降りる人や壊れた機体の上で白旗を振っている人もいる。

 

 ともかく、これなら邪魔は入らないはずだ。

 

 タイムリミットまであと二分、政府が戦術兵器を使う前にカタを付けないと!

 

『撃て、ヒイロ!!』

 

 ゼクスさんの声と共にウイングゼロのライフルから第三射が放たれる。

 

 爆炎と共に大穴が空くシェルター、そして大破して地面へと落ちるウイングゼロ。

 

 私も慌てて追っかけたけど間に合わなかった。

 

「……あお、ついてきて」

 

 私はウイングゼロのすぐ近くに着地すると、青カブトと共にクマさんから降りる。

 

 モニターに映るウイングゼロは顏や胴体まで破損が及んでいる。

 

 となれば、中でヒイロさんがケガをして動けない可能性が高い。

 

 青カブトに運んでもらってウイングゼロの胴体へ登ってみると、なんとウイングゼロはもぬけの空だった。

 

 慌てた私がチビからの思念にシェルターの方を向いてみると、そこには自分で空けた穴を駆け下りて行くヒイロさんの姿が。

 

「……あお、チビ。おっかける」 

 

 こちらの指示で私を担いで走り出す青カブトと、索敵の為に宙へと舞うチビパイルダー。

 

 デカデカと空いたところどころ熱気が籠る穴の中をヒイロさんを求めて下っていると、底に着地した先で大きな部屋へ辿り着いた。

 

 そこにはマリーメイアを庇おうとするドーリアン外務次官に、あろう事かデキムが銃を突き付けているではないか。

 

「あお!」

 

 此方の意思を汲んで青カブトは私を抱えたまま猛スピードで二人の前に出る。

 

「このガキッ! どこから現れた!!」

 

「いけません!」

 

 部屋に響くデキムの怒声とドーリアン外務次官の悲鳴。

 

 情けない事に私は向けられた銃口とデキムの剥き出しの殺意が怖くて思わず目を閉じてしまった。

 

 そして室内に響き渡る銃声と、間髪を容れずに聞こえた何かが弾かれる金属音。

 

 青カブトは動いていないし、おそらくはチビも何もできなかったはずだ。

 

 一体何があったのかとおそるおそる目を開いてみると、私を庇うように立つ大きな背中が見えた。

 

 肩にトゲが生えた黄色い金属のパッドが付いたコートに手には抜身の刀。

 

 そしてその顔を覆うのは……ガンダムみたいな角と尻尾が付いた黒・赤・黄色の覆面。

 

「き……貴様! 何者だ!?」

 

「私の名は───シュバルツ・ブルーダー!!」

 

(へ……変態だーーーーーーー!!)

 

 私を助けたのはまごう事なき不審人物だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。