幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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前回のあらすじ

超(ゲルマン)忍降臨。


幼女と怪しい忍者

 シュバルツ・ブルーダー。

 

 突如として現れた怪人に、私を始めとして半壊した司令部にいる人間達は茫然となった。

 

 中にはマリーメイア軍の兵士達もいたんだけど、そうなっても仕方が無いと思う。

 

 刀や世紀末チックな飾りがついたコートは百歩譲っていいとしよう。

 

 しかしドイツ国旗の色をした覆面は流石に傾奇過ぎだと思うの。

 

 異様な雰囲気に包まれた室内で最初に正気を取り戻したのは意外な事にデキムのお爺ちゃんだった。

 

「この不審者め! ワシの邪魔をするのなら───」

 

 馬鹿にされたと思ったのか、顏が赤黒くなるくらい怒気を放ちながら拳銃をシュバルツさんへ向けるデキム。

 

 しかしそれが再び弾を吐き出す事は無かった。

 

 奴が引き金を引くよりも早く、青カブトが伸ばした『くませいばー』を一閃させたからだ。

 

 振り抜かれたビームの刃によって、いとも簡単に両断されるデキムの拳銃。

 

「ぐおおっ!?」

 

 灼け溶けた鉄が付いた手を押さえて苦痛の声を上げるデキムだが、その隙を見逃さない者がいた。

 

 そう、シュバルツさんである。

 

「デキム・バートン! ここらで引導を渡してくれるわッッ!!」

 

「ヒィッ!?」

 

 とんでもないスピードで駆けるシュバルツさんに悲鳴を上げるデキム。

 

「シュトゥルム! ウント! ドランクゥゥゥッ!!」

 

 気合一閃、猛烈な勢いで回転したシュバルツさんは風を巻いてデキムへと突撃する。

 

 というか、身体が分からなくなるくらいに回ってるのに顔はしっかり見えるってどうなってるの!?

 

「ぐわああああああっ!?」

 

 もの凄く痛そうな音が室内に響くと同時に竜巻と化したシュバルツさんに吹き飛ばされるデキム。

 

 だが、シュバルツさんの猛攻はここで終わりではなかった。

 

 力なく宙を舞うデキムを追って飛んだシュバルツさんは空中で奴の腰を両手でガッチリとホールド。

 

「すぅおおあああっ!!」

 

「ウギャーーーーー!?」

 

 そして逆さになると、先ほどの勢いそのままにきりもみ回転しながらデキムの頭を床に叩きつけたのだ。

 

 あれは何かで見た覚えがあるぞ。

 

 たしか忍者の奥義の一つで『飯綱落とし』だったはず!

 

「ジジイが死んだ!?」

 

「「「「「「この人でなしッッ!!」」」」」」

 

 この惨劇を見たマリーメイア軍の面々の反応がこれである。

 

 さっきの対話でもそうだったけど、この人達ってなんというかノリがいいなぁ。

 

 さて、起こった時は技の派手さと演出に目を奪われて気付かなかったけど、これって普通に殺人事案ではないだろうか?

 

 そう言えば、生身で人が死ぬ光景を見るのって生まれて初めてだ。

 

 冷静になってそう思うと身体の芯から冷たいモノがこみあげてくる。

 

「どうしたのですか?」

 

 震え始めた私に気が付いたのだろう、後ろにいたマリーメイアが声を掛けてくる。

 

 振り返ればドーリアン外務次官やナナリー代表も心配そうに見つめている。

 

「……おじいちゃん、しんじゃった」

 

「人が死ぬのが怖いのですね?」

 

「心配するな、ミユ」

 

 ドーリアン外務次官の言葉に頷くと私の傍にシュバルツさんが戻ってくる。

 

 というか私、名前教えてないよね?

 

「奴にはゲルマン忍術の奥義の一つ、『ミネウチ』を施してある。いかなるダメージを受けようとも命を落とす事は無い」

 

 その言葉と同時に血反吐と共に苦鳴を挙げるデキム。

 

 どう見ても死んだとしか思えない光景だったのに、ゲルマン忍法って超スゲー!! 

 

「さて……そこに潜んでいるのは分かっているぞ。姿を現せ、怪しい仮面の男の一党よ!」

 

『怪しい仮面とか貴様が言うな!!』

 

 シュバルツさんの一喝で建物の影から現れたのは、ヒイロさんとレディ・アンっていう人に栗色の髪と翡翠の眼をしたお兄さん。

 

 そしてフルフェイスの仮面とマント、全身タイツを身に着けた変態だった。

 

 なんか何時ぞやの皇帝様から感じたイメージそのまんまの格好なんだけど……まさか中身はあの美人さんだったりするのか?

 

「……がっしゅうこくニッポンのひと」

 

「なんか妙な憶えられ方してるね」

 

『どうしてそこをピンポイントなんだ……』

 

 茶髪のお兄さんと仮面さんが何か文句を言っているが仕方がないのだ。

 

 だって、そんな奇抜な恰好をした人はそれ以外に見た事が無いんだもの。

 

「ヒイロ!」

 

「無事か、リリーナ?」

 

「はい。あの子とあの方に助けてもらいました」

 

「マリーメイア様ですね」

 

「貴方は?」

 

「私はレディ・アン。貴女の御父上に仕えておりました」

 

「スザクさん、おに……ゼロ」

 

『ナナリー代表、ご無事で何よりです』

 

「ケガは無いかい?」

 

 駆け寄っていく外務次官達と思い思いに言葉を交わす仮面の人達一行。

 

 どうやらあの仮面さんはナナリー代表の知り合いらしい。

 

 ヒイロさんと外務次官は知っていたけど、他の人達は意外だったなぁ。

 

 そんな事を考えながらポケーッと彼等を見つめていると、シュバルツさんの気配が再び消えた。

 

 その直後にまた痛そうな音が響くと、機材や瓦礫の陰からバイザーと一体化したヘルメットに貫頭衣に似た服を着た男たちが吹き飛ばされてくる。

 

「尻尾を出したな、クロノの手先め。デキムの口を封じるつもりだったのだろうが、そうはいかん!」

 

 そして高く積み上げられた瓦礫の上に立ち、堂々とした口上を放ちながら両腕を組むシュバルツさん。

 

 不審者たちがマリーメイアの兵隊達に拘束されるのを確認した後、彼は鋭い視線をこちらに向ける。

 

「ミユよ、心を鍛えるのだ!」

 

「……う?」

 

 突然の言葉に戸惑う私にシュバルツさんは続ける。

 

「お前の使命は数多の心を繋ぐ事にある。だが、それは自分の心で相手の心へ触れる事。故に悪意を向けられる事もあれば、手酷い言葉をぶつけられる時もあろう」

 

 これはもしかしてあの空間の事を言っているのだろうか?

 

「しかぁしッ! それに屈してはならん!! 何故なら此度のようにお前にしか拾えぬ叫びがある! お前の手で治める事が出来る争いがあるのだ!!」

 

 シュバルツさんの言葉に込められたもの凄い意志に私は答えを返す事ができなかった。

 

 突風のように強い想い、だけどそれには押しつけやこちらの考えを押さえつけるような不快さはない。

 

 だって、あの人が私を心配している事が言葉の端々から伝わってくるのだから。

 

「……がんばる」

 

 だから私は彼の目をまっすぐに見て言葉を返す。

 

 これは口先のだけの言葉なんかじゃ断じてない。

 

 きっと破っちゃいけない約束なんだ。

 

「いい目だ、弟を思い出す。ではまた会おう、ムスヒの巫女よ。───さらばだ!!」

 

 ほんの一瞬だけ優しそうな笑みを浮かべたシュバルツさんは、現れた時のように目にも止まらぬ速さで姿を消した。

 

 最初は怪しいと思ったけど、どうやら彼は正義のミカタのようだ。

 

 少なくとも信頼してもいい人物なのは間違いないだろう。

 

「あの男、何者なのだ?」

 

「今回に関しては我々の敵じゃない様でしたが……」

 

『ミユ。君はあの男を知っているのか?』

 

 アンさんと茶髪のお兄さんが話し合い、仮面の男が私に問いを投げてくる。

 

 シュバルツさんの態度を見れば私の関係者だと思うのは当然だし答えるのも吝かではないが、その前にやらなくてはならない事がある。

 

「……ミユ。はじめまして」

 

 言葉と共に頭を下げるとみんなはポカンとしていた。

 

 初対面の人が結構いるはずなんだけど、なにかおかしかったかな?

 

「そ…そういえば初対面だったね。僕は枢木スザク、よろしく」

 

 茶髪のお兄さんはスザクさんというらしい。

 

 憶えておこう。

 

「私はレディ・アン。君を保護しているZ-BLUEの上役だ」

 

 えっと、モニター越しですけど知ってます。

 

 いつもお世話になってます、はい。

 

「リリーナ・ドーリアンです。先ほどはありがとう。ですが、あなたのような小さな女の子があんな無茶をしてはいけませんよ」

 

 返す言葉もございません。

 

 というかヒイロさんを膝枕してるんですけど、大丈夫なんだろうか?

 

 え、疲れて眠ってるだけ?

 

 ウイングゼロの壊れ具合からするとそんな程度で済まないはずなんだけど……凄いよ、ヒイロさん。

 

「マリーメイア・クシュリナーダです。こんなに小さいのに、まったく無茶をするものですね」

 

 身体が咄嗟に動いたから仕方がないんだよ。

 

 あと青カブトがいればサイコフィールドを張れるはずだから、その辺にも期待しました。

 

「ナナリー・ヴィ・ブリタニアです。よろしくお願いしますね」

 

 ふわっふわのお姫様みたいなお姉さんである。

 

 車椅子に乗ってるのを見るに、きっと足が悪いんだろう。

 

 UGセルで何とかならないかな?

 

「私はゼロだ。Z-BLUEにいるのなら行動を共にする事もあるだろう。よろしく頼む」

 

 ニッポンポンの人はゼロというらしい。

 

 今分かったけど、中の人はあのルルーシュ皇帝だ。

 

 あんな凄い美人さんがこんな残念な恰好をするとは、世の中というのは儘ならないものである。

 

 事情は分からないけど仮面で顔を隠している以上は本名で呼んではいけないのだろう。

 

『さて、これで気が済んだろう。先ほどの質問に答えてくれるかな?』

 

「……しらない。はじめてあった」

 

『その割には随分と君の事を知っていたようだが?』

 

「……ミユもミユのことしらない」

 

 そう言うと何故かみんなは気まずそうに黙ってしまった。

 

 流石にこの追及の躱し方は卑怯かな。

 

 私の素性はアンさんから伝わってるだろうし。

 

 というか、青カブトも言ってたけど『ムスヒの巫女』って何なんだろう?

 

『では、君の縁者ではないのだな?』

 

「……たぶん」

 

 もしかしたら私を作った人と何か繋がりがあるかもしれないけどね。

 

『───わかった。時間を取らせてしまってすまないな』

 

「もうすぐZ-BLUEの皆も来ると思うから、ここで待っていてね」

 

 そう言うとゼロはスザクのお兄さんを連れて、さっきシュバルツさんに吹っ飛ばされた不審者のところに行ってしまった。

 

 アンさんもデキムを拘束したマリーメイアの兵士と話し合っているし。

 

 みんなも事後処理に動くのなら、私もやるべきことをやってしまおう。

 

「……リリーナおねえさん」

 

「なんですか?」

 

「マリーメイアのへいしさんたち、あんまりおこらないであげて。みんなもちきゅうをまもるためにがんばってたから」

 

「ええ、わかりました」

 

 私のお願いにしっかりと力強く頷く外務次官。

 

 これならきっと兵士達は悪いようにはされないだろう。

 

 全ての肩の荷が下りてホッとした私は、この時初めてお股に違和感がある事に気が付いた。

 

 ……なんという事だろうか、どうやらまたやってしまったらしい。

 

 思えば銃弾の雨を相手に盾になったり、生まれて初めて生身で拳銃を向けられたりとチビっても仕方がない事は多かった。

 

 ここは自分を恥じるよりも処理する事を考えるべきだろう。

 

 そう気を取り直した私は近くにいた兵士さんに声を掛けた。

 

「……おトイレ、どこ?」

 

「トイレか? トイレはな……」

 

 トイレの場所を指し示そうとして固まってしまった兵士さんの視線の先を追いかけてみると、そこにはデカデカと瓦礫が鎮座していた。

 

「ごめんな、壊れちゃったみたいだ」

 

 なんという事だろう、このアクシデントは予想外だ。

 

 私は内心で臍を噛んだ。

 

 普通なら迎えが来るまでこのまま我慢するべきなんだろうが、それをするには幼女ボディには致命的欠点があった。

 

 実はこの身体、地味に肌が弱い。

 

 なので汚れた下着を履きっぱなしにしているとおまた、特に内ももの部分がカブれてしまうのである。

 

 かゆいし、かいたら皮がめくれて痛いし、歩いてるだけで内股が擦れて痛くなるしと、以前なった時は本当に苦しめられたのだ。

 

「……しかたない」

 

 覚悟を決めた私は被っていたクマさんメットを外す為に手を掛ける。

 

 このメットを脱ぐのは何度やっても慣れないんだよね。

 

 青カブトは思念を送っても手伝ってくれないし、チビが胴体からマジックハンドを出して助けてくれなかったらもっと苦労してたよ。

 

 メットが外れたらあとは簡単。

 

 首からおまたまであるファスナーを降ろせば、メットの重みで自然と脱げるって寸法である。

 

 中はけっこう汗を掻いていたので、シェルターのひんやりした空気が気持ちがいい。

 

 ちなみに今回はちゃんとシャツを着ているのでパンイチじゃないぞ。

 

 あとはザパッとパンツを脱いでもう一度クマさんスーツを着るだけ!

 

 勢いよくパンツを降ろそうとしたのだが、何故か手が下がらない。

 

 何奴!? と視線を巡らせると凄みのある笑みを浮かべたナナリー代表とマリーメイアが私の手をガッチリと掴んでいた。

 

「何をしているのですか?」 

 

 ナナリー代表の威圧タップリの声に観念して事情を説明すると、何故か外務次官やアンさん、さらにはゼロやスザクお兄さんまで加わって『淑女とは何たるか』という説教を、Z-BLUEのみんなが来るまで聞かされることになった。

 

 あと、私の思念が駄々洩れだったのだろう。

 

 デスティニーで乗り込んできたシン兄がコクピットから出るなり『ミユ! パンツ持ってきたぞ!!』と叫んだ所為で、マリーメイアの兵士達から『最強のパンツデリバリーお兄さん』と呼ばれるようになってしまった。

 

 シン兄、本当に申し訳ない。

 

 

 

 

 マリーメイアの反乱が終わって数時間。

 

 一軍を相手取った激戦によって当直メンバー以外のZ-BLUEのメンバーが深い眠りに就いている頃、クォーターの格納庫に潜む一つの影があった。

 

 それは丸みのあるずんぐりとした身体を持つ少々不格好なロボットだった。

 

 ジェニオンの操縦者であるヒビキ・カミシロが見ればきっと声を荒らげたであろう。

 

 『今までどこに行っていたんだ、AG!?』と。

 

「まさか並行世界でも私と同じ事を考えている者がいたとは思いませんでした。しかも異なるアプローチで奴等を滅ぼす機体を作り上げるなんてねぇ。さすがは『G』の名のもとにあまねく並行世界を観測・管理するシステムなだけあります」

 

 胴体に備わった液晶ディスプレイには子供の落書きのような顔が神妙な表情を浮かべている。

 

「しかもあのお嬢さんの感応能力は異常の一言、下手に接触すれば私の正体がバレてしまいます」

 

 『本当は店でも開きながら色々と仕込みをしたかったのに、計画が無茶苦茶だ』と憤りを隠さないAG。

 

 彼はジェニオンの前に立つとロボットの身体には似合わない重々しいため息を吐いた。

 

「とは言っても、ジェニオンもスズネ先生も諦める事ができません。───あの少女には消えてもらった方がいいかもしれませんね」

 

 数多の並行世界と娘一人の命、比べるべくもない。

 

 そうほくそ笑むAGは気付いていなかった。

 

 暗い格納庫の中でクマと鋼の魔神が、彼の方を見てその目を光らせている事を。

 

  




このあとAG君が生き残る方法

1.ハンサムなマスコットAGは突如反撃のアイデアがひらめく。

2.パートナーであるヒビキが気付いて助けてくれる。

3.死あるのみ。現実は非常である。

「絶望! 突きつけられた答えは③ッ! 現実は非情なりッ!!」
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