幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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 お待たせしました。

 みんな大好き、某赤い人の出番です。
 


幼女と赤い変態 その2

 どうも、スパイ発見という幼女には荷が重すぎる事件に遭遇して泣きそうになったミユです。

 

 あの騒ぎから4日、私が捕らえたスパイは元気にエレメントやシンジお兄さん達と親交を深めている。

 

 ダグザ中佐が言うには、ネオディーバの司令って人が来て尋問や処分に待ったを掛けた結果、監視付きで泳がせる事になったんだってさ。

 

 まあ、私はジェフリー艦長に事の次第を報告したらお役御免だったので、上の決定に異議を唱えるなんて事はしません。

 

 『じゃあ、どうするんだ?』とか聞かれても困るだけだしね。

 

 あと何でダグザ中佐がわざわざ私に教えてくれたかというと、実はエコーズの皆と私は仲がいいのだ。

 

 そこ、意外とか似合わないなんて言わない。

 

 あの人達、顏が厳ついけど優しい人が多いのだ。

 

 エコーズ隊の皆も他の連邦軍の人に怖がられるの地味に気にしてるみたいだしさ。

 

 私がダグザ中佐達と知り合ったのは初めて全裸の変態に襲われた後の事だった。

 

 戦いではクマさんを駆使してザクモドキをぶっ飛ばしていた私だが、変態にロックオンされたという事実は堪えていた。

 

 そうして半泣きでプルプルしていた私をブライト艦長も不憫に思っていたのだろう、ネオジオンが目を付けるニュータイプの保護という名目でエコーズ隊に護衛をお願いしてくれたのだ。

 

 コンロイさんの話では本当はアナハイムのお偉いさんを優先しないといけないそうなんだけど、その人があまり命令を出さないので空いた時間で私を守ってくれてるんだってさ。

 

 その代わり、クマさんに乗るとか危ない事をするとみんなの説教の後でお小言を貰うんだけどね。

 

 最初は私の護衛なんて面倒じゃないかと思ってたんだけど、エコーズのみんなは割と乗り気だったんだ。

 

 どうも自分達を怖がらずに接してるのがツボに入ったらしい。

 

 今ではさりげなくお菓子をくれたり、任務でどこかに出かけたらぬいぐるみを買ってきてくれたり、私は半ば部隊のマスコット扱いである。

 

 というか、エコーズのみんなは優しい人が多いから怖がる理由なんて無いんだけどなぁ。

 

 もしかして連邦軍での待遇が悪いんだろうか?

 

 ともかく、こうしてスパイ事件は一応の幕を閉じたのだが、ダグザ少佐が立ち去った後で私は不思議な人と会った。

 

 それは褐色の肌に長髪で片目に眼帯を付けた太陽と同じ瞳をもつオジサンだった。

 

 彼は私を見ると不敵な笑みを浮かべながらこう言った。

 

『己の力の使い方を知れ。お前の力の本質は他者を理解する為にある。何かを暴く為では断じてない』 

 

 言われたことが理解できなくて首をかしげていると、彼は私の頭をポンと叩いて立ち去って行った。

 

 その時に頭の中に浮かんだのは太陽の色に輝く翼だった。

 

 何とも怪しいおっちゃんだったが悪意は感じなかったので悪い人じゃないのだろう。

 

 それからジェフリー艦長からスパイの件については他言無用と言われたのだけど、シン兄には寝る前に伝えておきました。

 

 『どうして俺に教えてくれるんだ?』って聞かれたので『……かぞくにかくしごと、だめ』って答えたらもの凄くイイ笑顔で頭を撫でられた。

 

 気持ちよかったけど、そのせいで髪の毛がグチャグチャになったのがムカッと来たから、お返しにタックルからお腹に頭をグリグリ押し付けて、さらには上に乗ったまま寝てやった。

 

 私の事を甘く見てはいけない、幼女だって偶には反撃するのだ。

 

 さて、たった4日といってもそこはZ-BLUE、平穏無事という訳が無かった。

 

 アクエリア市に立ち寄ればアブダクターの襲撃にあい、使徒が現れたと聞けば機械獣の妨害を押しのけて迎撃に出向く。

 

 こんな感じでたった4日の中で2度も戦闘があったのだ。

 

 ちなみに出撃を禁じられていた私はクォーターのブリッジでマスコット兼レーダーをやっておりました。

 

 とりあえず、ブロッケンとか言うおじさんは首を脇に抱えるんじゃなくてちゃんと着けた方がいいと思います。

 

 そんな中で新たな仲間としてエヴァ2号機のパイロット、式波・アスカ・ラングレーって人が合流したんだけど、これまた取っ付きにくそうなお姉さんだった。

 

 まず功名心が凄いので、他のZ-BLUEの人達に対して対抗心が凄い。

 

 あとプライドもすっごく高いみたいなので態度もかなり高圧的だ。

 

 使徒との戦闘が終わったあと心配になってハンガーに顔を出したら、私を見た第一声が『なんでこんなところにガキがいんのよ』だった。

 

 疑問は尤もなんだけど、初対面の人には挨拶するのが礼儀の基本だと幼女は思います。

 

 ミサトお姉さんの話だと大尉さんらしいので、舐められないようにしているというのもあるのかもしれないけどさ。

 

 そんな彼女が対抗心を剥き出しにするのは、やはり同じパイロットのシンジお兄さんとレイお姉さんだった。

 

 シンジお兄さんは基本大人しい性格なので、彼女の態度にも驚きながらも苦笑い。

 

 レイお姉さんに関しては……うん、彼女の言葉をまったく聞いてませんでした。

 

 だって、彼女は私のお腹をひたすらプニプニしてたんだもん。

 

 ちなみに私のお腹を触っていたレイお姉さんから伝わってきたのは、仰向けになった子猫のお腹をくすぐって『コチョコチョ、パっ!』ってしている動画だった。

 

 もしかして私って彼女から愛玩動物として見られているのだろうか……

 

 それはともかく、幼女としてはお腹を触るのはお風呂だけにしてほしいところだが、『頑張ったご褒美』と言われては断る事はできない。

 

 現に二号機が最後の最後で止めを外した使徒を倒したのって、レイお姉さんの駆る零号機だったしさ。

 

 というか使徒の弱点に刺さったボウガンの矢を楔に利用するのは分かるんだけど、どうしてその矢に向けてさらに矢を重ねちゃうのかなぁ。

 

 あんな何本も矢が縦に重なった状態で飛び蹴りなんて放ったら、途中で崩れちゃうに決まってるじゃん。

 

 あの時はシンジお兄さんが踏み台になって、レイお姉さんが思いっきり最初に刺さっていた矢を叩き込んだから良かったけどさ。

 

 私も戦闘経験なんて数える程しか無いけど、真剣勝負で見栄を意識してると危ないよ?

 

 私が言ったところで聞いてくれそうになかったので後でミサトお姉さんに忠告はしておいたけど、もしかしておせっかいだっただろうか?

 

 そんなこんなで日本を離れた私達は、今は北米へ向けて移動しているところだ。

 

 理由はなんとブライト艦長率いるラー・カイラムと合流するため。

 

 そんな中、私は部屋から出られない程にとってもテンションが低い。

 

 もちろん父性溢れるブライト艦長と会えるのはとっても嬉しい。

 

 でもそれ以上に私の直感レーダーが嫌な予感をビンビンと伝えてくるのだ。

 

 正直に言えばこのままふて寝をして過ごしたいところだが、私とてZ-BLUEの一員なのだからそういう訳にはいかない。

 

 有事に備えてまずは腹を満たさねばならないだろう。

 

 そんな訳で食堂でお子様ランチをせっせと攻略していると、非常警戒のアラームが鳴り響いた。

 

『各員に告ぐ! 連邦軍マイノット基地にネオ・ジオンの部隊が降下したと情報が入った。本艦はこれより基地の支援に向かう。なお、ラー・カイラムとは現地での合流となる。総員、第一種警戒体制へ移行せよ!!』

 

「マイノット基地って……」

 

「たしか核弾頭の保管場所の一つって言ってたよな」

 

 食堂から去っていく職員さんの言葉を聞いて、私はゆっくり味わっていたプリンを口に掻き込んだ。

 

 核兵器、かつて日本に生きていた者として絶対にそんなモノを使わせるわけにはいかない。

 

 あと、雑な食べ方を強いられたプリンの恨みも晴らす必要がある。

 

 格納庫で他の皆に見つからない様にクマさんに乗り込むと、私はブリッジのジェフリー艦長へ通信を繋げた。

 

『ミユ、お前はまた勝手な事を……』

 

 ディスプレイに映るジェフリー艦長はあきれ顔で頭を抱えていた。

 

 いつもながら大変申し訳ない。

 

 けれど今回は……いや、今回も引くわけにはいかないんだ。

 

「……かくはつかっちゃダメ。つかったら、ひどいことになる」 

 

『お前は何を知っているんだ?』

 

「……クマさんがおしえてくれた。かくをおとされた『にほん』ってくにのこと」

 

 私がそう言うとジェフリー艦長は息をのんだ。

 

 もちろん、クマさんが教えたと言うのはタダの方便だ。

 

 けれど歴史の成績が悪かった私でも知っている。

 

 人の頭上に落ちた核兵器が何をもたらしたのかを。

 

 漫画・アニメ・小説・伝記・体験談。

 

 そのどれもが口をそろえて言っていた。

 

 ───この世の地獄だと。

 

 そして辛うじて生き残った人達も放射線被ばくで長らく苦しめ、せっかく拾った命すら奪い去っていく。

 

 私の記憶より数段科学が進んだこの時代には、核を上回る兵器なんてたくさんあるのだろう。

 

 それでも、あの兵器を人に使っていい理由になんてならない。

 

 だから私は核を狙うネオ・ジオンの企みを阻止しないといけないんだ。

 

 史上初めて核兵器を落とされた国に生きた者として。

 

「……ごほんもマンガも、いっぱいひとがしんで、くるしんでた。とめなきゃダメ」 

 

『───まったく妙な入れ知恵ばかりだな、そのクマは』

 

 私の顔をジッと見つめていたジェフリー艦長は、目を閉じると深々とため息を吐いた。

 

『いいだろう、出撃を許可する』

 

「……ありがと」

 

『ただし、独断専行は絶対にするな。常に誰かと共に行動する事を心がけろ』

 

「……ん」

 

『クォーターから各機へ! 事態の重大さからマイノット基地へ先行していたラー・カイラムから、ネオ・ジオンの降下部隊と交戦中と連絡があった! 現在は基地から距離500m、各機はこれより出撃し、即座にラー・カイラム隊の援護に回れ!!』

 

 ジェフリー艦長の叱咤と共に格納庫のハッチが重い音を立てて口を開ける。

 

 その先に広がるのは一面の青い空だ。

 

『各機、発進どうぞ!』 

 

 次々と飛び立っていくZ-BLUEの機体達。

 

 そうして間を置かずに私の番がくる。

 

「……ミユ。クマさん、いってきます」

 

 気合を入れて頭の中にイメージを浮かべると、尾っぽのコネクタを通してクマさんはその通りに動いてくれる。

 

 カタパルトでモニターの景色が高速で動く中、私は空へと飛び立つのだった。

 

 

 

 

 リボンストライカーを吹かして乗り込んだマイノット基地はすでに戦場と化していた。

 

 基地周辺にはモスグリーンのザクモドキや紫色や灰色のずんぐりとした十字顏のモビルスーツが陣取っており、

 

 その背後にはブリュッセルで遭遇した緑と黄色の隊長機と赤紫のザクモドキ。

 

 そして白い面長の機体に赤い機体が二機控えている。

 

 どうやらあの十字顏達が基地から核弾頭を運び出しているようで、アムロさん達が奴等を迎撃しようとしてる。

 

『艦長! Z-BLUEの増援です!!』 

 

『各機、こちらはラー・カイラム艦長のブライト・ノアだ! 現在、基地内に保管されている核弾頭の約半数が奪取されている』

 

 もう半分取られているのか……

 

 私は内心で舌打ちを漏らす。

 

 久しぶりに聞いたブライト艦長の声もこんな状況では嬉しいと思う暇もない。

 

『これ以上奴等に弾頭を渡すワケにはいかん! 各員は輸送部隊を優先して叩け!!』

 

『『『『『了解!!』』』』』

 

 ブライト艦長の指示で思い思いに散らばるZ-BLUEの皆。

 

「ファおねえさん。ちょっとの間、わたしをまもって」  

 

 そんな中、私はお守りとして残ってくれているファさんに声を掛ける。

 

『どうするの?』

 

「あのひとたちがどこにかくをもっていくか、たしかめる」

 

 私はそう言うと意識を集中させる。

 

 ブリュッセルの一件でサイコフィールドやラムダ・ドライバって機械の使い方もなんとなくわかった。

 

 これならより深くネオ・ジオンの人達の意識、そのより深い場所に触れる事が出来るはずだ。

 

 周囲を映すモニターがクマさんの赤い光に包まれる中、シャア・アズナブルと思われる赤い機体に狙いを定めた瞬間、私の脳裏にあるイメージが浮かび上がって来た。

 

 薄暗い部屋の中、天蓋付きのベッドの上で二人の人が何かをしている。

 

 ……え、ケツドラム? なにそれ?

 

 頭に浮かんだ意味不明の単語に首をかしげていると、ベッドの上に降りていた闇のヴェールが晴れた。

 

 そこには────

 

「ああ……大佐、なんて逞しい」

 

「アンジェロ、お前はいい男だ」

 

 男同士でくんずほぐれつ、何かをしている変態たちの姿があった。

 

 というか、一人はあの全裸の変態じゃないか!

 

 もう一人は……赤紫のザクモドキのパイロット?

 

 大佐、大佐って言ってたの、こういう意味だったの!?

 

 あまりの光景に動けないでいると、全裸の変態がぐるりと私の方を向いた。

 

「よく来たね、歓迎しよう」

 

 奴はあの時に見たのと同じ妙にアゴい笑顔を私に向けて……

 

「なにせ、君は私の母になる女性なのだからね」

 

「なにせ、君は私の母になる女性なのだからね」

 

「なにせ、君は私の母になる女性なのだからね」

 

「なにせ、君は私の母になる女性なのだからね」

 

 その背後に重なる様にいる、奴によく似ているけど少し細い無数の男と共にそう言った。

 

「にゃああああああああああっ!?」

 

 瞬間、私はあまりの恐怖とおぞましさに喉が裂けんばかりに絶叫を上げた。

 

『おい、クマの様子が変だぞ!』

 

『ミユ、どうした!?』

 

『大丈夫? 何があったの!?』 

 

 竜馬さんやシン兄、ファさんの心配する声が聞こえるけど、私には返事を返す余裕が無い。

 

 鼻の奥がツンとなって目が熱い。

 

 ヤバい、やっぱり今のショックは幼女ボディのキャパを遥かに超えていたようだ。

 

 基本的に私の意識は幼女ボディに引っ張られる事が多い。

 

 この頃はその割合が顕著になって来たから、ギャン泣きしたら収拾がつかなくなって戦力外間違い無しだ。

 

 だったら、その前に死なば諸共!

 

 さっきのビジョンをZ-BLUEだけじゃなくて、ネオジオンにも流してやる!!

 

「うぎゅぅ…ぐずっ……」

 

 腰が抜けてしまって力が入らない足に鞭打って踏ん張ると、私はサイコフィールドとラムダ・ドライバを利用して今の恐怖映像をみんなの脳裏に叩きつけた。

 

 むこうにはサイコフレームや何やらニュータイプ用の機体も多いみたいだから、クマさんのシステムと共振させてやればこの位は容易い。

 

 あとはダメ押しで通信を救助用の共通国際チャンネルに切り替えて……

 

 あ、ダメ。

 

 もう限界、泣きます。

 

 

「うぇあああああああああああああああああっ!!」

 

 スピーカーから流れる幼児の身も世も無い泣き声と共に、敵味方問わず戦場にいる全ての者の脳裏に悍ましい光景が浮かび上がる。

 

 そして爆音とマシンの咆哮が響き渡る戦場に静寂が訪れた。

 

 そう、Z-BLUEもネオ・ジオンも、その全員が手を止めたのだ。

 

 それほどまでに流し込まれた光景は酷すぎた。

 

『おい、今のって総帥の影武者だよな……』

 

『ああ、もう一人は親衛隊の隊長だろ。どんな精神攻撃だよ』

 

『というか、もしかして今泣いてる子供にあの光景を見せたのか?』

 

『影武者は母って言ってたから、見たのって女の子だよな?』

 

『男掘りながら幼女に母になれって……どれだけ変態なんだよ』

 

『いや、普通に性的虐待でしょ』

 

『そういや、あの影武者って総帥の幻影背負ってたよな』

 

『あの人ってロリコンで有名だったけど、更に両刀使いなのか?』

 

『うわっ! ド変態……』

 

『俺もアンジェロたん掘りてぇ……』

 

『気を付けろ! あのドライセンのパイロット、ホモだぞ!』

 

 軍用通信の中を公然と自軍の総帥や大佐の非難が飛び交う。

 

 それほどネオ・ジオンの兵士達には混乱が広がっていた。

 

『おい、ギュネイ・ガス! あんなものを信じるなよ! 私はまだ大佐にあんな事をしてもらっていない!!』

 

 それはフル・フロンタルの親衛隊であるアンジェロも例外ではなく、彼は屈辱と興奮に顔を赤く染めながらすぐ近くにいた同僚に弁明の言葉を吐く。

 

『さわんな』

 

 しかし伸ばされた赤紫のギラズールの腕は、かつてない程の反応速度で動いたヤクト・ドーガによって叩き落された。

 

 サイコフレームの調子はいいヨウダ。

 

 そんな中、混沌の坩堝にハマったネオ・ジオン軍の頭上を駆け抜ける一機の飛行体があった。

 

 それはわき目もふらずにシャア・アズナブルの駆るサザビーへ突撃すると、ガンダムタイプのモビルスーツへと姿を変えてサーベルを引き抜く。

 

『シャアッ!』

 

『アムロか!?』

 

 アムロ・レイの愛機、リ・ガズィカスタムから繰り出された翡翠の光刃を、寸でのところでビームトマホークを展開して防ぐシャア。

 

 混乱の極みにあろうと、宇宙世紀最強クラスのパイロットの腕は鈍っていない。

 

『何故あんな男を影武者にしている!? これではライバルと目される俺の評判も悪くなる! 二人共街を歩けなくなるぞ!!』

 

 怒りの声と共に光刃を押し込もうとするアムロ。

 

 通常のリ・ガズィなら機体とサーベルの出力差で振り払えたのだが、カスタム化されて武装もハイパービームサーベルとなっていてはサザビーをもってしても拮抗するのが精いっぱいだ。

 

『ハマーンがフル・フロンタルは私の影武者だと宣言した!』

 

 ならばと牽制の蹴りと共にバーニアを全開にして後方へと下がるシャア。 

 

『総帥に人事権が無いなどと!!』

 

 深紅の蹴り足を紙一重で躱したアムロは、サーベルをビームアサルトライフルに持ち替えてトリガーを引く。

 

『私は神輿かパイロットしか能がない男だ! 実務ではハマーンの足元に及ばん事が何故分からん!!』

 

 襲い来る光弾をシールドで防ぎ、腹部から拡散メガ粒子砲を放つサザビー。

 

 だが襲い来る光の散弾も、読んでいたかのように範囲外に逃れたリ・ガズィを捉える事はできない。

 

『情けない奴!』

 

『なにがっ!』

 

 フルスロットルで接近し、再びサーベルをぶつけ合う二機。

 

 鎬を削るライバル達を他所に、傍に控えていたフル・フロンタルが何をしていたのかと言えば……

 

『テメェ、いい加減にしろよ!』

 

 アホみたいな速度で突っ込んできたデスティニーに追い立てられていた。

 

『また君か、ザフトのガンダム!?』

 

『うるせぇ! 死ね!!』

 

 完全にキャラ崩壊するレベルで怒り狂っているシン。

 

 常人にも見えるレベルで殺意のオーラを纏い、取り回しの悪いアロンダイトではなくダガー状に光刃を伸ばしたフラッシュエッジを両手に超接近戦を挑んでいるあたり本気度が伺える。

 

「……はっ!? 何をしている。総員、迎撃を開始せよ!!」

 

 その様子にようやく我に返ったハマーンが、アムロの相手に手いっぱいのシャアに代わって指示を飛ばす。

 

 迂闊などと言うことなかれ。

 

 いかに『鋼を通り越してガンダリウム合金の女』と言われていても、彼女とてうら若き乙女である。

 

 あんなわいせつ物をいきなり見せられては茫然自失にもなろう。

 

 とはいえ先ほどのイメージのインパクトからか、ネオ・ジオン軍の動きはお世辞にもいいとは言えない。

 

『ハマーン閣下』

 

 その遅々とした動きに内心で舌打ちをしていると、キュベレイのコクピットに通信が入った。

 

「ジンネマンか、どうした?」

 

『先ほどのイメージによってマリーダが情緒不安定になっています。今のままでは戦力として運用するには無理があります』

 

「あんなものを見せられたのだ、止むを得んだろう。わかった、貴様等は後方へ下がれ」

 

『了解しました』 

 

 戦力の一翼として期待していた強化人間が使い物にならなくなったという報告に、ハマーンは大きくため息を吐いた。

 

『ネオ・ジオンの防諜対策は万全だ! 奴等が我々のプライベートに入り込む余地など無い!!』

 

『マスコミはそんなモノだって乗り越えてくる! 連邦ではお前がロリコンだという事は誰でも知ってるんだぞ!!』

 

『……ッ! 私の社会的生命が死ぬっ!?』

 

「フル・フロンタルめ……シャアの名誉の為にも切らねばならんか」

 

 アムロとシャアの頭が痛くなるような会話を聞きながら、ハマーンは新たな人事を画策するのだった。

 

      




 対幼女用防諜兵器・全裸大佐発動!

 フル・フロンタルの妄想が解放された。

 幼女は精神に大きなダメージを負った。

 保護者達は怒りで戦闘力を大きく増した。

 ネオ・ジオン軍は混乱している。

 とばっちりでシャア・アズナブルの評判が大きく下がった。

 フル・フロンタルのカリスマが大きく下がった。

 フル・フロンタルのカルマが大きく上がった。

 アンジェロ・ザウパーが熱い視線をこちらに向けている。
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