幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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 新年あけましておめでとうございます。

 発展途上のつたない作品でありますが、少しでも皆様の娯楽になればと思いますので、本年もよろしくお願いします。

 


獣と地球最強の部隊

 激しく振動するコクピットの中、私は途切れそうになる集中を必死に繋ぎとめる。

 

 こちらに向いた敵意は驚くほど大きいけれど、私はそれを怖いとは思わなった。

 

 だって、『かみさま』が怒っているのは私の為だから。

 

 胸に抱いたチビから彼の考えはしっかりと伝わっている。

 

 私の意識に干渉するクマさんの中にあるナニカへの怒り。

 

 精神的負荷を掛けられた私への気遣い。

 

 そのうえ、チビを通して私を守るために力を割いてくれているのだ。

 

 クマさんを壊されるのはさすがに困るけど、それでも私を救い出そうとしている『かみさま』を怖がる理由はどこにもない。

 

「……ほうげきがたベアッガイによる、ちょうごうきんニューZだんとうダインスレイブのいっせいそうしゃ? ……みとめない。プラズマダイバーミサイル? ……きゃっか。ぜんほういかくだんとう? ……ぜったいだめ」

 

 だから私も出来る範囲で彼を援護しなくては……

 

 本当はクマさんの制御を取り戻すのが一番なんだけど、それを阻むサイコミュの負荷が相変わらずキツい。

 

 それに今はシン兄を助けなくちゃいけない。

 

 彼を保護するサイコフィールドに意識の大半を割いているから、クマさんが広域殲滅兵器を使わないようにするので精いっぱいだ。

 

 ねぇ、シン兄。

 

 シン兄の想い、伝わったよ。

 

 私を助けようとしてくれた時、マユさんや家族を失った時の事を思い出したんだよね。

 

 もう二度とあんな思いはしたくない、もう家族を無くすのはごめんだって。

 

 私の事を本当の家族と同じに考えてくれてること、本当にうれしかった。

 

 そして戦争が嫌いなシン兄が兵隊さんをやってるのは、自分みたいな人が増えてほしくないからだって分かった。

 

 デスティニーはその為の剣だったんだ。

 

 でも私はそんな大事なモノを壊してしまった。

 

 もちろんそんな気はなかったけれど、だからと言って許される事じゃない。

 

 それにシン兄は愛機が無くても戦う事をやめないだろう。

 

 戦争を無くすために、戦争で泣く人を一人でも減らす為に。

 

 なら私がするべき事は決まっている。

 

「……デスティニーをつくらないと。もっとつよく、もっとはやくして」

 

 クマさんが暴走してから酷い事ばかりだけど、それでも分かった事が一つあった。

 

 UGセルは地球再生を目的に生み出された万能の機械細胞。

 

 彼等は強い想いを糧として万物を創り上げる。

 

 目を閉じて強く願うと、まぶたに塞がれた視界の奥に淡い緑の光がふわりと浮かぶ。

 

 それはサイコフレームの光。

 

 攻撃色じゃない光が見えるってことは、クマさんの中にも私の想いを汲んでくれる部分が残っているということだ。

 

 だから、私はそれを縁に祈りを捧げる。

 

 ナノマシンの嵐の中にいるシン兄に届くように。

 

「……シンにぃ、あなたにちからを」

 

 

 

 

 魔神と魔獣。

 

 二体の超越体による闘いの第二幕は獣の一手から始まった。

 

 獣の唸りと共に全身から伸びた深緑の触手が一斉にナノマシンの渦の先にいる魔神へと鎌首を向ける。

 

 すると獲物を串刺しにする為の鋭さを備えた先端が次々と開き、よだれのように薄紫色の潤滑液を零しながら現れたのは砲口だ。

 

 そして放たれるのは艦隊のモノを思わせる高出力メガ粒子砲の一斉射撃。

 

 ナノマシンから保護する為のラムダドライバの力場を利用し、粒子エネルギーに回転運動を与えて砲撃の貫通力を倍加させる。

 

 とある世界では『ドッズライフル』と呼ばれた武装と同様の技術が施された光条の群れが、黒鉄の身体を食い破らんと魔神へ殺到する。

 

 しかし相手も伊達に数多の平行世界を滅ぼしてはいない。

 

 通常のマジンガーにはあり得ない紅い強膜による瞬きの後、黄金の目から放たれるのは爆発的な光子力だった。

 

 この世界においてはオリュンポスの大神ゼウスの力を体現するマジンガーZの最大武装の一つであったが、魔神が放ったのはそれすら遥かに上回る代物だった。

 

 周辺を純白に染め上げる程の極光は襲い来る粒子ビームの群れを根こそぎ薙ぎ払うと、月光の繭の一部を切り裂いて空へと消える。

 

 そして攻守が入れ替わり次に動いたのは魔神の方だ。

 

 宙へと飛びあがって胸を反らすと、腹部に嵌ったスクランダーのベルトが開いて奥から発射口が現れる。

 

 そしてそこから放たれるのは機関銃のようなミサイルの雨。

 

 これはミサイルパンチと呼ばれる武装で、機体内部に備え付けられた光子力3Dスキャナーによってミサイルを生成する事で100発もの弾数を誇る、この世界のマジンガーには存在しない武装である。

 

 そして実弾の威力もTNT火薬100t分から、最新鋭の宇宙戦艦を一撃で粉砕する対艦ミサイルレベルまで底上げされている。

 

 吐き出されたミサイルの群れは光子力ビームで切り裂かれたナノマシンの渦の切れ目へと殺到する。

 

 直撃すればマクロス級ですら成す術もなく轟沈する火力。

 

 だが、獣も黙ってその身を食ませるほど甘くはない。

 

 成長途中の胴体の背部装甲が開くと、そこから次々と弾丸が発射される。

 

 放たれた弾丸はある程度の高度まで上昇すると鳳仙花のタネのように弾け、無数の散弾となってミサイルの外角へと食らいつく。

 

 そしてアクエリア市にまき散らされるのは強烈な閃光と衝撃波。

 

 かつての神秘的な街並みが見るも無残な姿へと変貌する中、地獄のような業火の中心で無傷の獣は健在をアピールするかのように咆哮をあげる。

 

 それを合図とするかのように再びオーロラ色の粒子が獣の姿を隠すと、間髪を容れずに魔神の足元の地面が大きく盛り上がる。

 

 アスファルトを突き破って現れたのは掌にガンダムの顔面が嵌め込まれた巨大な副腕だった。

 

 紫のオーラを纏うそれは、ガンダムの顔に生えた牙を獰猛に咬み鳴らしながら魔神へと襲い掛かる。

 

 だが、その怪異が黒鉄の血肉を味わう事は無かった。

 

 自身の太腿を噛み千切らんとする脅威を見る事も無く一閃させた右腕。

 

 それだけで魔神は前腕部に生えた凶悪な巨刃で悪魔の手を両断したからだ。

 

 鼻から上を失ったガンダムの顔から甲高い悲鳴を上げて魔手は地面へと逃げ帰っていく。

 

 その撤退を補助するように穴から十数本の触手が飛び出してくるが、それも魔神の耳の部分から放たれた戦艦の主砲並みに太さを増した冷凍光線によってその動きを止める。

 

 余波で凍り付いたアクエリア市街の残骸と共に触手が粉雪へと化す中、魔神は再びその身に膨大な熱を蓄積させる。

 

 ブレストファイヤー……否。

 

 次に放つのは紅の翼も利用したダイナミックファイヤーだ。

 

 三つの放熱板から放たれる熱線は一つとなり、月の繭をも貫通して獣へと迫る。

 

 だが獣も迎撃の体勢を整えている。

 

 口部、そして両の副腕に備わったガンダムフェイスの口から放たれる莫大な出力のビーム砲が魔神の業火に牙を突き立てると、生み出された莫大なエネルギーは凍土となった街を再び灼熱地獄へと引き戻す。

 

「くっ!? 対衝撃防御! ショックアブソーバーを全開にしろ!! 余波でも艦体に直撃すれば大破は免れんぞ!」

 

「両者のエネルギー、さらに増大! このままではアクエリア市がもちません!!」 

 

 激しく揺れるブリッジの中、艦長席にしがみ付きながらブライトは臍を噛んだ。

 

 各種レーダーや周辺をモニターするディスプレイを見れば、魔神と獣の闘いが引き起こす余波の激しさに他の面々も近寄れずにいた。

 

 ベストコンディションであれば打つ手はあるのだろうが、アブダクターとクマ集団の連戦に加えて月光蝶突破で各機共に疲弊している。

 

 これでは如何に歴戦の勇士といえども、あの二体を押さえるのは無理があるだろう。

 

「クソッ! いったいどうなっているんだ!?」 

 

 揺れが収まると共にブライトはガラにもなく不満を吐き捨てる。

 

 彼は司令官として多元戦争から様々ないわく付きや癖のあるロボットを運用してきたが、ここまで派手に暴走する機体は初めてだった。

 

 クマに関してはアムロからサイコガンダムのように意図的にサイコミュを歪められていると報告があったが、マジンガーの方は皆目見当が付かない。

 

 マイノット基地の件といい、あの機体の厄介さはある意味クマを超えている。

 

 とはいえ、彼等は共に苦楽を共にしてきた仲間、ましてや片方は中に年端もいかない子供がいるのだ。

 

 戦場に出してしまった事の負い目も含めて見捨てるなどありえない。

 

「だが、どうすればいい……」

 

 歴戦の勇将とはいえ、ブライトは一軍人でしかない。

 

 方法が分からねば暴走の止めようがないし、力で鎮圧しようにもあの二体を相手取ってはこちらが全滅する可能性が高い。

 

 それにZ-BLUEの面々は情に厚い者が多い。

 

 ただ鎮圧せよと命じたところで、仲間に武器を向けるとなれば躊躇するのは目に見えている。

 

 そしてあの二機を相手にした場合、その躊躇は命取りとなる。

 

 現場責任者のアムロやオズマもそれが分かっているからこそ、他の隊員があの二体の激突に割り込まないように押さえているのだ。

 

 とはいえ、いつまでもこのままでいるわけにはいかない。

 

 刃を交える度に2機のエネルギーが上昇している以上、このままいけばアクエリア市どころか日本全土が危険に晒される。 

 

「せめてどちらか一方を止める手立てが分かれば……」

 

 周辺の熱エネルギーを吸収して三度月光蝶の繭へと消える獣を見ながら臍を噛むブライト。

 

 その時だった。

 

『こちらスカル1、早乙女アルト! 司令部、応答してくれ!!』

 

 聖天使学園の会場の様子を確認に向かっていたアルトが帰還したのだ。

 

「アルト、シェリル・ノーム達は無事なのか?」

 

『はい、二人共ネオディーバの本部へ避難しました! それよりミユのクマを止める方法が分かったんです!!』

 

「なんだと!?」

 

 思わぬ吉報に驚くブライト。

 

『今のクマには並大抵の攻撃は効果ありません。むしろエネルギーや銃弾をエネルギーとして吸収される恐れがある。でもアイツの感応能力とサイコミュは生きている! だから攻撃に俺達の意思を乗せて中のミユに届ければ!』

 

「あの子が正気を取り戻して暴走は治まるということか……。アルト、それはどこからの情報だ?」

 

『シュバルツ・ブルーダーという男からです。奴はミユの知り合いのようですし、シェリル達を助けてくれました』

 

「シュバルツ……たしか報告書で見た名だな」

 

「ブリュッセルの事件でデキム・バートン捕縛に協力した人物だったのでは? ただ、彼自身を示す物が何もない正体不明の人物なのが気にかかりますが……」

 

 メランの言葉に数度呼吸する間だけ苦虫を噛んだものの、ブライトはすぐさまそれを振り払う。

 

「全軍にその情報を通達! 火力を集中してクマの動きを止めるんだ! ただし撃墜は避けるように各員には徹底させろ!!」

 

「マジンガーの対処はどうしますか? 今の奴はクマと互角です、我々の攻勢に絡めばやり過ぎてしまう可能性がありますよ。それどころか奴がこちらに牙を剥くかもしれません」

 

「それは───」

 

 

『マジンガーは俺に任せてもらおうか!』

 

 ブライトが言葉に詰まりそうになった瞬間、通信機から気合の入っただみ声が響き渡る。

 

「ボスか!」

 

『話は聞かせてもらったぜ。要はマジンガーがいなけりゃあ、あの子を助けられるってこったろ。だったら兜のライバルである俺様の出番さ』

 

『俺様じゃなくて俺達ッスよ、ボス!』

 

『そうそう! 小さい子を助けないなんて不良の名が廃るってもんだ!!』 

 

 ボスや同乗者であるムチャやヌケの宣言にブライトは一瞬言葉に詰まる。

 

 今のマジンガーとボスボロットではネズミとライオン以上に力の差がある。    

 

 戦いを挑むなど自殺行為以外の何物でもない。 

 

 まさに無茶・無理・無謀。

 

 常識的に考えればどうあっても止めるべきだ。

 

 しかし、通信越しに伝わるボスの決死の覚悟と気合がその制止の言葉を押しとどめる。

 

 ブライトは知っている。

 

 特機……いや、スーパーロボットというのは搭乗者の覚悟と気合によって幾度となく奇跡を起こしてきたことを。

 

 開発の経緯は褒められたモノではないが、ボスボロットもまた光子力研究所の系譜。

 

 マジンガーを打倒するのは無理だとしても、暴走を納める事が出来るかもしれない。

 

 何より、ここで止めたとしても彼等はその言葉を振り切って行動に移すだろう。

 

「……頼めるか?」

 

『おうよ、任された!』

 

 絞り出すようなブライトの声に軽快に答えると最前線へと走り出すボスボロット。

 

 そのずんぐりとした背中を見ながら、ブライトは彼等が無事に帰ってくる事を祈るのだった。

 

 一方、周囲に破壊を振りまくマジンガーの姿にショックを受けていたさやかもボスが動き出した事に気付いていた。 

 

『待って、ボス!』 

 

 ビューナスAを飛ばして制止の声をかけるが、ボスボロットは振り返る事もせずに速度を上げる。 

 

『今のマジンガーの力を見たでしょ! それを止めるなんて無茶よ!!』

 

『だからこそだろうがっ!!』

 

 聞く耳を持たないボスに言葉を重ねていたさやかは、帰って来た怒声に息を呑んだ。

 

『兜がどんな気持ちでマジンガーに乗ってたのか、それを一番間近で見てきたのは俺達だ!』

 

『だから、アイツがマジンガーでバカやった時は俺達が止めないといけねえ!』

 

『この役目は竜馬の旦那にも赤木さん達にも譲れない、僕達の特権ってヤツさ』

 

 口々に啖呵を切るボスボロットの搭乗員たち。

 

 その声を聴いたさやかは説得を諦めた。

 

『わかったわ。だけど貴方達だけに任せるつもりは無いわよ。私も一緒に行く』

 

『おいおい、こういう時は男に華を持たせるのがいい女なんだぜ?』

 

『まったくボスは古いんだから。そう言う考えは今どき流行らないのよ』

 

『やれやれ……』

 

 おてんば娘の面目躍如といった感じのさやかの答えに深々とため息を吐くボス。

 

『───そういう訳だから、他のみんなは手出し無用でお願いするぜ?』

 

 彼は先ほどとは打って変わった有無も言わせぬ口調で、自分達に続こうとしていた他のメンバーに釘を刺した。 

 

『けど、お前達だけじゃあ危険だ。みんなでやれば成功率だって……』

 

 それでも言い募る赤木にボスボロットは器用に首を横に振ってみせる。

 

『暴走したマジンガーの力は未知数だ。それにミユちゃんのクマだって手の内を出し切ったようには見えねえ』

 

『みんなで割って入ったところに、前みたいなルストハリケーンを使われたらアッという間に全滅ッスよ』

 

『だから僕達が最初に行くんだよ、赤木さん。僕達で兜が止められれば良し、もしダメでもみんなが残っていれば安心して退ける。それにボロットやビューナスなら馬鹿みたいな武器は使われないだろうしね』

 

 ムチャの言葉に赤木は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。

 

 彼だって二つの大戦を生き抜いた精鋭だ。

 

 肚を決めた人間に言葉は無駄だという事くらいは知っている。

 

『───わかった。ただし、絶対に無茶はするな。お前達が死んだら甲児もミユも立ち直れないだろうからな』

 

 口を噤んだ赤木に変わって通信に出た竜馬は、ボスたちの気持ちを汲んでか止めようとはしなかった。

 

『任せて下さい、まずは甲児君の目を覚ましてきます』

 

『そうすりゃマジンガーもこっちの味方に戻る。後はミユちゃんを止めてシンを助ければ一件落着さ』

 

 そうボスとさやかの軽口で会話を締めた後、煉獄と化した最前線へと向かう二機。

 

 二機へと近づくにつれて街はこの世の物とは思えない有様へと変貌していった。

 

 高温でコールタールの泥沼になった道路に未だ氷像となったままのビル。

 

 その横には塵となって風に崩れていく民家が並んでいる。

 

『す、すげぇ……』

 

『なにをどうすればこうなるんだよ……』

 

 思わず背筋が凍る光景にムチャとヌケが息を呑む中、二機は程なくして暴走するマジンガーを射程内に納める。

 

『───それじゃあ始めましょうか』 

 

『ああ。兜の奴を叩き起こさないとな!』

 

 言葉と共に戦闘態勢に入るボスボロットとビューナスA。

 

 獣に意識を取られているマジンガーにとっては完全な不意打ちだが、二人は卑怯だとは思わなかった。

 

 これでもまだ相手との差は隔絶しているのだ。

 

 気遅れなど感じる余裕が何処にあると言うのか。

 

『超合金Zには超合金Zよ! Zカッター発射!!』

 

 大きく両手を振り上げて、前腕部に備わった超合金Z製の刃を射出するビューナス。

 

 しかし風を切って襲い掛かった双刃はマジンガーの紅の翼に当たると軽い音を立てて弾かれてしまう。

 

『……ッ! だったら光子力ビーム発射ッ!!』

 

 思わず怯みそうになる自分を押しとどめて耳にあるアンテナ状のパーツからエネルギー波を放つビューナスA。

 

 だがそれもスクランダーの機関部の装甲表面を温めるだけに終わってしまった。

 

『そ…そんな……』  

 

 理論上はマジンガーと同じ技術や素材で出来た武器が傷一つ付けられない事に慄くさやか。

 

 そんな彼女をゆっくりと振り返ったマジンガーの目が捉える。

 

『ヒッ!』

 

 口部が割れて剥き出しの牙のようになった魔神そのものの相貌に、さやかは思わず引きつった悲鳴を漏らす。

 

『ヤベェ! さやか、逃げろ!!』 

 

 背筋を走る悪寒にボスボロットはパワーアームを伸ばしてマジンガーを拘束しようとするが、黒鉄の魔神が触腕の絡みついた身体を捻るだけで大きく振り回されてしまう。

 

『うわあああああっ!?』

 

『ボ…ボスッ! 俺達ヨーヨーの玉みたいになってますよ!?』

 

『信じられねぇ! ボスボロットのパワーは全開なら機械獣も捻り潰すってのに!?』

 

 大きく宙を舞ったボスボロットがビルの残骸に叩きつけられるのと同時にマジンガーの双眸が怪しく光る。

 

『きゃああああああっ!?』

 

 月光蝶を破ったような大出力ではなく、単発の光弾となった光子力ビーム。

 

 ただそれだけで下半身を塵も残さずに吹き飛ばされたビューナスは半ば融解した道路へと落下する。

 

『さやか!? くっそおぉぉぉぉぉっ!!』 

 

 黒い汚泥となった道路へ転がるビューナスへトドメの一撃を放とうとするマジンガー。

 

 それを阻まんとボスは伸ばしたパワーアームを全力で巻き上げた。

 

 瓦礫の粉塵の尾を引きながら飛び出してくるずんぐりとした巨体を前に、再び魔神の目に凶悪な光が灯る。

 

 ボスボロットもまたビューナスと同じ末路を辿るかと思われた瞬間、黒鉄の身体に紫紺のビームが突き刺さった。

 

 それは隙を見せた魔神を廃そうとする獣が放った砲撃だった。

 

 黒鉄の巨体がグラリと揺らぎ、マジンガーの意識がボロットから獣へと移る。

 

 その隙をボスは見逃してはいなかった。

 

『兜ぉぉぉぉっ! マジンガーを……爺さんの形見を悪魔にしないんじゃなかったのかぁっ!!』

 

 主の憤りを乗せて、焼き切れんばかりにアームのモーターを回しながらマジンガーへ突進するボスボロット。

 

 しかし易々と攻撃を受けるほど魔神も甘くはない。 

 

 ボロットの身体が目前に迫った瞬間、腹部の発射口が開いてミサイルが放たれた。

 

 通常よりも格段に威力が増したミサイルパンチは一撃でボロットの身体を打ち砕く。

 

 だが、それでもボスは……いや、ボス・ムチャ・ヌケの三人は死んではいなかった。

 

 ギリギリのところでコクピットである頭部を切り離し、本体の爆風を推力として突貫したのだ。

 

 彼等が向かう先、それはマジンガーのコクピットであるパイルダー。

 

『『『目を覚ましやがれぇぇぇぇぇぇぇッ!!』』』

 

 三人の叫びと共にパイルダーに激突するボスボロットの頭部。

 

 しかし、キャノピーの部分も透明化された超合金Zであるパイルダーは傷一つ付かない。

 

 弾かれて宙を回転するボロットの頭部。

 

『ボス!』

 

 偶然にも近くに落ちてきたそれをビューナスは必死に手を伸ばしてキャッチした。

 

『た…たすかったぁ……』

 

『さやか! 兜は? マジンガーの様子は!?』

 

 家具が無茶苦茶になった和風のコクピットの中、安堵の息を吐くムチャと気を失ったヌケをバックに額から流れる血を顧みずに通信機へ叫ぶボス。

 

『───そうだ! 甲児君! 返事をして、甲児君!!』

 

 ビューナスのコクピットの中で必死に甲児へと呼びかけるさやかであったが、そこに絶望が押し寄せた。

 

 なんとマジンガーへ獣が再度放ったビームの一部が彼等へ降り注いだのだ。

 

 暴走中のマジンガーすら揺るがせる高出力のビーム砲、そんなものを今の彼等が食らえば一たまりもない。

 

『うわわわわぁっ!?』

 

『も……もうだめだぁぁぁぁっ!!』

 

『……甲児君!?』

 

 迫り来る紫紺の奔流にコクピットの中で自分の身を護ろうと反射的に手を上げるさやか達。

 

 しかし彼女達が想像するような衝撃は何時まで経っても襲ってこなかった。

 

『あれ……?』

 

 その事におそるおそる目を開けたさやかが見たのは────鋼の剛腕でビームを撃ち払って自分達を護る黒鉄の城の姿だった。

 

 

 

 

 ビームの衝撃に揺れるパイルダーの中、甲児はバイザーが割れたヘルメットを脱ぎ捨てる。

 

 今のは本当にヤバかった。

 

 数分前にボス達の声で目が覚めた甲児だが、眠気まなこで辺りを見渡して背筋が凍る思いがした。

 

 大破したビューナスとボスボロットにビーム砲が迫っていたからだ。

 

 咄嗟のタイミングで強引に動かしたマジンガーが間に合ったから良かったものの、一歩でも遅れたらさやか達は消し炭になっていた。

 

『ホント心臓に悪いぜ……』

 

 小さく息を吐いて額に浮かんだ汗を拭う甲児。

 

 マジンガーの暴走で意識を失った彼は、今まで奇妙な夢を見ていた。

 

 それは数多の兜甲児の記憶だった。

 

 マジンガーしかスーパーロボットは存在しない世界、今のように数多の特機やエースパイロットと力を合わせて侵略者と戦った世界。

 

 戦いの中でマジンガーと共に敗北し、全身サイボーグとなった未来があった。

 

 生身のままマジンガーと戦い抜き、祖父のように科学者となった未来もあった。

 

 勝利と敗北、生と死。

 

 時代に世の中の情勢、闘いの行方すら違う世界。

 

 けれど、たった一つだけ変わらない事があった。

 

 自分はマジンガーのパートナーであった事。

 

 そしてマジンガーとは、魔神の身体に人の頭脳と意思が共存して初めてマジンガー足り得るという事だ。

 

 今までの夢を思い返す中、奇妙な感覚に目を向ければ、そこには甲児の手を跳ね除けようと動くスロットルレバーがあった。

 

「悪いな、マジンガー。薄情な相棒で」

 

 今一度しっかりとレバーを握り締めて、甲児は普段なら浮かべない自嘲を顔に張り付ける。

 

 思えばゴッドスクランダーを得てゼウスの遺志に触れてから、甲児はマジンガーを見ていなかった。

 

 自身の駆る黒鉄の城はゼウスの依り代であり、彼から受け継いだ使命を果たす力なのだと。

 

 けれど、それは彼が望んだ事だろうか。

 

 マジンガーZという存在にとっては、ゼウスの代替品のような扱いを受けるのは侮辱以外の何物でもなかったのではないか?

 

 つい最近までの光子力の減衰も、それがマジンガーの意思だったとしたら頷ける。

 

 暴走という形で自分から制御権を奪ったのも、薄情なパイロットよりも自身を『かみさま』と慕う少女が大事だったからだ。

 

 そもマジンガーはミユを通して甲児に告げたではないか。

 

 『マジンガーZは兜甲児がいて初めて最強なのだ』と。

 

 あれは甲児の態度に対する戒めであり、おそらくは最後通牒だったのではないか。

 

 あの言葉の意味を深く考えていれば、きっとマイノット基地や今回のような暴走は起きなかったはずなのだ。

 

「───マジンガー。お前は俺の事なんて愛想が尽きてると思う。今まで俺がお前にやって来た事を思えば当然だ。それでも敢えて頼む。……力を貸してくれないか?」

 

 静かに語り掛ける甲児にコンソールは沈黙を保ったままだ。

 

「俺がお前にどれだけ酷い事をしていたのか、あの夢を見て思い知ったよ。お爺ちゃんが残してくれた形見は……俺の相棒はゼウスじゃなくお前だったのにな」 

 

 今の甲児にとって、おそらくは並行世界の自分達の姿は酷く眩しかった。

 

 自分が蔑ろにした絆は、あれ程までに尊いものだったのだ。

 

「虫のいい事を言ってるのは百も承知だ! だけど、俺はもう一度お前と一緒に戦いたい! 並行世界の俺達のように、この戦いの先にある平和をお前と一緒に掴みたいんだ! だから頼む、マジンガーZ!!」

 

 血を吐くような叫びと共に深々と頭を下げる甲児。

 

 その瞬間、手を振り払おうと動いていたレバーは止まり、パイルダーのコンソールから眩い光が溢れた。

 

「分かってくれたんだな、マジンガー!」

 

 ゴッドスクランダーを付けていた時と同じ、いやそれ以上の光子力の脈動に甲児に笑顔が蘇る。

 

『甲児君! 大丈夫なの、甲児君!?』

 

「ああ! ありがとうな、さやかにボス! それにZ-BLUEの皆も迷惑を掛けた! 俺とマジンガーはもう大丈夫だ!!」

 

 いつもの快活さを取り戻した口調でそう言うと、甲児は眼前に渦巻くナノマシンの繭へと目を向ける。

 

『甲児! 復帰早々ですまないが、クマを止めるのに協力してくれ』

 

「もちろんですよ、ブライトさん。けど、何かいい方法があるんですか?」

 

『アムロとアルトから得た情報を統合したところ、あの暴走はサイコミュがミユへ過剰に干渉している事が原因だと判明した』

 

『つまり、あのクマからミユを助け出せと?』

 

『いや、あの戦闘力や再生能力がある以上それは難しい。なので攻撃する事で我々の意思をミユの共感能力に伝え、サイコミュの呪縛から解き放つんだ』

 

 通信ウインドウ越しに繰り広げられるカレンとブライトの会話。

 

 そこに加わったのは難しい顔で首をかしげるシモンだ。

 

『わるい。それってつまり、どういう事なんだ?』

 

『要はあの獣をブン殴ってミユの目を覚まさせるという事だ』

 

 頭に疑問符を浮かべていた彼は、ヴィラルの言葉を聞くとニヤリと笑みを浮かべる。

 

『なるほどな! だったら話は早い!!』

 

 シモンが映ったウインドウが消えると、猛スピードで移動を始めるグレンラガン。

 

『ところでブライト艦長。それって本当に大丈夫なんですか?』

 

『ミユの安全の事だな。クォーターから送られてきたデータでは、今のクマは月光蝶とナノマシン装甲によって実体・ビームに問わず、相手の攻撃を自分のエネルギーとして吸収しているらしい。それに加えてあの馬鹿げた再生能力だ。連戦で疲弊した我々では全力で攻撃しても撃墜は難しいだろう』

 

 不安げなファの問いへのブライトの答えを耳にしながら甲児が後方へ目をやると、ダンクーガやブラックゲッターなど膝をついている特機が複数存在した。

 

 そのいずれも月光蝶の障壁を突破する為の攻勢で陣頭に立っていた機体だ。

 

 もし暴走が無かったら、マジンガーも彼等の仲間入りをしていたかもしれない。

 

「なら、皆の分も働かないとな!」

 

 レバー越しに『早くGOサインを出せ』と脈動する光子力を感じながら不敵な笑みを浮かべる甲児。

 

 自分達の再出発を飾るのは、やはりあの言葉しかないだろう。

 

「行くぞっ! マジーン・ゴー!!」

 

 甲児の気合と共に咆哮を上げる黒鉄の城。

 

「まずはコイツだ! ルスト・ハリケェェェェン!!」

 

 マジンガーが口から放ったのは、かつて放った異常気象を引き起こす災厄ではなく一点集中型の強風。

 

『マジンガー! 一緒にミユちゃんを助けるぞ!!』

 

 甲児の叫びに呼応するかのように、機体コンディションを示す画面に文字が浮かび上がる。

 

 それが示すのは『魔神パワー第三段階・強化』

 

 そして強酸の風が繭を構成するナノマシンの表皮に突き刺さると同時に、マジンガーは肩を支点に腕を大きく回転させる。

 

「いっけぇぇっ! 大車輪ロケット・パァァァンチッ!!」

 

 遠心力が加わった事で通常とは倍する速度で空を裂く鋼の拳。

 

 逆巻く酸の風を纏う事でナノマシンの干渉を防いだそれは月の繭を突き抜けて獣の鼻面へと突き刺さる。

 

『ナイスだ、甲児! うおおおおおおおっ!』 

 

 勢いを失った事で食い荒らされたのか、骨組みが見える程にボロボロになりながらも戻ってくるロケットパンチ。

 

 それと入れ替わる様に、自己修復で閉じかけた穴にグレンラガンが挑みかかる。

 

 繭の穴へ差し込まれた螺旋の身を高速回転させ、再び風穴を空けんと猛るドリル。

 

 ロケットパンチで貫通するところを見た者は、この繭の防御力はそう高くないと思うかもしれない。

 

 しかしそれは大きな間違いだ。

 

 風によって高速で旋回する幾億ものナノマシンの嵐。

 

 流動する大気の圧も加味されたそれは並の特機の装甲を容易く超える強度を持つ。

 

 しかし、この繭の真に恐ろしい所は構成する粒子の一つ一つが如何なる人工物も分解する微小の悪魔という事だ。

 

 今も奴等は貪欲な牙を剥き出しにし、月光に食い込んだ鋼の楔の身を火花と共に食い荒らしていく。

 

『もうドリルが保たん! このままではグレンラガンの右腕も食われるぞ!?』

 

 ヴィラルの警告から間を置かずに甲高い悲鳴を上げて半ばから折れるドリル。

 

『だったら何本でもドリルを出すまでだ!!』

 

 シモンの気迫と共にコクピットの前面に付いた螺旋のゲージが加速度的に増えていく。

 

 そしてボロボロに朽ちたドリルを押し退けて新たに生える螺旋の鋲。

 

 それは自己再生で閉じようとしていた繭を再び穿たんと牙を突き立てる。

 

 群がるナノマシンすらも削り切らんと回転を増すドリル。

 

 だが、それでも超合金Zをも食い荒らす極彩色の繭を打ち貫くには足りない。

 

 渾身の力を込めて前に出るシモンとは裏腹に徐々に削られるグレンラガンのドリル。

 

 再びその身に限界が訪れるよりも早く、新たな楔が広がった穴に撃ち込まれる。

 

『手伝うぜ、シモン! ミユちゃんを助けたいのは俺達も一緒だ!』

 

『赤木!』

 

 それは右手をドリルアームへと換装したダイガードだった 

 

『赤木、機関の調整は任せろ!』

  

『アンタは全力でブン回しなさい!!』

 

『おおりゃあああああああっ!!』

 

 青山と伊吹のサポートを受けて二本に増えたドリルが火花を上げて食い込んでいく。

 

 血路を開かんとする二体の紅い機体。

 

 それを見ながらブラックゲッターのコクピットで竜馬は歯を軋ませる。

 

『くそっ、炉心の出力が上がらねぇ! しっかりしろ、ブラックゲッター!!』

 

 彼はこのブラックゲッターという機体に愛着があった。

 

 真ゲッターがゲッターチーム3人の力の象徴なら、ブラックゲッターは闘争本能を存分に発揮できる自分の分身のようなモノだ。

 

 そんな思い入れがあったから真ドラゴン戦で破壊されたこの機体が回収されたと聞いた時は嬉しかったし、武者修行の共にも選んだ。

 

 だからこそ、この大一番でへばっている相棒へ怒りが抑えられない。

 

『甲児だけじゃねぇ! さやかやボスだって一人前の仕事をして見せたんだ。師匠だ何だとデカいツラをしていて、俺達がこのザマじゃあ恰好がつかねえだろうが!』

 

 竜馬は自身の不甲斐なさと憤りを込めて拳を振り上げる。

 

『目を覚ましやがれ、ブラックゲッター!!』

 

 そしてそれがコンソールを打ち据えた瞬間、ブラックゲッターの黄色の目に瞳が戻る。

 

 同時にコクピットの中がゲッター線による翡翠色の光に満ち、その中で竜馬は確かに見た。

 

 宇宙を行く巨大なゲッター1の顏のような戦艦、その艦橋で不敵な笑みを浮かべる男を。

 

『流竜馬』

 

『お前は……』

 

『力が欲しいのなら───くれてやる』  

 

 その瞬間、炉心が吐き出した大量のゲッター線がブラックゲッターの全身を駆け巡った。

 

 それによって機体を構成していたゲッター合金は次々にその構成を変化させていく。

 

 胸部とウイングはゲッター1からゲッタードラゴンを模した物に、下半身は真ゲッター1に似た意匠へ。

 

 左手は根元に鉤爪が付いたドリルへと変わり、右手の甲には大型のカノン砲が生える。

 

 ゲッター線は進化の為のエネルギーだ。

 

 そして流竜馬は数多の世界においてゲッター線に選ばれた存在である。

 

 その男が力を欲するならば、ゲッター線が力を貸さないわけがない。

 

 周囲を照らす翡翠の光が収まると、そこには生まれ変わったブラックゲッターの姿があった。

 

『へっ! 炉心の出力も新品同様とは……ゴキゲンじゃねえか!』

 

 何時ものように野獣がごとき笑みを浮かべて竜馬がスロットルを全開にすると、ゲッター線の軌跡を残して矢のように飛び出すブラックゲッター。

 

 どうしてこうなったのかなど、竜馬には分からない。

 

 そんな小難しい事は早乙女のジジイか隼人に任せておけばよいのだ。

 

 自分が為すべきことはただ一つ。

 

『いくぜ、ブラックゲッター!』

 

 一番先頭に立って戦って戦って戦い続け、敵を倒して仲間を護る。

 

 ただ、それだけだ。  

 

『ドリルロック・バスターぁぁぁっ!!』

 

 ゲッター2を彷彿とさせる速度と全質量をドリルに預けた突貫攻撃。

 

 それはグレンラガンとダイガードによって保持されていた繭の穴をさらに大きくこじ開ける。

 

『竜馬!』

 

『どうしたんですか、そのブラックゲッターの姿は!?』

 

『知らねえよ! 俺にとって重要なのはコイツが戦えるかどうかだッ!!』

 

 竜馬の力とゲッター線を得て、さらに回転数を上げる2本のドリル。

 

 そしてそれはシモンの螺旋力を押し上げる更なる力となる!

 

『───俺は穴掘りシモンだ! 目の前に壁があったら、それがどれだけ大きかろうがブチ抜いて道を開く!』

 

 グレンラガンからあふれ出る螺旋力によって勢いを増す三重螺旋。

 

 それによってナノマシンの流れを阻害された繭は大きく軋みを上げる。

 

『今だ!』

 

『行け、シモン!』

 

『それがッ! 俺のドリルだぁぁぁぁっ!!』

 

 裂帛の気合と共にドリルから吹き上がる暴風によって吹き散らされるナノマシン。

 

 目の前に開いた大穴に迷うことなく飛び込んだ3体のスーパーロボットは獣へ突撃しながら拳を固める。

 

『しっかりしろ、ミユ! お前は根性のあるガキだ! サイコミュなんてモンに操られるほどヤワじゃねえだろ!!』

 

 ゲッター線の軌跡を残して上空から獣に向けて突撃するブラックゲッター。

 

『ダイガードは誰かを助ける為にある! だから君の事も助けて見せるぞ、ミユちゃん!!』 

 

 ナノマシンに満ちた地表を踏みしめながら走るダイガード。

 

『ミユ! お前は俺の事をアニキと呼んだ! だから俺はお前を立ち直らせてやる! アニキがしたように命懸けでだッ!!』

 

 そして獣の顔面へと一直線に飛ぶグレンラガン。

 

『『『目を───覚ましやがれぇっ!!』』』

 

 頭頂部、左頬、そしてどてっ腹。

 

 轟音を立てて三機のスーパーロボットから鉄拳を浴びた獣はその巨体を大きく揺らがせる。

 

 唸りと共に体勢を立て直す獣が見た物は、螺旋力とゲッター線の残滓に修復を妨げられた大穴から押し寄せる地球最強の部隊だった。

 

 




 暴走という名のDVで痛めつけておき、そこからゼウスのいない並行世界の自分と甲児の絆を見せて羨望を掻き立てる。

 あとは弱った相手の懇願にチラッと靡いてやれば、もう奴の心はもらったも同然。

 計画通り

 Byクソコテ様。



インフォメーション『兜甲児のステータスが更新されました』

新スキル【一心同体(マジンガーZ)】

 マジンガーZに乗っている場合、気力120で装甲値1.5倍。

 ダメージ2000カット。

 ただし甲児はマジンガーZ以外乗り換え不可となり、マジンガーZも甲児以外乗れなくなる。

インフォメーション『一心同体の習得により、ビッグバンパンチ、ロケットパンチ百連発が永久的に使用不能となりました』

インフォメーション『隠しスキル【ゼウスとの絆】が消滅。これによりゼウスの導きを得られなくなり、マジンガーZ・兜甲児両名を依り代にした現世召喚も不可能となりました』


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