幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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 幼女が見たマボロシ

・プラズマダイバーミサイル

「ヴェイガン死すべし、慈悲は無い! 過去のトラウマも初恋の苦い思い出も敵ごと全部吹っ飛ばしちゃえ!」

(第二次Zのタワー総攻撃に出る敷島博士のカットインのように、満面の笑みで両手を広げて飛び掛かってくるフリットジジイ)

・全方位核弾頭(ディビニダド)

「見下してるんじゃないぞ、地球人! 積年のコンプレックスも地球を核の炎で世紀末にしちゃえばスッキリさ!」

(同カットインのように、満面の笑みで両手を広げて飛び掛かってくるドゥガチの翁)

・ダインスレイブ
「禁止兵器だけど、相手が使ったって事実を捏造したら大丈夫! ウザい反逆者もチンピラ集団もコイツで全部串刺しだ!!」

(同カットインのように、胡散臭い笑みで両手を広げて飛び掛かってくるラスタルのオッサン)

余談)あの時ダインスレイブを撃ってたら、クソコテ様は偽物でも超合金ニューZに反応してブチ切れるので地球は火の玉エンドです。






シン兄と新たなる力

 デスティニーを創り出している最中、ぐらりとコクピットが揺れるのを感じた。

 

 同時に流れてきたのは、私を助けようというとても強い思い。

 

 それは怒りと憎悪を掻き立てようと私の精神に干渉していた力を少しだけ弱めてくれた。

 

「……まゆをつかったサイクロプス? ……ッ! だめ! みんなをでんしレンジにかけるなんて、ぜったいだめ!!」

 

 今までとは別の部分でそんな事を準備していたなんて……

 

 シモンさん達の攻撃でサイコミュの影響が薄れてなかったらと思うとゾッとする。 

 

 けれど、どうしてこの子はここまでするのだろう?

 

 今までみんなと一緒に戦って来たのに、クマさんはZ-BLUEを仲間と思ってなかったのだろうか?

 

 …………ううん、違う。

 

 この子は何か焦ってるんだ。

 

 こうして大きく強くなろうとしてるのも、なりたいからじゃない。

 

 ならないといけないからだ。

 

 じゃあ、どうして?

 

 こんな風に周りを犠牲にして強くなってもいい事なんて無いはずなのに……

 

 気になった私はサイコミュの影響が弱まっている隙に、探りを入れるべくクマさんからの思念を逆にたどってみた。

 

 彼の思念を進む中、脳裏をよぎるのは知っている人、知らない人。

 

 見た事があるガンダム、初めて見るガンダム。

 

 グルグルと回る時代と世界、そして戦争の様子。

 

 膨大な情報量に頭がパンクしそうになる中、思念の最後に現れたのは───

 

「……てんし?」

 

 それは神の使いというにはあまりにも醜悪な顔で、星々を破壊する4人の天使の姿だった。

 

 この敵意、この畏れ……ああ、そうか。

 

 クマさん、君はコイツ等と戦う為に強くなってるんだね。

 

 

 月光の繭を突破し、ついに巨凶たる獣へと牙を突き立てたZ-BLUE。

 

 しかし特機三体が放った渾身の拳を受けた獣はその身を横たえる事はなかった。

 

 屈強な足を地面へと突き立てると、破損箇所を再生しながら獣は唸りと共に不届き者達を睨みつける。

 

『くそっ! まだダメか!?』

 

『上等だ! だったらアイツが目覚めるまで何度でも……』

 

 獰猛な笑みを浮かべながら啖呵を切ろうとした竜馬だが、それを機体コンデションの異常を知らせるアラームが止める。

 

『これは……?』

 

『拙いわよ、赤木君! 全身の装甲がドンドン削られてる!!』

 

 そう、ここは獣が成体へと進化するための繭。

 

 ターンタイプナノマシンとUGセルで形成された狩場なのだ。  

 

 中にいる者は一部例外を除いて全て塵へと分解され獣の養分となるしかない。

 

『クソッ! これじゃあもう一発は無理か!』

 

『竜馬兄ちゃん達は退いてくれよ!』

 

『後は僕達が引き受けます!』

 

 悪態をつく竜馬に言葉を返したのは正太郎とワッ太の小学生コンビだ。

 

 見れば先の一撃に籠っていた螺旋力とゲッター線が修復を阻害する中、大穴を通って鉄人とトライダーを先頭に他のスーパロボットも次々と繭の中に入ってきている。

 

『赤木、竜馬! こっちだ!!』

 

『チッ、しゃあねえな!』 

 

『すまん、みんな! 後は頼む!!』

 

 グレンラガンが地面に空けた穴に飛び込むブラックゲッターとダイガード。

 

 それに代わって鉄人とトライダー、そしてゴッドマーズが獣へと突撃する。

 

『ミユちゃん、目を覚ますんだ! クマを悪者にしちゃいけない!』

 

 正太郎の叫びと共に剛腕を引き絞る鉄人。

 

 しかし、この魔獣とて無防備にやられる程甘くはない。

 

 体勢を立て直すと同時に副腕の指先から放たれるのは無数のデッドエンドファングだ。

 

 一本一本が幾何学な軌道を描きながら招かれざる者達へと襲い掛かる黄金の牙。

 

 しかし、それは鋼のボディに付き立つより早く機銃とミサイルによって食いちぎられて火花と消える。

 

『スカルリーダーより特機パイロット達へ! 邪魔者は俺達が排除してやる! お前等はクマに攻撃を当てる事だけを考えろ!!』

 

 ファングたちを火球へと変えたのは、オズマ率いるスカル小隊だった。 

 

『隊長、展開したピンポイントバリアからエネルギーを吸収されてます。僕達の機体も長くは動けませんよ!』 

 

『各員、ギリギリまでもたせろ! この繭は奴が完成する為のモノだとしたら、これで止めないと始末におえん!』

 

『分かってますよ。ミユちゃんをあの化け物の中に置いたままにはできませんからね』

 

『その通りだ。あの子はZ-BLUEの妹分だからな!』

 

 ルカの警告を受けたオズマが小隊各員に指示を飛ばし、それを受けたミシェルとクランがお互いの背後を庇い合いながらDEファングを撃ち落として軽口を叩く。

 

 そしてアルトのメサイアはトルネードパックの限界性能を引き出しながら、ファングの群れとドッグファイトを続けていた。

 

『さあ、来い! みんなの邪魔をする奴は俺が全て撃ち落としてやる!!』

 

 瞬く間にファイターからバトロイドに変形したアルトは、空中で逆向きのまま追ってくるファングたちをガンポッドとミサイルの斉射で一網打尽にする。

 

 だが、射出されたファングの群れは大量。

 

 如何に凄腕揃いとはいえ、スカル小隊だけでは捌き切れるものではない。

 

 しかし、黄金の牙を手折る者は彼等だけではなかった。

 

『MS隊各機は無線誘導兵器の迎撃に当たれ!』

 

『アムロ大尉、コイツ等の動き……』

 

『ああ、操っているのはミユじゃない。彼女の意識が薄すぎる。カツ、バナージ! ナノマシンの事もある、深入りはするなよ!』

 

『分かってますよ!』

 

『ミユちゃん、こんな事をしてはいけない! 君はブリュッセルで争いを止めてみせたじゃないか!!』

 

『バナージ君、気持ちは分かるがあまり本体を刺激するな! 奴は特機に任せるんだ!』

 

 飛行形態のまま次々にファング達を撃墜するアムロとカミーユ。

 

 その後ろではビームマグナムを放つユニコーンを乗せたウエイブライダー形態のデルタプラスとカツのZⅡが続く。

 

 そして他の場所ではコロニー製のガンダム達がその猛威を振るっていた。

 

『まったく世話が焼けるぜ。子供のお守りなんて俺のガラじゃないんだがな!』

 

『その割にはいの一番にこの中に飛び込みましたよね』

 

 愚痴を吐きながら手にしたビームサイズを一閃させるデスサイズヘル。

 

 その後ろではサンドロックが己が身体の半分はある赤熱化したショーテルでファングを切り裂く。

 

『ガキを見捨てるのは嫌いなんだよ。それに、あの嬢ちゃんはコロニーの人間の為に動いてくれたからな。ああいうのが長生きしてくれりゃあ、地球とコロニーの関係も少しは良くなるだろうさ』

 

『そうですね。僕もブリュッセルで戦いを止めたのを見て思いました。あの子はこの世界に必要なんだって』

 

 互いに背を預けながら口元に笑みを浮かべるデュオとカトル。

 

 彼等から少し離れた場所では、全身の発射口から猛烈な弾幕を放つヘビーアームズとその上でビームサーベルを振るうウイングゼロの姿があった。

 

『誘導兵器には弾幕による面制圧が有効だ。お前は打ち漏らしの対処を頼む』

 

『了解した』

 

 口数は少ないながらも次々とファングを減らしていくヒイロとトロワ。

 

 それはトールギス特有の殺人的加速の中でヒートロッドとサーベルを閃かせるゼクスも同じだ。

 

『無理はするなよ、ノイン。この中は量産機には過酷な環境だ』

 

『心配は無用です、ゼクス。機体コンディションの管理くらいはできますので』

 

 MA形態で白騎士のフォローに回るトーラス。

 

 主武装のビームキャノンを使えないにも関わらず、変形機構を利用したビームサーベルの一撃離脱戦法によって彼女は次々と黄金の牙をへし折っていく。

 

 そして地上の方でも、下から特機を狙おうとするファングの群れを押しとどめる為にASとATの混成軍が弾丸の雨を吐き出していた。     

   

『軍曹、あの機体もラムダドライバと同質の力場を発生させている模様です。出力差が歴然の為、こちらはそう長く持ちません』

 

『了解だ。限界が来たら教えろ、それまではここを死守する』

 

 サポートAIアルとの会話をしながら、愛機アーバレストにボクサー散弾砲を構えさせる宗介。

 

『ミユ! お前はその年で戦場に出られる程にガッツのある女だ! 訳の分からんシステム等に惑わされるな!!』

 

 轟音と共に放たれた散弾はラムダドライバの力を孕み、眼前で上へと跳ね上がろうとする金色の牙達を穴だらけにする。

 

『ずいぶんとあのお嬢ちゃんを買ってるんだな、宗介のヤツ』

 

『例の着ぐるみの件でバディを組んだからでしょ。確かに年齢にしては肝が据わってるしね。それより無駄口叩いてないで手を動かしなよ』

 

『了解!』

 

 其の背面では死角を無くすように円陣を組みながら、クルツ機とマオ機のガーンズバックがミサイルとアサルトライフルを乱射している。

 

 そんな彼等の周りを縦横無尽に駆け回るのはキリコの駆るスコープドックとル・シャッコのベルゼルガ。

 

 そしてC.C.のランスロット・フロンティアにカレンの紅蓮だ。

  

『ねえ、C.C.。ミユは大丈夫なの?』

 

 呂号乙型特斬刀で向かって来るDEファングを両断しながらカレンはC.C.へと問いかける。

 

『さてな。サイコミュという装置がパイロットの精神に干渉するモノである以上、楽観視はできんだろうさ』

 

 対するC.C.も手にしたヴァリスを乱射しながらカレンの問いに答える。

 

『どういうことよ?』

 

『今の小娘は怒りの感情を無理やり引き出されている様に見える。怒るという事は心身共に酷くエネルギーを使う。普通はどれだけ腹に据えかねていても冷却期間を挟まねば長続きしないモノだ。それを強制されているとなれば、小娘の年齢を考えると愉快な結果になるとは思えん』

 

『あんな小さな子に胸糞悪いッ! さっさと助け出さないと!!』

 

 苛立ちを隠そうともせずに立ち塞がるファング達を輻射波動で薙ぎ払うカレン。

 

『落ち着け、カレン。その為に全員が動いている』

 

 焦りを見せるカレンを手にしたヘヴィマシンガンでファングを撃墜しながらシャッコが窘める。

 

『あの娘は戦場に出るべき人間じゃない』

 

 一方、巧みなローラーダッシュ捌きで自分を狙って突っ込んでくる黄金の牙を躱し続けるキリコ。

 

 そしてその全てがその身を地面に突き立てたのを確認すると、ターンピックで反転してショルダーミサイルポッドを全弾解き放つ。

 

『───こんな地獄にいるのは俺達のような兵士だけで十分だ』  

 

 爆炎で消えゆく牙に背を向け、キリコは次なる獲物を求めて鉄の軋みと共に走り出すのだった。

 

 彼等のサポートを得て、無傷のまま獣の懐へと飛び込むスーパーロボット達。

 

『ミユ、そんな呪縛に負けるな! ブリュッセルで戦いを鎮めた心を思い出すんだ!』

 

 タケルの呼びかけと共にゴッドマーズの拳が獣の右頬を打ち、

 

『ミユ、郁絵さんがドーナツ作って待ってるぞ! だから早く帰ってこい!!』

 

 どこか的外れなワッ太の声と共にトライダーの蹴り足が叩き込まれる。

 

 並の機動兵器ならスクラップに化けるであろう攻撃を受けては、さしもの獣も平然とはしていられない。

 

 グラリと巨体を揺らがせたところに間髪を容れず追い打ちをかけるのは、亜空間移動で現れたバルディオスとゴッドシグマだ。

 

『マリン、わかってるな』

 

『ああ! 撃墜目的じゃないんだ、強すぎる兵器は使わない!』

 

『そうだ! 使うのは思いの籠った拳のみ!』

 

『いったれ、闘志也!!』

 

 超エネルギーを一点に集中させて叩き込まれる二対の鉄拳。

 

 それによって獣の身体が後退する中、後方にいたアクエリオンにも動きがあった。

 

「さすがはZEUTHの系譜、翅無しにしてはなかなかの活躍だ。では、一つ私も手を貸してやろう」

 

「ちょっ!? お前何を!」

 

 突然ベクターゼドのコクピット内に現れたミカゲがアマタの後ろ襟を掴むと、次の瞬間には彼はベクターイクスのコクピットにいた。

 

『ここはベクターイクスのコクピット……アンタ、カイエンをどこにやったんだ!?』

 

 突然転移させられた事に混乱しながらもゼドへと通信を繋ぐアマタ。

 

 その先では口元をハンカチで覆い、ペット用フ●ブリーズを振りまいていたミカゲが嫌そうに顔をしかめている。

 

『それに乗っていた愚かな翅無しなら貴様等の基地に送り返しておいた。彼女に悪意を持つあの男は何の役にも立たん。───それより変形するぞ』

 

 アマタとミコノの返事もまたずに分離したミカゲは、アクエリオンの形態をゲパルトからEVOLへと入れ替える。

 

『あの、どうするつもりなんですか?』

 

『私に話しかけるな売女……と言いたいところだが、今の私には貴様などどうでもいい。特別に教えてやろう』

 

 通信モニター先で縮こまるミコノに鼻を鳴らすと、計器を操作しながらミカゲは言葉を紡ぎ始める。

 

『この機体には無限拳という機構が備わっている。それを使ってここから彼女へ私の想いを伝えるのだ。そうすれば獣の干渉も大幅に削がれ、この燃える想いに彼女も気付く。まさに一石二鳥だ』

 

 恍惚とした表情で話すミカゲにドン引くアマタとミコノ。

 

『さあ行くぞ! アクエリオンよ! 私の想いに応えて太陽の翼……いや、あんな加齢臭のするボロ羽などいらん! 知恵の樹の華の香りを放つ愛の翼に目覚めるがいい!!』 

 

 絶妙な感じでアポロニアスへの罵倒を交えつつ、アクエリオンにプラーナを流し込むミカゲ。

 

 するとアクエリオンの背面にある翼状の機構が展開し、機体全体がオーラに包まれる。

 

 その色はなんと黒に近い紫色!

 

 機体の塗装にまで及んだそれはまるで邪悪の化身であった。 

 

『これぞ我が愛のカタチ! 名付けてアクエリオンLOVE!!』

 

『ちょっと待て! 絶対お前悪意があるだろう!!』

 

『黙れ、浅学なイヌめ。紫は古来より高貴なる色とされているのだ。私の想いがそれを纏うのは当然の事!!』

 

 これにはさすがのアマタもツッコミを入れるが、当のミカゲは蔑みの視線と共に嘲笑を浮かべるのみ。

 

『さあ、愛しの君に届け我が想い! 無限拳!!』 

 

 ミカゲの高らかな宣誓と共に放たれるアクエリオンの拳。

 

 それはアームでハートの軌跡を描きながら獣へと突き進む。

 

 しかし───

 

『踏ミ込ミガ足リン!』

 

『!?』

 

 なんと途中で吹いた謎の鉄砲風によって目標を逸れた拳は、獣の副腕によって容易く切り払われてしまったのだ。

 

 しかもご丁寧に人工音声によるトラウマなセリフ付きである。

  

 ちなみにアクエリオンの拳が地面にめり込む瞬間、マジンガーZが口元を拭いながら空いた手で中指を立てていたのをミカゲは見逃しはしなかった。

 

『おのれ、屑鉄が! 我が恋路を邪魔するか!?』 

 

 ベクターイクスのコクピットでギリギリと歯を軋ませるミカゲ。

 

 とはいえ、この状況で感情の赴くままにマジンガーへ喧嘩を売るのはあらゆる意味で悪手である。

 

 私怨を呑み込んだ恋する堕天翅は舌打ちと共にアクエリオンのコクピットから脱出するのだった。

 

 そんな混沌とした場の中、アクエリオンの援護に回ったのは正太郎と鉄人だった。

 

『フォローだ、鉄人!!』 

 

『■■■■■!!』

 

 主の声に応えてアクエリオンの一撃に代わってフライングキックを叩き込む鉄人。 

 

 それによって獣の巨体はついに横倒しとなるが、それでも剥き出しの敵意は消えていない。

 

 瓦礫と粉塵を零しながら上体を起こすと、その身に生えた触手から四方八方へビームをまき散らした。

 

『総員、回避行動!!』

 

『いや、動かなくていい!』

 

 オズマが繭の中にいる者達へ叱咤の声をあげるが、それはすぐにカミーユによってかき消された。

 

 そして若きニュータイプの言葉通り、放たれた紫紺の砲撃はZ-BLUEのメンバーには掠りもせずに的外れな方向へと消えていく。

 

『これは……どういう事だ?』

 

『ミユです。あの機体の内部から抵抗する意志を感じた!』  

 

『つまり、俺達のやってる事は間違いじゃないって事だな!』

 

 半信半疑だった救出方法に目に見える効果が出た事で勢いづくスーパーロボット達。

 

 そんな彼等の通信を葵は繭の外から聞いていた。

 

『ねえ、ジョニー! まだ動けないの?』

 

『オーバーヒートしたアブソリュートエンジンはそう簡単に冷却しませんよ』

 

『葵、落ち着きなさい』

 

『そうだ。今は他のみんなに任せようぜ』

 

 くららや朔也に宥められたものの、葵の中に沸き立つ不満は収まろうとしない。

 

『葵さん、どうしたんですか? さっきからずっと苛立って』

 

『───気に入らないのよ、今の状況が』

 

 エイーダの問いかけに胸の中にある物を吐き出すように言葉を紡ぐ葵。

 

 それと共に握り締めたレバーがギシリと軋みを上げる。

 

『今だけじゃないわ、新次元振動が起きてからずっとそうだった! 何かが……誰かがあたしの邪魔をしている!』

 

 葵の言葉にチームDの面々の顔が強張る。

 

 何故なら、それは自分達も感じていた違和感だったからだ。

 

『ずっと息苦しかった! 本当ならもっと熱くなれるはずなのに、いい所で心に冷や水を浴びせられる! この閉塞感、まるで首輪を嵌められたか鳥籠に閉じ込められたみたい!』

 

『葵さん……』

 

『だからジョニー、絶対に動かして。ここで動かなかったら、私達はこの閉塞感から抜け出せないような気がする』

 

 鬼気迫る葵の言葉にジョニーは改めて動力系のチェックに、他のメンバーもダンクーガが息を吹き返す切っ掛けを探そうと計器に目を光らせる。

 

 彼等はADWで破界事変・再世戦争の二大戦役が起きる前から葵と共に戦い続けてきた。

 

 いかに理不尽な要求でも、共に死線を超えたリーダーの叫びを聞き届けない訳がないのだ。

 

『艦長! 地中に動体反応! これは……クマの触手です!?』

 

『なんだと!? 各艦回避運動を取れ! 後方待機中の特機にも警戒を!』

 

『ダメです、間に合いません!!』

 

 しかし今回はそれが仇となってしまった。

 

 獣の腹部から伸び、地中で先端を研いでいた触手の襲撃を察知する事が出来なかったのだ。

 

『しまったっ!?』 

 

 頑強だった量産型クマを複数串刺しにするその刺突は、いかにスーパーロボットの装甲でも受け止めきれるモノではない。

 

 躱せない事を悟って思わず目を瞑る葵だが、彼女に届いたのは機体を貫かれる衝撃ではなくけたたましい爆音だった。

 

 恐る恐る暗闇から解放した視界に映ったのは、モニターの正面に咲く紅蓮の花を切り裂いて現れた鈍色の巨人。

 

『何やってんだ、テメエ等! 俺達の後輩ともあろうものが戦場でへたり込んでんじゃねえぞ!!』

 

『忍先輩…ダンクーガ……』

 

 そう、それは獣戦機隊が駆る異界のダンクーガだった。

 

『パトロール中に吹っ飛ばされたと思ったら、また妙な状況じゃないか』 

 

『藤原、結城、警戒を怠るなよ。ZEXISが総出で掛かっているとなれば、かなりの強敵のはずだ』

 

 呆れ交じりに溜息を吐く結城沙羅に、周辺の様子を素早くチェックしていたアラン・イゴールが注意を促す。

 

『ところでチームDのみんなは何してるの? ひょっとして動けないとか』

 

『はい。限界ギリギリまでエネルギーを使ったためにアブソリュートエンジンがオーバーヒートしまして』

 

『なるほどな。ならば、お前達が動けるようになるまで後方の警戒は俺達が請け負おう。それでいいな、忍?』

 

 式部雅人の言葉にジョニーが答えると、状況を把握した司馬亮が獣戦機隊のリーダーである藤原忍に問いを投げる。

 

『甘やかすな、亮! 故障なんざ気合で何とかするのが俺達だろうが!!』

 

 しかし忍から帰って来たのはとんでもない無茶ぶりだった。

 

『いやちょっと藤原先輩!? そりゃあムチャすぎますよね!!』

 

『あぁ!? 何がだ?』

 

『マシントラブルですよ!? 自分の身体じゃないんだから、壊れた機械を気合で動かすとか無理でしょ!』

 

『情けねえ事言ってんじゃねえ! なんでダンクーガが超獣機神なんて呼ばれてると思ってやがる! 獣を超え、人を超え、そして神になる! それが究極のマシン、ダンクーガだからだろうが!!』

 

『獣を超え…人を超える……』

 

 あまりの言い様に狼狽える朔也を一喝する忍。

 

 彼が語るダンクーガの在り様は葵の心へと染みわたっていく。

 

 そうしている間にも活動限界を迎えた機体達が一機、また一機と繭の中から後退するのが見えた。

 

『どういう事だ? 攻勢を仕掛けているはずのメンツが戻ってきているぞ』

 

『あの中は月光蝶のナノマシンで満たされているようで、機体が分解されるために長時間の活動はできないそうです』

 

『それにクマ……あの機体の暴走に巻き込まれているのはミユちゃんっていう五歳の女の子なんです』

 

『そりゃまた、随分と厄介な状況だね』

 

 ジョニーとエイーダの説明に思わず顔をしかめる沙羅。

 

 彼女も歴戦の強者だが、ここまで面倒な事態にはそうお目に掛った事は無い。

 

『それで、その子を救い出す方法はあるのか?』

 

『ミユは優れたニュータイプです。機体の暴走はサイコミュの過干渉が原因なので、私達は攻撃を通じて彼女の共感能力に想いを伝える事で、その繋がりを断ち切ろうとしてるんです』

 

『拳で語るとはZEXISらしいな』

 

『小さな女の子にすることじゃないけどね』

 

 アランの問いにくららが答えを返すと亮はその荒唐無稽さに笑い、沙羅はあまりに強引過ぎる手段に呆れたように肩をすくめる。

 

 しかし彼等の語らいも長くは続かなかった。

 

『忍、巨大機動兵器から高エネルギー反応! こっちを狙ってるよ!!』

 

 雅人の言葉に間を置かずに前線の機体の頭上を通り過ぎる形で紫紺の極光が放たれた。

 

 先ほどの触手攻撃の失敗を省みたのだろう、アークエンジェルやミネルバに搭載されていた陽電子特装砲をも上回る大出力ビームエネルギーは真っ直ぐに葵達がいる後方へと延びていく。

 

『へっ、いい機会だ。一つ見本って奴を見せてやるぜ』 

 

 迫り来る破壊の奔流を前に忍が不敵な笑みを浮かべると、ダンクーガから膨大なエネルギーが立ち昇る。

 

『よく見とけよ、チームD! いくぜ、みんな!』 

 

『『『『OK、忍!!』』』』

 

 脚部のホルスターから射出された束を手に取り断空剣を展開すると、ダンクーガは両手に持ったその刃を天へと掲げる。

 

『愛の心にて、悪しき空間を断つ……名付けて、断空光牙剣!』  

 

 忍の言霊と共に機体が纏う力場はそこへと集約され、余剰エネルギーは紅い柱となって天を衝く。

 

『すごい……』

 

 装甲越しでもビリビリと肌を震わせる力強さに葵は口角を吊り上げる。

 

 これだ……内から湧き出る自分自身をも燃やし尽くすようなこの熱さ、自分が求めていたモノはこれだったのだ!

 

『やぁってやるぜっ!!』

 

 気合と共に大上段から振り下ろされた光の牙は砲撃に食らいつくと、紫紺の奔流を真ん中から両断する。

 

 そして二つの超エネルギーは互いを食い合い、紅蓮の炎となって相殺された。

 

『どうだい、思い出したかいっ!』

 

『これはムーンウィルやムゲを倒した時、お前達も出来た事だ』

 

『野生は生きる為の本能! 今までもダンクーガを動かしてこれたのなら、皆の中からは消えちゃいない!』

 

『心のままに吼えろ! そうすればダンクーガは答えてくれる!!』

 

『葵、くらら、朔也、ジョニー、エイーダ! 俺達に野生を縛る理性はいらねえ! 心に枷を嵌められたなら、手綱を持っている奴の腕ごとソイツを食いちぎれ!!』

 

 沙羅、アラン、雅人、亮、そして忍の激励に葵達の胸の奥で何かが急激に燃え上がる。    

 

『アブソリュートエンジンが! すごい……今までとは比べ物にならないくらいの出力です!!』

 

『いけるの、ジョニー?』 

 

『聞くまでもないだろ、くらら! 俺の方まですげえ力がビンビン来てんだからよ!!』

 

 朔也達の歓声と共に立ち上がるダンクーガ・ノヴァ。

 

『ありがと、先輩。いい活が入ったよ』 

 

『なら、あのデカブツに一発派手なのブチかましてこい』

 

『何も知らないあたし達よりも、付き合いがあるアンタ等の方が心に響くだろうしね』

 

『了解。───断空剣!』

 

 獣の方へ向き直ると同時に断空剣を展開するダンクーガ・ノヴァ。

 

 それにくららは小さく眉を顰める。

 

『葵、どういうつもり? 過度の攻撃がダメなのは分かってるハズでしょ』

 

『もちろん、本体に当てる気はないわよ』

 

『じゃあ、どうするんですか?』

 

『月光蝶の発生源になってる羽を切り落とすのよ。今まで休んでいた分を取り戻すには、そのくらい必要でしょ』

 

 エイーダにそう言い放つと同時にスロットルを全開にする葵。

 

 あっという間に小さくなるダンクーガ・ノヴァを見ながら忍は小さく息を吐いた。

 

『やれやれ、ちったあゲラールの兄貴みたいにできたかね』

 

『後輩の世話を焼くなんて、俺達の性に合わないんだがな』

 

『仕方ないじゃん、葵達には妙な枷が付けられてたんだから。あんなの見たら放っておけないよ』 

 

 ガラじゃないと溜息を吐く忍、亮、雅人に沙羅は苦笑いを浮かべる。

 

『でも、これで終わりってワケじゃないんだろ?』

 

『もちろんだ。途中で放り出しては先輩としての面目が立たん。そうだろう、藤原!』

 

『ああ、もう一発派手に行くぜ!』

 

 空中で顔の前で十字に腕を組んで力むダンクーガ。

 

 すると背面に背負っていたブラックウイングの顔が開き、そこに膨大なエネルギーが蓄積される。

 

『ファイナル断空砲───やぁってやるぜっ!!』

 

 気合と共に放たれた砲撃は神獣の形となって繭へと牙をむく。

 

 一方の葵は閉じ行く繭の穴を前に舌打ちを漏らした。

 

『前線のみんなは上手く退けたようね』 

 

『はい。ラーカイラムのログだと、シンジ君達がATフィールドでギリギリまで穴を確保していたみたいです』

 

『どうせなら俺達が潜り抜けるまでもう少し待っててくれればいいのに……』

 

『それは無茶ですよ、朔也。人造人間とは言えエヴァも人工パーツが多数使用されています。それを分解されては行動不能になってしまう』

 

『それでどうするの、葵?』

 

『ここまで来て退くなんて道は無いわ。先輩たちも手を貸してくれるみたいだしね』

 

 葵の言葉と同時に各コクピットで警報を発するレーダー。

 

 目をやれば、後方から超高エネルギーの砲撃が追ってきている事が分かる。

 

『さっすが先輩だぜ! これで繭をブチ抜いて突入するんだな』

 

『いいえ、それだと確実性が欠ける。エイーダ、ダンブレードを!』 

 

『了解! ダンブレード、シュート!』

 

『断空彈劾剣!』

 

 背面装備となったRダイガンから放たれた一対の刃と一体化して大きさを増す断空剣。

 

 それを合図としてダンクーガ・ノヴァは断空砲の射線へ身を晒す。

 

『葵、あなたまさか……』

 

『そうよ。あの断空砲のエネルギーを利用して一気に繭を突き破る!』

 

 あまりの無茶苦茶に思わず絶句する4人。

 

 普通なら避難轟々となるところであるが───

 

『面白れぇ、やってやるよ!』

 

『無茶な作戦ですが、我々はムーンウィルの時にドラゴンズハイヴのエネルギーを利用した実績があります。勝算はけっして0ではない』

 

『そうね。ダンクーガ同士だもの、やってやれないことはないわ』

 

『はい! チームDが獣戦機隊に負けないって事を先輩たちに見てもらいましょう!』 

 

 満場一致で受け入れられる辺りが彼等も世界は違えど獣の血を宿す者なのだろう。

 

『断空砲接近! 着弾まであと5秒!』

 

『気合入れろよ、皆! 先輩達の攻撃は半端じゃないぜ!』

 

 朔也の激と時を同じくして光の神獣はダンクーガ・ノヴァの背面に食らいつく。

 

 強烈な衝撃によってコクピット内は真っ赤に染まり計器が次々と警告音を吐き出す中、チームDのメンバーは身の内で猛る熱と本能のままに咆哮を放つ。

 

『『『『『うおおおおおおおおおっ!!』』』』』

 

 ファイナル断空砲のエネルギーを取り込んで黄金の光を纏いながら突貫するダンクーガ・ノヴァ。

 

 だが、自身に迫る脅威に気付いた獣はそれに向けて砲撃を放つ。

 

 ナノマシンの嵐と高出力ビーム。

 

 二つの障害に阻まれて拮抗するダンクーガ・ノヴァ。

 

『やってやろうじゃん……』

 

 だがそれでも葵達は諦めない。

 

『『『『『やってやるぜぇぇぇっ!!』』』』』

 

 身を焦がす思いのままに叫べば、その思いに応えたダンクーガ・ノヴァは纏う黄金に更なる光を宿し、紫紺の奔流を真正面から蹴散らして月光の繭を突き抜ける。

 

 これこそがシンカの道標の一つである『獣の血』の発露。

 

 この時、葵達は自分達に掛けられた枷が砕ける音を聞いた。

 

『『『『『はあああああああっ!!』』』』』

 

 そして流星となって獣へと襲い掛かるダンクーガ・ノヴァ。

 

 振るわれた一刀は狙い違わずにナノマシンの発生源である羽を切り落とした。

 

『■■■■■■■ッ!?』

 

 斬撃と共に流し込まれた膨大なエネルギーにUGセルの再生機構も阻害されて獣は猛り狂う。

 

『機体コンディションはどう、ジョニー?』

 

『ダメです。アブソリュートエンジンの過剰熱量が酷い、今動かせば最悪爆発します』

 

 しかしダンクーガ・ノヴァも無事ではなかった。

 

 限界以上の出力を引き出したことに加えてハイメガキャノンに匹敵する砲撃を真正面から蹴散らした負荷は重く、アブソリュートエンジンはメルトダウン寸前だった。

 

 発生源を失って少しずつ晴れていくナノマシンの渦の中、どうにかしなければと考えていた葵だが、コクピット内に鳴り響いた警告音に顔を上げて絶句した。

 

 なんと斬り飛ばした羽の一枚一枚がファンネルとなって自分達を取り囲んでいたのだ。

 

『これはちょっとヤバいかな……』

 

 忍達をはじめとして後退した仲間が再び突入しようとしているが、このタイミングでは間に合いそうにない。 

 

 防御もままならない中、フェザーファンネルの先端に紫紺の光が宿るのを睨みつける葵。

 

 しかしオールレンジ攻撃を放つ寸前、葵達を取り囲んでいた羽は高速で飛び込んだ何者かの手によって爆炎の中に消える。

 

『大丈夫か、チームD?』

 

『デスティニー……なの?』

 

 炎が消え去った後、光の翼を携えて現れたのは、大きく姿が変わったデスティニーだった。

 

 

 

 今を遡ること十数分ほど。

 

 シン・アスカが目を覚ましたのは、見慣れないコクピットの中だった。

 

 デスティニーへ乗り込んでいたハズなのに、自分の周りにあるのは宇宙世紀特有の全天周囲モニター。

 

 そして椅子もリニアシートでありながら、どこか戦闘機の操縦席を思わせるモノになっている。

 

「これはいったい……」

 

 周囲に目を走らせながらインパルスに似ているという感想を憶えるシン。

 

 幸いにもレバーや各種スイッチの配置はデスティニーと同じだったので戸惑いながらもOSを立ち上げて見ると、機体コンディションを示すサブ・ディスプレイにザフトのロゴが映る。

 

 そして画面が切り替わると次に流れ出すのは自分が座している機体のスペックだ。

 

「ミノフスキードライブ、フォトン・RGフレーム、フォトン・バッテリーにフォトン装甲……。すごい、コイツはストライクフリーダム以上のスペックじゃないか」

 

 聞いた事がない新技術と武装のオンパレードを見たシンはパイロットの性ゆえか、頭に掛かったモヤを吹き飛ばして目を輝かせる。 

 

 そうして機体と武装の説明が終わった後、最後に流れたのは身体を預けている機体の名と切なる祈りだった。

 

 それを見た時、シンは全てを理解した。

 

「がんばってシンにぃ、か」

 

 月光蝶に巻き込まれて分解されかけた相棒を、妹は暴走する機体に閉じ込められながらも救いあげてくれた。

 

 慣れた手つきで次々にエネルギーバイパスを開いていけば、周辺状況やレーダーが捉えた敵味方の動きなどなどの各種情報が次々と全天周囲モニターへ浮かびあがっていく。

 

「ありがとうな、ミユ! お前が創り上げてくれたこのオーバー・デスティニー、使いこなしてみせる!!」

 

 シンの気迫に応じるようにデュアルアイに光が灯り、ナノマシン混じりの暴風によって繭の天頂に吹き上げられていた光を力とする骨格と装甲が淡い輝きを放つ。

 

 そしてそれは背面に備わった宇宙世紀最速の推進機関へと動力を伝え、蓄積されたエネルギーは薄紅色の翼を形作って地上へと舞い降りる。

 

「葵達が跪いた体勢で動いていない!? マシントラブルか!」  

 

 デスティニーの最大速度を上回るスピードに全天周囲モニターの景色が流れていく中、ファンネルらしき誘導兵器に囲まれたダンクーガ・ノヴァを見つけたシンは救援の為に舵を切る。

 

「たしか誘導兵器対処用の武装があったはず……これだ!」

 

 シンがレバーグリップの横に備わったボタンを押すとオーバーデスティニーの肩部の装甲が展開し、奥にあるレーザーポッドから光のシャワーが放たれる。

 

 そして宙を進むレーザーの群れはフェザーファンネル達に狙いを定めると次々に食い破っていく。

 

「あっぶねぇ、危うく葵達に当たるところだった……。あのレーザー兵器、指定した場所を無差別に攻撃するみたいだ。射程も短いしあまり使わない方がいいかもな」

 

 パイロットスーツのシールドグラスの内側に汗を一つ掻きながら、シンは小さく息を吐く。

 

 ミユ謹製の新型機とはしゃいではいたものの、考えてみれば初搭乗でぶっつけ本番という状態だ。

 

 カタログスペックを鵜呑みにしたらどんな悲惨な事になるかなど、歴戦の兵士であるシンはよくわかっている。

 

「とりあえず調子に乗り過ぎないように気を引き締めて行こう」

 

 そう気持ちを切り替えたシンが葵達に声を掛ければ、無理を通した為に動力がオーバーヒート寸前なのだと言う。

 

『少しすれば動けるようになるし、救援の部隊も向かっています。こちらの事は気にしないで下さい』

 

「けど……」

 

『私達の心配よりもあなたにはやるべき事があるはずよ』

 

『そうそう。パワーアップして再登場したんだから、ちゃんとあの子を助けてきなよ』

 

「───わかった」

 

 シンがそう肚を括った時、葵達が空けた穴を通って一機のスーパーロボットが飛び込んできた。

 

 それは鉄人の相棒であるブラックオックスだ。

 

 オックスはダンクーガ・ノヴァの身体を担ぐと任せろとばかりにシンへ向けて親指を立てる。

 

 後退を始めたオックスに対して獣は残ったファングを差し向けるが、それも繭の外から放たれた砲撃によって次々と撃ち落とされていく。

 

『シン・アスカ、チームDの事はエコーズに任せろ!』

 

『その代わり、ミユちゃんの事は頼んだぜ!』

 

 ダグザの駆るロトを先頭に隊列を組んでオックスを支援するエコーズ仕様のジェガン達。

 

 その光景にシンはスロットルを全開にする。

 

「待ってろ、ミユ。今助けてやる!」

 

 再び光の翼を展開して獣へ向けて空を駆けるオーバーデスティニー。

 

 だが、獣が一声吼えると周辺にまき散らされたナノマシンから現れた量産型のベアッガイ達が立ちはだかる。

 

「邪魔だっ!」

 

 襲い来るクマの群れに舌打ちを漏らすと、シンは両手でオーバーデスティニーの肩にマウントされたフラッシュエッジと同型の柄を引き抜いた。

 

 最初の一機をすれ違いざまに切り刻んだ時はダガーと同じ程度の光刃を展開していたそれは、二機目の斬撃をいなして返す刀で袈裟斬りに両断した際には刀身はサーベル程の長さに変える。

 

 そして背面から展開している光の翼もただの推進光ではない。

 

 この翼は推進力が発生した際に噴出した高密度のミノフスキー粒子が副次効果として荷電粒子の余剰エネルギーとなったモノ。

 

 すなわち巨大なメガ粒子ビームなのである。

 

 シンはこの特性を利用して側面や後方から来る敵を翼をビームカッター代わりに次々と両断していく。

 

 その光景に接近戦は不利と踏んだベアッガイの群れは腕部ビーム砲やランドセルに仕込んだミサイルで迎撃を試みる。

 

「この程度でッ!」 

 

 しかし、シンは光の翼を羽ばたかせると速度を落とさないままにバレルロールで次々と敵の砲撃を掻い潜っていく。

 

 多勢に無勢なので躱し切れない攻撃もあるが、それはフォトン装甲から生じるエネルギーバリアが防いでくれる。

 

 そしてシンもやられっぱなしというワケではない。

 

 回避行動の合間に腰部に備わった小型ライフルで後方部隊に少なくない被害を与えていた。

 

 もちろん、このライフルもただのビーム兵器ではない。

 

 これはヴェスバーと呼ばれる可変速型ビーム・ライフルだ。

 

 この武装はその名の通りメガ粒子ビームの射出速度と収束率を無段階連続帯域レベルで調節する機能が盛り込まれている。

 

 それによって低速・低収束だが破壊力に優れるビームから高速・高収束で貫通力の高いビームまで、その性質を変更する事が可能となり必要に応じて撃ち分ける事ができるのだ。

 

 何より驚異的なのは最適な調整を行えれば、U.C.120年代の戦艦主砲クラスの威力を効率よく発揮できる点だろう。

 

 ヴェスバーの開発はU.C.120年代に実用化されていたが、オーバーデスティニーに使用されているのはU.C.150年代に活躍したV2ガンダムの追加武装を改良したものだ。 

 

 その銃口から放たれるビームの弾速と収束率はベアッガイ達の砲撃を一方的に食い破るほどの差を見せている。

 

 次々と量産型ベアッガイを撃墜しながら、数にモノを言わせた火砲を切り抜けるシン。

 

 しかし獣を目と鼻の先にした時、巨大な影が立ちはだかった。

 

 それは特機サイズに組み直された大型ベアッガイであった。

 

 その巨躯は奇しくもかつて刃を交えたデストロイガンダムと同サイズ。

 

 だがしかし、シンはその異様を前にしながらも退く事はしなかった。

 

「俺とデスティニーを止められるとおもうなぁぁっ!!」 

 

 咆哮と共に手にした柄を連結させるとサーベルは更なる変化を見せた。

 

 瞬く間にUGセルが巨大な刀身を形作ると、フレームを通して送り込まれたフォトンエネルギーが高出力のレーザー刃を発生させる。

 

 それはインパルス、デスティニーとシンと共に数多の戦場を切り抜けたコズミックイラ謹製の大型格闘武器、対艦刀であった。

 

 これこそが『フツノミタマ複合型ビームソード』。

 

 この世界と並行世界双方のシンの戦闘データを基に、ミユの祈りによって創り出された武装だ。

 

 一瞬で懐に飛び込まれ、大上段の一撃で頭を割られて沈む巨大ベアッガイ。

 

 だがしかし巨熊は何も出来ずに退場はしなかった。

 

 なんと倒れた瞬間にその巨体から無数の触手を生み出してオーバーデスティニーへ放ったのだ。

 

「なにっ!?」

 

 これにはさすがのシンも虚を突かれてしまった。

 

 瞬く間に全身を絡め取られるオーバーデスティニー。

 

「くそぉっ! もう少しなのに……」 

 

 なんとか拘束を解こうとするものの、四肢と胴部を押さえられた上に光の翼の射程範囲には触手は一本も無い。

 

 生き残りのベアッガイ達から銃口を向けられて万事休すかと歯を軋ませた瞬間、瓦礫の中から飛び出した影によって触手は断ち切られた。

 

 その影は忍び装束を着た漆黒のプチッガイ、プチッガイ・シュピーゲルであった。

 

「お前はッ!?」

 

『私の事などどうでもいい! シン・アスカ、兄とは下の弟妹を護り導くモノだ! お前があの子の兄だというのなら、見事助け出してみるがいい!!』

 

 そう言い放つと両手のブレードを展開して残存するベアッガイ達に突貫するシュピーゲル。

 

「言われるまでも無い!」

 

 言葉と共に苛立ちを吐き出すと、両手に持っていた対艦刀を捨てて獣へと突撃するシン。

 

 気を失ってからの経緯は分からないが、どうすればいいかは理屈じゃなく直感で理解している。

 

 右の拳を強く握りしめれば手甲の部分がスライドしてナックルガードへと変形する。

 

 そしてフレームを通して拳へ集約する機体エネルギー。

 

 一方、獣は接近するオーバーデスティニーを捉えると口部を開いてエネルギーを収束させる。

 

「クッ! 間に合えぇぇっ!!」

 

 シンの叫びも虚しく臨界に達するビームエネルギー。

 

 しかし、それが放たれる事は無かった。

 

 獣がビクリと身を震わせると口部の光が消え去ったからだ。 

 

『シンにぃ、いま!』

 

「! ああっ!!」 

 

 その瞬間、確かにミユの声を聴いたシンは流星となって獣へ突貫する。

 

「帰ってこい、ミユ!!」

 

 シンの願いと共に放たれたフォトンナックルは、狙い違わずに獣の眉間へと叩き込まれた。 

 

 刹那の静寂の後、グラリと巨体を揺らがせる獣。

 

 そのまま横倒しになると身体がみるみる内に縮み、くるくると目を回しながら大の字で寝転がるクマへとその姿を変えた。

 

「こちらシン・アスカ! クマの暴走の鎮圧に成功、至急救護班を寄こしてくれ!!」

 

 四隻の母艦へそう告げたシンは、ゆっくりとオーバーデスティニーをクマの傍らに降ろすのだった。

 

 

 

 

 仲間の救援成功にZ-BLUEが沸き立つ中、瓦礫と降り積もったナノマシンを払いのけて一つの人影が立ち上がる。

 

「やれやれ、エライ目にあったぜ」

 

 男の名はガウルン、今回とある依頼によってこの地を訪れていた傭兵だ。

 

「虎の子のシステムを積んだASは消えちまうし、俺も素っ裸ときた。スポンサーにどう言い訳したもんかねぇ……」

 

 一糸まとわぬ身でありながら気にした様子もなく、うつむき気味に溜息を吐くガウルン。

 

「ま、なるようにな───カッ!?」

 

 しかし開き直って顔を上げた瞬間、彼の額に何かが突き刺さった。

 

 人の目に捉えられないレベルの極細の繊維に似た触手、それは頭蓋骨と硬膜を貫いてガウルンの脳に達すると中心部に意図的に変異させたUGセルを植え付ける。

 

 すると一瞬だけその額に紫色の細胞壁のような文様は走り、ガウルンは虚ろな目をしたままフラフラと何処かへと立ち去って行った。

 

『あの手の戦争屋は使い勝手がいいので手駒に狙ってみましたが、思わぬ収穫がありましたね』

 

 その一部始終を見ていた触手の主は、瓦礫の影でガウルンの脳から引き出した情報にほくそ笑む。

 

『アマルガムに超技術を受信するウイスパード、か。この世界で僕達の活動資金を稼ぐ為にも是非とも手に入れたいピースです』

 

 獣を通じてこの世界の情報にアクセスしたものの、彼が生きた世界とは似て非なるここでは並行世界の自分の財団やその後ろ盾は跡形もなく解体されていた。

 

 それについては残念に思うが無くなってしまった物を惜しんでも仕方がない。

 

『ま、僕程のビジネスマンならこれ等を元手にすれば、現在の兵器産業に食い込むのは容易い。幸いな事にアナハイムとかいう大手の独占で冷や飯を食ってる企業も多いようですから』

 

 そう呟くとUGセルの同化機能を用いてゆっくりと地面へ沈んでいく影。

 

『この世界でもあの忌々しい砂時計が宇宙に浮かんでいるようだし、本業ついでに掃除しておくのも悪くないかもしれませんね』   

 

 時を同じくして、宇宙に浮かぶネオジオンの拠点の一つパラオでとある会合が行われていた。

 

「よもや、貴方が生きていたとは驚きです」

 

「生きていた、というのは正確ではないな。ある意味貴様と同じだよ、フルフロンタル」

 

 謹慎中のフロンタルの前で椅子に座って足を組むのは、傲慢を形にしたような男だった。

 

「それで、どのような用件でここに来られたのですかな?」

 

「ダルシアの小倅の仕手が如何なるものかを見ようと思ってな。もっとも現状の評価を見るに大したモノではないようだが」

 

「これはまた手厳しい。私としては託された役割をこなした結果なのですがね」

 

「スペースノイドの器とやらか。その結果がこれでは笑うしかあるまい」

 

 不遜にも自分の言葉を鼻で笑う人物に、フロンタルは警戒を一段階引き上げる。

 

 自身がスペースノイドの意思を集める器であるというスタンスは、今のところ一部の者しか知らない事である。

 

 さらに言うなら自分の制作者がジオン公国最後の首相たるダルシア・ハバロの息子、現ジオン共和国外務大臣モナハン・ハバロだという事実はそれに輪をかけた機密なのだ。  

 

 もっとも、目の前の男が本物だとすればジオンについて知らない事が無くとも不思議ではないが……

 

「フロンタルよ、組織を掌握するのならば急ぐがいい」

 

「と、申しますと?」

 

 自分に興味は失せたと言わんばかりに席を立つ男にフロンタルは問いを投げる。

 

「残された時間は少ないと言う事だ。人類にとってもこの宇宙にとってもな」

 

 そう言い残すと、男はまるで自室であるかのような気軽さでロックされた扉を開いて部屋を出て行った。

 

 招かれざる客が消えた事で張り詰めていた空気が弛緩していく中、フロンタルは肺に貯めていた空気を深く吐き出す。

 

「まさか、あの男が存在しているとはな。あれが本物であれ偽物であれ、計画を大幅に変更する必要があるか」

 

 一方、男は誰にも気づかれないように港からランチを一隻盗み出し、自動操縦にした機内でこれまたフロンタルの部屋からくすねたワインが入ったグラスを傾けていた。

 

「あの男、私を前に銃を抜かなかった。身に潜むシャアの衝動は押さえ込めているということか」

 

 そう呟くと、男は窓の外に広がる宇宙に微かに光るパラオへと視線を向ける。

 

「キャスバル坊やにドズルの娘、そして道化じみた傀儡か。どれもジオンの名を背負うにはまだまだ甘い」

 

 そう断ずる男の眼光は妖刀のように怪しく、そして鋭いものだった。 

   




クソコテ様の幼女好感度チェック(ときメモ風)

皇帝『ハイ、ゲッペラーです』

クソコテ「もしもし、マジンガーですけど」

皇帝『おっ、ゼロか。良くかけて来てくれたな』

クソコテ「お前がこちらにアクセスしてきたのは分かったからな。ところで女の子のことなら任せておけと言っていたが…」

皇帝『もちろん、何について聞きたいんだ?』

クソコテ『我が巫女の好感度について聞きたい』

皇帝『あの娘かぁ……。あの子は鋭いから調べるには因果律を曲げるとか手間なんだぜ? まあ、お前だから特別に教えてやるけど』

クソコテ『すまんな』

皇帝『彼女のお前に対する評価は…こんなとこだな』

だいすき
・シンにぃ
・かみさま

すき
・くまさん●~*

ちょっとすき
・ミカゲさん

ふつう
・トリスタンとイゾルデ

きらい
・ぜんら(Bomb!!)
・しゃあ(Bomb!!)


クソコテ(満面の笑み)

皇帝『用はそれだけか?』

クソコテ「うむ」

皇帝『マメに話しかけるのが女の子と仲良くなるコツだぜ。じゃ、頑張れよ』

 
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