幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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 はぁーい、絶妙な人選に定評があるGシステム人事部のお姉さんだよ!

 今回、幼女ちゃんのサポートに送ったメンバーはまさに完璧な面子だったよね。

 政治、経済、武力、そしてカリスマ性!

 彼等ならあの混沌とした世界の中でも確実にミッションを遂行して、私達の世界を救ってくれる事間違いなしだわ!!

 あら、幼女ちゃんのコンディションが悪いわね。

 精神的に随分と疲弊しているみたい。

 ここは癒しが必要と見た!

 というワケでメンタルサポート要員を送り込まないと!

 候補としてはまずカテ───(只今、大変不適切な表現がございましたことをお詫び申し上げます)……ケロロ軍曹!

『とち狂ってお友達にでもなりに来たのかい?』

 次はアラレちゃん!

『赤い彗星も地に落ちたものだな』

 最後はビィ!

『だからさ…死んじゃえばいいよ!』

 この三人に任せれば、きっと幼女ちゃんも穏やかな気持ちになるわ!

〈人事担当を更迭しますか?〉




〈人事担当の更迭は認められません Gシステムの鳩の人〉


復活の幼女とさよならクマさん

「ミユ。奴等の名はみだりに口にしてはいけないよ」

 

 私の心の中だと分かる空間で、ミカゲさんは指を自分の口元に当てながらそう言った。

 

 何故彼がこういう形で私と繋がれるかというと、例の説得の際に私とのチャンネルのようなモノを把握したからだそうだ。

 

 プライベートな情報を知られた事については思うところはあるけれど、ミカゲさんの場合はあくまで善意なので変に勘繰るのは失礼だろう。

 

「……テンシのこと?」 

 

「そうだ。奴等は常に数多の宇宙を監視している。自分達に不都合を及ぼすモノがいないか、とね」

 

 ミカゲさんの言葉に背筋に冷たいものが走る。

 

 常に監視って嫌すぎるんですけど!?

 

「そしてミユ。君の存在は彼等にとって酷く都合が悪いのだ」

 

「……どうして?」

 

「君との対話で私も気付いたが、正しきシンカとは他者との相互理解と協力の果てにある。しかし通常であればそれは酷く難行なのだ。何故なら普通の者には他人の心の内など分からないからね。それが敵対している相手なら猶更さ」 

 

 なるほど、確かにその通りだ。

 

 実際、友人や家族でも誤解が原因で上手く行かないってことあるもんね。

 

「しかし君の感応能力はその高いハードルを一気に下げてしまう。それは様々な異なる者達を共存へと誘う事に繋がる。何故なら争っていたとしても、相手の人となりを知れば武器を向けにくくなる。そこで自分との共通点を見つければ親しみも湧くものだ」

 

「……それはいけないこと?」

 

「いいや、素晴らしい事さ。だが奴等はそれを望まない。理由は分かるね?」

 

「ミユのちからでみんながなかよくなったら、シンカのもとになるから」

 

「そうだ。傲慢なる彼の者は自分達に迫る者を許さない。それが善意の果てに引き起こされた奇跡でも、たとえ一つの宇宙を救う事になろうとも、シンカへの扉を開くなら奴等はそれを妨げるだろう」

 

 それこそ星どころか一つの銀河を破壊してでも、ね。

 

 そう言葉を紡ぐミカゲさんに私は思わず固唾を呑んだ。

 

 彼から伝わってくるのは、テンシが本当にそれだけの力を持っているという事実。

 

 なるほど、あんなに強かったクマさんがさらに進化しようとするわけだ。

 

「君のいる部隊はこの星で最も強い。星の巡りが合えばシンカの道を進む事もあるだろう。彼等が力を付けるまで奴等の事は君の胸の中に隠しておきなさい」 

 

「……ん」

 

 そう言うと徐々にミカゲさんと周囲の景色がかすんでくる。

 

 あ、この身体が浮き上がる感覚は目が覚めるなぁ……

 

「……ミカゲさん ありがと」

 

「ああ、また会おう」

 

 そうして視界が黒一色に包まれたあと、重い瞼を頑張って開くとこちらを心配そうに見つめるファさんの姿が見えた。

 

「よかった! 目が覚めたのね」

 

「……ここ、どこ?」

 

 ボーっとする頭のままに上体を起こそうとすると何故か酷い眩暈がした。

 

 フラついてベッドから落ちそうになったけど、ファさんがちゃんと支えてくれた。

 

「ここはネェル・アーガマの医務室よ。ミユちゃんはどこまで憶えてる?」

 

 その言葉に釣られて記憶を辿ってみたのだが、その内容はあまりにも酷かった。

 

 あの日、クマさんから助け出された私は色々な事があり過ぎていっぱいいっぱいだった。

 

「うわあああああんっ!? シンにぃ! シンにぃ!! ───うぇっ……」

 

「うわああああっ!? ミユ!」

 

 心配や申し訳なさからギャン泣きしながらシン兄に抱き着いたのだが、この時点で我が幼女ボディは限界に来ていたらしく、泣きわめく勢いのままシン兄のパイロットスーツへリバース。

 

 さらに酸っぱい匂いに包まれたまま気を失ってしまったのだ。

 

「……シンにぃにだきついて…うぇってなった」

 

 体調不良だったからある程度は仕方ないとしても、女の子が公衆の面前で戻しちゃダメだよね……

 

 しかも謝罪しないといけないところなのに、迷惑を上塗りしてるし。

 

「あのね。ミユちゃんはあれから4日ずっと眠り続けていたの」

 

「……ミユ、おねぼうさん?」 

 

「気にしないでいいのよ。ミユちゃんはいっぱい疲れてたから、長く眠るのは当たり前なの」 

 

 思ったよりも時間が経っている事に唖然としていると、ファさんがそう言ってくれた。

 

 それから空白の四日間のことを聞いたのだが、私がひっくり返っていた間もZ-BLUEは波乱万丈だったようだ。

 

 まずクマさん暴走事件の翌日にジェミニアの仲間がアクエリア市に攻め込んで来た。

 

 まさかの強敵の襲来に話を聞いた私はびっくりしたのだが、幸いにもジェミニアは出て来なかったんだって。

 

 その戦いの中、事前に行っていた墓穴に埋まるという謎の修行によってエレメントとヒビキさんがパワーアップ。

 

 敵の指揮官機もヒビキさんが撃退して、アクエリア市もZ-BLUEも大した被害は出なかったそうだ。

 

 あと以前に私が見つけたジン・ムソウというスパイのお兄さんだけど、ユノハさんと恋仲になってこちらに寝返ったんだってさ。

 

 愛の力と言えば聞こえがいいだろうけど、それっていいのかなぁ……

 

 幼女にはまだラヴロマンスというモノは理解できませぬ。

 

 でもって3日目にはボン太くん騒ぎのようにテロリストが陣代高校を襲撃したそうだ。

 

 ならず者達の目的はアルトさん目的に現地を訪れていたシェリルさんとランカさん、そして民間人のカナメお姉さんだった。

 

 私は詳しい話を聞いてないんだけど、どうもカナメお姉さんには特殊な力があるらしい。

 

 どんな力を持っているかは知らないけど、普通の人が戦争に巻き込まれるのはやはり可哀そうだと思う。

 

 一日でも早く彼女が元の生活に戻れる事を祈ろう。

 

 それで今だけど、私達は宗介さん達が所属する組織『ミスリル』の本拠地へと移動しているらしい。

 

 目的は激戦を潜り抜けてきた機体のオーバーホール、そしてクマさんの封印の為だ。

 

「あのクマがミユちゃんの大事な機体だって事は分かってるんだけどね……」

 

「……しかたない」

 

 そう、原因はあの子の暴走を止められなかった私にある。

 

 皆やアクエリア市にあれだけ迷惑を掛けたんだから、そうなるのは当たり前なんだ。

 

 …………でもやっぱり寂しいなぁ。

 

 

 

 

 目が覚めてから数時間、ペコペコだったお腹も膨らんだのでケジメを付ける事にした。

 

 そう、暴走を止めてくれたみんなに謝罪と感謝の気持ちを述べるのである。

 

 聞けばパイロットのみんなはミスリルの潜水艦である『トゥアハー・デ・ダナン』で何かイベントの準備をしているらしい。

 

 私の護衛で残ってくれていたエコーズのみんなも行くという事で、ちゃっかり便乗したのだ。

 

 そんな訳で乗り継ぎの方は無事に完了したのだが、初の潜水艦と浮かれている場合じゃない事態に遭遇した。

 

『おかしい。Mr.Agの話だとガウルンが捕虜になったと見せかけて潜入してくるはずなのに……。もしかしてあの情報はフェイクで俺はアマルガムから見捨てられたのか?』

 

 格納庫で働いているミスリルの隊員さんから不穏な思念が流れて来てます。

 

 ……病み上がりでしんどいのに、厄介事とかマジで勘弁してほしいんだけど!

 

 例のサイコミュの後遺症か、共感能力が暴走してるみたいで遮断しようとしても上手く行かないし!

 

 いやいや、待って!

 

 そこのお兄さんはミスリルを裏切る気だったの!?

 

 所詮は傭兵稼業? 金払いのいい方に付く? そんなー。

 

 むこうの奥でAS弄ってるオジサンも買収されてるし……相良軍曹、ミスリルの人事ガバガバすぎだよぉ。

 

 こんな汚い話なんて聞きたくなかったけど、知ってしまった以上は仕方がない。

 

 私は隣を歩いていたコンロイさんとエコーズのお兄さんの手を握ると、駄々洩れになっている思念を中継で送り付けた。

 

「どうした、嬢ちゃん。潜水艦が怖く───コイツは……」

 

 私が手を握った事で最初は優しい笑みを浮かべていたコンロイさんだったけど、思念を受けると一気に目が鋭くなった。

 

「コンロイ少佐、どうしますか?」

 

「ダグザ中佐が先行してここに入っているはずだ。中佐を通じてミスリル側の責任者に裏を取る」

 

 私の耳に聞こえるかどうかの小声で話をすると、コンロイさんとエコーズの皆は耳に付けた小型インカムのスイッチを入れる。

 

『どうした?』

 

『中佐、『アリス』がミスリルの隊員から裏切り者を見つけました』

 

 アリスってもしかして私の事?

 

 何故にアリス?

 

『……間違いはないのか?』

 

『対処に困った彼女が、こちらにターゲットの思念を中継してきました。奴等は国際テロリストのガウルンと繋がってる事やアマルガムのMr.Agという人物に500万ドルで買収された事も自白しています。あと事前の打ち合わせでは陣代高校襲撃はガウルンも参加する予定で、その際に奴はこの艦に捕虜を装って乗り込み、ターゲットと結託してシージャックを敢行する手はずだったそうです』

 

『ターゲットの名は分かるか?』

 

『一人はグェン・ビェン・ボー。西太平洋戦隊陸戦コマンドSRT所属、コールサインはウルズ10。もう一人はジョン・ハワード・ダニガン。こちらも所属は同じ、コールサインはウルズ12です』

 

『───マデューカス中佐から確認が取れた。今からミスリルの部隊がそちらに向かう、彼等と合流して対象を拘束せよ』

 

『了解』

 

 素早くこれだけのやり取りをこなすと、皆はインカムの電源を切った

 

 ちなみに私はインカムの会話が聞こえたわけじゃない。

 

 共感能力が暴走気味なので思念が伝わってしまったのだ。

 

「そういう訳だから迎えが来るまでここで少し待機するぞ」

 

「迎え、ですか?」

 

「ええ。上司に到着したことを報告したところ、ここの副長殿が迎えを寄こしてくれるとの事です」

 

「なにせ、この艦はミスリルにとって機密の塊ですからね。我々が気ままに動くのは少々拙いのですよ」

 

 困惑するファさんを人好きのする笑顔で誤魔化すコンロイさん達。

 

 迎えは来るけど、その対象は私達じゃないんだよね。

 

「……コンロイおじさん、ありがと」

 

「こちらこそ、だ。これからもああいう手合いに気付いたら、自分で動かずにオジサン達を頼ってくれるとありがたい」

 

 頭を撫でる少し硬いけど大きくて暖かい手の感触に目を細めていると、奥の方から小柄でチョビ髭のオジサンを先頭に相良軍曹達がやってきた。

 

「ファさん。申し訳ないが、この子をお願いします」 

 

「は…はい」

 

 そう言い残すとエコーズの皆は相良軍曹達と合流し、あっという間に裏切り者たちを捕まえてしまった。

 

 何という早業、私の目からは何が何だか分からなかったよ。

 

「チクショウ!? なんで分かった!!」

 

「黙れ! ミスリルの恥さらしが!!」

 

 後ろ手に親指をバンドで結ばれて、軍曹達に連行される裏切り者たち。

 

 何が何だか分かっていないファさんと待っていると、一団から離れたマオ姐さんがこちらにやってきた。

 

「目が覚めて早々にお手柄だね、ミユ」

 

「……たまたま」

 

 気が付けば聞こえてきただけで、狙ってやったわけではないのですよ。

 

 まあ、頭を撫でられるのは気持ちがいいのでその辺の事はお口にチャックですが。

 

 予想外のアクシデントはあったものの、私達は無事にイベント会場となった潜水艦の区画へ到着する事が出来た。

 

 会場へと近づくにつれて耳に流れ込む軽快な音楽、これってPLANET DANCE?

 

 廊下を抜けると立食式パーティ会場の真ん中に備わったステージで、この頃シェリルさん達と同じくらい画面で見ていた一団が演奏を繰り広げている。

 

 間違いない、あれはFIRE BOMBERだ!

 

「……なんでいるの?」

 

「ああ、UGがアクエリア市を襲撃した時に俺達に合流してくれたんだ」

 

 私の呟きに応えたのはいつの間にか隣に来ていたオズマ隊長だった。

 

 さすがは私の師匠、同類の匂いには敏感ですね。

 

「……UGって?」

 

「ジェミニアの配下だよ。それより彼等をライブで見るのは初めてだったな。なら俺が作法と言う奴を教えてやろう」 

 

 割と重要な情報がさらりと流されてしまったけど、まあいいや。

 

 では作法というモノを教えていただこう。

 

「まずは楽しむ事! 両手を振り上げて心のままに音楽にノるんだ! バサラァァァァァァァッ!!」

 

「……ばさら~」

 

 オズマ隊長の熱いシャウトが耳に届いたのか、歌声と共に少しだけ彼等の想いが伝わって来た。

 

『オズマさん、相変わらずだねぇ。っていうか、あの小っちゃい子は誰なんだろ?』

 

『たしかに見た事のないチビだな。もしかしてオズマの子か?』

 

 思念の主はベース兼ボーカルのミレーヌさんとキーボードのレイさん。

 

 ドラムのビヒーダさんとバサラさんは演奏に熱中してました。

 

 あと変な噂が流れるとオズマ隊長がキャシーお姉さんに殺される可能性が高いので、隠し子疑惑は否定しておきました。

 

「ミユ!」  

 

 軽快な音楽に乗ってぴょこぴょこ飛び跳ねていると、私を見つけたシン兄が駆け寄ってきた。

 

 何から謝ったものかと頭をグルグルさせている内に近くに来たシン兄に抱っこされた。

 

「目が覚めたのか。よかった」

 

「……ごめんね、にぃに」

 

 万感の意を込めて出した謝罪の言葉に、私は思わず凍り付いてしまった。

 

 バカな……まさかのにぃに呼びクセ復活だと!?

 

「なんだ、また甘えん坊になっちゃったのか?」

 

 違うんだ! 今のはただのいい間違い……背中をポンポンしながら頭を撫でるんじゃない! ヤメロ…ヤメロー!?

 

 その後、思う存分甘やかされた私は歩く事も許されずに抱っこで移動する事に。

 

 なんという羞恥刑、酷い…酷過ぎる!

 

 表面上がポケっとしながらも内面では打ちひしがれている中、間を置かずに更なる予想外の事態が私を襲った。

 

「このチビ、あの巨大マシンに乗ってたガキじゃねえか」

 

「チビって言うな。俺の大事な妹だぞ」

 

「そうそう。この子も立派なZ-BLUEの一員だよ、忍先輩」

 

「子供の前くらいはちゃんとした態度取りなよ、忍」

 

 なんとチームDの人数が倍になっていたのだ!

 

 葵お姉さん達を上回るケダモノの気配を漂わせた目つきの鋭い黒髪のお兄さんをはじめとする五人。

 

 彼等を目の当たりにした私は、威嚇も忘れて思わずシン兄にしがみ付いてしまった。

 

「お前を怖がっているんじゃないか、藤原」 

 

「コイツは子供に好かれる雰囲気ではないからな」

 

「うっせーよ!」

 

 青いバンダナを巻いた茶髪のお兄さんと金髪のお兄さんに茶化されて不機嫌になる忍というお兄さん。

 

「ミユちゃんは私達の野生を感じる事が出来るんですよ」

 

「チームDも最初にあった時は緊張していましたからね」

 

 そこにフォローを入れるエイーダさんとジョニーさん。

 

「……ごめんね」

 

「気にしてねーよ。ガキはガキらしく安全な場所で大人しくしてろ」

 

 ちょっぴり申し訳ないと思って謝ると、忍さんはバツが悪そうな顔でワシワシと頭を撫でてくれた。

 

 とりあえず悪い人ではなさそうのだが、その猛禽類のような目で見るのは勘弁してもらいたい。

 

 それから私は迷惑をかけた皆に謝罪行脚を決行した。

 

 こっちが謝る度に『気にしてない』や『大丈夫』と笑いかけてくれた。

 

 あれだけ大迷惑をかけたのに本当にいい人ばかりである。

 

 まあみんなして頭を撫でまくってくる所為で、禿げるかと心配になったけど……

 

 あと付き合ってくれたシン兄には感謝の印としてほおずりをしておいた。

 

 さて今更な話だが、私はここで何が行われるのか実は知らされていないのだ。

 

「……にぃに、ここでなにをするの?」

 

 ……おのれ幼女ボディめ、呼び方が固定していやがる。

 

「ミスリルとZ-BLUEの親善とこの潜水艦の1歳を祝うパーティだ」

 

「……このせんすいかん、たんじょうび?」

 

「ああ」

 

 ふむ、それはめでたい。

 

 これはお世話となっている身として一言お祝いを述べておくべきだろう。

 

「……おめでとう」  

 

『ありがとー!』

 

 そう呟くと艦内のどこからともなく歓喜の感情が流れて来た。

 

 これは驚いた。

 

 もしかしてこの艦もオックスみたいに人工知能が付いてたりするのだろうか?

 

「思わぬトラブルがあったが時間には何とか間に合った! それじゃあ今からミスリルとZ-BLUEの親善並びに、このトゥアハー・デ・ダナンの建造一周年を記念したパーティを開始するぜ!」

 

 そんな事を考えていると、МC役であるクルツさんの声を合図にパーティが始まった。

 

 最初にこの艦の責任者であるテレサというお姉さんの挨拶があり、それが終われば参加者たちは用意された料理へと群がっていった。

 

 そんな彼等が舌鼓を打つ中、私はりんごジュースをくぴくぴ飲むだけである。

 

「本当にいらないのか、ミユ?」

 

「……おなかいっぱい」

 

 言ってくれるな、シン兄。

 

 私だって御馳走を逃すのは不本意なのだのだよ。

 

 ああ、こんな事なら食べて来なかったら良かった。

 

「あの、ミユさんですか?」

 

 内心でブーたれていると、銀髪をおさげにした軍服姿の綺麗なお姉さんが声をかけてきた。

 

 先ほど開会の挨拶をしていたテレサ・テスタロッサさんである。

 

 改めて近くで見たけど、どうみても高校生くらいにしか見えない。

 

 それなのにブライトさんやオットーさんと同じ職に就いているんだから、とんでもないお姉さんだ。

 

「先ほど壇上で挨拶しましたが改めまして、私はテレサ・テスタロッサです」

 

「副官のリチャード・ヘンリー・マデューカスだ」

 

「……ミユ」

 

 シン兄に抱っこされたままペコリと頭を下げると、テレサお姉さんは笑顔で頭を撫でてくれた。

 

 むむ、職責の割にフレンドリーな人なのかも……

 

「さっきはありがとう。あなたのお陰で裏切り者を見つけ出す事ができて、連中の企みを未然に防ぐことが出来ました」

 

「……たまたま。きにしないで」

 

 マデューカスのおじさんと頭を下げるテレサお姉さんに、私はフルフルと首を横に振る。

 

 アレは本当に偶然だったのだ。

 

 こんな風に感謝されると少しばかりこそばゆい。

 

「あの、何があったんですか?」

 

「敵に寝返っていたミスリルの隊員を彼女が見つけてくれたのだ。奴等はこの艦をシージャックする計画を立てていたからな、それを未然に防いでくれた事になる」

 

「そっか。すごいな、ミユ」

 

 マデューカスおじさんの言葉にシン兄は私の頭を撫でてくれた。

 

 やめるのだ、そのナデナデは私の眠気に効く。

 

「それでは、ささやかなパーティですが楽しんでくださいね」

 

 そう言うと去っていくテレサお姉さんとマデューカスおじさん。

 

 なんというか、Z-BLUEは才女がいっぱいだねぇ。

 

 私の共感能力なんてもう霞んじゃってるんじゃなかろうか。

 

 そこからは和気あいあいとした雰囲気でパーティは進み、宴もたけなわというところで壇上に再びクルツさんが現れた。

 

「お集まりの紳士淑女にヤロー共とカワイ子ちゃんの皆様! それではいよいよ艦内ビンゴの時間です!」

 

 どうやら最後はビンゴ大会で〆るつもりらしい。

 

 マオ姐さんとミサトお姉さんのヤジを受けながらクルツさんがルールを説明をする中、係のオジサンが私とシン兄にシートを配ってくれた。

 

「がんばろうな、ミユ」

 

「……ん」 

 

 でもって肝心の商品についてだけど、4等がC.C.オババさまが用意した某ピザ店のマスコット人形。

 

 周りの声を聴くにオードリーお姉さんやレイお姉さんが狙っているようだが……私としてはデザイン的に何とも微妙である。

 

「ミユは欲しくないのか?」

 

「……いい」 

 

 3等はサザンカさんのZ-BLUEガールズ機密写真集。

 

 女性陣からブーイングと男衆から歓声が上がってるけど、あれってそんなにヤバいモノなの?

 

 こういうのは後に響く可能性があるから、本人の許可は取っておいた方がいいとおもうの。

 

「サザンカの奴……ミユは変な写真撮られてないよな?」

 

「……たぶん」

 

 お風呂以外は基本的にくまスーツな私に隙は無かった!

 

 そして2位はヒビキさんが取ったディメンジョン・グリズリーってクマさんの牙。

 

 クマさんを傷つけるとは……ヒビキさんは私の敵という事だな!

 

「ヒビキのいる方に手を広げてどうしたんだ? 抱っこなら俺がしてるだろう」

 

 NO! これはいかくである!!

 

 そして栄えある1等の商品だが、それはなんとテレサお姉さんのキスだった。

 

 それが発表された時の男性陣の盛り上がりといったらもう……シン兄、嬉しいのは分かるけどもう少しテンションを下げよう。

 

 そんな事やってると思念でルナお姉さんに告げ口しちゃうよ?

 

 あとテンションが上がって絶叫するバナージお兄さんを、オードリーお姉さんが身体が浮くくらいのボディブローで沈めていたのは私の見間違いだと思う。

 

 彼女の背後に顎に傷があるゴリラみたいなオジサンが立っていて『魅せてやろう、ザビ家者のゴロメンツ!!』って文字が浮かんでいたのもきっと気のせいだ。

 

 それはさておき、開始から結構順調にポコポコとシートに穴をあけていた私だが、結局一位は取れなかった。

 

 いや、テレサお姉さんには悪いけどキスとかいらないからね。

 

 流れて来た思念からするに、彼女的には安パイな私に当たってほしかったっぽいけどさ。

 

 それで一位を射止めたのは誰なのかというと、なんとキリコさんだった。

 

 けど、彼はテレサお姉さんのキスをキャンセルしちゃったんだ。

 

 理由はフィアナさんって恋人がいるからなんだって。

 

 シン兄も少し見習った方がいいかもよ?

 

 ちなみに私は2位。

 

 商品だったクマさんの牙は日頃のお礼にエコーズ隊へプレゼントしました。

 

 聞こえてきたシモンのアニキの話だとこれは勇者の証で幸運のお守りらしい。

 

 なので危ない任務に就く皆を少しでも守ってくれればいいと思う。

 

 このまま楽しくパーティもお開きになると思っていたんだけどそこはトラブル遭遇率に定評があるZ-BLUE、そうは問屋が卸さなかった。

 

 ビンゴ大会が終わると同時に艦内に警報が鳴り響いたのだ。

 

「これは敵襲!?」

 

「お前等、お楽しみは終わりだ! 各員は配置に付け!」

 

「各部隊は格納庫へ急げ! 準備が出来た者から発進だ!!」

 

 一気にハチの巣をつついたような騒ぎになるパーティ会場。

 

 その中でシン兄は抱っこしていた私をゆっくりと降ろした。

 

「俺も出るから、ミユは安全なところで待機しているんだ」

 

「……かんばって」

 

 本当は私も出撃したいけど、病み上がりだし封印予定のクマさんを勝手に持ち出す訳にはいかない。

 

 ここは大人しくしておこう。

 

 

 

 

 などと思っていたのですが、何故か私は潜水艦の艦橋にいます。

 

「ごめんね、ミユちゃん。一番安全な場所はここだって聞いたから……」

 

 理由は避難途中だったカナメお姉さんが、私を見つけて抱き抱えられたからである。

 

 それはいいんだけど、何故か私が座っているのは艦長席に着いたテレサお姉さんの膝の上なんだよねぇ……

 

「……なんで?」

 

「艦長というのは精神力が必要な仕事です。今まで何かとストレスが溜まっていた私としては、大仕事を前に癒しが必要だと判断したのです!」

 

 ドヤ顔で言い切ったテレサお姉さん。

 

 これにはマデューカスおじさんやカナメお姉さんも苦笑い。

 

 あと、私のほっぺをモチモチするのは控えていただきたい。

 

「それに、あなたは艦橋でも敵の動きを察知できると聞きました。できればその辺で助けてくれると嬉しいなと思いまして」

 

 なるほど、そういう事なら否はない。

 

「……ん、がんばる」

 

「敵部隊、来ます! この反応は……UGです!!」

 

 今度こそジェミニアが出てくるかと一瞬緊張したものの、現れたのは幸いにも無人機のザコだけだった。  

 

「報告にあった隊長機の姿がありませんな」

 

「彼等もいまだ本腰を入れていないという事ですか。ならば、そんな態度では我々を討つことなどできないと教育してあげましょう!」

 

 今回は無人機相手なので私の出番は無いだろうとお気楽に考えていたのだけど……

 

『No3548 左下部より攻撃を推奨』

 

『No3684の攻撃失敗。目標の運動性を上方修正』

 

『No3547被弾。戦闘続行不能、機密保持の為に自爆コード起動』

 

 なんか相手のAIの思考を感じ取れちゃってる。

 

 これってもしかしなくても暴走の副作用だよね!?

 

 感覚的にはオックスの思念を感じ取るのに似てるけど、少し前では彼みたいに完全な自我があるAIしか読めなかったのに……

 

 その内頭がパーンッとかなったりしないか心配だ。

 

 そんな事を考えながらポヤヤンとしている私だが、もちろん仕事をさぼっている訳じゃない。

 

「取り舵30! 敵は2機が本艦に取り着くために下方から接近するつもりです! それを逆手にとって奴等を迎撃します!」

 

「アイマム! 艦首魚雷発射管解放!!」

 

 ギュッとされているのを利用して、テレサお姉さんに情報を中継しているのだ。

 

 肝心の戦局だけど、ジェミニアもいない無人機ばかりの敵がZ-BLUEに勝てるワケもなく、一方的にボコボコにされています。

 

 あ、いつものテロリスト達も来たからそっちの思念も送っちゃおう。

 

 

 

 数日ぶりに乗り込んだクマさんのコクピットは以前よりも少し広くなったような気がした。

 

 先の戦闘は何の被害も出す事なく終わり、私は封印される前の最後のお別れという事でクマさんに乗せてもらったのだ。

 

 動かすのはもちろんシステムを起動させるのもダメだし、おしりのカッチンも繋げちゃダメだ。

 

 周りにはマジンガーを始めとして多くのスーパーロボットは万が一暴走した時の為に待機してくれている。

 

 その様子を見ると、ここまでしなくちゃいけないような事をしたんだと改めて認識する。

 

 サイコミュの強制や変な兵器を提案してきた時に見せられたはしゃぐ謎のお爺ちゃんの図には参ったけど、この子が封印されるのは本当に寂しい。

 

 だって、クマさんは私がこの世界で目覚めてからずっと一緒にいてくれた相棒なのだ。

 

「……ごめんね」

 

 あの時、私がちゃんと自制できていれば。

 

 怒りに呑まれる事なく状況把握に努めていれば、この子が封印される事もなかったのだ。

 

 自分の不甲斐なさに涙が零れ落ちると、それが掛かったのを切っ掛けにするように死んでいたディスプレイに映像が浮かび上がった。

 

『気にしないで、ミユちゃん。きっとまた会えるよ』

 

 思いもよらない形で届いたクマさんからのメッセージ。

 

 それを見て涙腺が崩壊しそうになった時、画面に新たな文字が浮かび上がった。

 

『だから、僕が帰ってくるまでに使う代替え機を選んでね』

 

 …………代替え機?

 

 それってクマさんの代わりに私が乗るロボットという事だろうか?

 

 疑問符を浮かべるこちらを他所に、ディスプレイには様々な機体が浮かび上がってくる。

 

 え~と……すごいや、ガンダムもいっぱいだ。

 

 ブルーディスティニーの2号機に始まってペイルライダー。

 

 ガンダム・ベルフェゴールにハイドラガンダムやハルファスガンダム。

 

 あ、金キラのフェネクスってロボットもある。

 

 うーん、けど私にはガンダムって似合わないと思うんだよねぇ。

 

 かと言ってザクの親戚みたいなのも嫌だし……あ、このサイコロガンダムって面白いかも。

 

 あの暴走を思えば、もう戦場に出るべきじゃないとも思う。

 

 けど、もしかしたら私にも出来る事があるかもしれない。

 

 私がそこにいる事で誰かを助ける事が出来るかもしれない。

 

 そんな思いも胸の奥で消えずに燻っているのだ。

 

 クマさんの言う代替え機がもしかしたら、万が一の時に役立つかもしれない。

 

 そう思った私はリストの中にある一つのロボットを選んだ。

 

 他の皆は見た目が怖いのが多かったけど、あれならまん丸だし愛嬌もあるから平気だよね。

 

『わかったよ、ミユちゃん。これからも頑張ってね』

 

「……またね」

 

 そうクマさんに声をかけてコクピットを降りると、そこにはパイロットスーツ姿でオーバーデスティニーに乗ろうとしているにぃにの姿が。

 

 ふむふむ、オーブがジェミニアの仲間に襲われてるから助けに行くと。

 

 オーブと言えばにぃに達の故郷だったはず……よし、私も連れてけー!!




本日のまとめ

幼女

復活するも愛機は封印に。

ヘコんでいたら兄が里帰りするという事で便乗する気満々。

目下の悩みはにぃに呼びが治らないこと。


赤目の兄貴

妹が元気になって一安心。

故郷が襲われてると聞いて慌てて救援に行こうとしたら、『つれてけー!』と妹に抱き着かれた。

本当は連れて行きたくないけど、揉めてる時間も無いので相乗りすることに。

自分の故郷を見せたいという思いも少しあった。

実は『にぃに』呼びが復活して嬉しい。

エコーズの兄貴達

平常運転な幼女にビックリ。

コンロイさんは狙っていたディメンジョングリズリーの牙が部隊の物になってニッコリ。

これでまた幼女へ過保護になる。


美少女潜水艦艦長

 恋敵にリードされた上に、キスを拒否られたり代役でオッサンのほっぺにチューしたりとストレスが溜まっていた。

 戦闘中はおさげを弄る代わりにひたすら幼女のほっぺをプニプニしてた。

 これからは実用性もかねて戦闘の度に幼女を膝に乗せようとする。


某副官

 幼女と戯れる上司の姿にホッコリ。


クマさん

 ふははははははははっ! 戦えぇぇぇい!! 
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