幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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クソコテ様の壮大な計画、その一端が明かされる


幼女と光子力

 マクロス・クォーターの一区画に備え付けられたロジャー・スミスの部屋。

 

 相変わらずの黒を基調にした室内に内心で悪趣味と感想を漏らしていたR・ドロシー・ウェインライトは、棚の天板に置いてある部屋の雰囲気に似合わない小さなクマの置物に首を傾げた。

 

「ああ、それは交渉人復帰第一号のお客さんがくれた依頼料だよ」

 

 部屋の主の言葉に置物を持ち上げてみると、中からコインが擦れ合う音が聞こえた。

 

「その割には嬉しそうではないわね」

 

 ドロシーの言葉を受けて、ソファに腰掛けてグラスに入った琥珀色の液体を傾けているロジャーは小さく息をつく。

 

「正直に言えばこの件は酷く気が進まない。彼女はこの事を交渉のカードになど使わず、正規の手続きで対応すべきだ」

 

「なら断ればいいじゃない」

 

「そうしたいのは山々だがね、生憎とこの依頼は地球圏に蔓延っている混乱の一つへの楔となる可能性が高いんだよ。気に入らないというだけでは断れないさ」

 

 大げさに肩をすくめるロジャー。

 

 その様子を感情の籠らない瞳で見つめていたドロシーは再び問いを投げる。

 

「それでどうするの?」

 

「もちろん受けるとも。ただし、相手の出方によってはビッグオーの拳が唸る事になるだろうがね」

 

 内心で『いつもと同じね』と呟きながらクマの置物を元の位置に戻すドロシー。 

 

 鮭を手にペロリと舌を出すクマの中で、再びコインが甲高い音を立てた。

 

 

 

 

 どうも、宇宙に出てウキウキなミユです。

 

「ひーちゃん、キラさんはひだりうえ。はねのうごき、こんなかんじ」 

 

 白い軌跡を描きながら宇宙を駆けるフリーダム。

 

 両手のビームライフルから飛んでくる光弾を避けながら、私はひーちゃんに直感が捉えた機体とドラグーンの動きを伝える。

 

 ちなみに今までああいう無線誘導兵器は全部ビットだと思ってたけど、作られた世界や動力のある無しで名前が変わるらしい。

 

 ビット、ファンネル、ドラグーン、ファングにインコム。

 

 幼女としてはややこしいので名前を統一した方がいいと思います。

 

『りょ~かい! あとはまかせて!!』

 

 ちょっとしたうんちくはともかくとして、私の予測を受けてハロの全身から弾幕が雨あられと放たれる。

 

 最初は小刻みに動きながらレーザーを撃っていた蒼い羽たちだけど、弾幕に混じって飛んできた高速徹甲弾の狙撃によって一つ、また一つと撃墜されていく。

 

『くっ!? なんて手数だ!』

 

 四方八方へ飛んでいくこちらの攻撃を掻い潜ったフリーダムは、ある程度間合いを離すとお腹にある砲口からビームを撃ってくる。

 

『あははは! むだむだぁ!!』 

 

 でもハロの装甲はクマさんのナノなんとかに衝撃に耐性があるフェイズうんぬん装甲を混ぜた特注製。

 

 ビームにとっても強いのだ。

 

 テンションの高いひーちゃんの声と共に、ビームを弾きながら高速回転で突進するハロ。

 

『いくら大きくても動きが真っ直ぐなら!』

 

 もちろんこんな動きが通じるワケがなく、アッサリと躱されてしまう。

 

 でもゴメンね、キラさん。

 

『なっ!?』

 

 ハロが通り過ぎる瞬間、開いた装甲の奥からニョキっと生えた手がフリーダムの胴体をがっしり握り締めたのだ。

 

 そして手近な岩のデブリにキラさんを叩きつけると、それを押し潰す様に高速回転で圧し掛かるハロ。

 

 さらにビームの零距離射撃って……やりすぎ!

 

 ひーちゃん、やりすぎだよ!!

 

『ハロ、ハロ。不味ソウナミンチガデキタゼ』

 

 なんなの、その悪役じみたセリフ!

 

 ひーちゃんが言ってるわけじゃないよね!?

 

 唖然とする私を置いてけぼりに終了した模擬戦。

 

『やったね、ミーちゃん!』

 

「……ひーちゃんのおかげ」

 

 ハロの残虐ファイトはわりとショックだったけど、頑張ったひーちゃんへのねぎらいは忘れてはいけない。

 

「負けちゃったか。すごいね、ミユ」

 

「……ひーちゃんとハロががんばった」

 

 シミュレーターから出て来て苦笑いを浮かべるキラさんに私は首を横に振る。

 

 私がやってた事って、戦艦に乗ってた時みたいに索敵と敵の行動予測だけだもん。

 

 実際にハロを動かしてたのはひーちゃんです。

 

 私が全部やってたら、キラさんの動きについて行けてません。

 

「それでも勝つのは凄いよ。だってキラさんはザフト最強のパイロットなんだぞ」

 

「持ち上げすぎだよ、シン。本気になったら僕よりアスランの方が強いし」

 

「……せいのうとあいしょう。ミユはすごくない」

 

『あとはヤマトさんは動きに遊びがなさすぎ。思考通りに無駄なく動くからミーちゃんには全部筒抜けだったよ』 

 

 私達がキラさんに勝てたのには二つの大きな理由がある。

 

 まず一つはキラさんのフリーダムがハロと相性が悪すぎた点。

 

 あの機体って速く動いて羽の誘導兵器でかく乱したり、弾幕で相手を撃ち落とすのがセオリーみたい。

 

 けど弾幕だったらハロの方が広範囲高密度に張れるし、ビーム主体のフリーダムだとサイズ差もあってハロの防備を抜くのが難しいのだ。

 

 唯一の実弾兵器なレールガンだって、ひーちゃんが迎撃してくれたから届かなかったし。

 

 絶え間なく吐き出される弾幕と私の感覚を使った狙撃の為に高速移動も邪魔されるし、接近戦を仕掛けるのだって厳しい。

 

 という具合でハロはフリーダムの長所を完全に潰しちゃってるのだ。

 

 多分、この子が一番相性が悪いのってゴッドマーズみたいな弾幕を突っ切って斬り殺しに来るトンデモロボットだと思う。

 

 そしてもう一つの要素はキラさんの操縦技術。

 

 ああ、勘違いしないでほしいんだけど、キラさんの腕が拙いというワケじゃない。

 

 むしろ操縦の正確性と反応速度はZ-BLUEの中でもトップクラスだと思う。

 

 ただ今回はひーちゃんが言ったように良すぎるのが仇となっちゃった。

 

 私もクマさんに乗ってたから分かるんだけど、機動兵器を思い通りに動かすってすごく難しい。

 

 現に歴戦のファさんやカツさんだって、操縦ミスやラグがチョコチョコあるくらいなのだ。

 

 けれど、キラさんにはほぼそれがない。

 

 共感能力から伝わってくるイメージと実際の動きはほとんど同じだった。

 

 たしかにそれは素晴らしい事だと思う。

 

 戦い方もその正確さを活かして最短最速で最良の行動を取るものだから、並のパイロットでは歯が立たないだろう。

 

 けど、ニュータイプからするとカモなんだよね。

 

 もちろん思考から行動までの間は短いから、そこを突けるのってカミーユさんやアムロ大尉みたいなエースくらいだけどさ。

 

 私とハロの場合はカッチンから索敵や相手の行動予測の情報を受けて、ひーちゃんが動かすもん。

 

 究極のエレメント・ドールの名に相応しく、彼女の操縦はキラさん以上に正確で素早い。

 

 だから私達はキラさんの動きに先手先手を打てたのだ。

 

 その二つが合わさった結果、今回の模擬戦では私達はキラさんをほぼ封殺する事になったのである。

 

 だけどこっちのパイロット事情は私がサブ、ひーちゃんがメインみたいなモノなので褒められても居心地が悪いのだ。

 

「……キラさん、ありがと」

 

「うん。また手合わせしてね」

 

 こうしてハロの完熟訓練も終わって私は部屋に戻る事にした。

 

 私としても色々と考えたい事ややる事があるのだ。

 

 さて、謎の街パラダイムシティから帰還した私達は、またしてもあのアドベントの情報によって宇宙に上がる事になった。

 

 あの男が言っていた人類滅亡の危機は、現在進行形で地球を襲っている『エタニティ・フラット』という異常事態の事らしい。

 

 この『エタニティ・フラット』がどんなものかと言うと、地球上の生命の時間を止めてしまうものらしい。

 

 なのでこれが成立すると、時間は経つけど四季の移り変わりはないし生物は老いる事も無ければ成長もしない。

 

 誰も歳をとる事なく、老人も大人も子供も永遠に今のまま。

 

 新しく子供が生まれる事は無いし、事故や病気で亡くなる事はあっても老衰で人が死ぬ事もない。

 

 あんまり上手く説明できないけど、こんな感じらしい。

 

 控えめに考えてもとんでもない話だと思う。

 

 こんな状態では人間がまともに生きていける訳がない。

 

 このエタニティ・フラットは次元力という力で行われてるそうなので、みんなはその力を持つスフィアが搭載されたガドライト達ジェミニスを追って動いているらしい。

 

 今思えば東方のおじちゃんにボコボコにされている時に捕まえればよかったんだけど、あの戦いに割り込むとかムリゲーですよね。

 

 ともかく、今の私達の目標はこんな感じなのだ。

 

 私としても永遠に幼児のままとか勘弁なので、この件に関しては積極的に協力する所存である。

 

 さて、そんな事をツラツラと考えながら歩いていると、私の部屋を目前にしたところで横合いから伸びてきた手が幼女ボディをヒョイっと持ち上げてしまった。

 

 何奴っ!? と目を向けると、そこには興味深げにこちらを見るさやかお姉さんとカレンお姉さんの姿が。

 

「ふぅん。前に見た時に思ったけど、やっぱりいいデザインじゃない」

 

「うん。可愛いわよね、このドレス」

 

 私が今着ているのはひーちゃんとおそろいのドレス。

 

 ハロを操縦する時はこれが一番やりやすいのだ。

 

「前までは朝から晩までクマスーツだったからどうなる事かと思ったけど、ようやくおしゃれの楽しさが分かったみたいだね」

 

「髪型も変わってるし、本当に一安心だわ」

 

 私を地面に降ろしてうんうんと頷くカレンさんと、ツインテールの一房を持ってピコピコと振るさやかさん。

 

 どうやらクマ一丁だった私は思った以上に心配されていたようだ。

 

 さて、このまま弄り倒されるのは困るのだが、私が今からやろうとしている事に関しては女性、特にさやかお姉さんがいるのは都合がいい。

 

「……てつだって」

 

「えっと、何をかしら?」

 

 服の袖を掴んでそう言うと、首をかしげるさやかお姉さん。

 

 幼女ボディの口下手ぶりは毎度ながら困る。 

 

「……あたらしいふく、きたい」

 

「新しい服が他にもあるの?」 

 

「……ん」

 

「いいわよ。それじゃあ行きましょうか」

 

「あ、私も見てみたい!」

 

 頷いた途端に私を抱っこするさやかお姉さんと、ウキウキした顔でついて来るカレンお姉さん。

 

 ファッションが絡んだ時の二人のテンションの高さを思い出して悪手だったかと後悔したけど、こうなっては後の祭り。

 

 あっという間に部屋に辿り着いた私は、二人に促されるままにかみさまから貰った服を引っ張り出した。

 

「なにこれ……甲児君のパイロットスーツ?」

 

「色合いはそうなんだけど、デザインはところどころ和装が混じってるわね。袖とか」 

 

「和服って言うよりは巫女さんが着る千早っぽいわ。インナーも白衣みたいになってるし。でもなんで下がミニスカートなのかしら?」

 

「というか、色がデザインと全然合ってないわよね」 

 

「うん、どうせなら紅白にすればいいのに」

 

 せっかくの服なのに思いっきりダメだしをくらってるよ、かみさま!!

 

「……もらいもの。わるくいうのダメ」

 

「そうねって、これ誰にもらったの?」

 

「……かみさま」

 

 そう答えると、いつの間にか私の頭にパイルダーオンしているチビを見て顔をしかめるさやかお姉さん。

 

 うん、カレンお姉さんも本当に大丈夫とか言わないでね。

 

 見た目は怖いけどかみさまって優しいんだよ?

 

 言葉足らずな口を必死に動かしてお姉様方を納得させて、なんとか着つけに協力してもらうことができた。

 

 畳んであった時は分からなかったけど、こうして着てみるとたしかにどこか巫女さんっぽいね。

 

 お姉さん二人からは色合いが不評だったけど、私的にはいいと思う。

 

 髪の毛も服に合わせてポニーにしてもらったんだけど、マユ姉ゆずりのボリュームのある髪の所為で結った方が大きく広がっちゃうんだよね。

 

 さやかお姉さん達は可愛いって言ってくれたけど、これだとヘルメットが被れないのだ。

 

 それはさておき、お目当ての服に着替えた私はお姉様方に別れを告げて格納庫へと足を運んだ。

 

 もちろん目当てはかみさまことマジンガーである。

 

 せっかくもらった服なのだ、ちゃんとお披露目しないとダメだよね。

 

「……かみさま、ありがと」

 

 ちゃんと前後見えるように一度ターンしたあと、私はマジンガーに深々と頭を下げた。

 

 今回のお供であるチビも、下げた勢いで跳ねたポニーを浴びながら頭の上に張り付いている。

 

 こうしてお礼も済んだし戻ろうと思っていると、何故かマジンガーの頭からパイルダーが分離して私の前に降りて来た。

 

 一人でに開いたキャノピーとチビからの思念からすると、乗ってみろという事らしい。

 

 チビのマジックハンドの助けを借りてパイルダーの中に入ってみると、いつの間にやらメインの後ろに補助シートが出来ていた。

 

 ちょくちょくベッド代わりにしている身としてはなんだが、やっぱりメインシートは甲児お兄さんのモノというイメージがあるので座るのは気が引ける。

 

 そんなワケで私は補助の方に腰掛けた。

 

 空気が抜けるような音を立ててキャノピーが閉じると、ふわりと浮かんで元の位置に戻るパイルダー。

 

 かみさまがどうして私を乗せたのかは分からないけど、パイルダーの中ってすっごく居心地がいいんだよねぇ。

 

 そんな安心できる空間にいるとまぶたが重くなるのが幼女というモノ……

 

 さっきのシミュレーターの疲れも事も相まって、これは耐えられない。

 

 うにゅ…おやすみなさい……

 

 

 

 

 私は夢の中で不思議な光景を目にしていた。

 

 天変地異のように赤と黒が渦巻く空の下、富士山をバックに今よりずっと大きくなったマジンガーZとどこかマジンガーに似た巨大なロボットが戦っていたのだ。

 

 身体の節々から黄金の光を放つマジンガーと巨大ロボットの戦いがとっても凄くて、パンチ一発で文字通り大地が割れて空が裂ける程だった。

 

 それでも敵ロボットが使う空間操作や不思議な能力の前に、少しずつ追い詰められるマジンガー。

 

 次の瞬間に視界が切り替わると、私は不思議な空間で杖を振るう青い髪の女の子を見た。

 

 手にした杖を振るう度に周囲の不思議なモニュメントや地球の模型から光が集まり、彼女はそれをマジンガーへと送り出していく。

 

 あの光はマジンガーのエネルギーである光子力だ。

 

 女の子の言葉を聞くに彼女達がいる世界は光子力が世界中に行き渡り、人々の生活を支えるエネルギーの根幹となっているのだろう。

 

 だから地球のあらゆる場所から集まるその力は、大きい物は工場や軍事施設を停止させた分のエネルギー。

 

 小さい物は一般家庭の電気を止めた程度の物だった。

 

 けれど、それはきっと事の本質じゃない。

 

 世界の状況も、エネルギーを生み出す方法やその大小も違う。

 

 大事なのは光子力に宿った人々の心。

 

 マジンガーを応援したい、少しでもマジンガーの力になりたい。

 

 そんな人々の願いこそが、あの巨大なマジンガーZを支えているんだ。

 

 そしてマジンガーは光の柱となった数多の光子力を纏って立ち上がり、敵ロボットをロケットパンチで地球の外まで弾き飛ばした。

 

 かみさまがどうしてこの夢を見せたのか、分かった。

 

 きっとかみさまは───

 

 

 

 身体に伝わる振動に目を覚ますと、私は補助シートの中で横になっていた。

 

 こんな狭いスペースで寝転がれるなんて、本当に私の身体はちっこいなぁ。

 

 それはいいとして、問題は天井の半分を占めるキャノピーから見えるのが高速移動する宇宙空間だという事だ。

 

 もしかして、これって私が寝てるうちに敵が来たのかな?

 

 そして宇宙の蒼を見ると否応なしに意識の網も広がっていく。

 

 そうして私が感じ取ったのは、ゾッとするような飢餓感だった。

 

 なんだろう、これ?

 

 飢えていると言ってもお腹が減ってるんじゃない。

 

 求めるのは飽くなき進化。

 

 他者を、文明を、多くのエネルギーを。 

 

 時には同族すら自分の糧にして、己が一族を宇宙の中で最も優れた存在へ押し上げようする強烈な本能。

 

 ───アレはダメだ。

 

 自分以外の全てをエサとしか見ていないあの生き物は紛れもなく万人にとっての害悪に違いない。

 

 なんとか漂う悪意を払いのけると、キャノピー越しに黒いヒトデに目と牙をつけたような気味の悪い生物が襲ってくるのが見えた。

 

「くそっ! インベーダーめ!!」

 

 甲児さんの声と共に鉄拳を振るってヒトデ達を打ち砕くマジンガー。

 

 けれど私の直感ははじけ飛ぶ黒い肉片を目くらましに、パイルダーへ牙を突き立てようとする一匹を捉えていた。

 

「……かみさま、まえ!」

 

 チビを通して私の意志と繋がったマジンガーは耳の辺りから蒼いビームを放つ。

 

 それによって瞬く間に凍り付き、動きを止める黒ヒトデ。

 

「ミ…ミユちゃん!? なんでそこに!」

 

「……こうじおにいさん、てき!」

 

「お、おう! ロケットパァァンチ!!」

 

 驚く甲児お兄さんを促すと、宇宙の闇を裂いて空飛ぶ鉄拳がヒトデの身体をバラバラに打ち砕く。

 

「再生も結合もさせるかよ! ルストハリケェェェェン!!」

 

 さらにマジンガーの口から放たれた酸を含んだ強風を受けて、氷漬けの破片はチリへと還っていく。

 

「まったく……2重の意味で驚いたぜ。それで、どうしてそこにいたんだ?」

 

「……ねてたら、うちゅうにいた」

 

「またパイルダーをベッド代わりにしてたのか。その服といい本当にマジンガーが好きだな、ミユちゃんは」

 

「……ん」

 

「ともかく、ちょっと面倒な敵が出て来てるから今はクォーターに戻れない。しっかり椅子に掴まってるんだぞ!」

 

「……ん!」

 

 甲児お兄さんの言う通り、さっきの飢えた悪意はこの宙域全体に広がってるみたいだ。

 

 キャノピー越しに見ればヒトデのほかに気持ち悪い黒色の翼竜みたいな奴、他にも虫に似た奴や貝を背負ったイカみたいなのまでいるじゃないか。

 

 というか、ブラックゲッターに似た赤い機体があるんだけど……竜馬さんの気配があるからゲッターの新型なのかな? 

 

「……あれ、なに?」  

 

「真ゲッターロボだよ。キタンやヨーコと一緒に隼人さん達が持って来てくれたんだ。もの凄い強いんだぜ」

 

 甲児さんが説明している間にも三つの飛行機に分離した真ゲッターは白くてほっそりした形態に合体して、周りの翼竜達を右手のドリルでドリドリしてる。

 

 うん、戦い方がエゲツナイ。

 

 他にも金色の尖った顔に手足が生えたロボットが頭のてっぺんに敵を突き刺して真っ二つにしたり、横にいたピンク色のゴツイ顔ロボがミサイルを雨あられと撃ったり大暴れだ。

 

 Z-BLUEの他の皆もドンドン気味の悪い生き物たちを蹴散らしているけど、奴等が数を減らす度に宇宙を覆っていた悪意が一点に集中してるみたい。

  

「……こうじおにいさん、あそこにボスがくる」

 

「なんだって!?」

 

 私がそう言ったのと同時に、宇宙空間に牙が生えた肉の裂け目みたいなものが現れる。

 

 そしてその中から出てきたのは、前面にこわもての人の顔と額に生えた触手に狡猾そうな男の顔を持つ芋虫のような巨大な化け物だ。

 

『あれは!?』

 

「コーウェンにスティンガーか!」

 

「この宙域に戻るなりゲッターロボと出会うとは……やはりゲッター線は我々を欲しているようだね、スティンガー君」

 

「そ、そうだね、コーウェン君。それに随分と面白い人間もいるようだよ」

 

「ヒッ!?」

 

 バケモノの四つの目にギロリと見つめられて私の口から思わず悲鳴が漏れる。

 

 あの視線は嫌だ。

 

 向けられただけで全身を虫がはい回るみたいな気持ち悪さがある。

 

「シンカの道標か。何者が作ったのかは知らんが、その力は我々にこそ相応しい。そうだね、コーウェン君」

 

「う、うん。だから、引きずり出して取り込んでしまおう!」

 

 そう言うと、マジンガーへ向けてゆっくりと進んでくる化け物。

 

『艦長! 敵大型個体はマジンガーに狙いを定めた模様!』

 

『奴等の目的はゲッターではないの!?』

 

「みんな、こっちにはミユちゃんが乗っている! 奴等、あの子に狙いを定めたみたいだ!!」

 

『なんだって!?』

 

 フェルトさんとスメラギさんの声に続いて、通信機に叫ぶ甲児お兄さんにシン兄の驚いた声が返ってくる。

 

『巨大ハロが出てないと思ったら、どうしてマジンガーなんかに!?』

 

『詳しい話は後よ! あの巨体には生半可な攻撃は通じないわ! 各員は最大火力で迎撃を!!』

 

 カツさんの驚きの声をぶった切って皆へ指示を飛ばすスメラギさん。

 

 でも、それよりも早くバケモノは身体からインベーダーたちを生み出してZ-BLUEの部隊に襲い掛かってくる。

 

「スメラギさん! こっちは自分で何とかする! だから、みんなはインベーダーの排除を!!」  

 

 ムリに救援を出すと母艦が拙い。

 

 そう判断した甲児お兄さんは通信機へ叫ぶとジェットスクランダーを吹かしてバケモノに挑む。

 

「グフフ……飛んで火にいる夏の虫とはまさにこの事」

 

「多少図体がデカいからって勝てると思うなよ! サザンクロスナーイフッ!!」

 

 甲児お兄さんの気合と共に紅の翼から十字手裏剣が発射される。

 

 手裏剣は前みたいにエネルギー弾じゃないうえに、何故かチビを通して私の意識と繋がった。 

 

 え、伊達にクマさんやハロに乗ってたわけじゃないって?

 

 チビもかみさまもすごいや!

 

 ビットのように自在に動かせるようになったのなら、狙うのはあのおっきい顔についた不気味な目だ。

 

 私のイメージ通りに変則的な軌道で襲い掛かる十字手裏剣は、次々と芋虫オヤジの顔にその刃を立てていく。

 

「なにかね、それは?」

 

「そ、そんなオモチャじゃあ蚊が刺した程にもきかないよ」

 

 だけど、あまりにも大きさが違い過ぎて有効打を与える事ができないでいる。

 

 でも構わないのだ。

 

 サザンクロスナイフの目的は相手の気を引いてかく乱する事、私達の本命は別にある。

 

「だったらキツイのを喰らわせてやる!」

 

 甲児お兄さんの言葉でさらに加速するマジンガー。

 

 そして芋虫オヤジを目前にした瞬間、背負った紅がギラリと剣呑な光を見せた。

 

「スクランダァァァァッ! カァァット!!」

 

 最高速に達した黒鉄の城はすれ違うと同時に、超合金Zの巨大な刃となった左側の翼でコーウェンと呼ばれた強面の顔を斜めに切り裂いた。

 

「ぬうっ!? ふふふ、だがこの程度の傷など物の数ではないな」   

 

 紫色の体液を滴らせて顔をしかめたのもつかの間、一瞬で止血が済んだ事に口元を歪めるコーウェン。

 

「ではお返しと行こう」

 

 そして奴が口を開いた瞬間、私の背中に冷たいモノが走った。

 

「……こうじおにいさん、うえ!」

 

「え!? わ、わかった!」

 

 私の声にマジンガーを急いで上昇させる甲児お兄さん。

 

「しゅ、出力を上げすぎては駄目だよ、コーウェン君」

 

「分かっているともスティンガー君」

 

 次の瞬間、奴等の口からとんでもない出力のビームが放たれる。

 

 宇宙を明るく染める緋色の光はギリギリのところでマジンガーの足元を通り過ぎると、射線上に残っていたインベーダー達を次々に消滅させて宇宙の彼方へと消えていく。

 

「なんて威力だっ!?」

 

 そのあまりの威力に固唾を呑む甲児お兄さん。

 

 私の方は驚きで言葉も出ない。

 

 そんな中、私はもの凄いスピードでこっちに近づいて来る燃え滾るような闘争心の塊を感じた。

 

『コーウェン! スティンガー!!』

 

 怒号と共にコーウェンの顔に次々と突き刺さるのは柄が短いながらも凶悪な両刃を備えた斧だ。

 

 そして一発が左目に突き刺さった事でコーウェンが一瞬怯んだその瞬間、身の丈ほどの戦斧を大上段に振り上げた真ゲッターが緑の光を纏って現れた。

 

『おおおりゃあああああああっ!!』

 

 そして緑の光を伴って振り下ろされた巨刃はコーウェンの顔面を額から顎まで深く切り裂き、その巨体を後退させた。

 

「真ゲッターロボ、流竜馬か」

 

『無視してんじゃねえよ。テメエ等の相手は俺達だろうが!』

 

 刃先に着いた紫の血糊を払って、戦斧の先端を突き付けるゲッター。

 

 深手を負ったはずのコーウェン達は、それでも余裕を崩す気配を見せない。

 

「ゲッター線はたしかに我等にとって最も重要な代物だ」

 

「しかし、今回ばかりはそうではないのだよ」

 

『なんだと?』

 

『ミユのことか!? 何故あのチビを狙いやがる?』

 

『竜馬、ミユってのは誰の事だ?』

 

『ウチで預かっているガキだ。シンの妹分で破格のニュータイプ能力をもったな』

 

 コーウェンとスティンガーの言葉に、竜馬さんと聞いた事のない声の男の人がゲッターの中で話をしている。

 

 そういえば、あのゲッターから3人分の気配がするや。

 

 ふむふむ、コーウェン達の言葉に疑問の声を上げたのが隼人さんで竜馬さんと話をしてたのが弁慶さんね。

 

「その機体に乗っている人間、実に面白い力を秘めている」

 

「うん。不特定多数の精神に干渉し、自らと同調させる事でその意志を自らが高位存在へとシンカする為の糧とする。誰が作った兵器かは知らないが実に興味深い。その力があれば僕達はもっと先のステージへ進む事ができるだろう」

 

 実に楽しそうに話すバケモノの言葉に私は思わず息を呑んだ。

 

 他から見れば私の力はそんな風に見えるのか……

 

 今まで必死にやって来たこと全てを否定するような言葉に、鉛の塊を呑み込んだように胸の奥が重くなる。

 

 今まで私は意図せずに他人の思考を感じ取る事や心に触れる事が多々あった。

 

 それが奴等の言う通りの力だとしたら、上手く心を通わせる事が出来たと思っていた事が自分のいい様に書き換えていたことになる。

 

 そんな事は無いと言い切りたい。

 

 けれど私は自分が何者かが分からない。

 

 生まれも誰が作ったのかも、そして私自身に植え付けられた記憶が本物なのかも。

 

 ……いや、分かっている事は少しだけある。

 

 あのクロクマの言葉を思い返せば、私は何らかの目的の為に作られたのは確実だ。

 

 そして失敗作だと烙印を押された。

 

 その目的が兵器としてなら、奴等の言う事が真実なのではないか?

 

 どんどん悪い方に流れていく考えに、私は俯いて震える自分の身体を抱きしめる。

 

 今まで気にしていなかった自分の出自が分からない事が、こんなにも恐ろしい物だなんて……

 

 けれど、何も言えない私に代わって奴等の言葉を振り払う人がいた。

 

『下らねえ! そのナリになって頭が悪くなったんじゃねえか、コーウェン、スティンガー!』

 

 それはマジンガーの前に出て真ゲッターでトマホークを構える竜馬さんだった。

 

「なんだと?」

 

『あのチビがそんな面倒な事考えるかよ! アイツは敵に手を差し伸べるくらいのお人好しだ。他人を利用しようなんて考える玉じゃねえ!』

 

「そうだ! ミユちゃんは何時も戦いを何とかする為に力を振るっていた! お前達の言うようなことの為じゃない!!」

 

 甲児お兄さん。

 

『たとえどんな産まれだろうがミユは俺の妹だ! 兵器になんて絶対にさせない! させてたまるかぁっ!!』

 

 シン兄。

 

『シンのいう通りだ。あの子の力をお前達のような存在に悪用などさせはしない! その為に俺達大人がいるんだ!』

 

 アムロ大尉。

 

『ミユ、下らんブラフに引っ掛かるな。会ったばかりの奴等にお前の何が分かる? そんな寝言は鼻で笑ってやれ!!』

 

 相良軍曹。

 

『ミユ、アンタも言い返しなよ。ちっちゃくてもその胸の中にはあたし達と同じ熱いモノがあるんだ、言われっぱなしじゃいられないでしょ?』

 

 葵お姉さん。

 

『ミユ! もしお前が自分を信じられないなら、お前を信じる俺達を信じろ! 俺達は何度だって言ってやる! お前は兵器なんかじゃないってな!!』 

 

 シモンのアニキ。

 

 後ろで戦っているみんなからの声に、私は歯を食いしばって顔を上げる。

 

「……ちがう」

 

 今出せる最大の声で否定の言葉を吐くと、それが伝わったのかコーウェン達の目がこちらへ向いた。

 

「何が違うのかね? 君は真っ当な形で生まれてきたわけではあるまい」

 

 アンコウの提灯のように垂れ下がった顔に嘲りを張り付けて私に問いを投げるスティンガー。

 

 私はキャノピーの向こうに映る醜い奴の姿を真っ直ぐに見ながらもう一度口を開く。

 

「……それでもミユはミユ・アスカ。へいきじゃない」

 

 そうだ。

 

 私を娘と言ってくれたアスカ家の皆の為に、奴等の言葉を認めるわけにはいかない。

 

「……みんなのこころはみんなのもの。あやつるのダメ」

 

 それを認めてしまったらブリュッセルで銃を置いてくれたマリーメイアの兵隊さん、そして心を交わしてくれたミカゲさんも私が操った事になってしまう。

 

 そんなのは彼等にとってこの上ない程の侮辱だ。

 

 だから私は向けられたこの悪意を否定しないといけないんだ!

 

「ふん、戯言を」

 

「君の意志など問題ではない。僕達が必要としているのはその力だ」

 

 私の言葉など意にも介していない奴等は、マジンガーを捕獲しようと身体からインベーダー達を生み出す。 

 

 けれど、その一団を一刀の元に切り裂く2つの影があった。

 

『少女よ、よく言った。その高潔な想い、我等が護ろう!』

 

『牙なき者の牙となる! 僕達グランナイツの使命だ!』

 

「ゴッドΣグラヴィオン! それにソルグラヴィオンも!!」

 

「……しりあい?」

 

「ああ、俺達の仲間だ!」

 

 紅い二体のスーパーロボットを見て歓声を上げる甲児お兄さん。

 

『久しぶりだな、みんな。遅れてすまなかった』

 

『けど、援軍のタイミングとしては申し分なかっただろ?』

 

『斗牙! エイジ!』

 

 ソルグラヴィオンって呼ばれた方からの通信に嬉しそうな声を上げるシン兄。

 

 というか、カイエンさんに続いてまたシン兄に似た声の人だ。

 

『けど、マジンガーっていつの間にか二人乗りになってたのね』

 

『さっきの声って随分と幼いように聞こえたけど……』

 

『鑑定したところ3歳から5歳くらいの声のようですよ、琉菜様』

 

『本当なの、エィナ?』

 

『はい、リィル様』

 

『そんなに小さいのに戦場に出るなんてガッツがあるわね』

 

『そういう問題じゃないですよ、ミヅキさん!』   

 

 そしてその次に来るのは姦しいお姉さんたちの会話。

 

 というか、あのソルグラヴィオンって何人乗ってるんだろう?

  

『再会を喜ぶのは後にしよう。グランナイツの諸君、飢えた破壊者共を殲滅するぞ!』

 

『『『『『『了解!』』』』』』

 

 ゴッドΣの方に乗っている人の号令でインベーダーへ挑みかかる二体のグラヴィオン。

 

『宇宙の輝きを穢す者よ、貴様等の思い通りにはさせん!』

 

 蒸気を上げて胸の装甲がせり上がると、ゴッドΣグラヴィオンはVの字のなっていた飾りを取り出した。

 

『悪を切り裂け、白銀の三日月よ! グラヴィティクレッセント……シュートッ!!』

 

 そして反対の手で暗色のエネルギーを込めると、それをインベーダーへ向けてブーメランのように投げつける。

 

 弧を描くような軌道で飛ぶそれは、襲い来る貝型や翼竜型のインベーダー達を次々と両断して再びゴッドΣグラヴィオンの手に戻った。

 

 うん、すっごい威力だ。

 

『琉菜。ソルグラヴィトンブリンガー、スタンバイ!』

 

『了解よ、斗牙! ソルグラヴィトンブリンガー、フレイムアァァァップ!!』

 

 一方のソルグラヴィオンは琉菜さんというお姉さんの気合と共に右手のドリルを伸ばすと、高速回転するそれに炎を纏わせてインベーダーへ突撃していた。

 

『ええいっ!!』

 

 可愛らしい掛け声とは裏腹にその突貫の威力はすさまじく、食らったインベーダー達は次々と真っ二つに引き裂かれていく。

 

 白くて細いゲッターのドリドリも酷かったけど、あれも大概だ。

 

『へっ! 奴等も相変わらずやるじゃねえか!』

 

『こっちも大人としてだらしないマネはできんな。俺と変われ、竜馬!』

 

『おうよ、オープン・ゲット!』

 

 彼等の戦いっぷりに触発されたのか、三機の戦闘機へ分離した真ゲッターは目にも止まらぬ速度で上へと飛んでいく。

 

『チェンジ! ゲッター3!!』

 

 そして現れたのは下半身がタンクみたいになったゴッツイ体格のロボットだ。

 

『宇宙のゴミ共の大掃除だ! 直伝! 大雪山おろしぃぃぃっ!!』

 

 そしてゲッター3というロボットは腕を振り回しながらドンドン伸ばすと、その勢いで宇宙に巨大な竜巻を生み出してしまった。

 

 宇宙って真空だったはずなのに、どうやったらこんな事できるのかな!?

 

『甲児! やれ!!』

 

「ああ! ルストハリケェェェェン!!」 

 

 そしてそこにマジンガーがさらに風を送り込むと、強酸が渦巻く巨大竜巻という極悪な代物となったそれはインベーダー達を次々と呑み込んで引き裂きチリへと還していく。

 

 4体のスーパーロボットの力はすさまじく、周辺にいたインベーダーはあっという間に駆逐されてしまった。

 

『どうだ! ザコはもういないぜ!!』 

 

『コーウェン! スティンガー! 次はテメエ等だ!!』

 

 エイジさんの声に続いて機体をゲッター1へと戻した竜馬さんが残ったボスに啖呵を切る。

 

 しかし、それでも奴等の顔からは余裕が消えてはいなかった。

 

『思い上がりもはなはだしい。真ドラゴンの無い貴様等に我々は倒せん!』

 

 そういうと爬虫類に似たインベーダーの頭だけを全身に生み出した奴は、そこから緑色の溶解液を吐き出した。

 

 スピードはあまり無いけれど、奴等が生み出す弾幕の密度と範囲はハロに匹敵する。

 

『総員散開! あの弾幕に巻き込まれない様に距離を取って攻撃するんだ!』

 

『了解!』

 

 ゴッドΣのパイロットの声でコーウェンの周辺から離脱するみんな。

 

 もちろん、彼等はただ逃げている訳じゃない。 

 

『グラヴィトンライフル!』

 

『ソルグラヴィトンキャノン!!』

 

『トマホゥクブゥゥゥメラン!!』

 

『光子力ビィィィムッ!!』

 

 次々と叩き込まれるМSの武器なんて比じゃない威力の攻撃。

 

 しかし、それらが傷をつけても、奴等の身体は大きすぎる上にすぐさま自己修復を行ってしまう。

 

「この程度で我等を倒そうとは片腹痛い」

 

 そう嘲りのセリフを吐き捨てると、コーウェンはその口を大きく開いた。

 

「僕達の目的の為、消えてもらうよ」

 

 そして放たれるあの時と同じ高出力のビーム砲。

 

『合わせろ、斗牙! グラヴィトンアーク!!』

 

『了解! ソルグラヴィトンノヴァ!!』

 

『ゲッタービィィィムッ!!』

 

『ブレスト! ファイヤァァァァァッ!!』

 

 避けられないタイミングで放たれたそれを四体のスーパーロボットは力を合わせた攻撃で何とか相殺する。

 

『チッ! ヤロウ、調子に乗りやがって!!』

 

『熱くなるなよ、竜馬。大きさに差がある以上はこちらも相当な無茶をしない限りは有効打を与えられん』

 

『奴等の言う事を認めるのは癪だが、號達がいればなんとかなるんだがな』

 

 余波で後退する機体を制御しながら、真ゲッターに乗ってる皆は苦々しげに吐き捨てる。

 

『サンドマン、最凶合神は?』

 

『あれは機体に掛かる負担が大きすぎる。今は使えん』

 

「くっ……マジンガーが暴走した時の力が使えれば」 

 

 奴に有効打を与えられない中、なんとか状況を打開しようとするみんな。

 

 私も自分に出来る事は無いかと考えていた時、チビを通してかみさまの意志が舞い降りた。

 

「……みんなのおもいをあつめる?」 

 

 なんと夢で見た青髪の女の子のように皆の心を光子力に変換してマジンガーに集めろというのだ。

 

 たしかにあの夢で光子力の根幹は人の意志だって気付いたよ。

 

 ジャパニュウムって鉱石を核反応させるのだって、精製の過程でエネルギーが欲しいって人の意志がジャパニュウムに伝わって光子力に変換されているらしいしさ。

 

 でも、本当にそれをエネルギーに変えるなんてできるのだろうか?

 

 え、チビとこの服ってその為にあるの?

 

 マジか……

 

 ともあれ、そんな手があるのならモタモタしている暇はない。

 

 私は大きく深呼吸をすると頭から降ろしたチビを胸に抱いて意識を集中させる。

 

 もちろんあんな事を言われた後に力を使うのは抵抗はある。

 

 でも私は示したいんだ。

 

 奴等が言うような心を弄ぶ兵器じゃないって事を。 

 

 心を繋げる事で憎み合ってる人たちや仲たがいした人達に思いを伝えて、より良い道を示す。

 

 とっても難しい事だし今は全然出来ていないけど、きっとそれが正しい力の使い方。

 

 青カブトやシュバルツさんが言っていた『ムスヒの巫女』というもの。

 

 調べてみると、ムスヒって言葉は天地・万物を生成・発展・完成させる霊的な働きを意味するらしい。

 

 本当に私にそんな力があるのなら、それで少しでもみんなの助けになりたい。

 

 だからこそ私は祈る。

 

 ほんの少しだけ力を貸してほしい。

 

 地球を、仲間を、大事な人を守りたいという想いを分けてほしい。

 

 これはお願い、みんながうんって言ってくれて初めて意味がある事だ。

 

 皆の心を操る訳でも利用する訳でもない。

 

 お願いするのはZ-BLUEのみんな。

 

 パイロットだけが戦っている訳じゃない。

 

 メカニックや戦艦のスタッフ、売店や食堂で働いてくれている人達にも。

 

 すると少しずつ皆の想いが集まってくるのを感じた。

 

 寝坊しても朝ご飯を取ってくれてる食堂のオバちゃん。

 

 エコーズのみんな。

 

 ジェミニアと戦った時、クマさんを壊してベソかいてた私の頭を撫でてくれたメカニックのおじさん。

 

 みんな、みんな、快く力を貸してくれてる。

 

 うれしい。 

 

 そして私のお願いに答えてくれるのは人だけじゃなかった。

 

 オックスにひーちゃんや青カブト。

 

 他にも戦艦や皆を乗せて戦っている機体達も手を貸してくれた。

 

 ヴァルキリー達や2体のダンクーガ、アル君を始めとするASにガンダム達、地球で生み出されたスーパーロボットも他の星で生まれたスーパーロボットも。

 

 皆がほんの少しずつ力を貸してくれた。

 

 やっぱり私の力の使い方はこれで間違っていないんだ。

 

 集まった想いの力はマジンガーを中心にして、Z-BLUEの機体へ広がっていく。

 

『これは……機体の出力が上がっていく』

 

『この感じ。吹っ切れたんだな、ミユ』

 

『人の心の光か、ふつくしい』

 

 皆の力になってくれた思いと共に、私とチビはマジンガーへ宿った力を光子力へと変えていく。

 

 光子出力100%……200%……まだ、まだいける。

 

 そうして全ての力を練り上げた瞬間、甲児お兄さんの感嘆の声が聞こえた

 

「すごい……なんてすごいパワーなんだ」

 

「……こうししゅつりょく1100%。こうじおにいさん、ロケットパンチ」

 

「え?」 

 

「ミユもおこってる。だからあいつら、ひっぱたく」

 

 振り返った甲児お兄さんにそう言ってほっぺを膨らませてみせると、少し呆けた後でニヤリと不敵な笑みを浮かべてくれた。

 

「よし! だったら、奴等を宇宙の彼方へぶっ飛ばすくらいの強烈なのをお見舞いしてやろうぜ!!」

 

「ん!」

 

 甲児お兄さんの操作で固く握りしめた右手をコーウェン達に向けるマジンガー。

 

 私はその黒鉄の拳に練り上げた光子力の全てを込める。

 

 いくよ、かみさま!

 

「飛ばせ、鉄拳!」 

 

「こうしりょく」

 

「「ロケットパァァァァァンチ!!」」

 

 宿った光子力で黄金の光を纏ったマジンガーの右腕、それは撃ち出されると眩い流星となってコーウェンの鼻っ柱へ叩き込まれた。

 

「ぬ……ぬおおおおおおおっ!?」

 

 そしてそれは醜い巨体をドンドン後ろに押し込みながらその顔面へと突き刺さっていく。

 

 なんか当たったところから煙が上がってるんだけど、あれってもしかして光子力がインベーダーの身体を溶かしてるの?

 

 そして光子力が臨界に達した瞬間、マジンガーの右腕は奴等の身体を貫通して顔面から後ろの先まで大穴を空けた。

 

「「ぐああああああっ!?」」

 

 これには堪らず悲鳴を上げるコーウェン達。

 

 けれど、この隙を逃す程他のみんなも甘くはなかった。

 

『行くぞ、グランナイツの諸君! グラヴィトンランサー!』

 

『了解! エイジ!!』

 

『よっしゃあ! 超・重・剣!!』

 

 ゴッドΣが両腰から飛び出た筒を繋げて大きな槍を構えると、ソルグラヴィオンは胸の飾りが変形した剣を天へと掲げる。

 

 そして二体のスーパーロボットから迸る強大な力。

 

 ソルグラヴィオンが刀身の先からその力を放ってコーウェンを巨大な竜巻に封じ込めると、彼は同時に斬りかかった。

 

『ぬおおおおおっ! グラヴィトンブレイク!!』

 

『超・重・ざぁぁぁん!!』

 

「「ぎゃあああああっ!?」」  

 

 強烈な斬撃を受けて顔面から半ばまで達する程の十字傷を刻まれるコーウェン達。

 

 体液をまき散らしながら悶える奴等の上にいるのは、コウモリのような翼を広げた真ゲッターだ。

 

『分かっているな、竜馬!』

 

『おう! 俺の……俺達の想いがゲッターのパワーを引き出す!!』

 

『行け、竜馬!』

 

『ストナァァァァサァァァァンシャイン!!』

 

 ゲッターはもの凄いエネルギーの弾を創り出すと、瀕死のコーウェンに向けて投げ落とした。

 

 それは切り傷から奴等の身体の中に入り込むと、凝縮していた力を開放してとてつもない規模の爆発へと姿を変えた。

 

「ぎゃああああああっ!? だが見たぞ、シンカの兆しを!!」

 

「わ……我々が滅びても我が種族は永遠なりぃぃぃ!?」

 

 こんな断末魔を残して緑の光の中へと消えていくコーウェン達。

 

 奴等の消滅を見届けた後、私はホッと息をついた。

 

 気付けばコーウェン達が現れた気味の悪い門も消えていて、他のインベーダーも皆が倒してくれていた。

 

『周囲に反応なし』

 

『なんとかなったわね』

 

 スメラギさん達の言葉を聞いていると、またしても少しずつまぶたが重くなっていく。

 

 今回は精神的にキツかったからなぁ。

 

 充電したばかりでも幼女ボディの電池が切れても仕方がない。

 

 抗うことなく夢の世界に落ちていった私は、意識を手放す寸前にかみさまから不思議な言葉を聞いた。

 

「……ごらーごん?」

 

 これはいったい何を意味しているのだろう?

 

 今度機会があったら聞いてみよう。

 

 何はともあれ、ありがとう、かみさま。  




幼女 精神攻撃を食らうも皆の励ましで復活。

   精神的に強くなった事で能力がシンカした。

   グロ生物に目をつけられた模様。

甲児 幼女の攻撃的な一面にビックリ。

   光子力ロケットパンチは快感だった

   というか久々にロケットパンチを決め手に出来て嬉しい

   内心幼女にはまた後ろに乗ってほしいと思っている。

クソコテ様

   例の世界を観測して光子力を世界から集めるアレをやりたかった。

   パイスームーヴに乗ったのはその為でもある。

   幼女コパイ計画は着々と進行中。

   マジンガーZero Infinityフラグが発生しました。 
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