幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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当小説人気第一位の彼の出番ですが、今回は薄味です。


幼女と5番目の月

 どうも、大人6人がかりで泣かされたミユです。

 

 ハロから降りたらブライト艦長にネコみたいに襟を掴まれて、ラー・カイラムのブリッジでお説教大会に参加するハメに……

 

 他の艦長さんやミサトお姉さんは通信で加わってたんだけど、モニター越しにお説教とか斬新過ぎないかな!?

 

 みんなが本気で心配してくれてるのは分かったから反論なんて出来ようはずもない。

 

 以前のように尻たたきがなかっただけマシだったけどさ、もうちょっと手加減してほしかった。

 

 お説教が終わる頃には宇宙怪獣達との戦いも終わっていたので、気を取り直して皆のお出迎えをすることにした。

 

 私の顔を見るとみんな口をそろえて『無茶するな』と言って来たけど、この辺は仕方がないね。

 

 という感じで私の反省も終わったところで、恒例となった新加入メンバーとのご挨拶である。

 

 まずはスザクさんとにっぽ……ゼロ。

 

 ブリュッセルの地下ではお見苦しい所を見せてしまったせいか、スザクさんは開口一番に『もう人前でパンツを脱いでないかい?』と聞いて、カレンお姉さんにグーパンを食らっていた。

 

 失礼だとは思ったけど、お漏らしは事実なので言い返せない。

 

 ぐぬぬ……

 

 ゼロはひーちゃんの分析能力をすごく褒めてくれたよ。

 

 でも『私の名前はゼロだ、憶えておくように』と念押ししてきたのはどうかと思う。

 

 気を抜かなかったら『にっぽんぽん』とは呼ばないから大丈夫です!

 

 あとオババさまにほっぺを引っ張られた時に助け舟を出さなかった事は許さない、絶対にだ。

 

 次に顔を合わせたのはシャウトが漢らしいタカヤ・ノリコさん。

 

 彼女が乗っているロボットはガンバスターといって、なんと対宇宙怪獣用に開発された物らしい。

 

 ノリコお姉さんはこの世界に来る前は、あのキモい生き物と戦ってたんだって。

 

 ちなみに彼女がいつZ-BLUEと合流したのかというと、私がパイルダーですやすや寝ていたインベーダー戦。

 

 奴等が来る前に隕石の中から回収した氷の中にガンバスターごと閉じ込められていたんだとか。

 

 ガドライトと戦っている時も医務室のベッドで眠ってたのに、宇宙怪獣が出た途端に目を覚まして出撃するとかすごすぎる。

 

 そんな事情もあって、宇宙怪獣と戦っていた私を勇気があると褒めてくれました。

 

 操縦の大部分はひーちゃんがやってたから、私なんて大したことないんだけどね。

 

 すぐ後に無茶はするなと来たのはちょっとヘコんだけど。

 

 こうして一件落着となったんだけど、私が慌てたのはその後だった。

 

 なんと、地球とその周りで起こっている様々な問題を解決する為にZ-BLUEを三つの部隊に分けるというのだ。

 

 シン兄の話だと一つは宇宙で活動する部隊、一つは日本へ帰る部隊、そして最後はミスリルの指揮で動く部隊。

 

 宇宙組はラー・カイラム、ネェル・アーガマ・クォーターが母艦でモビルスーツ隊とSMS、FireBomberにエレメントの皆と桂さん。

 

 日本組はドラゴンズ・ハイブが母艦でマジンガーとゲッター、鉄人とダンクーガにグランナイツ。

 

 クラッシャー隊にゴッドシグマとブルーフィクサー、竹尾ゼネラルカンパニーに21世紀警備保障とエヴァ、大グレン団とガンバスター。

 

 最後のミスリル組はソレスタルビーングとコロニー製ガンダム、ATとミスリル組にゼロとスザクさんとカレンお姉さんにオババ様。

 

 そしてビッグオーが行くらしい。

 

 私はシン兄の扶養家族なので必然的に宇宙組だ。

 

 理由を聞くと納得だけど、幼女的には一大事である。

 

 私が加わってからZ-BLUEの皆が増える事はあっても分かれることは無かった。

 

 これがただの仕事ならいいけど、皆は戦士でこれから行くのは戦場だ。

 

 もしかしたら、もう二度と会えない可能性だってある。

 

 宇宙組はもちろんのこと、別れる皆にだって私は十分すぎる程お世話になった。

 

 なにか皆に恩返しができて、そしてまた会えるような物を返さないと!

 

 足りない頭をウンウン絞った私は一つの妙案を思いついた。

 

 それは皆にお守りを渡すという物だ。

 

 幸い時間は一日近くあったし、ひーちゃんの力を借りれば皆の分を作るのは難しい事じゃない。

 

 善は急げとばかりにハロの中に籠った私はひーちゃんのフォローを借りて、パイロット・非戦闘員に限らず別れるメンバー全員分のお守りを作り上げた。

 

 材料はサイコフレームを芯にして外装はUGセルを使用。

 

 デザインもいつぞやのディメンジョングリズリーの牙を参考にしつつ、被らないようにペンダントトップの牙を二又にしてみました。

 

 もちろん宇宙組の皆の分も忘れてないよ。

 

 出発前の激励会に持って行ったら、みんな喜んで付けてくれた。

 

 素人が作ったモノなのにありがたや、ありがたや。

 

 でも赤木さん、これを部隊のマークにしようとか言うのはやめてね。

 

 いくら何でも恥ずかしいから……

 

 

 

 

 さて、他の部隊と別れて3日。

 

 私達はフィフス・ルナという小隕石の元へ向かっている。

 

 理由はネオジオンがそのフィフスルナを乗っ取ったと情報が入ったからだ。

 

 アムロさんやブライト艦長の読みだと、奴等の目的はなんと隕石落とし。

 

 宇宙からチベットのラサって街にフィフス・ルナを落下させるつもりらしい。

 

 もちろんZ-BLUEの皆はそんな事を許すつもりはない。

 

 部隊を分けた所為で戦力は十分じゃないけれど、それでも奴等の企みを挫く為に急いでいるんだ。

 

 もちろん私だって大人しくお留守番なんてしない。

 

 今回の作戦は絶対にひーちゃんの力が役立つので皆が反対しても出撃するつもりだよ。

 

 ただ戦闘になる前に一つだけ試したい策がある。

 

 なので、私はそれを皆に説明することにした。

 

 そんなワケで現在ラー・カイラムにはブライト艦長にメランおじさん、アムロ大尉とカミーユさんにシン兄とキラさん。

 

 他にも桂さんやオズマ隊長、モニター越しでオットー艦長とジェフリー艦長も参加してくれている。

 

「それで私達に話があると言っていたが?」

 

 口火を切ってくれたブライト艦長の問いに私は胸の中で温めていた案を説明した。

 

「そ…それは……」

 

 さすがに予想外だったのか、何とも言えないといった表情のカミーユさん。

 

「たしかに効果はあるだろうが……ライバルとしてどう思うんだい、アムロ大尉」

 

「俺のライバルはランバ・ラルという立派な武人だよ。赤い彗星なんて男は知らないなぁ」

 

 桂さんの問いに爽やかな笑顔で応えるアムロさん。

 

 冗談めかして言ってるけど目が完全にマジである。

 

「けど、そんな手続きどうやったんだ?」

 

「君一人で出来ることじゃないはずだよ」

 

 シン兄とキラさんに問いかけられた時、ちょうどクマさんタブレットに通信が入った。

 

 繋げるとそこに映るのは買い出しで知り合いになったセイラお姉さんだ。

 

「……おねえさんがやってくれた」

 

「セイラさん!?」

 

『久しぶりね、アムロ。ブライトも変わりは無くて?』

 

 驚くアムロ大尉に、私が見せるタブレットの画面でセイラお姉さんは優雅な笑みを浮かべる。

 

「この案を考えたのは貴女だったのか、セイラ」

 

『いいえ、発案はこの子よ。私は偶然それを知って、償いの意味も込めて手を貸しただけ』

 

 ブライト艦長の問いにセイラさんはゆっくりと首を振る。

 

「……ほんとはロジャーおにいさんに、こうしょうしてもらうはずだった」

 

 けれどお兄さんはドロシーさんと一緒に地球に降りちゃったんだよね。

 

 仕方がないので私は説明と実行のヘルプ役としてセイラお姉さんに連絡を取ったのだ。

 

 ぶっちゃけ幼女ボディの口数の少なさだと絶対に無理だし。  

 

「ブライト艦長、この方は?」

 

「彼女はセイラ・マスという。一年戦争でアムロや私と共に戦った仲間だ」

 

『たしかホワイトベースに所属していたコアブースターのパイロットでしたな。かなりの凄腕だったと記録に残ってます』

 

『大袈裟ですわ。ただ死にたくない一心でガムシャラに足掻いただけです』

 

 オズマ隊長の問いかけにブライト艦長が答えると、オットー艦長もそれに続く。

 

 へぇ、セイラさんってブライト艦長達の仲間だったんだ。

 

「あの……俺、シン・アスカっていいます。妹がお世話になりました」

 

『いいえ。こちらこそ兄が御迷惑をかけて本当にごめんなさい』

 

「兄?」

 

「セイラさんはシャアの妹なんだ」

 

「本当に? こんな綺麗な人がおっかないクワトロ大尉の妹だとはねえ」

 

 シン兄がセイラお姉さんと挨拶をしている間に、キラさんの疑問にアムロさんが答えて桂さんが感慨深げに唸っている。

 

 というか、この人がシャアの妹だなんて私も初めて知ったよ!

 

『アレと影武者がこの子にした事は謝って済む事じゃないわ。でも安心なさって。今度こそ私が奴を抹殺するから』

 

「……おにいさんをまっさつなんて、いっちゃダメ」 

 

『……そうね。命だけは助けてあげようかしら』

 

 セイラさんの発言を窘めたんだけど、なんか不穏な答えが返って来た。

 

 いったい何をするつもりなんだろうか、このお姉さんは?

 

「とにかく話は分かった。ミユ、一度やってみるか?」

 

「……ん」

 

『よろしいのですか、ブライト大佐』

 

「ああ。これでネオジオンが退けば御の字だし、そうでなくても揺さぶりにはなる」

 

 よかった、許可が下りた。

 

 これで無駄な戦いが避けられたらいいけど……

 

「艦長! レーダーでフィフス・ルナを捉えました! ネオジオン軍はすでに展開している模様!!」

 

「よし、総員戦闘配置! パイロット各員は準備ができ次第、順次発進だ!!」

 

「……わたしもいく。ひーちゃんとハロ、いんせきとめるのに、やくにたつ」

 

「……くれぐれも無理はするなよ。あと、セイラはアドレスを教えるのでこちらに繋ぎ直してくれ」

 

『わかったわ』

 

 クマさんタブレットをブライト艦長に預けた私はシン兄達とブリッジを出ていった。

 

「ミユ、がんばろうな!」

 

「……ん。いんせきダメ、ぜったい」

 

 私には主義や主張は分からないけど、普通に生きてる人達を巻き込むのは絶対に正しい事じゃないのは分かる。

 

 だから隕石落としは絶対に阻止しないと!

 

 

 

 

 私達がフィフス・ルナの近くに着いた時には防衛をしていた連邦軍はやられた後だった。

 

 隕石の周辺に展開するネオジオンの部隊からはシャアの気配は感じない。

 

『この感じ……やっぱりクェスがいるのか』

 

『焦るなよ、ハサ。乱戦になれば彼女と接触するチャンスはきっとくる』

 

 伝わって来た焦りと困惑、あと期待が入り混じった感情に目を向けると、ブライト艦長の息子さんであるハサウェイお兄さんの乗るジェガンの肩にカツさんのZⅡが手を置いていた。

 

 今まで出る事が無かったのにどうしてかなと首をかしげていると、ネオジオン軍の方から感じた事がある気配が漂って来た。

 

 これって少し前にハサウェイさんと一緒に助けたお姉さんじゃないか?

 

 ハサウェイさんは彼女を説得する為に出てきているのか。

 

 私が言えた事じゃないけど、あんまり無茶はしないでほしい。

 

 あの人が怪我をするとブライト艦長が悲しむからね。

 

「っ!?」

 

 そんな事を考えながらシャアはどこかと探していると突然背筋に悪寒が走った。

 

 この感覚は覚えがある。

 

 亡くなった人達が最期に残した思念だ。

 

「うぅ……」

 

『ミーちゃん、 死人の感情を感じちゃダメだよ!』 

 

 それは分かってるんだけど、このごろ力が強くなったせいで気を抜かなくても入ってくることがあるんだよ。

 

「……ありがと、ひーちゃん。もうだいじょうぶ」

 

 ひーちゃんがサイコミュの感度を調整してくれたのだろう、周辺から感じる気持ち悪さはかなり和らいだ。

 

 この作戦の第一歩は私に掛かっているんだ、こんな事でへたばっていられない。

 

『待っていたよ、Z-BLUE。だが、これは変えてはならない事実なのだ』

 

 変態が……変態がいる!

 

 しかもあの赤い機体の横にはお供の赤紫も!

 

 思わず鳥肌が立つけど私はそれを何とか我慢する。

 

 落ち着け、ここで泣いたら作戦は失敗だ!

 

『ミーちゃん、大丈夫?』

 

「……がんばる」

 

 一つ深呼吸をして、私はフル・フロンタルに通信を送る。

 

 間違っても相手の心を読もうとしてはいけない。

 

 今度は何を見せられるか、わかったもんじゃない。

 

「……へんたい、シャアはどこ?」

 

 私がそう告げると通信からネオジオンの兵士が噴き出す声が聞こえた。

 

『これはご挨拶だ。礼儀という物を教わらなかったのかな?』

 

 残念ながらアンタに払う礼儀は無い!

 

「シャアにつないで。だいじなはなし、ある」

 

『君の都合を聞く必要は無いのだが……まあいい、繋いであげよう』

 

 変態がそう言ってしばらくするとサブモニターにシャアの顔が現れた。

 

『シャア・アズナブルだ。Z-BLUE諸君、何か話があると聞いたが?』

 

「……はなしがあるの、ミユ」

 

『む、君は……』

 

 コクピットの中で手を上げる私を見て明らかに困惑の表情を見せるシャア。

 

 子供の戯言と打ち切られては困るので、ここは一気に畳みかけることにしよう。

 

「わたし、ミユ・アスカは……えと、せいてきぎゃくたいと、セクハラでシャア・アズナブルとフル・フロンタルを……んと、ていそ……します」

 

 私がそう言った瞬間、明らかに戦場の空気は凍り付いた。

 

 

 

 

『もしもネオジオンのぐんじ、えと…こうどうをやめてくれるなら、ていそはせずにじだんにおうじます』

 

 幼い女の子のたどたどしい口調で告げられた宣告にハマーンの背を嫌な汗が流れた。

 

 はっきり言おう。

 

 これはヤバい、マジでヤバい。

 

 もちろんネオジオンは連邦と戦争中なので裁判自体はまったく脅威ではない。

 

 問題は世間の目だ。

 

 ネオジオンはスペースノイドの独立を勝ち取る事を錦の旗に活動している集団である。

 

 そして彼等は宇宙に住む民を代表して銃を取ったという形である以上、総帥や幹部は裏ではどうあれ清廉なイメージが求められる。

 

 そんな人間達が幼い女の子への性的虐待で裁判を起こされたとしたら、世間はどう見るだろうか?

 

 連邦のマスメディアはここぞとばかりにシャア、ひいてはネオジオンにもネガティブなイメージを創り上げるだろう。

 

 資金や物資を提供しているスポンサーとて、そんな醜聞を聞いては離れるに違いない。

 

 なによりスペースノイド達は子供を性欲の対象とする人間の屑に独立の悲願を託すだろうか?

 

 仮に不祥事を理由にシャアやフロンタルを更迭したとしても、一度付いた『総帥が性犯罪者』という悪評を拭い去るのは至難の業だ。

 

『な…何を言っているのかな? フロンタルはともかく、私はそんな事をした覚えは無いのだが』

 

『……しょうこ、ある』

 

 そして再び流される地獄絵図。

 

 しかもあの大惨事の際に両軍が騒いだ通信記録付きである。

 

『うわあああああああっ!?』

 

『マリーダ! しっかりしろ、マリーダ!!』

 

『くっ! こんな物でまた私を誑かして……!?』

 

『ギュネイ! あの赤紫、キモいよ!!』

 

『見ちゃいけません!』

 

 周囲を混乱に巻き込む醜悪さとは別にハマーンを戦慄させたのは、それが通信で流された動画だという事だ。

 

 精神感応波でのイメージを物理的に保存する方法など、サイコミュ研究が進んだネオジオンでもまだ確立されていない。

 

「奴らめ、どうやってこんな物を……」

 

 予想外の事に臍を噛むハマーン。

 

 しかし彼女の想定を超える物はこれだけではなかった。

 

『彼女が起こす訴訟に関してはアストライア財団の弁護士が担当する事になっています。すでに画像や音声記録の他にも虐待によって彼女が精神を患った診断書もお預かりしているので、証拠不十分となる事はありえませんわ』

 

『ア…アルテイシア……』

 

『お久しぶりですね、この愚兄』

 

 一年戦争以後、表舞台から一線を引いていたダイクンのもう一人の遺児が現れたのだ。

 

 久方ぶりに顔を合わせた妹の先制パンチに言葉が出ないシャアを他所に、モニターの向こうでセイラは優雅に口を開く。

 

『一年戦争のあと、兄さんがどこの馬の骨とも知れないインド人にヨガ・エクストリームを食らってアへ顔ダブルピースでロリコンに堕ちたという噂を聞いた時は、いっそ死んでくれればと思ったモノです』

 

『ララァはそんなことやってない!!』

 

 あんまりと言えばあんまり過ぎる物言いに思わず叫ぶシャア。

 

『瀕死と思ってた総帥の社会的生命がすでに惨殺されてた件』

 

『しかもそれを実の妹から伝えられるとか、死体蹴りも完璧ね』

 

『身内にこんな噂流れたら死んでくれと思ってもしゃーない』 

 

『草』

 

 そして自軍の総帥をボロクソに言われているにも関わらず、ネオジオンの兵士達はこの態度である。

 

 さすがは魔神が作り上げた地獄を潜り抜けて来た者達、生半可な腹の坐り方ではない。

 

『そこに来て今回の醜聞、これを聞いた時の私の怒りと悲しみが分かりますか? ダイクンの名に馬糞を塗り付けておきながらそれを利用する厚顔無恥、影武者共々『やっぱ殺すか、二匹!』と考えたとして誰が責められるでしょう』 

 

 左手のハンカチで目元を拭いながら、右手で何故か用意してあった自然石を拳一つで叩き割るセイラ。 

 

 その異様な光景と言動にシャアは気絶したい気持ちでいっぱいだった。

 

 だが、彼に現実逃避をしている余裕はない。

 

 ここでフォローの一つも入れなければ、いつの間にか暴落していた妹の中の株が地底深くめり込むことになる。

 

 しかし自分を含めてネオジオンの中に説得できそうな人間は存在しない。

 

 多大にシスコンの気がある彼としては、それだけは絶対に避けたいところだった。

 

『アムロ、お前なら私の事が分かるだろう! アルテイシアの誤解を解いてくれ!!』

 

 もはや恥も外聞もないとばかりにライバルへと通信を送るシャア。

 

 そんな彼にリ・ガズィのコクピットの中でアムロはニコリと笑みを浮かべてこう言った。

 

『シャア、お前はいい道化だったよ』

 

『アムロッ!?』 

 

 どこぞのイノベイターを彷彿とさせるセリフと共にプチリと通信を切るアムロ。

 

 こうまでライバルの醜聞が続けば、温厚な彼の堪忍袋が破裂しても仕方がない。

 

 さて、後方のレウルーラで総帥が憤死しかかっている中、フィフスルナに取り着いたフル・フロンタルはシナンジュの中で笑みを浮かべる。

 

『君の言い分は分かった。だが我々が軍を退く事は無い。訴訟でも何でも好きにしたまえ』

 

 そう不敵に言い放つフロンタルであったが、その威厳は数秒も持たなかった。

 

『何言ってんだ、この生ゴミは』

 

『今回の責任者はジンネマン艦長だっつーの』

 

『お前に指揮権ねーから!』

 

『貴様等、大佐にその態度はなんだ!?』

 

『うるせえ、ボケ!!』

 

 マイノット基地攻略戦から、魔神の怒りを買ったフロンタルおよび親衛隊はネオジオンから鼻つまみ者とされていた。

 

 当然、周囲からの冷遇にアンジェロを始めとした親衛隊員たちは抗議の声を上げたが、戦友の半数を死へ追いやった地獄を引き起こした者の言など聞く耳を持つ者はいない。

 

 実力行使へ出ようにも裏方のスタッフを敵に回して戦えるわけがない。

 

 そんな事をすれば整備不良を武器に暗殺されかねない。

 

 故に彼等は冷や飯喰らいを甘んじて受けるしかなかった。

 

『どうしますか、艦長?』

 

 そしてフィフス・ルナ奪取の現場指揮官であるガランシェール艦長のスベロア・ジンネマンは現状に深々とため息をついた。

 

 トラウマを抉られてパニックを起こしたマリーダ・クルスは回収したものの、いまだレウルーラから撤退指示は出ていない。

 

 彼個人の意見を言えば、替えの利く組織の頭の醜聞で軍を退かせるなど論外だ。

 

 今まで積もりに積もった連邦への恨みを漸く晴らせる機会を、こんな阿呆な事で手放す気はさらさらない。

 

『奴等の茶番に付き合う必要はない。各員に攻撃開始の指示を出せ』 

 

 ガランシェールからの指示を受けて迎撃態勢を取るネオジオン軍に、ラー・カイラムのブリッジにいたブライトは小さく息をつく。

 

「やはりダメでしたな」

 

「これで軍を退いたならシャアは指揮官失格だよ」

 

 メランの言葉に肩をすくめるブライトだが、ハサウェイやミユが出ている事を思えば事を荒立てずに終わりたかったというのが本音だ。 

 

 しかしそれが望めない以上は頭を切り替えねばならない。

 

「総員、攻撃開始だ! ネオジオン軍を排除してフィフス・ルナを奪還する!!」

 

 両軍指揮官の合図によって宇宙を駆ける鋼の兵士達。

 

 こうしてフィフス・ルナ攻略戦は幕を開けたのだった。     

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