幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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スパロボ30、発表してすぐに予約してしまった。

10月には埃を被っているPS4をもう一度起動させねば。

はい、本当に楽しみです。


幼女と5番目の月2

 Z-BLUEが三つの部隊に分かれてすぐ、私は宇宙組に例のお守りを配っていた。

 

 ありがたい事にみんな笑顔で受け取ってくれて、作った甲斐があったとホッとしていた。

 

 そして今、最後の一人にお守りを差し出している。

 

「なんだこれは?」

 

「……おまもり」

 

 盛大に顔をしかめるカイエンさんに私は差し出した手をそのままにズイッと踏み込む。

 

「いらん。持って帰れ」

 

 にべもなく拒否されてしまったが私は気にしない。

 

 このくらい、私に対する彼の態度を思えば十分に予想できていたことだ。

  

 だから決してベソなんか掻いてないんだからな!

 

 ……コホン。

 

 お茶目はともかくとして、彼が私のことを嫌っているのは知っている。

 

 これが『理由はないけど顔がムカつく』なんて感じの嫌われ方なら私だって諦めるよ。

 

 けど、カイエンさんはそうじゃない。

 

 彼だって最初は普通に接してくれていたんだから。

 

 だったら私を嫌うだけの理由があるって事だろう。

 

「……カイエン、ミユのこときらい。どうして?」

 

 私は舌も言葉も足りない幼女ボディで何とかがんばって問いかけてみる。

 

 共感能力を本気で使えば、もしかしたら彼の心を感じ取れるかもしれない。

 

 けれどこの問題は話し合って知らなくてはならないと思う。

 

 この頃は私も忘れ気味になってるけど、やっぱり人間は言葉を尽くして理解する物だもの。

 

 私の投げた問いにカイエンさんは苦虫を嚙み潰したように顔をしかめる。

 

 小さい子に面向かってこんな事を聞かれるのは辛いだろうけど、我慢して答えてもらいたい。 

 

「お前の目的はなんだ? この部隊で……いや、この世界で何をしようとしている?」 

 

 少し口ごもった後で彼が出したのはこんな言葉だった。

 

 目的か……

 

 思えば私には明確な目的なんてなかった。

 

 シン兄と出会って、成り行きでZ-BLUEの一員になって……いい人に沢山巡り合えた。

 

 戦闘に首を突っ込むのだって、みんなや普通に暮らしている人達に傷ついてほしくなくて行き当たりばったり。

 

 それでも私があえて目的を定めるのなら……

 

「……へいわ」

 

「……なに?」

 

「……へいわになったせかいで、にぃにやみんなとすごしたい」

 

 そうだ。

 

 それが今の私の目指すべきもの。

 

 この世界で目が覚めてからずっと戦ってきたけど、やっぱりいつ死ぬかもしれない戦場より普通に生きるほうがいい。

 

 シン兄とルナさんと、きっと何処かにいるミウと普通に暮らす。

 

 その為に私は戦うんだ。

 

「お前は……」 

 

 カイエンさんは私の答えに心底意外だという表情を浮かべた後、バツが悪そうに顔をそむけた。

 

「俺には……絶望予知というある種の未来予測がある」 

 

 少しの間黙り込んだ後、そう口を開くカイエンさん。

 

 これは驚いた。

 

 そんな便利能力があったら、これからの不幸は全部躱せるんじゃないか?

 

「……すごい」

 

「そんないい物じゃない。その不幸が起こる時間も場所も理由さえも分からないんだからな」

 

 そうなのか、残念。

 

「俺はその能力である時からZ-BLUEが全滅するビジョンを見るようになった」

 

 ギリッと音がするほどに歯を食いしばるカイエンさんに私は思わす固唾を飲んでしまう。

 

 こんなに強いみんなが負けちゃう?

 

 いったいどうしたら、そんなことになるんだろうか。

 

 けれど次に彼が口にした事の衝撃はこれを更に上回るモノだった。

 

「その時、残骸になった俺達を見下ろしているのはお前だ」

 

「……ミユ?」

 

 カイエンさんの言葉の意味を理解した瞬間、ゾッと背筋に冷たいモノが走る。

 

 質の悪い冗談だと思いたいけど、カイエンさんは嘘を言っていない。

 

「その時お前の背後には恐ろしい何かが立っていた。それは魔神、複数の邪神、アクエリオンに似た何か、魔獣と予知を見る度に影は姿を変えた。そしてアクエリア市でお前が暴走させたクマはそこで見た魔獣と同じだったんだ」

 

 ……そうか、だから私のことを敵視するようになったのか。

 

 ミコノお姉さんやエレメントの仲間がいることを思えば、カイエンさんがそうなるのは当然だ。

 

 暴走したクマさんがZ-BLUEに被害を与えてしまったのは事実だし。

 

 思わず頭によぎる諦めの言葉を私は何とか振り払う。

 

 ここで引き下がったら話し合おうとした意味がない。

 

 カイエンさんも背中を預ける仲間だから関係改善に乗り出したんじゃないか。 

 

「これでわかっただろう。俺はお前を信用する気はない。だからお前も俺にかまうな」 

 

 そう言い残して去っていこうとするカイエンさん。

 

「ミユはみんなのてきにならない」

 

 私は咄嗟に彼へ頭に浮かんだ言葉を投げた。

 

「……なんだと?」

 

 振り返って厳しい視線を向けるカイエンさん。

 

 正直すっごく怖いけど、私は引けそうになる腰を必死で留める。

 

「……クマさんにのっても、もうぼうそうさせない。ぜったいにみんなをきずつけない。よちをほんとにさせない」

 

「それをどう証明する? お前は一度俺達に牙を剥いているんだぞ」 

 

 彼の追及にまるで石を飲んだかのように言葉が詰まる。

 

 正直これを言うのはすごく怖い。

 

「……そうなったらミユをうっていい」

 

 私の言葉にカイエンさんの顔に驚愕が浮かぶ。

 

 本当はこんな覚悟なんて持てないし持ちたくない。

 

 でも私を味方だと思ってくれるという事は、戦場で私に背中を預けてくれるということ。

 

 ならこちらも誠意を示さないといけないんだ。

 

「───本気なんだな」

 

「……ん。にぃにを、みんなをきずつけるよりマシ」

 

 カイエンさんの目をまっすぐ見据えて答えると、彼は少しの間だけ考える素振りを見せたあと私の手の中からお守りを取り上げた。

 

「いいだろう、その言葉を信用してやる。ただし、もしもの時は手心を加えて貰えるとは思うなよ」

 

「……ん」

 

 そう言い残すとカイエンさんは今度こそ去っていった。

 

 ……うん、すっごく疲れた。

 

 でも、少しでも信用を取り戻せてよかった。

 

 やっぱり、仲間同士でギスギスするのは嫌だもん。

 

 あと我慢してくれて本当にありがとう、三人とも。

 

 見守ってくれた青はともかく、ひーちゃんは砲身を出してるしチビは光子力ビームをチャージしまくりだったもんね。

 

 何事もなくて本当に良かった。

 

 

 

 

 フィフスルナを巡るネオジオンとの攻防戦。 

 

 戦いの火蓋を切ったのは互いの戦艦からの砲撃だった。

 

 とはいえこれは牽制射撃なので、敵味方共に当たった者はいない。

 

『ミーちゃん、まずはあの小惑星に取り着こう。確保するにしてもアレの動きを止めないと』

 

「……ん」

 

 ひーちゃんの提案に頷いた私は、宇宙を駆けるハロの速度をもう一段階上げる。

 

 できれば人に攻撃はしたくないけど、隕石が落ちた時の被害を考えたらそうも言ってられない。

 

 この辺は覚悟を決める必要があるだろう。

 

 そうして先遣部隊のギラドーガと接触しそうになったんだけど……

 

「……あれ?」

 

『敵が道を開けたね』

 

 何故か彼等はハロの進路から退いたのだ。

 

 もしかして距離を置いて包囲するつもりなのかと思ったのだが、遠巻きに見るだけで武器を構えようともしない。

 

『妙だね。向こうの通話聞いてみる?』

 

「……できるの?」

 

『さっきのやり取りでネオジオンが使う軍事回線の周波数は解析済みだよ!』

 

 さすが私の友達は超優秀である。

 

「……きく」

 

 そういう事なら利用しない手はないだろう。

 

 もしかしたらこれも作戦の内かもしれないし。

 

 シートの横に浮かぶひーちゃんのホログラフが手を動かすと、通信ディスプレイにネオジオンのパイロットさん達が映った。

 

 私の所に来たギラドーガは4機だったから上から熱血系の若いお兄さんをA、ミヅキさんにどこか似ているお胸の大きいお色気系のお姉さんをB、スキンヘッドで眉間におできが出来てるオジサンをC、中学生に見えるお姉さんをDと呼ぼう。

 

 うん、名前分からないしね。

 

 でもって交わされた会話はこんな感じだった。

 

A『あの馬鹿みたいにデカいトイボットは何なんだ?』

 

B『敵なんだろうけど……撃っていいのかしら?』

 

C『止めておけ。拙僧の勘が告げておる、触らぬ神に祟りなしと』

 

D『具体的に言うとどうなのじゃ?』

 

C『うむ、下手につつくと彼の魔神に匹敵する災厄が降り注ぐ気がする』

 

A「はい、スルー決定! 親衛隊に振っちまえ!!」

 

B『そうね。アイツ等あの時は真っ先に逃げたんだし、今回はババを引いてもらいましょう』

 

D『然り、奴等も一度は地獄を見るべきよ』

 

C『では拙僧はあの弱そうなジェガンを狙うとするか。彼奴めは親を地獄へ堕とすカルマを背負っておるわ』

 

 と、こんな感じのやり取りを残して彼等はウチの本隊へ飛んで行ってしまった。

 

『なんというかキャラが濃いねぇ』

 

「……ん」

 

 というか、拙僧ってあのオジサンはお坊さんなのかな?

 

 そんな人が戦場に出ている事が最大の謎なんですが……

 

 ともかく戦わずに道が開いたのはいい事だ。

 

 そう考えて先へ進んでいると、こちらを狙う敵意を感じた。

 

 突き刺さるような、それでいて未熟な意思に目を向けると、そこには赤と白に色取られた見た事のない機体が。

 

 あれってブリュッセルの時に出てきた緑と黄色の指揮官機に似てるぞ。

 

 それにこの感じ、あの時にハサウェイさんと一緒にいたお姉さんの気配だ。

 

『これって、あの時の子なの!?』

 

 む、クェスお姉さんも私の気配を感じ取ったか。

 

 というか、さっき変態やシャアと交渉していたじゃないか。

 

 どうして驚くんだろうね?

 

『ちょっと! アンタみたいな小さい子がこんな所に出てくるんじゃないよ!!』

 

 通信を繋げてきてこちらへ文句を言って来るクェスお姉さん。

 

 言っている事がもっともだけど、私にも引けない理由がある。

 

「……だめ。いんせき、とめる」

 

『大佐は正しい事をしようとしているのよ! それをどうして邪魔するの!?』

 

「……いんせきおちたら、いっぱいひとがしぬ。それはただしいこと?」

 

『ッ!?』

 

 私の問いかけにディスプレイの中に映るクェスお姉さんが息を呑む。

 

「……どんなりゆうがあっても、いっしょうけんめいいきてるひと、ぎせいにしていいワケない」

 

 もしかしたらシャアはエタニティフラットを止める方法を知っていて、この隕石落としもその一環かもしれない。

 

 けれど、私は憶えている。

 

 マリーメイア軍の蜂起の時に聞いた日常を壊された人たちの悲嘆や怒りを。

 

 あんな思いをする人たちを生み出す事が正しい行いなわけがない。

 

 仮に大局的に見て正しかったとしても私は認めない。 

 

 愚か者だと笑わば笑え。

 

 こちとら小市民、高みから人を見下す奴等より地に足を付けて生きる人を選ぶのは当然だ。

 

『子供が生意気言って……口で分からないのなら!』

 

 怒りと少しの迷いの感情を零しながら、クェスお姉さんはこちらへガトリングガンの銃口を向けてくる。

 

 一拍子遅れて吐き出される赤いビーム弾をバレルロールで回避すると、それを見たクェスお姉さんは肩のアーマーに装備されたファンネルを放つ。

 

『いけっ! ファンネルたち』

 

 彼女の号令を受けて生き物のように宙を掛ける6機のファンネル。

 

 方角は左に右上と左下、あとは真上と左後方上、そして真下だ。

 

 これが一斉に撃たれたら躱すのは少し骨だろう。

 

 ───けれど遅い。

 

 レーザーが吐き出されるよりも早く、私の意識とリンクしたひーちゃんがレールガンで周りにあるファンネルを撃墜する。

 

 移動も発射までの間も時間がかかり過ぎだ。

 

 これがキラさんなら位置取りから一拍子、アムロ大尉だとここから狙ってくると察知した時にはもうビームが飛んできてるんだぞ。

 

 私もまだまだ偉そうな事は言えないけど、あの人達に比べたらヌルイと言わざるを得ない。

 

『うそ!?』

 

「……すきだらけ」 

 

 通信から漏れ出る驚愕の声と共に放たれたレールガンの第二射、それはクェスさんが乗る機体の頭と両肩を吹き飛ばす。

 

『きゃあああっ!?』

 

 クマさんやひーちゃんにおんぶに抱っこだったけど、これでもそれなりに修羅場を潜って来た身なのだ。

 

 いくら年上でも昨日今日にロボットに乗った人に負けるワケにはいかない。

 

「……ひーちゃん、どう?」

 

『もう武装はないみたいから大丈夫だろうけど、心配なら止めを刺しておく?』

 

「……いい」

 

 私はクェスお姉さんに戦う力が残されていない事を確認すると、彼女を置いて隕石へと進路を向ける。

 

 正直に言えばちょっと心配だけど、この状況で敵のアフターケアまでしていられない。

 

 ネオジオンか、もしくはハサウェイさんが回収してくれるのを祈っておこう。

 

 群がる敵モビルスーツ達をハロお得意の弾幕で蹴散らしながら進むことしばし、ようやく隕石の近くまで来たところで味方が2機近づいて来た。

 

 この感じ、シン兄とアムロ大尉か。

 

『ミユ、大丈夫か?』

 

「……ん」

 

『この先で待っているのはあの変態だ。俺の名誉の為にも奴は仕留めなきゃならない』

 

 それを聞いて私は思わず顔をしかめてしまった。

 

 そうだった。

 

 あそこには赤と赤紫、その手下たちが待っているんだった。

 

 こんな事言ったらダメだろうけど、正直行きたくない。

 

『名誉って……』

 

『本当に不本意だが、世間では俺とシャアはワンセットで考えられてるからな。そのイメージが払しょくされるまで奴に馬鹿な真似をされるわけにはいかないんだ』

 

 私たちに話す声は穏やかだけど、アムロ大尉の目はマジである。

 

 この人が本気で仕留めにかかるとか、今日は変態の命日になるような気がする。

 

『俺はフロンタルを殺るから悪いがシンは親衛隊を頼む。ミユは……もしもの為にフィフスルナを調査してくれ』

 

「……もしも?」

 

『伏兵が潜んでる可能性もあるし、今は静止しているがいつ地球へ向けて落下するか分からない。最悪の場合は破壊することになる』 

 

「……ん。ミユ、おてつだいする」 

 

 アムロさんの言葉を受けて私は二人と別れてフィフスルナへ降り立った。

 

 隕石に降りたのは生まれて初めてだけど、なんというかすごい迫力だ。

 

『ミーちゃん、とりあえず調査と敵を探すためにビットを出そう。もしもの時を考えてアレもね』

 

「……いって、ビットたち」

 

 私の意思を受けて、開いたハロの側面装甲の中からハロビットたちが飛び出してくる。

 

 この子たちにもサイコフレームが仕込んであるから、こうして別行動をさせると私の感覚を広げてくれるんだよね。

 

 さて、そうこうしている内にシン兄達が変態と交戦を開始したようだ。

 

『アムロ・レイ、貴様の存在は許されない!!』

 

『黙れ! 社会的に許されないのはお前の方だろう!!』

 

 上方からビームサーベルを手に襲い掛かる変態の一撃をバレルロールで躱したアムロ大尉は、すぐさまМS形態になって手にしたライフルを三発放つ。

 

 飛んでくる光弾を変態は余裕がある動きで回避するけど、その一発が奴の脇を通り過ぎる際にリ・ガズィからパージされたハンドグレネードを撃ち抜いた。

 

 瞬間、宇宙空間に咲いた爆炎に包まれる赤い機影。

 

 これにはさすがに動きが鈍るシナンジュだが、大尉がその隙を見逃すはずがない。

 

『消えてもらうぞ、フロンタル!』

 

 無駄のない動きで間合いを詰めたリ・ガズィは、いまだ燻ぶる爆炎の中にある影へ向けてビームサーベルをふるう。

 

 しかし、フロンタルもただの変態ではない。

 

『チィッ!?』

 

 なんとアムロ大尉の攻撃を右肩のアーマーを半ばから斬り飛ばされながらも躱して、カウンターとばかりにリガズィの盾を蹴りつけたのだ。

 

『クッ!? 伊達にシャアの影武者をしているワケではないという事か!』   

 

 後方に吹き飛ばされながらもリガズィの両肩に備わった2門のビームキャノンを放つアムロ大尉。

 

 しかしそれは一条は回避され、もう一条はシナンジュのライフルの下に備わったバズーカ砲の弾によってその進路を阻まれた。

 

『うかつだな、アムロ!』

 

 そして先ほどとは逆にその爆煙を利用して間合いを詰めるフロンタル。

 

 けれど、視界をふさいだくらいで攻撃を食らうほどアムロ大尉は甘くない。

 

『甘い!』

 

 盾から生やしたビーム刃の横薙ぎを紙一重で躱すと、頭のバルカンでモノアイを狙いながら右の前腕からグレネードを放ったのだ。

 

 さすがのフロンタルでも至近距離、しかもほぼノーモーションで撃たれたバルカン砲を躱すことはできず、カメラを壊されては適わないと鉄火の雨を盾で防ぐ。

 

 さらに宙を走るグレネード弾はバルカンの弾を受けてシナンジュの至近距離で誘爆。

 

『もらった!』

 

 その衝撃で相手が後方へ下がった機を逃さずに、アムロ大尉は手にしたライフルを放つ。

 

 大尉の殺気を頼りに咄嗟に体を捻ったものの完全に躱す事はできず、放たれたビーム弾はシナンジュの左肩のアーマーを半ば剝ぎ取って後方へ消える。

 

『やるな……さすがはアムロといったところか!』 

 

『逃がすか!』

 

 このままでは分が悪いと後ろへ逃げようとするシナンジュを追うリ・ガズィ。

 

 そうしている間に、二人の姿がフィフスルナの陰へと消えていった。

 

 …………すごいや。

 

 フロンタルもアムロ大尉も本当に凄腕だった。

 

 あれが私だったら大体2手くらいで撃墜されているような気がする。 

 

 一方のシン兄だけど、目を向けると親衛隊で残っているのは赤紫だけだった。

 

 まあ、あの人たちが乗ってるのって量産機だもん。

 

 オーバーデスティニーの相手はさすがにキツいよね。

 

『お前たちは……クワトロ大尉は何を考えているんだ!? 今は地球が滅亡の危機に瀕しているんだぞ!』 

 

 ビームサーベル形態のフツノミタマを構えて光の翼で宇宙を駆けるシン兄。

 

『黙れ! 総帥は知らんが大佐には我々が及びもしない深遠なお考えがあるのだ!! 私たちはその理想を実現するためだけに存在している!! それに我々スペースノイドを虐げるだけの地球のことなぞ知ったことか!!』

 

 それを迎え撃とうと大型のライフルを構える赤紫だけど、スピードならZ-BLUEでトップクラスを誇るオーバーデスティニーを捉えるのには遅すぎた。

 

『はあああああっ!!』

 

『おのれぇ! 大佐の役にも立てずに……』

 

 一刀の元に構えたライフルごと胸から横に両断された赤紫は、コクピットから何かを吐き出した後で爆発した。

 

『あれは脱出ポッドだね。厄介な人間ほどしぶといなぁ……』

 

「……ひとしにはないほうがいい」 

 

 ヤレヤレと肩をすくめるひーちゃんに私はそう返す。

 

 甘いのは百も承知だけど、小市民的な気質はそうそう変えられないのだ。

 

『これで親衛隊は全員片づけたな。それじゃあ次はアムロ大尉の加勢に行くか』

 

 親衛隊を全滅させてフツノミタマを肩のマウントに戻したオーバーデスティニーは、周囲を確認すると飛び立とうとしてピタリと動きを止めた

 

『……いや、大尉ならあの変態相手でも負けないよな。やっぱりミユの様子を見に行こう』

 

 そう言うとフロンタル達のいる方向とは別の方へ飛び去ってしまった。

 

「……にぃに、かほご」 

 

『もう少し妹離れするべきだと思うけどね~。彼女さんにフラれるよ?』

 

 不吉なこと言わないで、ひーちゃん。

 

 もしそうなったら申し訳なさすぎる。

 

『ところでミーちゃん。隕石の精査が済んだよ』  

 

「……どう?」

 

『とりあえずはあそこに見えるエンジンを使えなくしちゃうことだね。これさえ動かなかったら隕石は宇宙を漂うままだから』

 

「……なるほど」

 

 これだけの大きさだから、船で引っ張るなんてできっこないだろうしね。

 

 さて、方法が決まれば後は行動あるのみだ。

 

「……エンジンこわす?」

 

『どっちかって言えば、壊すより動かなくしちゃうほうがいいかも。変に爆発してその反動で地球に飛び始めたら止めるの大変だし。あそこまで行ったら私がなんとかするよ』

 

「……おねがい」

 

 ひーちゃんとの相談が終わったところで、私は切り立った隕石から突き出した大きな半円の構造物へハロを飛ばす。

 

「……おおー」

 

 目的地を一望できる位置に付けた私は、岩肌から突き出た構造物に思わず感嘆の声を上げた。

 

 なるほど、間近で見ればたしかに戦艦のお尻についているブースターのように見える。

  

『ミーちゃん、エンジンに接触して。そうしたら機能不全になるように細工するから』

 

「……ん」

 

 ひーちゃんの指示でエンジンへと近づこうとしたとき、直観センサーがこちらへ近づく気配を感じ取った。

 

 この感じ……変態に似ているけどどこか違う。

 

 もしかして───

 

「……シャア?」

 

 私の呟きから間を置かず、ネオジオンの象徴になっているもう一機の赤い機体が現れる。

 

『君は……まさかこんなところで出会うとはな』

 

 ネオジオンの総帥。

 

 あの赤い変態の巻き添えでかなり酷い事をしちゃったけど、彼の真意が地球潰しじゃない事は知っている。

 

 でも今は敵だという事には変わりはない。

 

 私の警戒心に反応してスライドしたハロの装甲から砲門が顔を覗かせる。

 

『ミーちゃん、やっちゃう?』

 

「……すこしまって」

 

 臨戦態勢になっておいて何だが、彼には聞きたいことがあるのだ。

 

「……シャア、もくてきはなに?」

 

『なんだと?』

 

 私が投げた問いに通信ディスプレイの中でシャアは怪訝な顔をする。

 

「……シャアがちきゅうをつぶすきないのしってる。なんでコレをおとそうとするの?」

 

『まさか攻撃を仕掛けてこずにこちらへ問いを投げるとはな。それに何故私に地球を潰す気が無いとわかる?』

 

「……そうすいになったときのえんぜつをみて、ちきゅうをまもるけついをかんじた。あれはほんものだった」

 

 私がそう答えるとシャアは一瞬だけ驚くと今度は不敵な笑みを浮かべる。

 

『アムロすら感じることができなかった私の真意に触れるとは、なるほど素晴らしい才能だ。しかしその才能を戦争にしか使えん事が今の人類の限界か』

 

 そして彼が紡いだのは今の人類への落胆の言葉。

 

「……ちがう。ここにいるのはミユがたたかうってきめたから」 

 

 けれどそれは間違いだ。

 

 私が戦いに出るのは私自身がそう決めたから。

 

 誰かに強要されたことなんて一度もない。

 

『そうか、ならば非礼を詫びよう。ミユといったな、私と共に来る気はないか?』

 

 ……いきなり何か言い出したぞ。

 

 巷で噂になっている通り、この人ってやっぱりロリコンなのか?

 

 いやいや、他人を色眼鏡で見るのはよくない。

 

 ただでさえ、あの変態の所為で泥をかぶってるんだから、その辺はちゃんと見てあげないと。

 

「……どうして?」

 

『これから人類が生き残る為には君の……いやZ-BLUEの存在が不可欠だ。地球に住む者たちはエタニティ・フラットという未曽有の危機を前にしても変わろうとしていない。彼等を地球という呪縛から解き放ち人類が一丸となる為には地球至上主義者達を討たねばならん』

 

「……クロノ」

 

『そうだ。彼らがいる限り地球の者たちは宇宙に住む人々を敵視し、ニュータイプやコーディネイターなど人類の可能性を認めようとしないだろう』

 

「……だからいんせきおとす?」

 

『いや、君達が間に合った以上はこれを落とす気はない。フィフスルナは君たちを誘い出し、私の決意を伝える為の見せ札にすぎん』

 

 なるほど。

 

 彼の言い分は分かった。

 

 正直、クロノは自称反乱分子な実行部隊隊長のアドヴェントからして信用がならない組織だ。

 

 ブリュッセルの反乱でも首謀者のデキムを口封じして有耶無耶にしようとしたし。

 

 けれど付いていくっていうのは無理かな。

 

「……ミユ、ふようかぞく。にぃにがいいっていわないとダメ」

 

『ふむ、君くらいの年なら保護者がいるのは当然か』

 

「……それにへんたいがいるから」

 

『フロンタルめ、奴さえいなければ……!』

 

 ごめんね。あの人がいる限り私がネオジオンに行くことはないと思う。

 

 というか、なんであの人まだ解雇されないんだろうね?

 

 ともかく、隕石を落とす気が無いっていうのなら一安心かな。

 

 シャアからも噓をついている気配は感じないし。

 

『ミーちゃん、そろそろ始めよっか』

 

「……ん。エンジンつかえなくするから、じゃましないでね」

 

『いいだろう。だが、私が妨害工作を見逃したとなると色々と不都合なのでね、目立たないようにしてくれると助かる』

 

 シャアの言葉を受けてエンジンへと降りようとした私だけど───

 

『そうはいかんな』

 

 それを阻むように五条の黄色いビームがこちらとシャアへ飛んできた。

 

「……っ!」

 

『チィっ!?』

 

 不意を衝く形の砲撃だったけど、私達は共に回避することができた。

 

 そしてビームが来た方向に現れた悪意に目を向けると、そこには赤いモノアイを光らせる黒と灰色のボディを持つ巨大なロボットが五指の先にある砲口から煙を棚引かせていた。

 

『あの意匠は……ジオングなのか!?』

 

『その通り。このグレート・ジオングはジオングの完成形をさらに発展させたものだ。貴様のその赤い機体よりもジオンを背負うに相応しいと思わんかね?』 

 

 シャアの発した言葉を肯定しながらも嘲笑うパイロット。

 

 この感じ、あの時のクロクマとおんなじだ。

 

 それに───

 

「……ギレン・ザビ」

 

 間違いない。

 

 あのパイロットはそういう名前だ。

 

『なんだと!?』

 

『ほう。この短い時間で私のことを見抜くとは共感能力がさらに磨かれたようだな、マザーハーロット01』

 

 この人は私のことを知っているのか?

 

「……ミユのこと、しってる?」

 

『ああ、知っているとも。お前が何者でどのように生み出されたのか。目的に関しては言うまでもあるまい』

 

 多くの恐怖、そして淡い期待を込めた問いかけにギレンは平然と答えを返す。

 

『ミーちゃん。アイツ、クマ吉の関係者だ』

 

 それを聞いて思わず手を握りしめた私にひーちゃんは更なる事実を告げてくる。

 

『ギレン・ザビ! 何故貴様が存在している!?』

 

『地球の終焉が迫っているのだ。死人が蘇る程度、大したことではあるまい』

  

 グレート・ジオングに銃口を向けながら放ったシャアの問いかけを鼻で笑うギレン。

 

 そして次の瞬間、止まっていたはずの隕石のエンジンが火を噴いたのだ。

 

『馬鹿な! 誰がフィフスに火を入れた!?』

 

『私だよ。来るべき災厄を乗り越えるには地上には不要な愚者が多すぎるのでな』

 

 シャアとギレンが何か言いあってるけど、もうそんな事に構っていられない!

 

 早く隕石を止めないと!

 

「……ひーちゃん、いんせきとめられる?」

 

『隕石の進む先頭に押し返す形で取りついて! あとは私がなんとかする!!』

 

 ひーちゃんの言葉を受けて、私は隕石の進行方向の先へとハロを加速させる。

 

『ミーちゃん! この先にモビルスーツがいっぱいいる! この反応は旧ジオン軍だよ!』 

 

 ひーちゃんの言葉に間を置かず、目の前にザクや十字目の鈍重な機体、さらにはブタみたいな鼻をした機体が現れる。

 

 モニターの情報だとRFザク、RFドム、RFゲルググというらしい。

 

『連邦軍のモビルアーマー、来ます!』

 

『叩き潰せ! 奴等に一年戦争から続く我等の憎悪を刻み付けてやるのだ! ギレン総帥が与えてくれたこの最新鋭機でな!!』

 

 こちらを見つけるなり群がってくるモビルスーツ達。

 

 でも生憎こっちは構っている暇なんてない。

 

「……じゃま」

 

『ダインスレイブ、スタンバイ』

 

 今回ばかりは加減は無しだ!

 

 邪魔するんなら片っ端から撃ち落とす!!

 

  




スパロボ30を見た後のクソコテ様の反応。

クソコテ「ついにinfinityにまで……カイザーが生まれる因果を破壊せねば!!」


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